偏見アンサー 理解のある彼くんとわたし

桜城恋詠

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わたしは由緒正しい家の生まれらしい

氈鹿××の手紙と、羊森夫妻(完)

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ーー久留里の部屋には、3枚の写真がある。一つは和菓子越後屋の集合写真。最近新しく撮影し直したもので、羊森家や和菓子越碁屋の従業員だけではなく、蜂谷兄弟や愛媛の姿があるものだ。

二つ目は両親の写真。学生時代、そっぽを向く父親を無理やり画面に収め、母親が自撮りした写真だった。久留里が生まれてからずっと大切に保管されていた写真はかなり色褪せてしまっている。

そして、三つ目はーー現在判明している久留里を含めた異母兄弟4人が映っている写真で、ひと目で真新しい写真であることがわかる誰一人として同じ表情はしていない。個性が出ていて、久留里が大好きな写真だ。

ーー離れていても、私達は家族だよ。

この写真を見つめれば、すぐにでもみんなの顔が思い出せる。頻繁に連絡を取らなくたって。数年に一度近状を報告し合うその日まで、久留里は毎日のように写真を見つめ、異母兄弟の姿を思い浮かべていた。

「越碁さん。お母さんの手紙…」
「開けたのか」
「うん。お母さん、お父さんに伝えたかったこと。あんまりなかったみたいでね」

ーー来世で再び巡り合うことがあったなら。今度こそは私と結婚して、他に子供を作らないこと!ちゃんと、責任、取ってよね。

A4用紙の真ん中2行に大きな文字で書かれた文字は、びっしりと文字が書き込まれた父親の手紙とは真逆で、母親らしい。古びた紙は、母親が亡くなる直前より、もっとずっと前に書かれたものだと証明してくれる。経年劣化で茶色くなった紙は、久留里が産まれる前後には、いつでも父親に渡せるよう用意されていたのかもしれない。

「両思い…だったみたいなの」
「そうか」
「お母さん、生きていたら…。お父さんが、もっと早く…会おうって言って…行動してくれたら…」
「俺の助けは必要なかっただろうなァ」
「私、越碁さんと出会わない人生とか、考えたくないよ!」
「お父さんとお母さんが結婚しなかったから、辛いこともたくさんあったけど、越碁さんと出会えた。私、今…幸せだよ」
「越碁さん。お父さんとお母さんが、来世で一緒になりたいって願うならーー」
「私も…願っていい?来世でも、越碁さんと、一緒にいたいって」

嫌だと言われたら、どうしよう。
強く拳を握り締めた久留里を優しく見守る越碁は、緊張でどうにかなってしまいそうな久留里を優しく抱きとめた。

「来世でも、その次だって構わねェよ」
「…うん」
「俺たちは何度も出会い、恋に落ちる。ずっと一緒だ」
「…うんっ!越碁さん、大好き。今までたくさん、たくさん、甘やかしてくれた分だけ…私も越碁さんを甘やかせられるように頑張るね」
「あァ?どんなこと、してくれんだ」
「ーーどんなことでも」

越碁さんが望むことなら、どんなことでもしたいの。

越碁の首元に縋り付き、唇を合わせる。越碁は久留里から進んで行われる行為を拒んでいたが、夫婦になってからは受け入れてくれるようになった。

越碁は久留里に尽くしたいから、久留里からの奉仕は求めていない。
けれど久留里は、してもらった分だけ、越碁に返したかった。

「越碁さん」

これからも、私は。お父さんとお母さん。みんなの気持ちを背負って、越碁さんと生きていくーー
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