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魔王覚醒
魔城の寝室
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俺達はハムチーズに、寝室へ案内された。
皇女様が人間界で暮らしていた寝室と同じかそれ以上の広さを誇るその部屋は、斎藤正晴の記憶を思い出した俺にとっては居心地が悪くて仕方がない。
広すぎだろ。大豪邸にも程がねぇか?
大金持ちの息子に生まれ変わったみてぇだ。斎藤正晴が暮らしていた部屋なんて、皇女様と俺がこれから過ごす部屋と比べたら、犬小屋レベルだった。
二人暮らしなら、1LDKで十分だろ……。50畳くらいねぇか?
俺は寝室の広さに驚愕しながら、キングサイズのベッドにぽふりと音を立てて横たわった皇女様へ笑い掛けた。
「ふかふかのベッドだー!泳げるくらいひろーい!」
「皇女様の部屋にあったベッドと、サイズはあんまり変わんねぇだろ」
「ええー?変わるよ~。こっちの方が大きい!さすが、魔王様だね!」
「魔王は関係ねぇだろ」
「ハレルヤも、はやく!一緒にこのふわふわ感、楽しもうー!」
皇女様は先程まで緊張していたのが嘘のように、持ち前の明るさを全面に押し出している。
皇女様も普段は、大人びて見えるけど……まだ12歳の子どもなんだよな。
俺は皇女様に誘われるがまま、キングサイズベッドに横たわった。
「きゃー。ハレルヤの体重で、ベッドが沈んだー!」
「おい。俺が重いって言ってんのか?」
「男の子だもん。私よりも体重が重いのは、当然のことだよね?」
「まーな」
皇女様にチクリと釘を差された分だけ、言い返してやるつもりだったけど、やめた。
皇女様は正論を言っているだけだ。言い返してやったって、皇女様の機嫌を損ねるだけなら適当に流しておいた方がいいだろう。
「ハムチーズ、今日はありがとな。もう、下がっていいぞ」
「承知致しました。また明日の朝、お迎えに上がります。困ったことがございましたら、いつでも私の名をお呼びくださいませ」
「ああ。サンキュ」
食事は貯蔵庫の中に入っている果物や保存食を、好きに飲み食いしていいんだとか。
簡易の風呂場みたいな場所で自由に湯浴みできるらしく、ビジネスホテルに滞在しているようなイメージだ。
ハムチーズから道すがら説明を受けた俺は、彼女から親父が魔王時代、身の回りを世話していた魔族達を呼ぼうかと提案された。
呼びたきゃ呼べばいいけどさ。俺はまだ自分が魔王と呼ばれる存在として生まれたことを信じてねぇし、魔族のことだって内心では警戒してる。
俺の親父が魔王で、俺が魔王の血を引く息子だって話も、何かの間違いとしか思えなかった。
そりゃ、ハムチーズの申し出はありがたいけどさ。俺たちの世話は、する必要ないと断っている。
皇女様は王族のくせに、一通りのことは問題なくできるからな。
使用人の助けなど必要ない。
ドアが小さく音を立てて閉まり、ハムチーズが部屋をあとにしたことを確認した俺達は、自然と肩に入っていた力を抜いて笑い合う。肩から力を抜いたタイミングが、ほとんど同時だ。
俺達はひとしきり笑いあったあと、どちらともなく背中に手を回して抱き合った。
「嫌なことなんて忘れるくらい、充実した一日だったね」
「充実って言うかはわかんねぇけど……とりあえずは……助かったみてぇだな」
「ハレルヤが魔王様って、ほんとかなぁ?」
「わかんねぇけど。ほんとなら、明日の朝。俺の頭には角が生えてるはずだ」
「魔王様の証である角って、どんな感じなのかな」
「そこそこの規模した古城って、廊下に王の肖像画が飾られてねぇか?」
「見に行くの、めんどくさい……」
皇女様は俺と離れがたくなってしまったらしく、寝室を出るのが嫌みたいだ。
俺がほんとに魔王なら、明日になればわかるだろ。わざわざ皇女様の背中に回した手を離して、確認しに行く必要があるとは思えねぇな。
皇女様が人間界で暮らしていた寝室と同じかそれ以上の広さを誇るその部屋は、斎藤正晴の記憶を思い出した俺にとっては居心地が悪くて仕方がない。
広すぎだろ。大豪邸にも程がねぇか?
