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<2回目>6月6日 まどか視点
みんな生きてる?
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どうして止めるの!?
相手が松本くんじゃなかったら、そうやって怒鳴りつけていたと思う。
だけど、彼の行動は間違ってない。
男の人は、このままバスが整備不良だってことを知っていたら、逮捕されちゃうって恐れてる。
刃物を持っていたら、振り回してわたし達の命を奪おうとするかもしれないもん!
わたしを守るために、止めようとしてくれたんだって気づいているから。
「あ……っ!」
抵抗しなかったら。
松本くんの手により、あっと言う間に運転手さんから引きはがされてしまって――。
「刑事さん!」
「チビども! 後ろへ行け! 早く!」
このまマジゃバスが動き始めちゃう!
わたしが焦って声を上げた瞬間。
さっきまで運転手を抑えていた手首を、代わりに強い力でそれ以上操作できないように止めてくれる人が現れたんだ。
それは、恵麻ちゃんのお父さんで……。
「にゃあん!」
安全であることを証明するかのように。
一足先に黒い四肢が、もの凄い勢いで通路を駆けて行く。
それに倣い、松本くんとわたし。
委員長と恵麻ちゃんの順でバスの後方へと避難したんだ。
「パパ……!」
「く……っ!」
だけど……。
最後尾にいた恵麻ちゃんは、お父さんが苦しそうな声を上げたのを耳にしたからかな?
大きなカブみたいに。
みんなで協力すれば、運転手さんを止められるんじゃないかって思ったみたい。
「恵麻!」
「衝撃に備え、体勢を低くしろ! 揺れるぞ!」
でも、恵麻ちゃんがお父さんと一緒に運転手さんを止めるよりも。
委員長が恵麻ちゃんを勢いよく背中から抱き締め、後ろへ倒れる方が早くて――。
わたし達が通路にしゃがんだ瞬間。
バスは前方に停車していた一号車の後方へ、勢いよく突っ込んじゃったんだ……。
ガシャン!
「きゃああ!」
わたし達は悲鳴を上げ、前方から降り注ぐガラスの破片から逃れるために体勢を低くして、じっと耐える。
「霧風……っ。大丈夫。ここにいるのは、俺達だけじゃない……!」
「松本くん……っ。でも……!」
ガタガタと揺れるバスはやがて、ゆっくりと停止したんだ。
「恵麻ちゃんと、委員長は!?」
松本くんと言葉を交わし合い、無事を確認したわたしはすぐさま――バスの真ん中で倒れ伏してる委員長に抱きしめられてる、恵麻ちゃんへ視線を移したんだ。
「霧風……っ。怪我するから……! 動くなって!」
「でも……!」
バスの内部には、降り注いだガラスの破片が散らばっている。
身動きすらも満足に取れない状況では、安否確認すらも困難で……。
わたしは大声で、二人に向かって叫ぶことしかできなかったんだ。
「やだよ……! 恵麻ちゃん! 委員長!」
わたし達だけが助かったって、意味ないの……!
お願いだから、返事をして……!
「霧風……。少し、静かにしてくれないか……」
一生懸命叫んで、神様にお願いした……。
わたしの願いが、通じたのかな?
わんわん泣き叫んでいたら。
不機嫌そうなか細くて低い声が、前方から聞こえて来たの。
「委員長!」
「……恵麻……っ。返事をしろ……!」
「うぅ……。委員長、うっさい……」
「恵麻ちゃんも……!」
よかった。
わたしが大騒ぎしたおかげで、安否確認が取れたよ!
あとは恵麻ちゃんのお父さんと、運転手さんが生きているかを確認するだけだね!
「みんな、生きてるよ……!」
「パパは……?」
「くそ……っ。酷い目見たぜ……」
「パパ!」
「よぉ、チビども。全員無事だな?」
一番危ない場所にいた恵麻ちゃんのパパも、いろんなところに切り傷ができてるみたいだったけど……。
ちゃんと動けるみたい。
もう一人の刑事さんと、委員長のお父さん。
それから黒猫のノワールは、後方に居たから……怪我はなさそう。
相手が松本くんじゃなかったら、そうやって怒鳴りつけていたと思う。
だけど、彼の行動は間違ってない。
男の人は、このままバスが整備不良だってことを知っていたら、逮捕されちゃうって恐れてる。
刃物を持っていたら、振り回してわたし達の命を奪おうとするかもしれないもん!
