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鵜飼忍
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「お兄ちゃん!見て!キービジュアルが出揃ったの!!!」
「おー…」
「お兄ちゃん、反応薄い!」
高校生の鵜飼忍は愛の従兄妹だ。数年に1度顔を出す程度だったのに、愛が余命宣告をされたことを両親から聞いたのだろう。最近は2、3ヶ月に一度学校帰りに病室へ顔を出すようになった。1年に1回が、多いと1年に6回も会いに来るようになったのだ。めんどくさがりなあの忍が見せた変化に、愛は、人って変わるものだなあと思わずにはいられない。
「お兄ちゃんもめっちゃイケメンにしてもらえたんだよ!嬉しくないの!?」
「まー、利益出なきゃ出す意味ねーし…そりゃ、なあ?」
「お兄ちゃんってばお金のことばっかり!」
「そりゃそうだろ。素人の可哀想な女の子の妄想を商品化します、とか。病気盾にした炎上商法かよ。売る方も売る方だし、買う方も買う方だ」
「お兄ちゃん。あのね、原案が余命幾許もない女の子だってことは伏せてもらう約束なの。お金も気にしなくていいって言われてるし、売上の一部はここの小児病棟でも比較的症状が軽い子達の手術費に当ててもらう約束で」
「は?慈善活動のつもりなわけ?」
「違うよ。わたしはただ…」
「あのさ。愛は残されたみんなのためとか言って走り回ってるけど、全然周りにいる奴らの事考えてないよな。俺、この間いい所の坊っちゃんに喧嘩売られたんだけど。付き合ってもないのに年頃の娘さんの病室に入り浸るな、とか。大きなお世話。つーかさ。愛は何人の男誑かしてるわけ?やっぱ死期が近づくと子どもを残したいと思うんかね。よくわかんねーや」
「お兄ちゃん」
「俺を含めたら5人だよな?俺は別に、愛とどうこうなりたいとかねーけど。どいつもこいつも、ゲームの中だけでも添い遂げたいとかさ、キモすぎなんだよ。意味ねえだろ。妄想の中でなら、いくらでもやりたい放題できんのに。わざわざゲームにして全世界に売り捌くたって、死人への冒涜だろ」
忍は愛を元としたゲームの登場人物として出演することにそれほど興味はないらしく、今まで文句の一つも言うことなく静観していたが、ここに来て不満が爆発したらしい。
彼に恋人と勘違いされたことが忍の逆鱗に触れたのか、ここにきてゲームの発売を中止するべきだと怒りを露わにする忍に対して、男性関係についてはどう納得させればいいのか、愛には見当もつかない。「死人への冒涜」に関してだけは当事者である愛にしか向き合えないことなので、しっかりと訂正して納得させなければと声を上げる。
「死人への冒涜じゃないよ。わたしがそうやって望んだんだ。一人でも多くの人に、わたしが生きた証を残したいって」
「だったら!他にもっと方法があったろ!?なんで恋愛シミュレーションゲームなんだよ!なんでゲームの中でも、愛が他の男とイチャイチャしてる所を見せつけられなきゃなんねーの?」
「…イチャイチャ?それは仕方ないよ。そういうゲームだもん」
「ゲームだったら何しても許されんだ」
「ゲームだからね」
「なら、俺との話は俺が1から全部考える」
「それは…どうなんだろう?スタッフさんと相談しないとーー」
「他の奴らをあっと驚かせる仕掛けとインパクト残してケチョンケチョンにしてやんねーと気がすまないんだよ!俺はずっと逃げてばっかで、愛に顔向けできなかった。やっと、逃げてばっかじゃ後悔するって気づいて…行動したって、愛にとって俺はいつまで経ってもお兄ちゃんのままだもんな。恋愛対象じゃない。やってられるか。絶対潰す。特にあの喧嘩売ってきたクソガキだけは絶対許さん」
「お兄ちゃん…?」
なんだかよくわからないけどゲーム制作について意欲を見せたお兄ちゃんは、その場でスタッフに連絡を取り、いかに彼との差を見せつけるかについてを力説してスタッフをドン引きさせていた。
ゲームの制作は順調だ。
愛の病状もまた、急速に悪くなることはなくとも緩やかに進行している。
