異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

文字の大きさ
上 下
7 / 151
第一章 少年編

6

しおりを挟む
「わかったよ、キル。じゃあ次は………って、もうこんな時間! 使用人たちが心配しているだろうな………。急いで帰らなければ! 帰り道、教えてもらってもいい?」


「いや、まだ休んでいた方が良いんじゃないか?」


確かに、二人の心配はわかるがこのまま遅くなれば俺が今までどこにいたのかが問題になるはずだ。使用人や家族に余計な心配をかけたくないし、二人も人目には触れたくないだろう。



「すぐに帰って寝れば大丈夫だよ。これ以上遅くなると、俺が今までどこにいたのかが問題になってしまう。そうなれば、二人は困るよね? 俺はまたここに来たいし、今日はもう帰るよ。明日は念のため休むとして、明後日また来て良い?」



二人はやはり、家には知られたくないようで渋々ながら頷いた。


「では、私が僭越ながら近くまで背負わせていただきます。これでも一応鍛えていますので、ご心配には及びません。」

鍛えているとか言われると、興奮するからやめてほしい。俺は誘惑に負けて、背負われることにした。







――






そして俺たちは帰途に就いた。俺はイケメンの背中を堪能しようと思っていたのだが、いつの間にか眠ってしまってた。やはり、長距離の移動はまだ体には悪かったらしい。



気が付くと、キルが俺を呼ぶ声で俺は目を覚ました。目を開けると屋敷が見えていた。どうやら、眠っていた間に着いたらしい。


「ごめん、いつの間にか寝ちゃったみたい。アルフォンスさん、ありがとうございました。」


「いえいえ、お気になさらず。」


「アース、明後日も来るんだよな? その………途中で倒れられたら困るから、明後日もここで待ってるから。」


優しいんだけど、それを素直に出せないところがグッとくるな。迷惑かもしれないけど、確かに途中で俺が倒れるほうが方々に迷惑をかけそうだ。ここは素直に、お言葉に甘えよう。



「ありがとう、お言葉に甘えさせてもらうよ。じゃあ、また明後日ね!」


俺は二人に手を振って、急いで屋敷に戻った。そこでは案の定、メイドのマリーを中心に使用人たちはたいそう俺のことを心配してくれていた。俺は風が心地よくて木陰で昼寝をしていたら、いつの間にか眠ってしまい遅くなってしまったと、若干苦しい言い訳をした。使用人たちは渋々ながらも納得してくれたようだったけど、明日は完全休養を言い渡された。キルたちとの予定を明後日にしておいて、本当によかった………。危なく部屋から脱走するとこだった。



俺はその夜、不思議な出会いに思いを馳せていた。キルには聞きたいことがたくさんあるな………。だけど、聞いてもいいことと駄目なことはしっかりと事前に考えなければならない。姓がNGのようだから、家族に関することは駄目そうだよな。兄弟の有無とかは聞いてもいいかな? あとはあの屋敷にいる理由だけど、明らかにお忍びだよな。何か事情があるみたいだし、そこらへんは聞かないようにしよう。となると、やはり初学院のことかな。俺の同級生となる人たちについても聞けるし、魔法や剣術についても聞きたい。魔法は実際に見せてもらいたいな。兄上にお願いしようかと思ったが、俺はためらっていた。病弱ゆえに魔力判定ができないのに、魔法を見て喜んでいたら家族がどう思うのかを考えたら、到底魔法を見せてほしいとお願いすることはできなかった。二人なら、見せてくれるかもしれない。あとは剣術も見てみたいな。あ、そうだ。キルに授業内容とか、歴史や地理の人物の覚え方を聞いてみようか。あとは、礼儀作法とかも教えてもらおうかな。だけどちょっと、図々しいかな………。俺はそのまま眠りについた。










――








そしていよいよ、キルの屋敷に行く日となった。昨日は楽しみすぎて、時間が過ぎるのがとても遅く感じたがようやくこの時が来た。使用人には、「鳥の観察をするから、少し遅くなる」と伝えた。使用人たちは俺の遅くなる発言に難色を示した。確かにこの六年間俺は半分くらいをベッドの上で過ごしている。使用人たちが首を縦に振らないのは道理だ。どうしよう、使用人たちに迷惑はかけたくないしな………。すると、マリーが使用人たちに提案をしてくれた。


「アース様、私がご一緒してもよろしいでしょうか? アース様お一人でなければ、他の皆様も少しはご安心していただけると思います。それに、私個人としましてもアース様には外の世界を見てほしいと思っております。外を歩いているアース様は、部屋の中にいる時よりもお顔が明るいと私は思っております。」



マリー………。幼少のころからいつも俺の面倒を見てくれた、マリー。家族が王都に言っている間も、常に俺のことを聞きかけてくれており、高熱を出したときは一睡もせずに俺の看病をしてくれた。俺はこの人なしでは、生きていなかったかもしれない。そう思えるほどの命の恩人だ。マリーならキルたちのことを話してもいいだろうけど、逆にキルたちは受け入れてくれるかな? 何とかお願いしてみよう。


「マリー、ありがとう。同行をお願いするよ。」

「かしこまりました。」



俺は準備をすると言って、一度部屋に戻った。その際にマリーには事情をすべて話した。事情を聴いてマリーは驚いていたけど、最終的には了承してくれた。


「アース様にも同年代のご友人が必要と存じます。もしもの時は、私が命を張ってアース様をお逃がせいたします。」


「ありがとう。だけど、俺はマリーに死んでほしくはない。キルたちは信頼できると思うから、安心してほしい。」



俺がそういうと、マリーは一瞬嬉しそうな表情を浮かべたが、もしもの時を思い浮かべているようで真剣な表情でうなずいた。









俺は一昨日キルたちと別れた地点までマリーと向かった。。少し早く来すぎたかもしれないな。あ、そうだ。マリーに言っておかなければならないことがあった。


「マリー、一つお願いがあるんだ。俺はキルが何者なのか詮索するつもりはない。おそらく、高位の貴族であることはなんとなく予想がついているんだ。だけど本人が言わないのならば、他の方法で知りたいとは思わない。だから、何かにきづいたとしても俺には言わないでほしいんだ。お願いできるかな?」


「………アース様の望みなら、承知しました。」



また無理なお願いをしてしまったな。だけど、やはり相手の詮索をするのは気が引ける。背景がなんであろうと、目の前にいるキルという人物を見ていたい。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!

ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました! ※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! ※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...