異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

文字の大きさ
83 / 179
第二章 初学院編

82

しおりを挟む
「アース………? アース!」


俺が倒れるとキルがすぐに、俺を抱きかかえた。その手はとても震えているように思える。背中が熱いな。傷の影響や血が流れ出ているためだろう。


「すぐに止血を。主、アースの背中を俺の方に向けてください。………主? 主、しっかりしてください!」


ローウェルがそういうも、キルは手を震わすだけで茫然としていた。一刻を争うとわかっていたローウェルは、キルから俺を奪い取るようにして俺の背中を自分の服で圧迫し始めた。



「ヒャッヒャッヒャヒャッヒャッヒャヒャッヒャッヒャ。白髪ガ展開シテイタ魔力ハ、周囲ヲ探知スルモノダロ? ソコニイルヤツハ、透明化ト気配遮断ガ使エル隠密ニ長ケタ魔物ダ。オマエテイドノ探知ニハヒッカカラナイノダ。ヒャッヒャッ。」



そんな能力を持っている奴がいるとは、俺の想像力が足りなかったな。魔力の反応からして、この気色の悪い爬虫類もA級だ。ナレハテといいゴリラといい、特殊な能力を持ったA級が勢ぞろいしているようだ。



「無意味ナ抵抗ゴクロウ。一番強イ白髪ガ戦闘不能トナリ、全体ノ士気モサガッテイルヨウダ。ソレダケデハナク、白髪ガ精神的支柱モ担ッテイタノカ? マアドチラニシロ、我々ガ勝ツノハ最初カラキマッテイタコトダ。ダマッテ食ワレ、辱メラレ絶望シロ、人間。ヒャッヒャッヒャヒャッヒャッ」


ナレハテを筆頭に、周りにいるすべての魔物が俺たちを嘲るように笑い出した。キルは、そして側近のみんなは完全に戦意喪失したようで、その場で茫然としていた。


………ここは、俺の最後の役目のようだな。


「………キル、俺の最後の役目のために力を貸してくれる? 俺の肩を支えてほしい。」

「………いや、それよりもこの血を………」

「お願い。」


俺がそういうと、キルは泣きながら俺の肩を支えてくれた。ごめんね、俺が必ず守るから。支えてくれて、ありがとう。


「人が絶望している姿で笑えるなんて、獣どころか畜生以下だな。」

すると、魔物たちは笑うのをやめて、シ―ンとあたりが静まり返った。そして、ナレハテが首をかしげて、嘲るような表情を浮かべた。


「畜生以下ダト………? ソレハオマエタチノホウダロ。コレカラ我々ノ餌ニナルンダ。アー、ソッチノ赤髪ハコレカラ種馬トナリ玩具ニナルノダ。ヨッポド家畜ラシイナ。ヒャッヒャッ」


「黙れ。その薄汚い口で、俺の大切な仲間のことを口にするな。………それから、みんなは絶対に俺が守る。」


「………ホウ? 死ニカケノオマエニ、イッタイナニガデキルノダ? ソコノ泣クダケノオ荷物タチヲドウヤッテ守ノダ。マッタク、人間トハ口ダケガ達者ナ生キ物ダナ。ヒャッヒャッ」


ナレハテがそういうと、魔物たちは再び嘲るように笑い始めた。キルたちの方を見ると、全員が涙を流していた。


「………確かに、俺達は今回は負けた。それは認めるよ。だけど、お前たちは人間をナメすぎだ。人は、負けから成長する生き物だ。今回負けたキルたちは、次はお前たちに勝つと俺は信じている。それから、人の想いの力というものをお前たちはまだ知らないんだ。凌辱するばかりのお前たちに、理解しろとは言わないけどな。」


「想イノ力ダト? 馬鹿馬鹿シイ。俺ニ言葉ヲ教エサセラレタアノ男ハ、女ノコトヲ思い続ケテイタヨウダガ、結局ハ死ンダゾ? ソレニ、次ハ勝ツト信ジテイルダト? ………オマエハ相当頭ガ悪イヨウダナ。次ナンテ、オマエラニハナイ。オマエタチハ、ココデオワリダ。」


「その次を、俺がつくると言っているんだ。俺の想いをナメるなよ、魔物ども。」



俺がそういうと、キルが俺の手を握って泣きながら訴えてきた。俺の手を握る手は、かなりふるえている。


「………アース、もうしゃべらないでくれ。血が、血が止まらないんだ………。」



俺の意識もほとんどなくなってきたな………。だけど、最後まで俺は役目を全うするんだ。俺はほとんどなくなってきた握力で、キルの手をしっかりと握り返して微笑んだ。


「ごめんね、キル。………ありがとう。」


この状況で、上級魔法を悠長にローウェルに教えてもらっている時間はない。この最悪な状況を一気に打開するためには、もうあれしかない。………そう、俺の残された最後の属性の召喚魔法だ。

