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<2回目>6月6日 まどか視点
整備不良
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「前方のドアは、開きそうもねぇな」
「じゃあ……私達って、どうやって脱出すればいいわけ?」
「閉じ込められたままってこと……?」
わたし不安になって恵麻ちゃんのお父さんに問いかければ。
頼りがいのある笑みを浮かべると、後方で何やら作業をする委員長のお父さんへ視線を向けたんだ……。
「そのあたりは、あっちのおじさんに任せときな。バスに詳しい大人がいて、助かったぜ」
「委員長の、お父さん?」
「いや。この場合は、後方が無事だったことを喜ぶべきだ」
「あー! 委員長、パパを褒められて、照れてるんでしょー!」
「照れてなどいない」
「顔真っ赤だよ?」
「気の所為だ」
委員長と恵麻ちゃんは命の危機が去ったことにホッとしたのか、すっかりいつもの調子を取り戻してる。
バスが追突したあとなのに、のんきだなぁ……。
「にゃあん」
「緊急脱出ドアか……」
松本くんは、ノワールを抱きかかえながら、委員長のお父さんが特別な操作をして開け放った窓を見つめながら小さな声でつぶやいたの。
これは、閉じ込められた時に外へ出るための、普段は使われていない扉なんだって。
委員長は存在を知っていたみたいだけど、すごく力が必要みたいで……。
子ども達だけの力でこのドアを開けるのは、難しかったかもしれないって。
暗い顔でうなずいてるのが、印象的だったんだ。
「松本くん! 降りよう!」
「ああ……」
せっかく助かったんだもん。
もっと明るく、元気でいなくちゃね!
わたしはノワールを抱きかかえた松本くんと一緒に、緊急脱出ドアから降りたんだ。
「わーい! 外だー!」
「はしゃぐようなことか……」
「恵麻ちゃんのお父さん! 運転手さんは……?」
「おー、気にすんな。命に別状はねぇよ」
わたし達のあとに続いて。
バスからは恵麻ちゃんと委員長、大人達が降りてくる。
いつまで経っても、運転手さんが出てこないから。
念のために、恵麻ちゃんのお父さんに聞いてみたんだけど……。
ぐったりしていてすぐには動けないだけで、命に別状はないんだって!
よかったぁ!
バスに乗っていたみんなも擦り傷くらいで済んでるのは、奇跡に近いよね!?
「よかった……! みんな、生きてる……!」
「なぁん」
松本くんに抱きかかえられたノワールも、満足そうな鳴き声を上げてる。
大暴れしなくなったってことは、もう警戒しなくてもいいってことだよね?
わたしはほっと胸を撫で下ろして、肩の力を抜いたの。
「いやはや。まさかほんとに、娘の話が本当だったとはな……」
「死ぬかと思った」
「ホントですよ! 私を巻き込まないでください!」
「パパってば、超不死身じゃん!」
恵麻ちゃんは委員長の手をつかんで引っ張ると、再会を喜んだ。
「だから言ったじゃん? うちはうそなんてつかないしー」
「でかしたぞ、恵麻! さすがは俺の娘!」
「いえーい! 委員長とうちのパパ、超ファインプレー!」
あの状況はやっぱり大人でも、死を覚悟するみたい。
愛する子ども達と無事に危機を脱せて、お父さん達も嬉しそうにしてた。
そんな中――。
「何事ですか!?」
バスが追突した時、凄い音がしたからかな?
先生達が騒ぎを聞きつけて、駆けつけてくれたの。
わたしは慌てて、事情を説明しようとしたんだけど……。
「父さん。調査結果は……」
「ああ。間違いない」
恵麻ちゃんがお父さんと、ハイタッチをしてる横で。
委員長はお父さんと一緒に点検内容を確認して、わたし達に情報を共有してくれる。
タイヤがパンク寸前。
ブレーキの効きが悪くて、かなり危険な状態だったんだって。
やっぱり、乗っちゃいけないバスだったみたい……!
