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<2回目>6月4日 まどか視点
過去に戻ってる!
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「まどかったら、ほんっとマイペースなんだから……。誰に似たのかしらね?」
朝早く起きるのが苦手で、やらなきゃいけないことをギリギリまで先延ばしにするのは、お父さんに似たんだよ。
せっかちで、やるべきことをさっさとやりたいタイプのお母さんは、わたしとお父さんを見てるとイライラしちゃうみたい。
だからすぐ、おこりんぼさんになるの。
わたしはいつも、お父さんと一緒に大変そうだなぁって、お母さんを見てる。
そんなにカッカしなくてもいいのにね?
「いくらママチャリを猛スピードで漕げるのが特技だったとしても、事故に遭ったら大変よ? 自転車に乗っていたまどかが、歩行者をひいたなんてことになったら……」
「嫌だなぁ、お母さん。昨日あんなことがあったんだから、学校はお休みでしょ?」
「あんなこと? 何を言っているの?」
「え? お母さん、聞いてないの? 修学旅行に行く途中、バスが事故に遭って……」
「修学旅行は明後日でしょう?」
お母さんはノワールを抱きしめながら、不思議なことをつぶやいたんだ。
――話がかみ合ってないことに気づいたわたしは慌てて、テーブルの上に置かれていたテレビのリモコンを手に取ったの。
ニュース番組には、リアルタイムの時刻が表示されているよね?
その日付を頼りに、事実を確かめようとしたんだ。
六月七日だったら、わたしの言ってることが正しい。
六月四日だったら、お母さんの言うことを信じる。
5チャンネルに合わせたわたしは、画面の右端を食い入るように見つめて――。
『六月四日、水曜日。七時五十分』
――お母さんの言葉が、正しいことを知った。
「うそ……!?」
三日前に、戻ってる!
わたしは信じられない気持ちでいっぱいになりながら、両手で唇を押さえたんだ。
「ほら。だから言ったでしょ。早く行きなさい」
お母さんはどうしてわたしが驚いているのか、よくわかっていないみたい。
肩をすくめると、早く学校へ向かうようにと促して来たんだ。
なんで?
どうして、過去に戻ってるの?
わけわかんない気持ちでいっぱいだったけど……。
このままじゃお母さんの言う通り、学校に遅刻しちゃう!
わたしは急いで朝食を口の中へ押し込むと、リビングを飛び出したんだ。
もう。
なんで先に、制服へ着替えておかなかったの……!?
廊下を経由して二階へつながる階段を駆け上がり、自室へ飛び込む。
一分一秒も、無駄にはできなかった。
どう考えても間に合わない分は、全速力で自転車のペダルを漕いで稼ぐしかないよね!
「行ってきまーす!」
制服に着替えたわたしは通学鞄を手に持って、自室から飛び出して再び階段を駆け降りる。
お母さんに一声かけてから自宅を飛び出して、自転車の座面に勢いよくお尻を乗せたの。
――ここからは、時間との勝負だよ。
両手でサドルをしっかりとつかみ、ペダルの上に立ったわたしは勢いよく自転車を漕ぐ。
信号のある道は、引っかかると大幅なタイムロスになるもんね。
だから、迷路のような住宅街を猛スピードで進んで時間を稼いでいるんだ。
その姿は競輪選手みたいだって羨ましがられる反面、松本くんやお母さんのように危ないからやめた方がいいって言われることもある。
でも……。
遅刻して怒られるよりは、運動にもなるし……。
無理してでもホームルーム開始の時間までに、教室へ滑り込んだ方がいいよね?
そう思ったわたしは、いつものように自転車のペダルを全速力で漕ぎ続けたんだ。
朝早く起きるのが苦手で、やらなきゃいけないことをギリギリまで先延ばしにするのは、お父さんに似たんだよ。
せっかちで、やるべきことをさっさとやりたいタイプのお母さんは、わたしとお父さんを見てるとイライラしちゃうみたい。
だからすぐ、おこりんぼさんになるの。
わたしはいつも、お父さんと一緒に大変そうだなぁって、お母さんを見てる。
そんなにカッカしなくてもいいのにね?
「いくらママチャリを猛スピードで漕げるのが特技だったとしても、事故に遭ったら大変よ? 自転車に乗っていたまどかが、歩行者をひいたなんてことになったら……」
「嫌だなぁ、お母さん。昨日あんなことがあったんだから、学校はお休みでしょ?」
「あんなこと? 何を言っているの?」
「え? お母さん、聞いてないの? 修学旅行に行く途中、バスが事故に遭って……」
「修学旅行は明後日でしょう?」
お母さんはノワールを抱きしめながら、不思議なことをつぶやいたんだ。
――話がかみ合ってないことに気づいたわたしは慌てて、テーブルの上に置かれていたテレビのリモコンを手に取ったの。
ニュース番組には、リアルタイムの時刻が表示されているよね?
その日付を頼りに、事実を確かめようとしたんだ。
六月七日だったら、わたしの言ってることが正しい。
六月四日だったら、お母さんの言うことを信じる。
5チャンネルに合わせたわたしは、画面の右端を食い入るように見つめて――。
『六月四日、水曜日。七時五十分』
――お母さんの言葉が、正しいことを知った。
「うそ……!?」
三日前に、戻ってる!
わたしは信じられない気持ちでいっぱいになりながら、両手で唇を押さえたんだ。
「ほら。だから言ったでしょ。早く行きなさい」
お母さんはどうしてわたしが驚いているのか、よくわかっていないみたい。
肩をすくめると、早く学校へ向かうようにと促して来たんだ。
なんで?
どうして、過去に戻ってるの?
わけわかんない気持ちでいっぱいだったけど……。
このままじゃお母さんの言う通り、学校に遅刻しちゃう!
わたしは急いで朝食を口の中へ押し込むと、リビングを飛び出したんだ。
もう。
なんで先に、制服へ着替えておかなかったの……!?
廊下を経由して二階へつながる階段を駆け上がり、自室へ飛び込む。
一分一秒も、無駄にはできなかった。
どう考えても間に合わない分は、全速力で自転車のペダルを漕いで稼ぐしかないよね!
「行ってきまーす!」
制服に着替えたわたしは通学鞄を手に持って、自室から飛び出して再び階段を駆け降りる。
お母さんに一声かけてから自宅を飛び出して、自転車の座面に勢いよくお尻を乗せたの。
――ここからは、時間との勝負だよ。
両手でサドルをしっかりとつかみ、ペダルの上に立ったわたしは勢いよく自転車を漕ぐ。
信号のある道は、引っかかると大幅なタイムロスになるもんね。
だから、迷路のような住宅街を猛スピードで進んで時間を稼いでいるんだ。
その姿は競輪選手みたいだって羨ましがられる反面、松本くんやお母さんのように危ないからやめた方がいいって言われることもある。
でも……。
遅刻して怒られるよりは、運動にもなるし……。
無理してでもホームルーム開始の時間までに、教室へ滑り込んだ方がいいよね?
そう思ったわたしは、いつものように自転車のペダルを全速力で漕ぎ続けたんだ。
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