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皇女に言えない隠し事

侵略計画

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 「ご迷惑をお掛けして、大変申し訳ございませんでした……」

 ララーシャは、俺たちと顔を合わせた途端に深々とお辞儀をした。
 下半身の鱗は剥がれ落ちたままで、痛々しい。
 ハムチーズからある程度のことは聞いているようだが、その表情は優れなかった。

 ロリコン野郎とストーカー野郎が魔界から消えても、人魚である続ける限り、ララーシャの苦しみは終わらない。

「俺たちこそ、ごめんな。余計なことして。ちゃんと相談すればよかったな。手間を惜しんだせいで……」
「いえ……。わたしは、居候ですから……」
「そうだよ。ハレルヤは魔界で一番偉いんだから!お姉ちゃん、もっと精神的に強くならなきゃ駄目だよ!」
「……うん。そう、だね……」

 誰かに強くなれと命じられて、強くなれたら苦労はしない。
 ララーシャは優しすぎる。
 心の底から信頼できる相手と、心の強さを手に入れたら、彼女は人間界を統べる女王として君臨するはずだ。

「まだ、怖いか」
「……少しだけ。魔王様と、キサネちゃんのことは……信頼しています……。嘘を告げるような人たちではないと……」
「私はお姉ちゃんなんてどうでもいいけど、嘘をつくメリットなんてないもん」
「うん。そう、だよね……。あの人たちの魔力を……魔界で感じ取ることがなくなっても……ふと、思い出されるんです……。加害された時のことを……」

 簡単な話が、トラウマになってるってことだな。
 ララーシャが明るく元気に、なんの憂いもなく過ごすには、そのトラウマを克服するほどに強くなる必要がある。今のキサネみたいに。

「……キサネなら、ララーシャの気持ちがわかるんじゃないか?」
「ん~。私がぶん殴られたりしてた時は、絶対殺してやるって思ってたよ」
「ころ、す……?」

 俺は待兼時代の話を聞くつもりだったが、キサネとして生まれ変わった後の話をしている。ララーシャは待兼そっくりの顔をしているが、自分が待兼紗霧ではないと認識していた。
 本物が実の妹だったなど知ったら、キサネに危害を加えかねない。

 キサネにとって、ララーシャは身を守る盾だ。
 ララーシャの顔が待兼とよく似ていることを知るのは、追放した奴らを除けば残り1人。皇帝を王座から引きずり降ろすまで、ララーシャには利用価値がある。どうにかして皇帝の前に引っ張って行きたいんだけどな……。

 俺は優しい魔王様ってイメージがついてる。
 ここで嫌がるララーシャを無理矢理最終決戦の場所に連れて行ったら、好感度がダダ下がりだ。
 連れてくつもりなら、全力で落とす気で行かねぇと。

 恋愛感情を刺激して無理矢理連れて行くような手法を取ったら、キサネが黙ってねぇからな……。

 それは見極めていかないといけないのが難しい。
 キサネが邪魔だって言いたいわけじゃねぇぞ?
 他の女に嘘でも愛を囁く所を間近で見るとか、キサネじゃなくたって気分良くないだろうしな。それは、仕方ない。
 男女間の余計なトラブルを生むくらいなら、適度に距離を保って、控えめにお願いする姿勢でいるのが大事だろうな。

「あのね、私達。近々人間界に攻め込むの!私をいないものとして扱った皇帝と、嫌がらせしてきた皇后をボコボコにするんだよ!」
「おとう、さま……と、おかあ、さま……を……?」

 ララーシャは皇帝と皇后を、家族だと認識してんだな。
 キサネは家族だとは思ってねぇのに。
 その違いに驚きながら、俺は姉妹トークを始めた2人を優しく見守る。
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