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<2回目>6月4日 拓真視点
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年に一回は必ず告白されているのを見る。
その様子を遠くから眺めながら、ずっと霧風が告白を断るようにと祈っていた。
俺は最低な男だ。
自分のことしか考えてない奴を、霧風が好きになってくれるはずがない。
可能性などないと、自分が一番よく理解しているからこそ……。
俺は大事な時でさえ、行動できないんだ。
「今までフリーだったのが、奇跡に近いからな!?」
「わかってるよ……」
「いいか? 修学旅行が、最初で最後のチャンスだと思わねぇと」
「……もしも。チャンスすら、与えられなかったとしたら?」
――霧風の言葉を、信じるならば。
修学旅行の途中で、俺たちは事故に遭う。
告白なんてする機会すら、与えられないってことだ。
勘弁して欲しい。
「残された時間、がむしゃらにガツガツ行くしかねぇだろ」
「そんなこと言ったって……」
修学旅行までは、今日を含めてあと三日しかない。
ここから霧風と距離を縮めて、想いを通わせるとか……。
一方的に告白するよりも、ハードルが高すぎる。
そもそも、それができないから修学旅行の日に当たって砕けるつもりだったんだぞ?
今の状況は、かなりきつい。
「これってさ。どう考えても、チャンスだろ」
「どこが……」
「霧風はさ。拓真だけに、打ち明けたんだぜ?」
海斗は脈アリだと俺を勇気づけてくるけど、楽観視しすぎだ。
たまたま最初に俺のことを見つけたから、声をかけてきただけで……。
俺があそこに居なくても。
遅刻ギリギリに見かけた知り合いへ、打ち明けていたに決まってる。
「どうすればいいんだよ。これから……」
「だから、言ってるじゃねぇか。このまま、ガンガン行くしかねぇの!」
海斗は俺の肩を勢いよくたたくと、頑張れと笑顔で背中を押した。
ほんと、いいよな。
幼馴染のことが好きな海斗は、俺みたいに悩む必要がないんだから。
「早く俺を、安心させてくれよ。あっちもこっちも面倒見ることになって、大変なんだからな?」
海斗は俺だけじゃなくて、委員長の恋愛相談も受けている。
あっちは毎日のように会話はできてるけど、距離が縮まらなくて大変らしい。
俺と霧風。
委員長と豊洲。
海斗と小高……。
全員片思いではあるけど、この中だったら間違いなく海斗が一番うまく行っている。
喧嘩ばかりだけど、腐っても幼馴染だからな。
二人の間には、確かな絆がある。
それに比べて、俺達は……。
本当に、涙が出るほど何もなかった。
今日の朝、霧風から話しかけられたことだって、奇跡に近いんだ。
ここから俺が積極的に、あの子と関わっていかなきゃいけないとか……。
心臓が口から飛び出そう。
「ほんと、無理なんだが……」
「何言ってんだよ! やる前から、諦めんなって!」
霧風と海斗は、ちょっと似てる。
明るくて、ポジティブで。
ネガティブな俺とは、全然違う。
そう言うところがまぶしくて。
ずっと一緒にいたいって、思うんだろうな……。
「いくぞー!」
「ちょっと待ってくれ」
「時間は待ってくれないぞ?」
「うわ……っ!」
俺は海斗に引き摺られ、教室へ戻ることになった。
その様子を遠くから眺めながら、ずっと霧風が告白を断るようにと祈っていた。
俺は最低な男だ。
自分のことしか考えてない奴を、霧風が好きになってくれるはずがない。
可能性などないと、自分が一番よく理解しているからこそ……。
俺は大事な時でさえ、行動できないんだ。
「今までフリーだったのが、奇跡に近いからな!?」
「わかってるよ……」
「いいか? 修学旅行が、最初で最後のチャンスだと思わねぇと」
「……もしも。チャンスすら、与えられなかったとしたら?」
――霧風の言葉を、信じるならば。
修学旅行の途中で、俺たちは事故に遭う。
告白なんてする機会すら、与えられないってことだ。
勘弁して欲しい。
「残された時間、がむしゃらにガツガツ行くしかねぇだろ」
「そんなこと言ったって……」
修学旅行までは、今日を含めてあと三日しかない。
ここから霧風と距離を縮めて、想いを通わせるとか……。
一方的に告白するよりも、ハードルが高すぎる。
そもそも、それができないから修学旅行の日に当たって砕けるつもりだったんだぞ?
今の状況は、かなりきつい。
「これってさ。どう考えても、チャンスだろ」
「どこが……」
「霧風はさ。拓真だけに、打ち明けたんだぜ?」
海斗は脈アリだと俺を勇気づけてくるけど、楽観視しすぎだ。
たまたま最初に俺のことを見つけたから、声をかけてきただけで……。
俺があそこに居なくても。
遅刻ギリギリに見かけた知り合いへ、打ち明けていたに決まってる。
「どうすればいいんだよ。これから……」
「だから、言ってるじゃねぇか。このまま、ガンガン行くしかねぇの!」
海斗は俺の肩を勢いよくたたくと、頑張れと笑顔で背中を押した。
ほんと、いいよな。
幼馴染のことが好きな海斗は、俺みたいに悩む必要がないんだから。
「早く俺を、安心させてくれよ。あっちもこっちも面倒見ることになって、大変なんだからな?」
海斗は俺だけじゃなくて、委員長の恋愛相談も受けている。
あっちは毎日のように会話はできてるけど、距離が縮まらなくて大変らしい。
俺と霧風。
委員長と豊洲。
海斗と小高……。
全員片思いではあるけど、この中だったら間違いなく海斗が一番うまく行っている。
喧嘩ばかりだけど、腐っても幼馴染だからな。
二人の間には、確かな絆がある。
それに比べて、俺達は……。
本当に、涙が出るほど何もなかった。
今日の朝、霧風から話しかけられたことだって、奇跡に近いんだ。
ここから俺が積極的に、あの子と関わっていかなきゃいけないとか……。
心臓が口から飛び出そう。
「ほんと、無理なんだが……」
「何言ってんだよ! やる前から、諦めんなって!」
霧風と海斗は、ちょっと似てる。
明るくて、ポジティブで。
ネガティブな俺とは、全然違う。
そう言うところがまぶしくて。
ずっと一緒にいたいって、思うんだろうな……。
「いくぞー!」
「ちょっと待ってくれ」
「時間は待ってくれないぞ?」
「うわ……っ!」
俺は海斗に引き摺られ、教室へ戻ることになった。
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