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<2回目>6月4日(2) まどか視点
予知夢(大嘘)
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「お待たせー!」
みんなは一斉にわたしの方へ視線を向けて、笑顔で受け入れてくれたの。
「わたしの部屋に、案内するね!」
「まどか。みんなでゾロソロ移動するのは大変でしょう? お母さんが寝室に引っ込むわ」
「いいの?」
「ええ。ただし! 危ないことはしちゃ駄目よ?」
「はーい!」
わたしの返事を聞いたお母さんは気を利かせて、リビングを出て行ってくれたの。
今は四角いテーブルの椅子に、幼馴染コンビが並んで座ってる。
わたしは松本くんの隣が、ぽっかりと開いていることに気づいたんだ。
手つかずのグラスに注がれたジュースは、わたしの分だよね?
「松本くん! 隣、座ってもいいかな?」
「……どうぞ」
「ありがとう!」
松本くんに許可を取ってから、隣に腰を下ろせば――作戦会議の、スタートだよ!
「まどか。わかってると思うけど……」
「うん。実は、わたし……」
あざかちゃんに促されたわたしは――ずっと一人で抱えてた秘密を、みんなに打ち明けようって決めたんだ。
「夢を見たの。修学旅行に向かう途中、バスが事故に遭って……」
「なぁん」
伝えたい言葉を一気に言うのは、難しくて。
口籠ったら……。
松本くんに抱きかかえられたノワールが、わたしを勇気づけるように鳴き声を上げたの。
ミステリアスな金色の猫目が、心配そうにこっちを見上げてる。
ここで伝えるのを止めたら、みんながモヤモヤしちゃうよね?
「……このままじゃ、みんなが死んじゃう……」
黒猫からエールをもらったわたしは小さくうなずくと、拳を握りしめながら。
か細い声で叫んだの。
「予知夢、か」
「へー。漫画みたいな話、ほんとにあるんだなー」
「まどかはその夢を見たから、あんなことを言ったのね」
「……うん。驚かせて……」
「霧風」
ごめんねって謝ろうとしたら、松本くんから低い声で名字を呼ばれたの。
さっき、二人で帰宅してる時に、わたしからの謝罪は受け取らないって約束したからかも。
だけど……。
申し訳ないって気持ちが前に出過ぎて、どうしても言いたくなっちゃうんだ。
気をつけなくちゃ……。
「拓真ー。霧風をこわがらせちゃ駄目だろ?」
「……そんなこと、してないけど」
「自覚なしかよ。あんま良くないぞ?」
「にゃあ」
「ほら。黒猫もそう言ってる」
「にゃあん」
ノワールは、海斗くんの言葉へ同意をするように甘えたような鳴き声を出したの。
松本くんは黒猫と目を合わせて、疑いの眼差しを向けてる。
「ちょっと、海斗。都合のいいように、解釈しないでよ」
「海斗の言葉、ほんと?」
「にゃーん?」
首を傾げた松本くんを真似するように、ノワールもまったく同じ動作をしたんだ。
それがもう! ほんとにかわいくて……!
隣に座っていたわたしはそれを見て、さっきまでの松本くんを不機嫌にさせちゃったって思ってた憂鬱な気持ちが、吹き飛んだの!
自分用のスマートフォンが手元にあったら、カメラモードを起動して激写してたところだよ!
早く、高校生になりたいなぁ。
そしたらみんなとだって離れていても、毎日連絡が取り合えるのにね?
「まどか! 松本くんとノワールを見て、目をハートにしてる場合じゃないわよ?」
「……あ、あざかちゃん? わたし、そんなことしてないよ?」
「……ある意味で似たもの同士ね」
「オレらみたいだなー」
「ちょっと! 海斗とあたしを一緒にしないでくれる!?」
海斗くんが笑顔を浮かべながらあざかちゃんにちょっかいを出したら、幼馴染コンビは言い合いを始めちゃった。
こうなるともう、二人の気が済むまでは止まらないんだよね……。
「ほんとにあざかちゃんと海斗くんは、仲良しだね!」
「ただの腐れ縁よ!」
「ただの腐れ縁だぞー?」
ほら、やっぱり。
息ぴったりだよ!