前に俺の血で試したときには成功しなかった。だけど、その時に少し反応があったのだ。ということは、方向性は間違っていないはずだ。その時に成功しなかったのは、何かしらの条件が足りなかったと考えられる。その条件について正解はわからないけど、今試せるものがある。それは、血の量だ。あのときは血が少なすぎて成功しなかったのかもしれないけど、今ならいやでも大量の血が流れている。そして今回は血だけではなく、俺の尽きかけの命も代償に加えてやる。今なら、魔物どもも完全に勝利を確信して油断している。

………絶対に成功させてやる。俺は大きく息を吸い込んだ。


「俺のすべてを代償にくれてやる。だから、この状況を打開できるのならだれでもいい! 俺の呼びかけに応えてくれ!」


その瞬間、何かがずれた感覚があった。だけど、ずれただけであと少し何か足りないようだ。あと一歩、足りないそんな感覚に襲われた。

なんだ、何が足りないんだ。俺に出せるすべてを代償に出すと言ったんだ、これ以上何を………。

その瞬間、キルの胸元が赤く光り出した。そして、指輪がふわりと自然に宙に浮かんだ。これは………指輪から魔力が流れ込んでくるのを感じる。指輪から流れ込んでくるということは、ヴィーナ様の魔力のようだ。そうか、足りなかったのは俺の魔力の残量だったのか………。数日連続使用した魔力展開による感知や、今回の戦闘によって俺の魔力は相当量が削れてしまっていたようだ。

ヴィーナ様。あの時の約束を果たしてくださり、ありがとうございます。必ず、皆を守ります。俺は受け取った魔力を展開した。


「オイ、オマエナニヲヤッテイルンダ? ………スグニ白髪ヲ殺セ!」


ナレハテの怒号で、魔物たちが一斉に襲い掛かってきた。すると、何かが開いたような感覚に襲われた。そして、ナニカが現れた。


「退屈しのぎにちょうどいいと思い、久しぶりにこちらに来たはいいけど、死にかけじゃねーかよぉ? ちょっと様子見のつもりだったが、すぐにこちらを去ることになりそうだなぁ。」


もうほとんどよく見えないけど、よくしゃべる何かなのはわかった。とにかく、この状況を打開できる奴だと信じて最後の命令を出して俺の仕事は終了だ。



「………主として最初で最後の命令だ。この場にいる魔物をすべて殲滅し、ここにいる俺たちを必ず生きて王都まで連れて行ってくれ。………よろしく頼むな。」


「は? なんで俺がお前なんかの………」

何やらごちゃごちゃと言っているようだけど、俺にはもう時間がないようだ。召喚魔法の主従関係がどうなっているかはわからないけど、命令の拘束力とナニカの責任感を信じるしかなさそうだ。

しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

追放された出来損ないアルファですが、魔力相殺の力で孤高の天才魔術師と最強パーティーを組みました〜二人で無双して下剋上します〜

水凪しおん
BL
名門剣士一族のアルファとして生まれながら、魔力も筋力も乏しく「出来損ない」と冷遇されてきた青年、ルーク。 息苦しい家を飛び出し、冒険者として生きていくことを決意した彼は、森で一人の特級魔術師と出会う。 彼の名はシリウス。 圧倒的な才能と魔力を持つエリートアルファだが、その強大すぎる魔法の余波が味方をも巻き込むため、誰ともパーティーを組めず孤高を貫いていた。 「俺の魔法の余波を消せる人間なんて、今まで一人もいなかった」 ルークが持つ、実家では無用の長物と見なされていた精密な「魔力相殺」の技術。 それは、シリウスの破壊的な魔力を完璧にコントロールするための唯一の鍵だった。 交わることのない波長。欠けた器と、あふれすぎる中身。 いびつな二つの歯車は互いの弱点を補い合い、完璧な連携で次々と規格外の魔物を討伐していく。 アルファ同士という本能の反発を越え、対等な関係で背中を預け合ううちに、二人の間には深く熱い絆が芽生え始める。 やがて、ルークを連れ戻そうと迫る冷酷な実家の兄。 圧倒的な武力を誇る一族の刺客を前に、ルークとシリウスは真の共鳴を果たし、運命の逆転劇を巻き起こす――。 家柄やオメガバースの運命にとらわれない。 これは、無能と蔑まれた青年と孤独な魔術師が、互いの魂を救済し、世界でただ一つの最強のパートナーシップを築き上げるまでの下剋上ファンタジー。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

有能副会長はポンコツを隠したい。

さんから
BL
2.6タイトル変更しました。 この高校の生徒会副会長を務める僕・東山 優真は、普段の仕事ぶりから次期生徒会長の最有力候補と言われている。……んだけど、実際は詰めの甘さやうっかりミスを根性論でカバーしてきたポンコツだ。 こんなに頑張れているのは、密かに思いを寄せている安西生徒会長のため。 ある日、なんの奇跡か会長に告白され晴れて恋人同士となった僕は、大好きな人に幻滅されないためにポンコツを隠し通すと決めたけど……!?(内容は他サイト版と同じですが、こちらの方がちょっと読みやすいはずです)

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

処理中です...