明日君に、伝えたいこと

桜城恋詠

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<2回目>6月6日 まどか視点

誰にも取られたくない

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「ああ。よろしく。まどか」

 今はまだ、お友達のままだけど……。
 いつかはきっと。
 拓真くんがわたしの、一番特別な存在になるといいな!

「なぁん」

 わたし達が笑顔で笑い合えば。
 拓真くんの腕の中に抱きしめられてたノワールも、わたし達が仲良くなったことを喜んでるみたい。

 嬉しそうな鳴き声を上げて、祝福してくれたんだ。

「――あ。委員長からメールだ」
「委員長?」
「今日は給食の用意ができないから、各自下校だってさ」
「そっか……」

 修学旅行の荷物があるから。

 自転車通学の子達はみんな、両親に車で送ってもらってたんだ。

 徒歩の子達は一人で帰ってもいいけど、自転車通学の子達は、先生がお迎えを呼んでくれるんだって。

 よかったぁ。

 安全確認の取れたバスで、一人一人お家まで送るって話にならなくて。

 せっかく助かったのに、また事故に巻き込まれちゃったら。
 生きて帰れる保証なんて、どこにもないもんね?

「拓真くんはもう、お家に帰れるね」
「……まどかの迎えが来るまで、一緒にいるよ」
「でも……」
「まどかと一緒に、いたいんだ」

 まっすぐわたしの目を見て言われたら、拒否なんてできないよ!

 ノワールも、拓真くんに懐いているし……。
 わたしは空き教室の窓を開けて、お迎えが来るのを待ったんだ。

「修学旅行、残念だったね」
「……まどかのこと、名前で呼べるようになったから。それだけで充分だ」
「みんなと楽しい思い出、作らなくていいの?」
「俺はまどかと二人で、いろんなことができればいいよ」

 拓真くんはさり気なく、わたしがいればいいって伝えてくれてる。
 修学旅行なんて、どうでもよかったみたい。
 そんなものかなぁ?

 わたしはみんなと一緒に、楽しい思い出を作りたかったのに……。

「……そっか。ねぇ、拓真くん。大人になった時、みんなで修学旅行をやり直そうって言ったら……怒る?」
「……怒ったりはしないけど。みんなって、誰と行くんだ?」
「わたしと拓真くん、あざかちゃんと海斗くん、委員長と恵麻ちゃん……?」
「小高と海斗はいいけど、委員長と豊洲は、定期的に連絡を取り合える仲にならないと……難しくないか」
「それはこれから、わたしが頑張るよ!」

 わたしが笑顔でガッツポーズを披露したら、拓真くんはすごく嫌そうな顔をしてた。
 その理由がよくわからなくて。首を傾げてしまう。
 どうしたんだろ?
 あの二人と、仲良くなっちゃ駄目なのかな……?

「豊洲はいいけど。あんまり委員長と仲良くされたら、困るんだけど」
「なぁん?」
「そうだよ。ノワール。悪いか」
「にゃーん」
「ああ……」

 拓真くんはノワールと会話してる。
 なんの話をしてるんだろ?

 ずっと疑問だったんだけど……。
 わたしがわかるように、拓真くんは説明してくれたの。

「……言ったろ。取られたくないって」
「うん。さっき言ってた!」
「俺よりもまどかが……委員長と仲良くなるのは、嫌なんだ」
「……そうなの?」
「委員長とは、俺か海斗が仲良くなれるようにするから。あんまり関わらないで」

 拓真くんは苦しそうに唇をかみ締めながら、わたしに伝えたんだ。
 拓真くんは多分……。
 遠野くんに、嫉妬してるんだと思う。
 ここで、嫌だって言うのは……違うよね。

「……大丈夫だよ」
「まどか……」
「委員長は、恵麻ちゃんと仲良しだもん。わたしは拓真くんと一番仲良くなれるように、がんばる!」
「にゃーん」

 そうだ! 頑張れまどか!

 勇気づけるみたいに、鳴き声を上げるノワールの声に後押しされたわたしは、気合を入れたんだ。
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