126 / 149
第三章 ウェルカムキャンプ編
123
しおりを挟む
「ザール様、私がローウェルの魔力源に魔力を送り込んでローウェルの魔力と一体化させてから回復魔法をつかえば、治療できるのではないでしょうか?」
「可能性はないとはいえません。しかし、魔力を一体化させてもアース様の魔力だけがはじかれる可能性がありますし、なにより他人の魔力と一体化させることは難しいと言わざるを得ません。先程述べたように、通常、他人と魔力が交わることはありませんから。たとえできたとしても、回復魔法を行使し治療するには、精神的負担があまりに大きすぎるでしょう。」
「………で、でも、あきらめることはできません。とにかく、可能性がゼロでないなら試して」
「まあ、お待ちください。私は先ほど、通常は他人と魔力は交わらないと申しました。つまり、例外があるのですよ。」
俺が強行しようとすると、ザール様は穏やかな笑みで俺の腕を掴んで、理由を述べながら俺を制した。
例外がある………? つまり、ザール様には心当たりがあるということだろうか?
すると、アルベルト殿下が納得した表情で、あごに手を当てながら声を発した。
「あー、なるほど。サリーヴェか。」
「その通りです、アルベルト殿下。ただ、今から調合するのは現実的ではありませんね。」
「そうだな。今から調達するとなると………尋問部に掛け合うしかないだろうな。俺の権限で用意させよう。………アルフォンス、行け。」
アルベルト殿下に指名されたアルフォンスさんは、了解の意味を込めて跪いた後、颯爽と部屋を出ていった。
………なにやら、上の世代の皆さんでわかり合っているようだけど、俺にはさっぱりわからない。俺は視線をキルに送ってみたが、キルもわからないようで小さく首を振った。
「ザール様。サリーヴェとは何でしょう?」
「サリーヴェとは、貴族院の高学年で調合の仕方を習う液体です。効果は、他人を自分の魔力で染めやすくし、さらに言うと支配下に置くことができます。主な使用用途は2つあります。1つは省きますので、ご自身で習うときに確認してください。もう1つは、犯罪者に対して使います。精神関与系の魔法を直接身体に流したり、記憶をのぞいたりするために用います。」
なるほど。サリーヴェは、今の状況にぴったりの薬のようなものか。これを使えば、ローウェルの魔力回路に俺の魔力を流すことができるようになるから、治療することができるということか。それにしても、もう1つの使用方法とはいったい何だろうか? この場で言わない又は言えない使用方法で、成人間際に調合方法を学ぶことから考えると………いわゆるR18系だろうか? 成人間際ということから考えると、閨関係のことだろう。
………たしか、貴族の子を産むためには父親と母親の両方の魔力を注がなければいけないときいたな。
あー、わかった。夫婦がお互いにサリーヴェをつくって、お互いのサリーヴェを飲んでから、行為に及ぶということか。俺は成人後の記憶があるからなんとなく推測できたけど、キルたちは何のことか多分わからないんだろうな。
もちろん俺も、純粋無垢な貴族院1年生であるから、何もわからないですというような微笑みを浮かべておこう。
ーー
少しすると、アルフォンスさんが優雅かつ素早い身のこなしで戻ってきた。アルベルト殿下にサリーヴェを見せた後に、ローウェルに手渡した。
ローウェルは少し視線をさまよわせた後、ザール様に、「飲めばよろしいのでしょうか?」と尋ねた。
確かに、いきなりよくわからない液体を手渡されても困るよな。
「ええ、すべて飲み切ってください。効果は一日たてば消えるので、日常生活に支障はございません。ちなみに、尋問対象にサリーヴェを使うときは、強制的に投与するのですよ。飲ませるのも一苦労ですからね。」
途中まで感心して聞いていたが、後半部分の話を聞いて俺たちは微妙な顔でお互いを視線を交わし合った。
ザール様には時々、少年のような幼い容姿と発言内容が一致しないことが多いので戸惑ってしまう。
「サリーヴェの話はもういい。ローウェル、サリーヴェ単体では特段意味のないもので水と同じようなものだ。早く飲んでしまえ。」
アルベルト殿下は、パタパタと手を振りながらローウェルに飲むように促した。ローウェルは「かしこまりました。」と言ったあとに、一気にサリーヴェをあおった。
アダルト組の言う通り、サリーヴェを飲んだローウェルには特に何も起こらなかった。
よし、ここからは俺の仕事だ。俺はもう一度ローウェルに上級魔法をかけた。
「お! 今回は回復魔法がはじかれずに、しっかりと魔法回路が治療されてる!」
俺はうれしさのあまり、思わず大きな声を出してしまった。俺が思わず口に手を当てると同時に、キルたちが近くにきて氷鏡を覗き込んだ。
「………本当だ。これを見ると、魔力が溢れずに魔力回路の中を流れているのがよく見える。」
「そうッスね。魔力回路が可視化されていることで、勉強にもなるッスよ。」
「ああ、そうだな。………ローウェルの裸体が見えることが若干気に障るが。」
「気に障るなら、あっちに行ってろよ!」
無事に回復がされたことで、周りの雰囲気も柔らかくなった。
キースとローウェルが、いつものように憎まれ口をたたき合っている。
「可能性はないとはいえません。しかし、魔力を一体化させてもアース様の魔力だけがはじかれる可能性がありますし、なにより他人の魔力と一体化させることは難しいと言わざるを得ません。先程述べたように、通常、他人と魔力が交わることはありませんから。たとえできたとしても、回復魔法を行使し治療するには、精神的負担があまりに大きすぎるでしょう。」
「………で、でも、あきらめることはできません。とにかく、可能性がゼロでないなら試して」
「まあ、お待ちください。私は先ほど、通常は他人と魔力は交わらないと申しました。つまり、例外があるのですよ。」
俺が強行しようとすると、ザール様は穏やかな笑みで俺の腕を掴んで、理由を述べながら俺を制した。
例外がある………? つまり、ザール様には心当たりがあるということだろうか?
