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第二章 初学院編

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俺がお礼の言葉を述べると、二人は笑顔でうなずいてくれた。ローウェルたちもきっとつらかっただろう。大切な友人が昔の笑顔を失って、だんだんと周りの声を聴かなくなっていってしまったことが……。

友人に対する心無い言葉や態度が、キルを傷つけると同時に、ローウェルたちも傷つけていたのだろう。その傷を少しでもいやすことができたのなら、俺としてはすごくうれしい。


「だってよ、キース。そろそろアースに対する態度を改めないと、今後はもっと難しなるぜ。俺たちは主に何もできなかったと後悔していたけど、少しは力になれていたみたいだ。それでもまだ、アースのことを………いや、自分のことを認められないか? 何もできなかった過去の自分のことを。」


え? 
後ろを振り向くと、そこには、立ち尽くしているキースがいた。いつの間に………。

何もできなかった自分のことを認められない、俺ではなく………。
そういうことか。きっと、キースはキルのことを大切にしているからこそ、キルを引き戻せなかったことに責任を人一倍感じていたのだろう。そこに見ず知らずの俺がキルにのもとに現れた。その俺がキルを引き戻したと知り、キルが前のキルに戻ってうれしい反面、何もできなかった自分が許せなかった。その怒りを俺にぶつけていたわけか。

確かに子供のころから一緒にいたキースたちからすると、俺はポットでの結果だけ奪ったやつだ。印象が悪くなっても仕方のないことだ。

すると、キースが拳を握りながら、ポツポツと話し始めた。


「………俺は優秀な兄上が羨ましかった。その兄上と比べられ、剣術が上達しない俺は自分を責め続けた。そんな時に殿下が、俺は俺でいいと言ってくれた。その言葉に俺は救われたんだ。だから、この人のために剣を振ろうと思った。だけど、殿下が成長し人との交流が増えていくほど、殿下に対する悪意は増えていった。俺は………、俺は何もできなかった。俺はお前が憎いんじゃないんだ。認めたくないわけじゃなんだ。俺が認められず、受け入れられないのは、俺自身だ。だけど、お前の言うことが本当ならば、少しは俺も殿下の役に立てていたのかもしれないな………。殿下を引き戻してくれてありがとう。今まですまなかった。」



キースはそういうと、深々と頭を下げた。自分の非を認めて誠心誠意に謝罪するのは、大人でもできるものは少ない。それを八歳という年で………。そして、これまでのキースの苦悩を考えると心が痛む。だからこそ、これからは皆に笑って過ごしてほしい。


「キース、顔を上げて。俺は全然気にしていないよ。むしろ、キルに対する忠誠心を見習いたいと思ったくらいだよ。………もう一度言うね。俺の最初の友人をつなぎとめてくれて、ありがとう。」


俺はそういい終わると、顔を上げたキースに手を差し出した。さっきの自己紹介の時、キースだけまだ握手を交わしていないからね。


「………殿下の言う通りで、お前は変な奴だな。」


キースはそういうと、俺の手を握り返してくれた。


「変な奴は余計だよ。………あ、そういえば、キースの好きな料理をまだ教えてもらっていないな。キースのおすすめ料理は?」


俺がそういうと、キースはそっぽを向いた。あ、その癖、誰かさんとそっくりだ………。


「………唐揚げ定食。」

「教えてくれてありがとう。早速、明後日食べてみるね。」


そうして俺は、同僚となる側近のみんなに一応認めてもらうことができた。

よかった……。とりあえず、キースと和解することができた。美術室での一件からキースとキルが少しギクシャクしてしまっていたから、これで二人は通常運転に戻ることができるだろう。俺が学院に来たことによって、キルの人間関係を崩すことは何としても避けたいのだ。

よし! 
ここからはしっかりと、側近たる実力を示していけるように実技を頑張ろう!



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