14 / 58
<2回目>6月4日 まどか視点
松本くんに相談
しおりを挟む
そしたらね?
――やっと学校が、見えてきたよ!
見慣れた駅前の大通りまでやってきたわたしは、少しだけスピードを落としたの。
顔を合わせて今すぐにお話したい男の子が、数メートル先に居たからだよ。
海斗くんとお揃いのストラップを通学鞄につけてるのは、松本くんしかいないもん!
「松本くん……!」
わたしは彼の背後から、大きな声で呼びかけたの。
そしたら、前を歩いていた松本くんは振り返ってくれたんだ。
だけど……。
自転車を立ち漕ぎしているわたしを凝視している彼は、目を丸くしてたの。
どうしたんだろう?
いつもなら、「霧風」って。
優しい声で名字を呼んでくれるのに……。
「一緒に、学校まで行こう!」
「……俺が……?」
「うん! 聞きたいことがあるの!」
わたしは松本くんの隣までやってくると、自転車を降りて隣へ並び立つ。
――よかった。
どうにか、遅刻しないで済みそう……。
ほっと一息つきながら、両手でサドルをしっかりとつかんで、自転車を引く。
隣を並んで歩くことになった松本くんは、なんだか緊張しているみたい。
硬い表情で、下を向きながら。
学校へ向けて……。
歩み始めたのが印象的だった。
「あのね。修学旅行のバスが事故に遭ったこと……覚えてる……?」
松本くんとは、全然目が合わない。
こんな状態で、大切なことを聞く気になんてなれなかったけど……。
とっても大事なことだもん。
モヤモヤしたまま、今日一日過ごしたくないって思ったの。
だから、思い切って問いかけてみたんだ。
「……何言ってるんだ? 修学旅行は、明後日だろ」
そしたらね?
松本くんも、お母さんと一緒で……。
修学旅行のバスが事故に遭ったことを、覚えていないみたい。
――どうしてわたしだけ、あの時のことを覚えているんだろう……?
あれは、悪い夢だったのかなぁ?
でも。身体中に感じた激痛や、耳を塞ぎたくなるような甲高い音は、確かに本物のはずだよ!
考えられる可能性は……。
わたし一人だけ、過去に戻って来ちゃった、とか……?
「ええ……?」
そんな漫画みたいなこと、あるのかなぁ?
自分で思いついても、受け入れられないくらいのことだもん。
『わたし、三日前から戻ってきたの。修学旅行のバスに乗ったら事故に遭って、みんな死んじゃうんだよ!』
――なんて、正直に打ち明けたとしても……。
誰も信じてくれないよね……?
「今日は水曜日。修学旅行の日は、金曜日だぞ」
「うん。それは、知ってるよ?」
「なら、どうしてそんなに不満そうなんだ。俺に言われても、どうにもできないけど」
それはわかってるの。
松本くんに、何かをしてほしかったわけじゃないんだよ。
彼は悪くない。
わたしがバス事故のことを覚えているのが、おかしいだけ……。
「霧風?」
なんだか、悲しくなっちゃった。
わたしはハンドルを両手で強く握り締めて、校門を潜る。
松本くんは徒歩だけど、わたしは自転車通学だから……。
教室へ向かう為には、自転車置き場に行かなきゃ。
「先に行ってて! わたし、自転車を置いてくる!」
こんな所で、泣いちゃ駄目!
わたしは作り笑いを浮かべると、大慌てで自転車置き場へ向かったの。
もうすぐホームルームの開始を告げるチャイムが鳴る頃だから、滑り込みで登校してきた生徒は見当たらない。
ほんとはここで気持ちが落ち着くまで、泣き喚きたかったけど……。
せっかく始業時間までに登校できたんだもん。
サボるなんて、あり得ないよね!
「頑張れ~! わたし……!」
両手で頬をぱちんとたたいて気合を入れると、ダッシュで教室を目指した。
――やっと学校が、見えてきたよ!
見慣れた駅前の大通りまでやってきたわたしは、少しだけスピードを落としたの。
顔を合わせて今すぐにお話したい男の子が、数メートル先に居たからだよ。
海斗くんとお揃いのストラップを通学鞄につけてるのは、松本くんしかいないもん!
「松本くん……!」
わたしは彼の背後から、大きな声で呼びかけたの。
そしたら、前を歩いていた松本くんは振り返ってくれたんだ。
だけど……。
自転車を立ち漕ぎしているわたしを凝視している彼は、目を丸くしてたの。
どうしたんだろう?
