明日君に、伝えたいこと

桜城恋詠

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<2回目>6月6日 まどか視点

警察の人と一緒に

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「い、行っちゃった……」
「……今日も集合時間ギリギリだ。委員長に、怒られないといいけど」
「なぁん」
「そっちより、わたしはノワールのことを言われるのがこわいよ……」

 裏庭へ放し飼いにして、迷子になっちゃっても困るし……!
 このまま一緒にいなきゃいけないのは、確定してるんだけどね!?

 うぅ。朝から憂鬱だよ……!

「あっ! いたー! まどちゃーん! まっつん! おはよー!」
「霧風。松本。何やってる。早く来い」

 胃が痛いなぁって思ってたらね?
 委員長と恵麻ちゃんに声をかけられたんだ。

 見覚えのない男の人達を三人連れてるけど……。

 あれが二人のお父さん……?
 でも、一人多いような……?

「おはよう」
「にゃあん」

 松本くんの声に反応したノワールは、「こんにちは」って、恵麻ちゃんと委員長に挨拶するように甘えた声を出したんだ。
 恵麻ちゃんはノワールの可愛さに目を輝かせて、大喜び。
 瞳がハートになっちゃってるよ!

「わ! かわいー! 黒猫だー!」
「……なぜ猫がいる」
「あ、あのね! これには、事情があって……!」
「はじめまして! 名前は?」
「ノワール」
「めっちゃシャレオツ~!」

 恵麻ちゃんって、動物が好きなのかな?
 なんだか、ちょっぴり意外。
 松本くんとも、話が合いそうだね!

 わたしはにこにこと満面の笑みを、浮かべて恵麻ちゃんが黒猫と戯れる様子を見守っていたんだけど……。
 委員長から、背筋が凍るような冷たい空気が流れ込んで来たことに気づいたの。

 わたしは慌てて、身を引き締めたんだ。

 これからバス会社と話し合いをするのに……。
 緊張感がなさすぎだって。
 委員長に怒られても、おかしくないでしょ?

 そう、反省したからだよ!

「……今はいい。とにかく、行くぞ」
「え? あ、うん……!」

 だけど……。
 いつまで経っても、委員長の雷は落ちなかったんだ。

 あれ? てっきり、怒られると思ってたのに……!

 委員長はスタスタと、校門の右側へ止められた黄色い三台のバスの方へ、お父さん達を連れて歩いていっちゃった。

 わたしもノワールを抱きかかえた松本くんや恵麻ちゃんと一緒に、並んで歩く。

「霧風。僕達の乗ったバスは、何号車だった」
「えっと、二号車だよ!」
「ここだな」

 委員長はものおじすることなく――トントンって、バスのドアをたたく。
 閉まっていたはずのドアは、すぐに内側からプシューって音とともに、開け放たれたんだけど……。

 目を擦っている運転手さんは、なんだか顔色が悪いような……?

「はじめまして。きらめき中学校の生徒です」

 委員長は当然のようにバスへ乗り込んだから、わたし達も慌ててぞろぞろと着いて行く。もしも、このまま急発進したら。
 全員まとめて、助からないかもしれないなぁって……。
 不吉なことを、考えながら……。

「はぁ……。生徒さんが、一体なんのご用で?」
「突然ですが、車内の安全確認をさせてください」
「……なんだって?」
「ああ。ちょっとごめんな。坊や。申し遅れました。私ら、こう言うものなんですわ」

 委員長を押しのけたスーツ姿の男性は、バスに乗り込むと、胸ポケットから黒い手帳を取り出したの。

 最初はそれが何か、よくわからなかったけど……。

「ひっ。け、警察!?」
「どーも。匿名で、通報があったもんでね。オタクのバス会社、法定検査をサボってるとか……」
「そ、そんなこと!」
「子ども達の安全にかかわることなんで、これは確かめなきゃって話になったんですわ。ご協力、お願いできますね?」
「う……」

 スーツの男性は、恵麻ちゃんのパパとバディを組んでる、警察の人なんだって!

 もう、びっくりしちゃった!
 運転手さんも、逆らえないみたいで……。

 委員長のお父さんは許可を得ると、さっそく安全確認を始めたの。
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