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17歳<過去と向き合え>

そっくりさん

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「私もお外、行きたい!」
「いいぜ。一緒に行こう」
「ほんと!?やったー!」

 皇女様には、外へ行く理由を説明しなかった。
 事前に説明すると、嫌がるんじゃないかと思ったからだ。
 サプライズなんてしようもんなら、血の雨が降るかもしれねぇけど。
 それはそれ、これもこれだな。

「お外っ。お外っ。ハレルヤとデート!」

 ハムチーズには、ストーカー野郎の足止めを頼んでいる。
 魔城の外へ出られる期間はそう長くはねぇけど、2人きりのデートだと皇女様はご機嫌だ。

 デートがしたいなら、いつでもしてやんのに。

 俺はご機嫌な皇女様を伴い、魔族街の外れにやってきた。

 満月の夜。水鏡に映し出された月を経由して、人魚が落ちてくる──そんな噂がまことしやかに囁かれる湖にやってきた俺は、指を弾き──魔力使って、ハムチーズが発動させていた結界を解いた。

「ハレルヤ?どうしたの?」

 俺が魔力を使ったことくらいは、人間の皇女様にもわかるのだろう。
 俺を不思議そうに見上げる皇女様の頭を撫でながら、俺達は後方の湖から水音を聞く。

 ポチャン、ポチャリ、と。

 湖には何もいないはずなのに、水を掻き分けるような音が聞こえてくる。

「なに?オバケ……?」
「オバケではねぇよ。ハムチーズの言葉が事実なら──」

 あの水音は、魔族の少女が水を跳ねる音だろう。
 ハムチーズの言葉が嘘だったら、わかんねぇけど。

 俺たちは湖の水音を聞きながら、魔族の少女が姿を表すのを待ち続ける。

「…………チーズ、ちゃん……?」

 ちゃぽん。ちゃぽちゃぽ。
 跳ねる水音と共に、湖からか細い声が聞こえてきた。俺と皇女様は、湖から姿を表した少女を凝視する。

 彼女は胸元を貝殻で隠し、腰から下が鱗に覆われている──人魚としか思えない少女だった。

「ねぇ、ハレルヤ。あの人、なに?ハムちゃんのこと、呼んでるの?」

 俺は皇女様から問いかけられた声に、返事を返せない。
 人魚らしき魔族の少女に、前世を思い起こさせるような特徴があったからだ。

「待兼……?」

 彼女の顔は、前世の俺が愛した女──待兼紗霧と瓜二つだった。

「えぇ……」

 人魚と思われる特徴的な身体つきにばかり集中していた皇女様は、俺の呟きを聞いて不満そうに声を漏らす。

 俺は皇女様が聞き返すのではなく、不満そうに声を漏らす時点で気づくべきだったのだ。

 目の前に、待兼とそっくりな顔をした魔族の女がいる。

 頭がおかしくなりそうな状況に、俺は皇女様の反応など気にしてはいられない。
 どうなってんだよ。これ。
 なんで、こいつは、待兼にそっくりなんだ?

「どちらさま、ですか……?」

 そして俺たちは、坂から転がり落ちるように避けられない状況下で──過去と向き合う時を、迎えた。
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