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チーム戦の終わり

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 プライマチームの陣地では、エレナとリサがアルファチームの猛攻を必死に防いでいた。リサの幻影魔法が敵の目を惑わせ、エレナの回復魔法がチームメイトの疲労を癒していく。

「持ちこたえてくれ……!」

 サラリバンの言葉が終わるか終わらないかのうちに、轟音と共に土壁が崩れ落ちた。粉塵が舞い上がる中、そこに立っていたのはヴァルドだった。

「ふん、こんな壁で俺を止められると思ったか?」

 ヴァルドの全身から、尋常ではない魔力が放たれている。初級者用の武器を持っているにも関わらず、その一撃は土壁を易々と粉砕していた。

 サラリバンは眉をひそめる。

「ヴァルド、相変わらず力任せだな。だが、それだけでは勝てんぞ」

 サラリバンは剣を構え、ヴァルドと対峙する。二人のS級冒険者の間に、一瞬の静寂が流れた。

「くっ、このフラッグ、どこに消えた!?」

 そのとき、森の中から聞こえてきたのはアリアの声だった。彼女の驚異的な速さをもってしても、フラッグの奇妙な動きについていけなかったようだ。

「チッ、あのクソフラッグめ……」

 ヴァルドは歯噛みする。サラリバンはその隙を見逃さなかった。一瞬の動きで、ヴァルドの懐に飛び込む。

「甘いぞ、ヴァルド!」

 サラリバンの剣が、ヴァルドの胸元を掠める。かろうじてかわしたヴァルドだが、その動きには乱れが見えた。

「くそっ……!」

 ヴァルドは後方に跳び、態勢を立て直す。その間にサラリバンは、まるで風のように素早くフラッグに接近する。

「そこです!」

 サラリバンの手が、フラッグに触れた。その瞬間、フラッグの動きが止まる。そして、プライマチームの色に変化した。

 審判の声が響く。

「試合終了! 勝者、プライマチーム!」

 歓声が沸き起こる。プライマチームのメンバーたちは、歓喜の声を上げた。

 ヴァルドは地面を叩き、怒りを露わにする。

「くそっ……お前らはきっちり役割をこなせってんだよ!」

 アリアは静かにため息をつく。

「作戦が強引だったのよ。もっと冷静に対応すべきだったわ」

 試合が終わり、両チームが控室に戻っていく。アルファチームの控室では、重苦しい空気が漂っていた。メンバーたちは互いの顔を見合わせることもできず、沈黙が続いていた。

 その静寂を破ったのは、ヴァルドの荒々しい声だった。

「こんなお遊びはどうでもいい。直接対決できる個人戦ならボコボコにしてやれるんだ。そこで真の力を示してやる」

 ヴァルドの目には、燃えるような闘志が宿っていた。その表情は、まるで野獣のようだった。アリアは静かにため息をつき、ヴァルドを見つめる。

「ヴァルド、もう少し冷静になったほうが……」
「うるさい。俺は冷静なんてクソ食らえだ。力こそが全てなんだ」

 ヴァルドは拳を握りしめ、壁を殴りつける。その衝撃で、控室全体が揺れた。

 個人戦の準備が始まった。各参加者は、それぞれの控室で最後の調整を行っている。

 ヴァルドの控室は、他とは全く異なる雰囲気に包まれていた。彼は激しい動きで、空中に向かって斬撃を繰り出している。その一撃一撃に、尋常ではない魔力が込められていた。ヴァルドの全身から汗が噴き出している。彼の目には狂気に近いものが宿り、その表情は歪んでいた。彼の周りの空気が、まるで恐れおののいているかのように揺れている。

 控室の外では、スタッフたちが慌ただしく動き回っていた。彼らは競技場の最終チェックを行い、観客の誘導を始めている。審判団も、真剣な表情で打ち合わせを行っていた。

「個人戦では、より厳密な判定が必要になります。サラリバン様とヴァルド様の戦いには注意が必要です」

 主任審判の言葉に、他の審判たちも頷く。彼らの表情からは、この大会にかける並々ならぬ決意が感じられた。ついに開始の時が近づいてきた。アナウンスが場内に響き渡る。

「間もなく、S級対抗戦個人戦を開始いたします。参加者の皆様は、準備を整え次第、競技場にお越しください」

 各控室では、最後の調整が行われていた。サラリバンは静かに目を閉じ、深呼吸をする。アリアは身体の各部分の動きを確認し、ガイウスは鎧をしっかりと身につける。

 ヴァルドの控室では、異様な空気が渦巻いていた。彼の周りを、目に見えない力が脈動しているかのようだった。ヴァルドは、じっと自分の手のひらを見つめていた。その瞳には、狂気と歓喜が入り混じっている。

 ヴァルドの指先から、黒い霧のようなものがゆらゆらと立ち昇る。それは、まるで生き物のように蠢いていた。部屋の温度が急激に下がり、壁や床に薄い霜が張り詰めていく。

 ヴァルドは、その黒い霧を手のひらで転がすように操る。霧は彼の意志に従うかのように形を変え、時に鋭い刃となり、時に盾のように広がる。

 ヴァルドは、ゆっくりと立ち上がる。彼の動きに合わせて、部屋中の影が歪むように見えた。彼が一歩踏み出すたびに、床に黒い痕跡が残る。それは、まるで闇そのものが具現化したかのようだった。
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