俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎

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ダンジョンタイムアタックの様子

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 朝日が昇る前、俺たちは既に工房で準備を整えていた。今日はダンジョンタイムアタックの開催日だ。俺たちが作った装備が、実際にどのように使われるのかを確認する絶好の機会でもある。

「ロアンさん、最後の確認です」

 リサが手元のリストを見ながら報告を始めた。

「魔力可視化装置、ダンジョン内通信機器、そして参加者用の特殊装備。配置を把握済みです。私たちの管轄は装備のみですが、必要に応じてヘルプに出ましょう」
「ありがとう、リサ。ガレスとミアは、俺と保守作業に回ってくれ」

 ガレスとミアが頷いた。リサとシルヴィは酒とつまみを売って回る係になっている。工房としての露天でいいと言ったのだが、二人がそうしたいと言ってきたのだ。まあ、より現場に近いところにいたほうが楽しいだろうしな。

 荷物を馬車に積み込みながら、俺は昨夜の夢を思い出していた。異界ダンジョンの球体が、俺に何かを伝えようとしている夢だ。その内容は思い出せないが、何か重要なメッセージが隠されているような気がしてならない。

「ロアン、大丈夫?」

 シルヴィの声に、俺は我に返った。

「ああ、なんでもない。行こう」

 馬車は揺られながら、会場へと向かった。途中、街の様子が目に入る。魔王討伐後、街は急速に発展を遂げていた。新しい建物が次々と建てられ、人々の表情も明るい。今日のイベントへの期待で、街全体が活気に満ちている。

 会場に到着すると、既に多くの人々が集まっていた。参加者たちは緊張した面持ちで準備を整えている。その中には、農夫や商人、主婦など、普段は冒険とは無縁の人々の姿も見える。

「おや、ロアンじゃないか」

 声の主は、壮年の男、冒険者ギルドのマスターだった。

「君たちの装備には、大いに期待しているよ。これで一般の人々も、安全にダンジョン探索を楽しめるはずだ」
「ありがとうございます。最善を尽くしました」

 俺が答えると、マスターは満足げに頷いた。

 準備が整い、ついにダンジョンタイムアタックが始まった。参加者たちは、俺たちが用意した装備を身につけ、順番にダンジョンへと入っていく。

 街の至る所に設置された魔導スクリーンには、参加者たちの様子が映し出されている。これは、俺たちが情報通信局が認可した新しい魔導通信技術によるものだ。街の人々は、息を呑んでその映像に見入っている。

「あれ、あそこにいるのは肉屋のおっさんじゃないか!」
「本当だ! ブッケルのおっさん、序盤早々からあんな装備レア装備を引き当ててるぞ……!」
「だが、フロアが複雑だな。E級からD級の間ってとこじゃねえか」

 街中から驚きの声が上がる。普段は街で見慣れた顔ぶれが、今や勇敢な冒険者として画面に映し出されているのだ。

 ダンジョン内では、参加者たちが俺たちの装備を駆使して進んでいく。『魔力感知ゴーグル』を装着した参加者は、壁に隠された秘密の扉を簡単に見つけ出していた。『軽量化アーマー』を着た参加者は、驚くほどの機動力で魔物を翻弄している。敵からの攻撃を受けても、吹き飛ばされはするが、大きなキズまでは負うことがなかった。

「すごい……あの装備、本当に効果があるんだな」

 ガレスが感心したように呟いた。

 特に注目を集めたのは、見つけたらラッキーのお助けアイテム『多機能ツール』だ。これは、俺が異界ダンジョンでの経験を活かして作った特殊な道具で、状況に応じて形状を変え、様々な用途に使えるものだ。参加者たちは、これを使って巧みにトラップを解除したり、即席の橋を作ったりしていた。

 街の人々は、魔導スクリーンに映し出される映像に熱狂していた。あちこちで歓声が上がり、応援の声が響く。普段は冒険とは無縁だった人々が、画面の中の知人や友人の活躍に一喜一憂している。

「ねえ、ロアン」

 ミアが小さな声で呼びかけてきた。

「この光景、どこか懐かしい気がする」

 俺は驚いて彼女を見た。ミアの目は、遠くを見つめているようだった。

「懐かしい? どういう意味だ?」
「わからない。でも、昔、こんな風に皆で何かを見ていた記憶が……」

 そんな思考を中断させるように、突然の歓声が上がった。画面を見ると、一人の参加者がダンジョンの最深部に到達したところだった。

「やった! あれは……女冒険者のリリーだよ!」
「あっ、名前聞いてるぞ! たしか、C級に挑戦中の新進気鋭じゃなかったか? E級帯への出場はありなのか!?」
「女の参加者がただでさえ少ないんだ。必要だろ。あのキレイな顔が傷つきでもしたら大事だからな。ほれ、応援しろ! イケっ、リリー!」

 街中が興奮の渦に包まれる。女冒険者のリリーが、俺たちの装備を使ってダンジョンの最奥にいるボスと戦っていいるのだ。タコ型の巨大モンスターを相手に、再生する足を切りまくって、動きが鈍くなったところを頭に一刺しする。となりのスクリーンでも最奥にたどり着いたものはいたが、リリーが最奥のアイテムを入手すると、その姿が魔導スクリーンいっぱいに大きく映し出されることになった。

 人々は熱狂的な拍手を送り、続く参加者の記録を追っていた。E級レースが終わると、次はD級のタイムアタックが開催され、最後はC級の踏破をA級冒険者が踏破して見せて終わりとなった。

 あらかじめ用意されていたダンジョンだから、かなりのショートカットが用意されており、本来なら数日かかるということを忘れてもらわないようにしなければならないが、多くの人々が興味を持ったことで今後も町中の装備やアイテムが売れていくことだろう。参加者たちが続々とダンジョンから出てくる。彼らの顔には、達成感と興奮の色が浮かんでいた。

 そんな華々しい光景を眺めていると、イベントの片付けを終えたリサが俺のところにやってきた。

「さきほど、役人のカイル様より伝言があり、三領地との打合せは国家魔導具管理局の会議室で実施することなったそうです」
「そうか。ありがとう」

 早速バックアップのために動いてくれたのか。アイデアを出すだけならまだしも、実際にモノを開発するとなったら予算が必要になるからな。今の流れになってよかったかもしれない。

 ダンジョンタイムアタックも上手くいったし、次の仕事に集中しないとな。
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