「じゃあ……私達って、どうやって脱出すればいいわけ?」
「閉じ込められたままってこと……?」
わたし不安になって恵麻ちゃんのお父さんに問いかければ。
頼りがいのある笑みを浮かべると、後方で何やら作業をする委員長のお父さんへ視線を向けたんだ……。
「そのあたりは、あっちのおじさんに任せときな。バスに詳しい大人がいて、助かったぜ」
「委員長の、お父さん?」
「いや。この場合は、後方が無事だったことを喜ぶべきだ」
「あー! 委員長、パパを褒められて、照れてるんでしょー!」
「照れてなどいない」
「顔真っ赤だよ?」
「気の所為だ」
委員長と恵麻ちゃんは命の危機が去ったことにホッとしたのか、すっかりいつもの調子を取り戻してる。
バスが追突したあとなのに、のんきだなぁ……。
「にゃあん」
「緊急脱出ドアか……」
松本くんは、ノワールを抱きかかえながら、委員長のお父さんが特別な操作をして開け放った窓を見つめながら小さな声でつぶやいたの。
これは、閉じ込められた時に外へ出るための、普段は使われていない扉なんだって。
委員長は存在を知っていたみたいだけど、すごく力が必要みたいで……。
子ども達だけの力でこのドアを開けるのは、難しかったかもしれないって。
暗い顔でうなずいてるのが、印象的だったんだ。
「松本くん! 降りよう!」
「ああ……」
せっかく助かったんだもん。
もっと明るく、元気でいなくちゃね!
わたしはノワールを抱きかかえた松本くんと一緒に、緊急脱出ドアから降りたんだ。
「わーい! 外だー!」
「はしゃぐようなことか……」
「恵麻ちゃんのお父さん! 運転手さんは……?」
「おー、気にすんな。命に別状はねぇよ」
わたし達のあとに続いて。
バスからは恵麻ちゃんと委員長、大人達が降りてくる。
いつまで経っても、運転手さんが出てこないから。
念のために、恵麻ちゃんのお父さんに聞いてみたんだけど……。
ぐったりしていてすぐには動けないだけで、命に別状はないんだって!
よかったぁ!
バスに乗っていたみんなも擦り傷くらいで済んでるのは、奇跡に近いよね!?
「よかった……! みんな、生きてる……!」
「なぁん」
松本くんに抱きかかえられたノワールも、満足そうな鳴き声を上げてる。
大暴れしなくなったってことは、もう警戒しなくてもいいってことだよね?
わたしはほっと胸を撫で下ろして、肩の力を抜いたの。
「いやはや。まさかほんとに、娘の話が本当だったとはな……」
「死ぬかと思った」
「ホントですよ! 私を巻き込まないでください!」
「パパってば、超不死身じゃん!」
恵麻ちゃんは委員長の手をつかんで引っ張ると、再会を喜んだ。
「だから言ったじゃん? うちはうそなんてつかないしー」
「でかしたぞ、恵麻! さすがは俺の娘!」
「いえーい! 委員長とうちのパパ、超ファインプレー!」
あの状況はやっぱり大人でも、死を覚悟するみたい。
愛する子ども達と無事に危機を脱せて、お父さん達も嬉しそうにしてた。
そんな中――。
「何事ですか!?」
バスが追突した時、凄い音がしたからかな?
先生達が騒ぎを聞きつけて、駆けつけてくれたの。
わたしは慌てて、事情を説明しようとしたんだけど……。
「父さん。調査結果は……」
「ああ。間違いない」
恵麻ちゃんがお父さんと、ハイタッチをしてる横で。
委員長はお父さんと一緒に点検内容を確認して、わたし達に情報を共有してくれる。
タイヤがパンク寸前。
ブレーキの効きが悪くて、かなり危険な状態だったんだって。
やっぱり、乗っちゃいけないバスだったみたい……!
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