いつもなら、「霧風」って。
優しい声で名字を呼んでくれるのに……。
「一緒に、学校まで行こう!」
「……俺が……?」
「うん! 聞きたいことがあるの!」
わたしは松本くんの隣までやってくると、自転車を降りて隣へ並び立つ。
――よかった。
どうにか、遅刻しないで済みそう……。
ほっと一息つきながら、両手でサドルをしっかりとつかんで、自転車を引く。
隣を並んで歩くことになった松本くんは、なんだか緊張しているみたい。
硬い表情で、下を向きながら。
学校へ向けて……。
歩み始めたのが印象的だった。
「あのね。修学旅行のバスが事故に遭ったこと……覚えてる……?」
松本くんとは、全然目が合わない。
こんな状態で、大切なことを聞く気になんてなれなかったけど……。
とっても大事なことだもん。
モヤモヤしたまま、今日一日過ごしたくないって思ったの。
だから、思い切って問いかけてみたんだ。
「……何言ってるんだ? 修学旅行は、明後日だろ」
そしたらね?
松本くんも、お母さんと一緒で……。
修学旅行のバスが事故に遭ったことを、覚えていないみたい。
――どうしてわたしだけ、あの時のことを覚えているんだろう……?
あれは、悪い夢だったのかなぁ?
でも。身体中に感じた激痛や、耳を塞ぎたくなるような甲高い音は、確かに本物のはずだよ!
考えられる可能性は……。
わたし一人だけ、過去に戻って来ちゃった、とか……?
「ええ……?」
そんな漫画みたいなこと、あるのかなぁ?
自分で思いついても、受け入れられないくらいのことだもん。
『わたし、三日前から戻ってきたの。修学旅行のバスに乗ったら事故に遭って、みんな死んじゃうんだよ!』
――なんて、正直に打ち明けたとしても……。
誰も信じてくれないよね……?
「今日は水曜日。修学旅行の日は、金曜日だぞ」
「うん。それは、知ってるよ?」
「なら、どうしてそんなに不満そうなんだ。俺に言われても、どうにもできないけど」
それはわかってるの。
松本くんに、何かをしてほしかったわけじゃないんだよ。
彼は悪くない。
わたしがバス事故のことを覚えているのが、おかしいだけ……。
「霧風?」
なんだか、悲しくなっちゃった。
わたしはハンドルを両手で強く握り締めて、校門を潜る。
松本くんは徒歩だけど、わたしは自転車通学だから……。
教室へ向かう為には、自転車置き場に行かなきゃ。
「先に行ってて! わたし、自転車を置いてくる!」
こんな所で、泣いちゃ駄目!
わたしは作り笑いを浮かべると、大慌てで自転車置き場へ向かったの。
もうすぐホームルームの開始を告げるチャイムが鳴る頃だから、滑り込みで登校してきた生徒は見当たらない。
ほんとはここで気持ちが落ち着くまで、泣き喚きたかったけど……。
せっかく始業時間までに登校できたんだもん。
サボるなんて、あり得ないよね!
「頑張れ~! わたし……!」
両手で頬をぱちんとたたいて気合を入れると、ダッシュで教室を目指した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
【完結】てのひらは君のため
星名柚花
児童書・童話
あまりの暑さで熱中症になりかけていた深森真白に、美少年が声をかけてきた。
彼は同じ中学に通う一つ年下の男子、成瀬漣里。
無口、無表情、無愛想。
三拍子そろった彼は入学早々、上級生を殴った不良として有名だった。
てっきり怖い人かと思いきや、不良を殴ったのはイジメを止めるためだったらしい。
話してみると、本当の彼は照れ屋で可愛かった。
交流を深めていくうちに、真白はどんどん漣里に惹かれていく。
でも、周囲に不良と誤解されている彼との恋は前途多難な様子で…?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ミラー★みらくる!
桜花音
児童書・童話
楠木莉菜、中学一年生。
それはわたしの本来の姿。
わたしは莉菜という存在をずっと見ていた、鏡の中にいる、もう一人のリナ。
わたしは最初から【鏡】の中にいた。
いつから、なんてわからない。
でもそれを嫌だと思った事はない。
だって鏡の向こうの〈あたし〉は楽しそうだったから。
友達と遊ぶのも部活も大好き。
そんな莉菜を見ているのは楽しかった。
でも唯一、莉菜を悩ませたもの。
それは勉強。
そんなに嫌?逃げたくなるくらい?
それならかわってあげられたらいいのに。
その瞬間、わたしと莉菜が入れ替わったの。
【鏡】の中で莉菜を見ていたわたしが、束の間の体験で得るものは……
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
マダム・シレーヌの文房具
猫宮乾
児童書・童話
マダム・シレーヌの文房具という巨大な文房具を使って、突如現実から招かれるマホロバの街で戦っているぼくたち。痛みはないけど、意識を失うか、最後の一人になるまで勝つかしないと、現実には戻れない。ぼくの武器は最弱とからかわれる定規だ。いつも強いコンパスなどに殺されている。ある日、現実世界に戻ってから、「大丈夫か?」と男の子に声をかけられた。※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる