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第4話 尾先茶介は血塗れの怪に挑む
8 袋小路
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他にヒントとなるようなこともなかったので、俺たちはなるべく注意を払いながら特別教室棟の三階まで上り、渡り廊下を通って教室棟の屋上まで向かうことにした。枝高の構造についてはノンが一番詳しいので、彼女が先行する形となっている。その後ろを近野が、そして最後尾に、背後を警戒しながら俺が上ることにした。
教室に現れたあいつは――囚字エリの霊は、音もなくスッと出現した。どれだけ警戒したところで、出くわすときは出くわすのだろう。緊迫した空気の中、俺はどうしても確かめたかったことを、近野に小さな声で問いかける。
「……なあ、近野」
「なんでしょう」
「お前、本当に俺を化かすためだけに、俺の家に来たのか?」
「……」
近野は短い沈黙の後、
「他に、何があるというんですか。……そうでもなければ、私は自分が尾先くんの同級生なんて記憶は植え付けませんし、あんな危ない夜道や、トンネルになんて連れ出したりはしませんよ」
ノンと距離が開いたのに気が付いたのか、それだけ言うと近野は急いで階段を駆け上がる。
「もしそうなら、もっと他にやり方はあったんじゃないのか。わざわざ狐の姿に変えられたなんて言って俺の家に来る必要はなかったし、トンネルにだって、然人にわざわざ話を持ち込ませずに、俺に直接記憶を埋め込めばよかっただろう」
「……その。この後、ビックリドッキリするような、ネタバラシをして驚かせてやろうと思っていたのですよ。尾先くんがひっくり返ってしまうような。それをもって、私の化け狐としての計画は完成する予定だったのです。……だから、えっと、私の計画を邪魔したこの学校の幽霊には、いらっときていたんです。いらっと」
近野はこちらを振り向かずに、まっすぐ階段を駆け上っていく。
「……近野、お前さ」
「……シッ!」
鋭い音が階段を走り抜けた。三階へ向かう階段の頂点で、ノンがこちらを振り返って、人差し指を立てている。
「ここから先は、教室棟に戻るから。……あれが音に反応するのかはわからないけど、用心するに越したことはない……でしょ」
ノンが顔を出した先には、長い渡り廊下が広がっていた。電気が付いていないからか、外は曇天とはいえ窓から入る明かりがとても頼もしく感じる。ノンを先頭に廊下を歩くと、外をポツポツと小雨が降り出しているのに気が付く。あの「赤い床」の日も、落ちた幽霊を追いかけて外に出たとき、このような雨が降り出したのを思い出した。
どこかで出くわすかもと思っていると、実際にそれが出現しなかったときは想像以上に安心するもので、少しだけ拍子抜けした。しかし、このような気持ちはきっと抱いてはいけないのだとも思う。逆の状況……出くわさないと思っていたものに出くわしてしまったときは、今抱いている安心をひっくり返したような緊張に襲われるかもしれないからだ。
「この上よ。上った先の、右の扉」
教室棟は三階までだから、この上にあるのはきっと屋上だ。俺とノンはスマートフォンの明かりを点けて、階段の様子をうかがう。
「……何もいないみたいだな」
「光を当てて、そこにさっきのあれが浮かんでいたら、悲鳴じゃ済まないかも」
三人は、歩調を合わせて階段を上る。踊り場で折り返した先も、特に不審な様子は見当たらなかった。
そのまま階段を上りきると、そこには踊り場程度の広さの空間と、左手にはチェーンの巻かれた扉があった。そして右手には、話題の掃除用具入れ。
「こんなところに、遺書が?」
「……正確には、わからない。けど、昨日と今日で状況が変わった場所といったら、ここくらいしか思いつかない。……あたしとながめの二人でこの掃除用具入れを開けて……そのとき、何か触ってしまったのかも」
俺はノンに代わって、掃除用具入れの扉を開けた。そこにはモップや箒、バケツ、それから掃除機にワックスなどが並んでいて、特に気になるものは入っていない、普通の掃除用具入れのようにしか見えなかった。
「どれ……」
俺はスマホのライトで、中をぐるりと照らしてみた。しかし、気になるようなものは入っていない。もしかしたら壁に張り付いていたりするかもしれない、と中を一通り触ってみたが、特に違和感は感じない。
「なさそうだな、遺書」
「ねえ、尾先。あそこは確認できる?」
ノンは掃除用具入れの上の方の、仕切られた棚を指した。確かに、十五センチほどの高さで区切られており、下からは死角になっている箇所がある。
「……あの上にあるかもしれない、か。確かに、あそこを調べる人間は少ないかもしれないな」
俺はバケツを取り出して、ひっくり返した。そして、その上に足をかけようとした。
その時だった。
「足音がします」
近野が、茶色い耳をピンと立てて言った。
「……この階段を、上ってきます」
幽霊が? わざわざ、階段で……?