わたしを守るために、止めようとしてくれたんだって気づいているから。
「あ……っ!」
抵抗しなかったら。
松本くんの手により、あっと言う間に運転手さんから引きはがされてしまって――。
「刑事さん!」
「チビども! 後ろへ行け! 早く!」
このまマジゃバスが動き始めちゃう!
わたしが焦って声を上げた瞬間。
さっきまで運転手を抑えていた手首を、代わりに強い力でそれ以上操作できないように止めてくれる人が現れたんだ。
それは、恵麻ちゃんのお父さんで……。
「にゃあん!」
安全であることを証明するかのように。
一足先に黒い四肢が、もの凄い勢いで通路を駆けて行く。
それに倣い、松本くんとわたし。
委員長と恵麻ちゃんの順でバスの後方へと避難したんだ。
「パパ……!」
「く……っ!」
だけど……。
最後尾にいた恵麻ちゃんは、お父さんが苦しそうな声を上げたのを耳にしたからかな?
大きなカブみたいに。
みんなで協力すれば、運転手さんを止められるんじゃないかって思ったみたい。
「恵麻!」
「衝撃に備え、体勢を低くしろ! 揺れるぞ!」
でも、恵麻ちゃんがお父さんと一緒に運転手さんを止めるよりも。
委員長が恵麻ちゃんを勢いよく背中から抱き締め、後ろへ倒れる方が早くて――。
わたし達が通路にしゃがんだ瞬間。
バスは前方に停車していた一号車の後方へ、勢いよく突っ込んじゃったんだ……。
ガシャン!
「きゃああ!」
わたし達は悲鳴を上げ、前方から降り注ぐガラスの破片から逃れるために体勢を低くして、じっと耐える。
「霧風……っ。大丈夫。ここにいるのは、俺達だけじゃない……!」
「松本くん……っ。でも……!」
ガタガタと揺れるバスはやがて、ゆっくりと停止したんだ。
「恵麻ちゃんと、委員長は!?」
松本くんと言葉を交わし合い、無事を確認したわたしはすぐさま――バスの真ん中で倒れ伏してる委員長に抱きしめられてる、恵麻ちゃんへ視線を移したんだ。
「霧風……っ。怪我するから……! 動くなって!」
「でも……!」
バスの内部には、降り注いだガラスの破片が散らばっている。
身動きすらも満足に取れない状況では、安否確認すらも困難で……。
わたしは大声で、二人に向かって叫ぶことしかできなかったんだ。
「やだよ……! 恵麻ちゃん! 委員長!」
わたし達だけが助かったって、意味ないの……!
お願いだから、返事をして……!
「霧風……。少し、静かにしてくれないか……」
一生懸命叫んで、神様にお願いした……。
わたしの願いが、通じたのかな?
わんわん泣き叫んでいたら。
不機嫌そうなか細くて低い声が、前方から聞こえて来たの。
「委員長!」
「……恵麻……っ。返事をしろ……!」
「うぅ……。委員長、うっさい……」
「恵麻ちゃんも……!」
よかった。
わたしが大騒ぎしたおかげで、安否確認が取れたよ!
あとは恵麻ちゃんのお父さんと、運転手さんが生きているかを確認するだけだね!
「みんな、生きてるよ……!」
「パパは……?」
「くそ……っ。酷い目見たぜ……」
「パパ!」
「よぉ、チビども。全員無事だな?」
一番危ない場所にいた恵麻ちゃんのパパも、いろんなところに切り傷ができてるみたいだったけど……。
ちゃんと動けるみたい。
もう一人の刑事さんと、委員長のお父さん。
それから黒猫のノワールは、後方に居たから……怪我はなさそう。
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