わたしはニコニコと、二人が言い争う姿を眺めていたんだけど……。
みんなは一斉にわたしの方へ視線を向けて、笑顔で受け入れてくれたの。
「わたしの部屋に、案内するね!」
「まどか。みんなでゾロソロ移動するのは大変でしょう? お母さんが寝室に引っ込むわ」
「いいの?」
「ええ。ただし! 危ないことはしちゃ駄目よ?」
「はーい!」
わたしの返事を聞いたお母さんは気を利かせて、リビングを出て行ってくれたの。
今は四角いテーブルの椅子に、幼馴染コンビが並んで座ってる。
わたしは松本くんの隣が、ぽっかりと開いていることに気づいたんだ。
手つかずのグラスに注がれたジュースは、わたしの分だよね?
「松本くん! 隣、座ってもいいかな?」
「……どうぞ」
「ありがとう!」
松本くんに許可を取ってから、隣に腰を下ろせば――作戦会議の、スタートだよ!
「まどか。わかってると思うけど……」
「うん。実は、わたし……」
あざかちゃんに促されたわたしは――ずっと一人で抱えてた秘密を、みんなに打ち明けようって決めたんだ。
「夢を見たの。修学旅行に向かう途中、バスが事故に遭って……」
「なぁん」
伝えたい言葉を一気に言うのは、難しくて。
口籠ったら……。
松本くんに抱きかかえられたノワールが、わたしを勇気づけるように鳴き声を上げたの。
ミステリアスな金色の猫目が、心配そうにこっちを見上げてる。
ここで伝えるのを止めたら、みんながモヤモヤしちゃうよね?
「……このままじゃ、みんなが死んじゃう……」
黒猫からエールをもらったわたしは小さくうなずくと、拳を握りしめながら。
か細い声で叫んだの。
「予知夢、か」
「へー。漫画みたいな話、ほんとにあるんだなー」
「まどかはその夢を見たから、あんなことを言ったのね」
「……うん。驚かせて……」
「霧風」
ごめんねって謝ろうとしたら、松本くんから低い声で名字を呼ばれたの。
さっき、二人で帰宅してる時に、わたしからの謝罪は受け取らないって約束したからかも。
だけど……。
申し訳ないって気持ちが前に出過ぎて、どうしても言いたくなっちゃうんだ。
気をつけなくちゃ……。
「拓真ー。霧風をこわがらせちゃ駄目だろ?」
「……そんなこと、してないけど」
「自覚なしかよ。あんま良くないぞ?」
「にゃあ」
「ほら。黒猫もそう言ってる」
「にゃあん」
ノワールは、海斗くんの言葉へ同意をするように甘えたような鳴き声を出したの。
松本くんは黒猫と目を合わせて、疑いの眼差しを向けてる。
「ちょっと、海斗。都合のいいように、解釈しないでよ」
「海斗の言葉、ほんと?」
「にゃーん?」
首を傾げた松本くんを真似するように、ノワールもまったく同じ動作をしたんだ。
それがもう! ほんとにかわいくて……!
隣に座っていたわたしはそれを見て、さっきまでの松本くんを不機嫌にさせちゃったって思ってた憂鬱な気持ちが、吹き飛んだの!
自分用のスマートフォンが手元にあったら、カメラモードを起動して激写してたところだよ!
早く、高校生になりたいなぁ。
そしたらみんなとだって離れていても、毎日連絡が取り合えるのにね?
「まどか! 松本くんとノワールを見て、目をハートにしてる場合じゃないわよ?」
「……あ、あざかちゃん? わたし、そんなことしてないよ?」
「……ある意味で似たもの同士ね」
「オレらみたいだなー」
「ちょっと! 海斗とあたしを一緒にしないでくれる!?」
海斗くんが笑顔を浮かべながらあざかちゃんにちょっかいを出したら、幼馴染コンビは言い合いを始めちゃった。
こうなるともう、二人の気が済むまでは止まらないんだよね……。
「ほんとにあざかちゃんと海斗くんは、仲良しだね!」
「ただの腐れ縁よ!」
「ただの腐れ縁だぞー?」
ほら、やっぱり。
息ぴったりだよ!
わたしはニコニコと、二人が言い争う姿を眺めていたんだけど……。
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