明日君に、伝えたいこと

桜城恋詠

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<2回目>6月4日(2) まどか視点

友情を確かめ合って

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「ねぇ、まどか。大丈夫?」
「あのね。このあとの話し合いで、すごく変なことを言うかもしれないけど……」
「今よりもっと凄い発言をするなんて予告、聞きたくなかったわ」

 そしたらね?
 あざかちゃんは肩をすくめて、深いため息を溢しちゃった。

 あきれるのも、無理はないよね……。

 わたしだってそんなこと言われたら心配するし、体調を気遣うと思うから……。

「味方になってくれとは、言わないよ。でも……。今まで通り親友で居てくれると、すごく嬉しい……」
「……何よそれ。あたしが絶交したくなるようなことを、これからやるって言うの?」

 修学旅行を中止にしようって提案してるとは、言えないよね……。

 あざかちゃんだってみんなと一緒に、旅行へ行くこと。
 楽しみにしてるはずだもん。
 そんなこと口にしたら……。

 嫌われたって、おかしくないよ。

「……ごめんね。これからたくさん、迷惑かけちゃうかもしれなくて……」

 親友と絶交することになった時の気持ちを考えたわたしは、涙を堪えるためにうなずいたの。
 これ以上言葉を口にすると、泣いちゃうような気がしたから……。

「――まどか」

 そしたらね?

 あざかちゃんはわたしの両頬を指で摘んで、ビヨーンって伸ばしたんだよ。
 強い力で引っ張られたせいで、わたしは思わず声にならない悲鳴をあげちゃった!

ひひゃいよ痛いよ~。あひゃかひゃんあざかちゃん……!」
「あのね。あんたがいつも、目的の為なら一目散に駆け出して、いろいろやらかしてる問題児だってことはよーくわかってるわ」
ひょんなふほそんなこと……」
「あたしを甘く見ないで。生まれてからこの方、大嫌いな海斗のことですらも、見捨てずに面倒を見てやったのよ」
あひゃかひゃんあざかちゃん……」
「まどかが今さらやらかしたって、軽蔑したりしないわ」

 あざかちゃんは頼れるお姉ちゃんみたいな発言をすると、わたしの頬から両指を離したの。

 うぅ。頬がジンジンするよぅ……!

 ヒリヒリとした痛みの方が強くて、感動してる余裕がないのは凄く残念だったけど……。
 その申し出は、すっごく有り難くて。

「ありがとう……!」

 わたしはちょっぴり不格好な笑みを浮かべて、瞳に溜まった涙を指で拭いたんだ。

「あれま。見ろよ、拓真。あざか、霧風を泣かしてるっぽくね?」
「泣かしてないわよ! 変な言いがかり、つけないでくれる!?」
「おー。相変わらずうるせぇの、なんのって」
「乙女にはいろいろあるの!」
「ふーん? ま、どうでもいいけど」
「あんたねぇ……! だったら口を挟んで来なければいいでしょ!?」

 そうこうしてる間に、松本くんと外に出てたはずの海斗くんが、教室へ戻って来たんだ。

 あざかちゃんはやる気満々で、言い争いを始めちゃった。

 二人が喧嘩をしてるのはいつものことだけど、見てていい気分はしないよね。
 だから、二人を止めようと思ったんだけど……。

「お、落ち着いて! あざかちゃん……!」
「放っておけよ」
「松本くん……?」
「もうすぐ昼休みが終わる。霧風が止めなくたって、言い争いは強制終了だ」

 壁かけ時計で時間を確認しながら、松本くんから指摘を受けたわたしは、顔を真っ赤にして怒るあざかちゃんと、のらりくらりと交わす海斗くんを見守ることになったの。
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