明日君に、伝えたいこと

桜城恋詠

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<2回目>6月4日(2) まどか視点

あざかちゃんにも聞いてみた

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 学校へ登校したわたしは授業を受けながら、これからのことについて考える。

 ――このまま予定通りに修学旅行を決行したら、みんな死んじゃうよ……!

 バスが事故に遭った原因は、運転手さんの居眠り運転だったみたい。
 運転する人を替えてもらえたら、無事に目的地へ辿り着けるかもしれないけど……。

『ブレーキが利かない!』

 意識が薄れる直前に聞こえた声は、そう叫んでた。
 バスが整備不良だったら、運転手さんを替えても意味ないよね?

 やっぱり、周りにどう思われるかなんて、気にしてる場合じゃないよ。
 皆で修学旅行をボイコットした方が、いいんじゃないかなぁ……?

 ――今日はお昼休みが終わったら、バスの席順を決める予定なんだ。

 その時に、提案してみようかな?

 うん。そうしようっと!

「ねぇ、まどか」

 やるべきことが決まって顔を上げたら、あざかちゃんに声をかけられたんだ。

 集中して考え事をしてたからかな?
 気がつかないうちに、お昼休みへ突入してたみたい。

 教室にはわたし達以外の姿はなくて、ガランとしてる。

 もしかして、秘密を打ち明けるチャンス?

 駄目元で、聞いてみようかな……?

「わたしもあざかちゃんに、聞きたいことがあって!」
「その前に、まずはあたしの話を聞きなさい」

 覚悟を決めたわたしは、あざかちゃんに問いかけようとしたんだけど……。

 声をかけて来た人の用事を優先するべきだって、怒られちゃった。
 わたしはしょんぼりと肩を落として反省した様子を見せると、話を聞く態勢を取ったんだ。

「まどかから、松本くんに声をかけたんですって?」
「うん。聞きたいことがあってね……?」
「休み時間に海斗から聞いたわ。松本くん、困惑してたわよ」
「ごめんね! あざかちゃん! 迷惑かけちゃったかな!?」
「そうじゃなくて。初めてのまともな会話がバス事故の話とか、あり得ないでしょ」

 あざかちゃんから何を言われているのか理解するまで、すごく長い時間がかかった。
 なんでそんなこと言うんだろうって、不思議だったからだよ。
 わたしはぽかんとしながら、首を傾げたの。

「初めてじゃないよ?」

 修学旅行の前日に、松本くんと話したもん。
 ノワールを動物病院に預けて、当日にもお話しているでしょ?
 だから。
 今日は四回目のはずだと思っていたからだよ。

「もう! まだ寝ぼけてるの!?」

 でもね……?

 親友の怒った顔を見て、疑問を投げかける前に気づいたの。

「……あざかちゃんも、覚えてないんだ……」

 わたしだけ未来の記憶を持ったまま、過去へ戻ってきちゃったから……。
 松本くんと話すのは今日が初めてだって認識していることを……。

 やっぱり誰も、覚えてないんだ。

 悲しい気持ちでいっぱいになると同時に、松本くんにすごく馴れ馴れしい態度を取っちゃったのを反省する。

 わたしの周りにいる子達は、みんないつもと変わらないのに。
 わたしだけがみんなと違う。
 一緒にいるのに、独りぼっちみたいな感覚……。
 すごく苦しくて、悲しい気持ちが胸の奥底から湧き上がって来るけど……。

 泣き言なんて、言ってなどいられないよね!

 わたしは唇をかみ締めて、そんな気持ちをぐっと押しやると……。
 あざかちゃんに伝えたんだ。
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