偏見アンサー 理解のある彼くんとわたし

桜城恋詠

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わたしは由緒正しい家の生まれらしい

集合写真

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「期待通り、音痴を披露できなくて悪かったなァ」
「す、すごい!すごいよ!越碁さん…っ。蜂谷さんが言っていたけど、何やらせてもそつなくこなすって、ほんとだね…っ」
「大人を誂うと、痛い目見るぜ」

鶴海を真似したのだろうか。
越碁がぱっちりと片目を閉じて久留里にウインクを飛ばす。はわわ、とソファに身体を預けた久留里を見た弟妹達は、嫌そうな顔で感想を述べた。

「げっ。大人気な~」
「かっこつけている!ナルシだよ、ナルシ!」
「何やらせてもそつなくこなす、ね。俺が大嫌いなタイプだ」
「同族嫌悪ッスか?」
「そんなんじゃないよ。舞、そろそろ帰ろう。いつまでも鈴鹿さんに知世を預けているわけにはいかないよね」
「あっ。そーかも。1時間だけならってお姉ちゃんに言われたんだった!」

1歳の知世がいないと思えば、姉の鈴鹿に預けて来たらしい。ぱっと立ち上がった舞鶴に習って、全員が帰り支度を始める。久留里はこのまま別れたら、しばらく会えなくなってしまうと、慌ててソファから立ち上がり声を張り上げた。

「みんなで集まったから、写真を撮りたいの…!」

久留里の提案に、カラオケボックスで写真?と弟妹達は難色を示す。どういう集まり、と聞かれて異母兄弟ですと答え、白姫が飛んできたら面倒になると危惧してのことだった。絶対に言いふらしたりなどしない。その約束の元、渋る弟妹を強引に誘って撮影をはじめる。

「どうやって撮影するの?タイマー?自撮り?」
「自撮りじゃ全員入んないスよ」
「タイマーにしようか」
「ルリのスマホで撮影すんなら、俺ので撮影してデータを送った方が画質は良くなる。並べ。撮るぞ」
「越碁さんが撮影してくれるの!?」
「義弟と並びたくねェ」
「嫌だなあ、お父さん。そんなに俺たちを目の敵にしていいのかい?」
「誰がお父さんだ」
「わたし鞍馬の隣!」
「姉さん、鞍馬とおれならどっちがいいっスか」
「じゃ、じゃあ…信楽くんで…」

右から久留里、信楽、舞鶴、鞍馬の順で4人が横一列になって写真撮影する。デコボコ並びで、随分いびつな兄妹だけの写真が撮影されたが、久留里は見栄えなど気にしない。大事なのは、白峰太郎の子どもと称される兄妹4人が一つの画面に収まっていること。最初で最後かもしれない、この瞬間を、最後にしない為に。溢れる思いと涙を止めることなく泣き始めた久留里は、弟妹達に向かって言葉を重ねた。

「私の我がまま、聞いてくれてありがとう。迷惑ばっかり掛けるお姉ちゃんで、ごめんね…!」

子どものように抑えきれずわんわんなく久留里を見つめた三人は、久留里を慰めることもせず「用が済んだらさっさと帰りましょう。急いでいるので」と口にした鞍馬の一声により、泣く久留里を越碁に預けて帰途についた。
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