上 下
89 / 241
第3章『双子の少女を救出する事にした』

孤独死と四賢者

しおりを挟む
「アハハ!ここで皆死ぬのよ!素敵でしょ?」
アンナはこの盤面にて最良にして最悪な手を繰り出す
この世界を自分ごと消滅させる…選択としては良いと思う…だが…

「お前…死ぬのが怖くないのか?」
他者から殺されるのならば覚悟はいらない
しかし、自分から死を選ぶというのは相当な覚悟と自棄の心が無ければ成しえない

「怖くないか?怖いよ…あんな思いは嫌…どんどん自分の体温が下がっていくのがハッキリと解るの…そして今まで生きてきた道筋が全て脳裏から呼び起こされる…楽しかった思い出も…嫌な思い出も…」
「でも…でもね…不思議と心地が良いの…あの時とは違う…みんないる…1人じゃない!死ぬのなんて怖くない!」
アンナはもう壊れたのだろう
先程からずっと狂気の笑いが収まる気配がなく血の涙を流している

「そうか…まぁ死ぬのはお前だけだ、俺達は帰らせてもらうぜ」
この世界に来てから使えなかったが絵本が破かれた事によって能力の強制力は消え使える様になった

「『別次元へ誘う扉アナザーディメンション・ゲート』じゃあなアンナ、この世界で達者に生きろよ」
この魔法は今いる世界とは違う世界へと移動する魔法だ
ここは絵本の世界…つまりアルカ達がいる世界とは違う世界な為移動可能という訳だ

「行くぞマッドハッター!…ハートの女王も連れてくるなら連れて来い!」
俺は二人の手を引き時空の裂け目に入る

「『Arrivederciアリーヴェデルチ』この言葉をお前に贈るぜアンナ」
俺、マッドハッター、ハートの女王、クローノは時空の裂け目に消えていった


一人残されたアンナは呆然と立ち尽くす
「はは…みんないなくなっちゃった…」
アンナは手に持っている引き裂いた絵本を床に叩きつける

「なんで…何でよ!何でみんな私の前から消えるの!パパとママも私をあの館に置いて消えていった!いい子にしてたのに…私…いい子にしてたのに…私を1人にしないでよ…」
アンナは床に膝を抱えて座り込む

「誰でも良いから…私のそばに居てよ…」
地震が続く中アンナは…死を待つのみとなった
孤独死…それが星の数ほどある死の中で一番残酷で悲しい死である…


「もう人を困らせる真似はしないか?」
どこかから声が聞こえてくる

「うん…もう人を困らせたり悪い事はしません…」
アンナは顔を上げず聞こえてきた声に答える

「それじゃあお仕置きはこれで終わりだ」
その声が聞こえた瞬間、ピタリと地震が止む

アンナが顔を上げるとそこにはユートの顔があった
「涙で可愛い顔が台無しだぜ、ほら拭いてやるよ」
俺は自らの服を1部破り『錬成士アルケミスト』を使いハンカチを錬成する


錬成士アルケミスト
商業神の加護の恩恵スキルの一つ
このスキルは魔力が込められた物を錬成するには魔法効果付与エンチャントのスキルも必要になるが、普通の魔力が込められてない道具ならば錬成前の元素が少なくても、錬成前の元素が含まれていれば何でも錬成可能
但し、元の元素が作った物とかけ離れていたら一定時間が経ったら錬成前の物質に戻る


「でも…あなたは私をこの世界に置いて行ったんじゃ…」

「あぁ、お前に贈った言葉の意味を知らないのか?」
「『Arrivederciアリーヴェデルチ』意味はまた会いましょうだぜ」
「だけど流石に全部許すのはいけないと思ったので反省してもらう為に『精神操作メンタルジャック』を使って幻覚を見てもらったわけだ」
俺が指を弾くと周りの景色がガラリと変わる
そこは絵本の世界に入る前にいた大きな図書室であった

アンナは辺りを見渡した後
「ひぐっ…うわぁぁぁぁぁん」
大きな声で泣いた

「主様が女の子を泣かした…主様は女を泣かせるのが上手いのぉ」
クローノはクスクスと笑いを堪えきれずに笑い出す

俺はクローノの頭を掴み
「何か言ったか?クローノ」

「す…すまぬ…じゃから手をどけてくれんか…頭がが」
クローノは白目を向いて気絶する
ちょっとやりすぎた感が否めないが…良しとしよう

「ユート君は大人気ないなぁ」
おぉ…もう1人いたかぁ
俺は手の関節をゴキゴキと鳴らす

「これ!妾の夫に何をする気じゃ無礼者!」
ハートの女王…なのか?
あの悪趣味なドレスは消え誰もが振り返る様な美人がそこにいた

「お前誰だよ」

「なんじゃこの男は!無礼にも程があるのじゃ!妾の名を覚えておくが良い!」
「妾の名は『クロウディア=マクナヴェール』この男の妻じゃ」
ハートの女王…改めクロウディアはマッドハッターに抱きつく

「もう言っても良いかな」
「私は『シオン=マグナヴェール』巷で噂の四賢者の一人さ」
なん…だと……

「さてと…ソプラノさん終わったよ」
シオンが天に向かって叫ぶ

『お疲れ様~いや~楽しかったよ、でもあの終幕エンディングは神様の僕も予想外だったぜ』
天から光が舞い降りてそこから一人の女性が姿を現す
その女は商業神の名を持つ女神『ソプラノ』であった

「お前…何でこっちの世界に、そもそも合格者って何の事だ」
俺はソプラノに詰め寄る

「まぁまぁ落ち着いてそういう所もちゃんと説明してやるからさ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

異世界のんびり冒険日記

リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。 精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。 とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて… ================================ 初投稿です! 最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。 皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m 感想もお待ちしております!

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

魔法少女のなんでも屋

モブ乙
ファンタジー
魔法が使えるJC の不思議な部活のお話です

ある日仕事帰りに神様の手違いがあったが無事に転移させて貰いました。

いくみ
ファンタジー
寝てたら起こされて目を開けたら知らない場所で神様??が、君は死んだと告げられる。そして神様が、管理する世界(マジョル)に転生か転移しないかと提案され、キターファンタジーとガッツポーズする。 成宮暁彦は独身、サラリーマンだった アラサー間近パットしない容姿で、プチオタ、完全独り身爆走中。そんな暁彦が神様に願ったのは、あり得ない位のチートの数々、神様に無理難題を言い困らせ スキルやらetcを貰い転移し、冒険しながらスローライフを目指して楽しく暮らす場を探すお話になると?思います。 なにぶん、素人が書くお話なので 疑問やら、文章が読みにくいかも知れませんが、暖かい目でお読み頂けたらと思います。 あと、とりあえずR15指定にさせて頂きます。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

処理中です...