「昨日も、あたしはあいつがこの階段を、足音を立てながら上っていくのを追いかけたの。教室の時みたいに、フッと現れないわけ……?」
「思い通りの場所に出現できるのは、四時二十分になった直後だけなのかもしれません。尾先くん、依り代は見つかりましたか?」
近野に急かされて、俺はバケツの上に立った。この位置からも棚の中を覗くことはできなかったが、手だけはしっかりと届く。俺はまだ上がらない右腕に代わり、左手で中をごそごそと探った。
耳に、上履きで階段を上る音がはっきりと聞こえてきた。囚字エリの霊は、もうすぐそばまで上がってきているのかもしれない。焦る気持ちを落ち着かせながら、俺は左手を動かす。
「幽霊がここまで来たら、どうする? 袋小路だよな」
「戦っても勝ち目はありません。尾先くんの右手のように、力を吸い取られてしまうかもしれない。……誰かが倒れたら、その人をかばって逃げ切るのはなかなか難しいでしょう。どうにか、横をすり抜けるくらいしか……」
近野はそう言うが、あまり自信はないようだった。話しながら、少しずつ言葉がしぼんでいくのを感じる。
たん、たん、という音がだんだんと大きくなってくる。頼む、ノンの勘が、今だけは当たっていてくれ……!
すると――。手が、何かに触れた。これは……紙か? そのまま手を動かすが、棚の中に入っているのは、これだけのようだ。
「あったぞ!」
俺が左手を引くと同時に、下の踊り場のところに奴の姿が見えた。俺が今持っているものが遺書なのだとすれば、依り代なのだとすれば、これをどうにかすれば、あれは消えるのだろうか?
引き出したその紙を、スマホのライトで照らす。すると、そこに書いてある文言がはっきりと読めるようになり……。
「え?」
「これって……!」
一緒にそれを見ていた近野の顔が青ざめる。
俺が引っ張り出した紙は、名前も知らない誰かの、たった五点の解答用紙だったのである。点数があまりに悪かったが、ごみ箱にも捨てられず、家にも持ち帰れず、ここに隠したのだろうか。だが、そんな推測はどうでもよかった。重要なのは、これが囚字エリの遺書ではありえないということだ。
たん、たん。それは、張り裂けそうな笑顔のまま、階段を上ってくる。踊り場から入る明かりの他には、俺とノンのスマホにしか光源がない。従ってそれは逆光になるのだが、それでも表情がわかるほど、その顔は歪んでいるように思えた。
右手が重くなったように感じる。もう一度あの攻撃を食らって、俺は走ることができるだろうか。……食らう部位にもよるかもしれないが、どこに力が入らなくなっても、まともに動くことはできないだろう。この状況は非常にマズい……!
幽霊との距離が、あと階段四、五段程度になったその時、ジャラジャラと大きな鎖の音がした。直後、右側から強い光がこちらに向かって差し込んでくる。
「尾先、里咲! こっち!」
右手を見ると、先ほどまでチェーンと南京錠で厳重に閉じられていたはずの扉が開いていた。差し込んでいたのは、外の光だ。
「何してんの、早く!」
ノンがこちらに手を差し出している。俺は夢中でその手を掴んだ。強く引っ張られると、吹き飛ぶようにして屋上に転がり出た。転がりながら、近野も屋上に飛び出てくるのが見える。その奥で、幽霊が先ほどまで俺たちがいたあの場所に向かって飛び込んでくるのが見えた。……間一髪だ。
ぽつり、顔の上に雨粒が落ちてきた。
教室に現れたあいつは――囚字エリの霊は、音もなくスッと出現した。どれだけ警戒したところで、出くわすときは出くわすのだろう。緊迫した空気の中、俺はどうしても確かめたかったことを、近野に小さな声で問いかける。
「……なあ、近野」
「なんでしょう」
「お前、本当に俺を化かすためだけに、俺の家に来たのか?」
「……」
近野は短い沈黙の後、
「他に、何があるというんですか。……そうでもなければ、私は自分が尾先くんの同級生なんて記憶は植え付けませんし、あんな危ない夜道や、トンネルになんて連れ出したりはしませんよ」
ノンと距離が開いたのに気が付いたのか、それだけ言うと近野は急いで階段を駆け上がる。
「もしそうなら、もっと他にやり方はあったんじゃないのか。わざわざ狐の姿に変えられたなんて言って俺の家に来る必要はなかったし、トンネルにだって、然人にわざわざ話を持ち込ませずに、俺に直接記憶を埋め込めばよかっただろう」
「……その。この後、ビックリドッキリするような、ネタバラシをして驚かせてやろうと思っていたのですよ。尾先くんがひっくり返ってしまうような。それをもって、私の化け狐としての計画は完成する予定だったのです。……だから、えっと、私の計画を邪魔したこの学校の幽霊には、いらっときていたんです。いらっと」
近野はこちらを振り向かずに、まっすぐ階段を駆け上っていく。
「……近野、お前さ」
「……シッ!」
鋭い音が階段を走り抜けた。三階へ向かう階段の頂点で、ノンがこちらを振り返って、人差し指を立てている。
「ここから先は、教室棟に戻るから。……あれが音に反応するのかはわからないけど、用心するに越したことはない……でしょ」
ノンが顔を出した先には、長い渡り廊下が広がっていた。電気が付いていないからか、外は曇天とはいえ窓から入る明かりがとても頼もしく感じる。ノンを先頭に廊下を歩くと、外をポツポツと小雨が降り出しているのに気が付く。あの「赤い床」の日も、落ちた幽霊を追いかけて外に出たとき、このような雨が降り出したのを思い出した。
どこかで出くわすかもと思っていると、実際にそれが出現しなかったときは想像以上に安心するもので、少しだけ拍子抜けした。しかし、このような気持ちはきっと抱いてはいけないのだとも思う。逆の状況……出くわさないと思っていたものに出くわしてしまったときは、今抱いている安心をひっくり返したような緊張に襲われるかもしれないからだ。
「この上よ。上った先の、右の扉」
教室棟は三階までだから、この上にあるのはきっと屋上だ。俺とノンはスマートフォンの明かりを点けて、階段の様子をうかがう。
「……何もいないみたいだな」
「光を当てて、そこにさっきのあれが浮かんでいたら、悲鳴じゃ済まないかも」
三人は、歩調を合わせて階段を上る。踊り場で折り返した先も、特に不審な様子は見当たらなかった。
そのまま階段を上りきると、そこには踊り場程度の広さの空間と、左手にはチェーンの巻かれた扉があった。そして右手には、話題の掃除用具入れ。
「こんなところに、遺書が?」
「……正確には、わからない。けど、昨日と今日で状況が変わった場所といったら、ここくらいしか思いつかない。……あたしとながめの二人でこの掃除用具入れを開けて……そのとき、何か触ってしまったのかも」
俺はノンに代わって、掃除用具入れの扉を開けた。そこにはモップや箒、バケツ、それから掃除機にワックスなどが並んでいて、特に気になるものは入っていない、普通の掃除用具入れのようにしか見えなかった。
「どれ……」
俺はスマホのライトで、中をぐるりと照らしてみた。しかし、気になるようなものは入っていない。もしかしたら壁に張り付いていたりするかもしれない、と中を一通り触ってみたが、特に違和感は感じない。
「なさそうだな、遺書」
「ねえ、尾先。あそこは確認できる?」
ノンは掃除用具入れの上の方の、仕切られた棚を指した。確かに、十五センチほどの高さで区切られており、下からは死角になっている箇所がある。
「……あの上にあるかもしれない、か。確かに、あそこを調べる人間は少ないかもしれないな」
俺はバケツを取り出して、ひっくり返した。そして、その上に足をかけようとした。
その時だった。
「足音がします」
近野が、茶色い耳をピンと立てて言った。
「……この階段を、上ってきます」
幽霊が? わざわざ、階段で……?
「昨日も、あたしはあいつがこの階段を、足音を立てながら上っていくのを追いかけたの。教室の時みたいに、フッと現れないわけ……?」
「思い通りの場所に出現できるのは、四時二十分になった直後だけなのかもしれません。尾先くん、依り代は見つかりましたか?」
近野に急かされて、俺はバケツの上に立った。この位置からも棚の中を覗くことはできなかったが、手だけはしっかりと届く。俺はまだ上がらない右腕に代わり、左手で中をごそごそと探った。
耳に、上履きで階段を上る音がはっきりと聞こえてきた。囚字エリの霊は、もうすぐそばまで上がってきているのかもしれない。焦る気持ちを落ち着かせながら、俺は左手を動かす。
「幽霊がここまで来たら、どうする? 袋小路だよな」
「戦っても勝ち目はありません。尾先くんの右手のように、力を吸い取られてしまうかもしれない。……誰かが倒れたら、その人をかばって逃げ切るのはなかなか難しいでしょう。どうにか、横をすり抜けるくらいしか……」
近野はそう言うが、あまり自信はないようだった。話しながら、少しずつ言葉がしぼんでいくのを感じる。
たん、たん、という音がだんだんと大きくなってくる。頼む、ノンの勘が、今だけは当たっていてくれ……!
すると――。手が、何かに触れた。これは……紙か? そのまま手を動かすが、棚の中に入っているのは、これだけのようだ。
「あったぞ!」
俺が左手を引くと同時に、下の踊り場のところに奴の姿が見えた。俺が今持っているものが遺書なのだとすれば、依り代なのだとすれば、これをどうにかすれば、あれは消えるのだろうか?
引き出したその紙を、スマホのライトで照らす。すると、そこに書いてある文言がはっきりと読めるようになり……。
「え?」
「これって……!」
一緒にそれを見ていた近野の顔が青ざめる。
俺が引っ張り出した紙は、名前も知らない誰かの、たった五点の解答用紙だったのである。点数があまりに悪かったが、ごみ箱にも捨てられず、家にも持ち帰れず、ここに隠したのだろうか。だが、そんな推測はどうでもよかった。重要なのは、これが囚字エリの遺書ではありえないということだ。
たん、たん。それは、張り裂けそうな笑顔のまま、階段を上ってくる。踊り場から入る明かりの他には、俺とノンのスマホにしか光源がない。従ってそれは逆光になるのだが、それでも表情がわかるほど、その顔は歪んでいるように思えた。
右手が重くなったように感じる。もう一度あの攻撃を食らって、俺は走ることができるだろうか。……食らう部位にもよるかもしれないが、どこに力が入らなくなっても、まともに動くことはできないだろう。この状況は非常にマズい……!
幽霊との距離が、あと階段四、五段程度になったその時、ジャラジャラと大きな鎖の音がした。直後、右側から強い光がこちらに向かって差し込んでくる。
「尾先、里咲! こっち!」
右手を見ると、先ほどまでチェーンと南京錠で厳重に閉じられていたはずの扉が開いていた。差し込んでいたのは、外の光だ。
「何してんの、早く!」
ノンがこちらに手を差し出している。俺は夢中でその手を掴んだ。強く引っ張られると、吹き飛ぶようにして屋上に転がり出た。転がりながら、近野も屋上に飛び出てくるのが見える。その奥で、幽霊が先ほどまで俺たちがいたあの場所に向かって飛び込んでくるのが見えた。……間一髪だ。
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