ゲームが完成するまではどうにか持ってほしい。いや、完成を見届けるまでは死んだりしない。協力してくれたみんなの為にも。
「おー…」
「お兄ちゃん、反応薄い!」
高校生の鵜飼忍は愛の従兄妹だ。数年に1度顔を出す程度だったのに、愛が余命宣告をされたことを両親から聞いたのだろう。最近は2、3ヶ月に一度学校帰りに病室へ顔を出すようになった。1年に1回が、多いと1年に6回も会いに来るようになったのだ。めんどくさがりなあの忍が見せた変化に、愛は、人って変わるものだなあと思わずにはいられない。
「お兄ちゃんもめっちゃイケメンにしてもらえたんだよ!嬉しくないの!?」
「まー、利益出なきゃ出す意味ねーし…そりゃ、なあ?」
「お兄ちゃんってばお金のことばっかり!」
「そりゃそうだろ。素人の可哀想な女の子の妄想を商品化します、とか。病気盾にした炎上商法かよ。売る方も売る方だし、買う方も買う方だ」
「お兄ちゃん。あのね、原案が余命幾許もない女の子だってことは伏せてもらう約束なの。お金も気にしなくていいって言われてるし、売上の一部はここの小児病棟でも比較的症状が軽い子達の手術費に当ててもらう約束で」
「は?慈善活動のつもりなわけ?」
「違うよ。わたしはただ…」
「あのさ。愛は残されたみんなのためとか言って走り回ってるけど、全然周りにいる奴らの事考えてないよな。俺、この間いい所の坊っちゃんに喧嘩売られたんだけど。付き合ってもないのに年頃の娘さんの病室に入り浸るな、とか。大きなお世話。つーかさ。愛は何人の男誑かしてるわけ?やっぱ死期が近づくと子どもを残したいと思うんかね。よくわかんねーや」
「お兄ちゃん」
「俺を含めたら5人だよな?俺は別に、愛とどうこうなりたいとかねーけど。どいつもこいつも、ゲームの中だけでも添い遂げたいとかさ、キモすぎなんだよ。意味ねえだろ。妄想の中でなら、いくらでもやりたい放題できんのに。わざわざゲームにして全世界に売り捌くたって、死人への冒涜だろ」
忍は愛を元としたゲームの登場人物として出演することにそれほど興味はないらしく、今まで文句の一つも言うことなく静観していたが、ここに来て不満が爆発したらしい。
彼に恋人と勘違いされたことが忍の逆鱗に触れたのか、ここにきてゲームの発売を中止するべきだと怒りを露わにする忍に対して、男性関係についてはどう納得させればいいのか、愛には見当もつかない。「死人への冒涜」に関してだけは当事者である愛にしか向き合えないことなので、しっかりと訂正して納得させなければと声を上げる。
「死人への冒涜じゃないよ。わたしがそうやって望んだんだ。一人でも多くの人に、わたしが生きた証を残したいって」
「だったら!他にもっと方法があったろ!?なんで恋愛シミュレーションゲームなんだよ!なんでゲームの中でも、愛が他の男とイチャイチャしてる所を見せつけられなきゃなんねーの?」
「…イチャイチャ?それは仕方ないよ。そういうゲームだもん」
「ゲームだったら何しても許されんだ」
「ゲームだからね」
「なら、俺との話は俺が1から全部考える」
「それは…どうなんだろう?スタッフさんと相談しないとーー」
「他の奴らをあっと驚かせる仕掛けとインパクト残してケチョンケチョンにしてやんねーと気がすまないんだよ!俺はずっと逃げてばっかで、愛に顔向けできなかった。やっと、逃げてばっかじゃ後悔するって気づいて…行動したって、愛にとって俺はいつまで経ってもお兄ちゃんのままだもんな。恋愛対象じゃない。やってられるか。絶対潰す。特にあの喧嘩売ってきたクソガキだけは絶対許さん」
「お兄ちゃん…?」
なんだかよくわからないけどゲーム制作について意欲を見せたお兄ちゃんは、その場でスタッフに連絡を取り、いかに彼との差を見せつけるかについてを力説してスタッフをドン引きさせていた。
ゲームの制作は順調だ。
愛の病状もまた、急速に悪くなることはなくとも緩やかに進行している。
ゲームが完成するまではどうにか持ってほしい。いや、完成を見届けるまでは死んだりしない。協力してくれたみんなの為にも。
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