大金持ちの息子に生まれ変わったみてぇだ。斎藤正晴が暮らしていた部屋なんて、皇女様と俺がこれから過ごす部屋と比べたら、犬小屋レベルだった。
二人暮らしなら、1LDKで十分だろ……。50畳くらいねぇか?
俺は寝室の広さに驚愕しながら、キングサイズのベッドにぽふりと音を立てて横たわった皇女様へ笑い掛けた。
「ふかふかのベッドだー!泳げるくらいひろーい!」
「皇女様の部屋にあったベッドと、サイズはあんまり変わんねぇだろ」
「ええー?変わるよ~。こっちの方が大きい!さすが、魔王様だね!」
「魔王は関係ねぇだろ」
「ハレルヤも、はやく!一緒にこのふわふわ感、楽しもうー!」
皇女様は先程まで緊張していたのが嘘のように、持ち前の明るさを全面に押し出している。
皇女様も普段は、大人びて見えるけど……まだ12歳の子どもなんだよな。
俺は皇女様に誘われるがまま、キングサイズベッドに横たわった。
「きゃー。ハレルヤの体重で、ベッドが沈んだー!」
「おい。俺が重いって言ってんのか?」
「男の子だもん。私よりも体重が重いのは、当然のことだよね?」
「まーな」
皇女様にチクリと釘を差された分だけ、言い返してやるつもりだったけど、やめた。
皇女様は正論を言っているだけだ。言い返してやったって、皇女様の機嫌を損ねるだけなら適当に流しておいた方がいいだろう。
「ハムチーズ、今日はありがとな。もう、下がっていいぞ」
「承知致しました。また明日の朝、お迎えに上がります。困ったことがございましたら、いつでも私の名をお呼びくださいませ」
「ああ。サンキュ」
食事は貯蔵庫の中に入っている果物や保存食を、好きに飲み食いしていいんだとか。
簡易の風呂場みたいな場所で自由に湯浴みできるらしく、ビジネスホテルに滞在しているようなイメージだ。
ハムチーズから道すがら説明を受けた俺は、彼女から親父が魔王時代、身の回りを世話していた魔族達を呼ぼうかと提案された。
呼びたきゃ呼べばいいけどさ。俺はまだ自分が魔王と呼ばれる存在として生まれたことを信じてねぇし、魔族のことだって内心では警戒してる。
俺の親父が魔王で、俺が魔王の血を引く息子だって話も、何かの間違いとしか思えなかった。
そりゃ、ハムチーズの申し出はありがたいけどさ。俺たちの世話は、する必要ないと断っている。
皇女様は王族のくせに、一通りのことは問題なくできるからな。
使用人の助けなど必要ない。
ドアが小さく音を立てて閉まり、ハムチーズが部屋をあとにしたことを確認した俺達は、自然と肩に入っていた力を抜いて笑い合う。肩から力を抜いたタイミングが、ほとんど同時だ。
俺達はひとしきり笑いあったあと、どちらともなく背中に手を回して抱き合った。
「嫌なことなんて忘れるくらい、充実した一日だったね」
「充実って言うかはわかんねぇけど……とりあえずは……助かったみてぇだな」
「ハレルヤが魔王様って、ほんとかなぁ?」
「わかんねぇけど。ほんとなら、明日の朝。俺の頭には角が生えてるはずだ」
「魔王様の証である角って、どんな感じなのかな」
「そこそこの規模した古城って、廊下に王の肖像画が飾られてねぇか?」
「見に行くの、めんどくさい……」
皇女様は俺と離れがたくなってしまったらしく、寝室を出るのが嫌みたいだ。
俺がほんとに魔王なら、明日になればわかるだろ。わざわざ皇女様の背中に回した手を離して、確認しに行く必要があるとは思えねぇな。
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