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<2回目>6月6日 委員長視点
誤解が解けて
しおりを挟む「好きだから! 私は委員長の気を引くために、校則違反をしまくってたの!」
彼女は僕に、信じられない告白をしてくる。
どうやら僕達は、相思相愛であったらしい。
「だが、恵麻は……。入学式の日から……」
「そりゃ、最初は中学生デビューってやつ? 私のパパ、厳しいから。羽目外して見たくて……」
「なんだそれは」
「委員長以外に怒られてたら、止めるつもりだったよ? でもね、仕方ないじゃん。一目惚れ、しちゃったんだから……」
――まさか恵麻が、不順な動機で校則違反をしているなど夢にも思わない。
僕は思わず、問いかけてしまった。
「僕と想いを通じ合わせたあと……。校則違反を辞めるように伝えたら。君は改善する気があるのか」
「当たり前じゃん! 委員長が私とおんなじ気持ちなら、派手な格好して気を引く理由もなくなるし!」
「そんな、馬鹿なことが……」
僕は再び、その場へ崩れ落ちたくて堪らない。
派手な格好をやめさせたければ、もっと早くに告白をするべきだったなど。
そんなの誰にもわかるはずがないだろう。
ふざけるなと思わずにらみつけてやれば、恵麻はケラケラと笑った。
「あはは。ごめんって、圭吾」
「な……」
僕は家族以外に呼ばれたことがない名前を呼ばれ、目を丸くしてしまう。
「あれ? 委員長の名前って、遠野圭吾だよね? 違ったっけ?」
きらめき学園では、名字すらも教師にしか呼ばれなかった。
全員、委員長として認識されているからだ。
頭の出来があまりよくない恵麻が、僕の名前を覚えているとは思わず、目を見張ってしまった。
「いや。合ってはいるのだが……」
「圭吾はずっと、私のこと恵麻って呼ぶからさ? 下の名前で呼びたかったんだ!」
名前を呼んで、嬉しそうに呼ぶ恵麻の姿を見て気づく。
彼女が本当に、僕のことが好きなのだと。
――まさか。恵麻が僕と同じ気持ちなど、夢にも思わない。
放心状態の僕に、恵麻はとても嬉しい提案をしてくれた。
「二人で一緒に帰る時は、名前で呼んでもいい?」
「もちろん」
「やった! これからもよろしくね、圭吾!」
恵麻は僕の背中へ両手を回すと、強い力で抱きついてくる。
力加減も知らないのかと苦言を呈したくなるが、想定していたバッドエンドを迎えなかっただけでも、よしとするべきだ。
――加賀と小高は、外野が背中を押すまでもなく相思相愛。
松本と霧風は、時間の問題だろう。
そして僕達はこうして、想いを通わせることができた。
「よろしくと挨拶をする前に」
「んー?」
「気になることがある。聞いてもいいか」
「何でも聞いて!」
「普段授業中、スマートフォンを見て何をやっているんだ」
「ああ、あれはね……?」
恵麻はスマートフォンを取り出すと、僕に画面を見せてくれる。
そこには信じられない文字が、山程書き込まれていた。
『はぁー。今日の委員長もイケメン!』
『超かっこよ~』
『人間国宝って感じ。もっとにらまれたい!』
どうやら僕に対する思いを、認めていたらしい。
通りで授業そっちのけで、熱心に指を動かしていたはずだ。
「まったく君は……」
「ね? 私の気持ちは本物だって、わかってくれた?」
「ああ」
だが、これでよくわかった。
恵麻が僕のことを、ずっと愛してくれていたと言うことが。
これから彼女は派手な容姿を止め、授業も真面目に受けるだろう。
「これからもよろしく、恵麻」
「うん!」
もしも彼女に惚れる男子生徒がちょっかいを出してくるのであれば。
恵麻のことを守ると誓おう。
そう決めた僕は、彼女と手をつないで帰路についた。
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