明日君に、伝えたいこと

桜城恋詠

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<2回目>6月5日 まどか視点

明日誰かに、告白されたら

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「あんまり、恋愛とか興味ない?」
「うーん。そうだね。今はみんなと一緒に、楽しく遊んでる方がいいかな!」
「……そっか」

 そうしてわたし達は昇降口を経由して靴を履き替え、駐輪場で自転車を回収してから。校門までは担任に少し距離を置いて監視され続けながら、学校を出たんだ。

「まどちゃーん! まっつん! また明日ー!」
「恵麻ちゃん、委員長! バイバイ!」

 委員長と恵麻ちゃんは、わたし達とは真逆の方向へ帰るんだよね。

 委員長が押して歩く自転車の荷台に、二人乗りをしようとして、徒歩通学の恵麻ちゃんが怒られてる。

 ――よかった。
 バスが事故に遭う前みたいに、二人が大喧嘩して仲違いすることなどなくて。
 あの様子なら、このまま恵麻ちゃんと委員長はもっと仲良くなって。
 カップルになれるかもしれないよね?

 そうなったら、いいな。
 頑張れ、恵麻ちゃん!

 二人の騒がしい声を聞いたわたしは、心の中でエールを送りながら。松本くんと一緒に、自転車を押しながら、反対方向へ向かって並んで歩いたんだ。

「明日の流れだけど」

 そしたらね?
 校門が見えなくなった頃。
 先生に聞かれることはないと安心した松本くんが、明日の件についての話を小さな声でし始めたんだ……。

「海斗と小高には、クラスの奴らと一緒に公園で待機してもらうことになった」
「ありがとう!」
「それと。バスの件は……。委員長が保護者にかけ合って、なんとかしてくれるみたいだ」
「なんとかって?」
「委員長のお父さん、バスの整備士をしてるらしい」
「そうなの!?」

 松本くんのお父さんが、獣医さんなのもビックリしたけど……。
 委員長のお父さんが整備士さんって言うのも、想像がつかないなぁ。

 親子ならきっと、顔も似てるよね?

 どんな人なんだろ?
 会うのが楽しみ!

「バスに異常があるなら、調べればすぐにわかるみたいだ」
「よかった……。異常が見つかったら、修学旅行は中止になるね!」
「ああ。無理やり強行するようなことに、ならなきゃいいけど……」

 松本くんの不安が、現実のものにならないといいな。

 そう願いながら自転車を引いて歩いてると、松本動物病院が見えてきた。
 学校から徒歩五分じゃ、すぐに着いちゃうね。

「霧風」

 お別れするの、寂しいなって思う気持ち……。

 松本くんに、バレちゃってたかな?

 病院の前で立ち止まった松本くんは、真剣な眼差しでわたしを見つめたの。

「もし、明日。誰かに告白されたら……」
「うん……」
「……やっぱり、断る?」

 相手が松本くんじゃなかったら、断ってたと思うよ?

 でも。告白してきた相手がすごくイケメンだったり、お金持ちだったりしたら……。
 勢いで、うなずいちゃうかもしれないでしょ?

「……その時になってみないと、わかんない……かな……?」

 松本くんには、うそをつきたくなかったんだ。
 だから、曖昧に濁しておいたの。

 そしたら、松本くんは寂しそうに笑って、わたしに別れを告げたんだ。

「また明日。学校で」
「うん。バイバイ、松本くん」

 ――わたし、間違ってない……よね?

 はっきり、断るよって言った方が良かったかな?

 そんな悩みを吹き飛ばすように、自転車を猛スピードで立ち漕ぎしながら、わたしは帰路に着いたんだ……。
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