明日君に、伝えたいこと

桜城恋詠

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<2回目>6月4日(2) まどか視点

悪夢

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「……霧風の見た夢が、現実になったら」
「――松本くん?」
「こうやって言い争うあいつらのことも、見れなくなるんだよな……」
「にゃあん……」

 松本くんは悲しそうに目を伏せたの。
 彼が抱いている感情を、感じ取ったのかな?

 ノワールの鳴き声も、なんだか元気がないみたい。

「あれは悪夢だったんじゃないかなって、わたしは思ってるよ」
「……悪夢……?」
「うん。このまま何もしなかったら、みんな死んじゃうぞって警告してくれたの」
「誰が、そんなことを?」
「それは、よくわかんないけど……」

 神様が、わたし達はあんなところで死ぬ人じゃありませーんって。
 教えてくれたのかも?

 なんて笑いながら伝えようと思ったけど、松本くんは言葉にしづらい表情のまま黙っちゃった。

 どうしたんだろ?
 心当たりでも、あるのかな……?

「……この世に、神様なんか居ない」
「松本くん?」
「神様が居たら、俺の母さんは……」

 ――お母さん?
 松本くん、神様と何かがあったのかな……?

 なんだか不穏な単語を口にする松本くんが心配になって、ノワールと一緒にうなずいた彼の表情をのぞき込んだの。

 そしたらね?
 松本くんは、瞳を潤ませて、わたしと目を合わせてくれたんだ。

「……俺は……」
「うん」
「霧風のことを、信じたい。うそを言うようなタイプじゃないだろ」
「もちろん! うそをつくのは、悪い人がすることでしょ? わたしは、いい子だもん!」
「なー。あざかー。霧風って、いい子か?」
「何言ってんのよ。海斗に比べたら、数百倍いい子でしょ!?」
「ははっ。悪い子はオレだったかー」

 幼馴染コンビの明るいかけ合いをBGMに、わたしは松本くんと話し合いを続ける。

「わたしのこと、信じてくれてありがとう、松本くん。みんなに協力してもらうんだもん。絶対、修学旅行を中止にするからね!」
「……ああ。頑張ろう」

 その為にはあと1十一人、修学旅行に行かないって決めた人を集めなくちゃ!
 みんなで力を合わせれば、絶対に修学旅行を中止にできるよね?

「そうだ! 聞きたいことあんだけど。ちょっといいか?」

 そのためにまず、最優先でやるべきことってなんだろう?

 首を傾げてると、あざかちゃんと言い争いを終えた海斗くんが、わたしに話しかけて来たの。

「もちろん!」

 元気よく返事をしたら、海斗くんは思いがけないことを確認して来たんだ……。

「委員長を説得できんのってさ。豊洲しかいなくね?」

 遠野くんを仲間に引き入れるためには、恵麻ちゃんを説得するのが一番だって提案してくれたんだ。
 わたしも恵麻ちゃんに、遠野くんへ味方した理由を聞きたかったし……ちょうどいいかも!

「そうだな。委員長は、豊洲のことを名前で呼んでるし……」
「なんだかんだ言って、豊洲さんは委員長のお気に入りだもの。好きじゃなきゃ、あそこまで熱心に注意しないでしょ」
「うん……そうだよね……」

 二人の間に恋愛感情があるかまでは、わかんないけど……。

 バスの事故が起きる前。

 委員長は恵麻ちゃんと喧嘩して、すっごくショックを受けてた。
 見てるこっちが、かわいそうなくらいだったもん。
 あんな委員長の姿は、見たくないもんね!

 わたしは恵麻ちゃんに話を聞く。
 みんなは手分けして、賛同してくれる仲間を集める。

 二手に別れて行動するって、決めたんだ!

「明日の目標は四人だけど、少しでも賛同者を増やしておきたいな……」
「一人ずつ仲間に引き入れたらいいんでしょ? 楽勝じゃない!」
「んじゃ、勝負しよーぜ。オレとあざか、どっちがより多くの仲間を集められるか」
「望むところよ!」
「よーし! やるぞ~!」
「なぁーん」

 ノワールもわたし達を、応援してくれてるみたい!

「えいえい、おー!」

 わたし達はそれぞれ握りこぶしを作ると、コツンとぶつけ合ってお別れしたんだ。
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