すると、アルベルト殿下が納得した表情で、あごに手を当てながら声を発した。
「あー、なるほど。サリーヴェか。」
「その通りです、アルベルト殿下。ただ、今から調合するのは現実的ではありませんね。」
「そうだな。今から調達するとなると………尋問部に掛け合うしかないだろうな。俺の権限で用意させよう。………アルフォンス、行け。」
アルベルト殿下に指名されたアルフォンスさんは、了解の意味を込めて跪いた後、颯爽と部屋を出ていった。
………なにやら、上の世代の皆さんでわかり合っているようだけど、俺にはさっぱりわからない。俺は視線をキルに送ってみたが、キルもわからないようで小さく首を振った。
「ザール様。サリーヴェとは何でしょう?」
「サリーヴェとは、貴族院の高学年で調合の仕方を習う液体です。効果は、他人を自分の魔力で染めやすくし、さらに言うと支配下に置くことができます。主な使用用途は2つあります。1つは省きますので、ご自身で習うときに確認してください。もう1つは、犯罪者に対して使います。精神関与系の魔法を直接身体に流したり、記憶をのぞいたりするために用います。」
なるほど。サリーヴェは、今の状況にぴったりの薬のようなものか。これを使えば、ローウェルの魔力回路に俺の魔力を流すことができるようになるから、治療することができるということか。それにしても、もう1つの使用方法とはいったい何だろうか? この場で言わない又は言えない使用方法で、成人間際に調合方法を学ぶことから考えると………いわゆるR18系だろうか? 成人間際ということから考えると、閨関係のことだろう。
………たしか、貴族の子を産むためには父親と母親の両方の魔力を注がなければいけないときいたな。
あー、わかった。夫婦がお互いにサリーヴェをつくって、お互いのサリーヴェを飲んでから、行為に及ぶということか。俺は成人後の記憶があるからなんとなく推測できたけど、キルたちは何のことか多分わからないんだろうな。
もちろん俺も、純粋無垢な貴族院1年生であるから、何もわからないですというような微笑みを浮かべておこう。
ーー
少しすると、アルフォンスさんが優雅かつ素早い身のこなしで戻ってきた。アルベルト殿下にサリーヴェを見せた後に、ローウェルに手渡した。
ローウェルは少し視線をさまよわせた後、ザール様に、「飲めばよろしいのでしょうか?」と尋ねた。
確かに、いきなりよくわからない液体を手渡されても困るよな。
「ええ、すべて飲み切ってください。効果は一日たてば消えるので、日常生活に支障はございません。ちなみに、尋問対象にサリーヴェを使うときは、強制的に投与するのですよ。飲ませるのも一苦労ですからね。」
途中まで感心して聞いていたが、後半部分の話を聞いて俺たちは微妙な顔でお互いを視線を交わし合った。
ザール様には時々、少年のような幼い容姿と発言内容が一致しないことが多いので戸惑ってしまう。
「サリーヴェの話はもういい。ローウェル、サリーヴェ単体では特段意味のないもので水と同じようなものだ。早く飲んでしまえ。」
アルベルト殿下は、パタパタと手を振りながらローウェルに飲むように促した。ローウェルは「かしこまりました。」と言ったあとに、一気にサリーヴェをあおった。
アダルト組の言う通り、サリーヴェを飲んだローウェルには特に何も起こらなかった。
よし、ここからは俺の仕事だ。俺はもう一度ローウェルに上級魔法をかけた。
「お! 今回は回復魔法がはじかれずに、しっかりと魔法回路が治療されてる!」
俺はうれしさのあまり、思わず大きな声を出してしまった。俺が思わず口に手を当てると同時に、キルたちが近くにきて氷鏡を覗き込んだ。
「………本当だ。これを見ると、魔力が溢れずに魔力回路の中を流れているのがよく見える。」
「そうッスね。魔力回路が可視化されていることで、勉強にもなるッスよ。」
「ああ、そうだな。………ローウェルの裸体が見えることが若干気に障るが。」
「気に障るなら、あっちに行ってろよ!」
無事に回復がされたことで、周りの雰囲気も柔らかくなった。
キースとローウェルが、いつものように憎まれ口をたたき合っている。
236
お気に入りに追加
3,569
あなたにおすすめの小説
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる