殺人鬼が転生したら、魔王になるとか聞いてない。~愛する皇女を救い魔王となった俺は、前世で因縁のある奴らを始末し、世界征服を目指す~

桜城恋詠

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17歳<過去と向き合え>

皇女様とデート

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「魔王様。また様子を見にいらしたのですか」
「よお。お前は毎回、暇そうにしてんな」
「毎回暇そうにしているのではなく、魔王様の気配を感じ、出迎えているのです」
「仕事があるなら、専念してろよ」
「魔族街へ魔王様がいらっしゃっているのに、出迎えずにいるなど、ありえません」
「俺の命令が聞けないのかよ」

 ストーカー野郎は、俺が魔族街をふらつくとどこからともなくやってきて、俺の後ろをついて回る。
 流石はストーカー野郎。その名に恥じぬストーキングっぷりだ。

 俺はこいつのことを、疑っていた。

 ハムチーズの話が確かなら、こいつは魔族街の何処かで少女を手に掛けている。
 未遂だったようだが、皇女様のそっくりさんに手を下した人物を、堂々と生かしておくわけには行かねぇよな?

 俺は週一で魔族街に通い、ハムチーズの話では生きているらしい皇女様とよく似た少女の住居を探すべく、奮闘していた。

 5年も探し歩いてんのに、ヒントすら見つからねぇっておかしいよな。
 強力な結界でも作動されてんのか?
 そしたら、俺が普通に歩いていて見つけられるわけがねぇよな。
 ストーカー野郎はどこからともなく俺の魔力を辿って、魔族街から姿を消すまでベッタリとくっついて来やがる。

 もしもストーカー野郎も、結界が破壊されるのを待っていたりしたら──えらいことになるよな。
 俺は自力で皇女様によく似た少女を探すのは諦め、ムースに直接話を聞くことにした。

「なぁ、ハムチーズ。会わせてくれねぇか」

 ハムチーズは俺が誰に会いたがっているのかを瞬時に察し、難しい顔をしている。
 ハムチーズにとって、魔王の命令は絶対だ。
 俺には恨みはねぇし命令には従いたいけど、ストーカー野郎が邪魔。
 そんな所だろうな。

「俺が魔族街を歩いていると、ストーカー野郎が邪魔しに来やがる。結界をぶっ壊してもいいが、あいつをそっくりさんの前に連れて行ったら、やべぇんだろ?」
「はい。大変危険です」
「ストーカー野郎を足止めした状態で、俺たちだけがささっとそっくりさんの姿を見て、帰る。それすらも、難しいか?」
「いえ。キサネ様は、お会いするべきだと……ずっと考えておりました」

 俺じゃなくて皇女様を名指しなのは、皇女様と姉妹疑惑があるからだ。
 深い意味はないと判断した俺はハムチーズに頼み込んで、皇女様とそっくりな少女に会わせてもらう約束をした。

 皇女様、マジギレしなきゃいいけどな……。

 自分の知らない所で勝手に女と会う約束なんてするなとへそを曲げそうだ。
 5年前、皇女様にはじめてそっくりさんの話をした時を思い出した俺は、ニヤけるのをやめられない。

 俺の皇女様は、5年も経てば美しく成長を遂げた。

 ムースが衣装だけではなく、髪型まで凝るようになったお陰で、皇女様は美少女から美女になりつつある。
 にこにこ笑顔の時と、挑発する時のギャップが堪らない。

 皇女様にやられっぱなしの俺は、すっかり皇女様がいないと生きていけない身体になっていた。

「ハレルヤ!また一人で、お出かけしたの!?」

 それは皇女様も同じなようで、俺を見つけるや否や、首元へ飛びついてくる。
 5年前は小さかった皇女様も、今では立派なレディだ。
 5年前のように軽い気持ちで、首元を締め付けられたら堪んねぇ。

「ぐ、悪かった、悪かったから……首を……」
「ええ?どうしよっかな」

 小悪魔皇女様の降臨だ。俺は内心滅多に見れない皇女様のおねだりモードを拝みながら、どうにか首元から手を離してもらおうとした。

「キサネ。放せよ」
「それって、命令?」
「お願いだ。強制力はねぇよ」
「別の場所に手を回すなら、いい?」
「……俺がキサネを、拒む理由はないだろ?」
「やったぁ!じゃあ、こっちにする~」

 皇女様は一度首元に回していた手を背中へ回すと、胸元辺りに顔を寄せた。
 ご機嫌斜めの皇女様の機嫌も、少し直ったらしい。
 安全を考慮して、ずっと魔城内に引きこもりっきりだからな。
 たまには外に出たいんだろ。

 理由がどうであれ、皇女様の気分転換も兼ねたお散歩をするには、ちょうどいい機会だ。
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