俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎

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S級パーティ対抗戦の報せ

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 ドアが開き、リサが顔を覗かせた。その表情には、いつもとは違う緊張感が窺えた。

「ロアンさん、国の役人の方がお見えです。急な来訪とのことですが……」

 俺は一瞬戸惑ったが、すぐに態勢を整えた。

「わかった。すぐに行く」

 俺はガレスに目配せし、応接室へ向かった。部屋に入ると、そこには厳めしい表情の中年の男性が立っていた。

「初めまして、ロアン様。私は国家魔導具管理局のカイルと申します」

 俺は軽く会釈をしながら、相手の言葉に耳を傾けた。

「突然の来訪で申し訳ありません。実は、非常に重要な件でお願いがございまして、直接お伺いいたしました」

 カイルは丁寧に一礼し、封筒を取り出して俺に手渡した。

「こちらをご覧ください」

 俺は封筒を開け、中の書類に目を通した。そこには『ランク別パーティ対抗戦の開催案内』という文字が大きく記されていた。

「これは……?」
「現在、我が国には4組のS級パーティがおります。A級は8組。B級以下は数十とおりますが……。魔王亡き後、高ランクの方々はそれぞれに武術指南や危険地帯探索などで活躍頂いておりますが、強力な相手という者がない現状、戦闘力の低下を懸念しておられるようで。我が国としても、強大な魔物の出現を危惧していないわけではありません。そこで、各パーティを組分けして対抗戦を企画しているのです」

 俺は驚きを隠せなかった。高ランクパーティの対抗戦。それは間違いなく壮大なイベントになるだろう。

「それで、私に何を? 私はすでにパーティを抜けています」
「存じております。我々がロアン様にお願いしたいのは、イベント用の武具や設備の充実なのです。あくまでもイベントですからね。死者を出すわけにはいかない。ルールとそれに見合った仕掛けがなくては」

 カイルは真剣な表情で続けた。

「まずは、明日開催されるパーティ代表者会議にご参加いただきたいのです。この会議では、対抗戦の概要説明や各パーティの意見聴取が行われます」

 俺は思わず眉をひそめた。

「明日ですか? 少し急ではないでしょうか」
「申し訳ありません。しかし、この件の重要性を鑑みて、私自身がお願いに参りました」

 カイルの言葉に、俺は少し考え込んだ。

「実はいま、大口の依頼を抱えておりまして」
「ブレイクウォーター領のことですよね。こちらにも伺いが出ておりますので承知しておりますよ。どちらも負担のないようにバックアップさせていただきますので、ぜひともロアン様のお力添えをいただきたく」

 カイルの言葉に、俺は安堵した。だが、まだ躊躇いは残る。

「なぜ私なのでしょうか? この国には、私以外の技術者は大勢いるはずでは?」
「もちろんその方々にもお声はかけさせていただいております。しかしながら、高ランク帯の戦闘に詳しく、庶民にも認知度のある方となると、そう多くはおりません。ロアン様は限られた候補者の中の一人なのです」

 なるほどな。ダンジョンタイムアタックといい、魔物の脅威がなくなると興行に傾倒しはじめるのか。だが、経済を回し、国民を活気づけるためには必要なことなのかもしれないな。

「わかりました。会議には参加します。ただ、その後の協力については、会議の内容を踏まえて検討させてください」
「ありがとうございます。それで構いません」

 カイルが去った後、俺は深く息を吐いた。明日の会議にはそこにはヴァルドたちも来るはずだ。再会を考えると、複雑な思いが胸をよぎる。

 そのとき、リサとシルヴィが部屋に入ってきた。

「どうだったの?」

 シルヴィが尋ねた。俺は二人に状況を説明した。シルヴィは目を輝かせ、リサは少し心配そうな表情を浮かべた。

「すごいね! ロアン! ……って、それって私も参加するってこと?」
「どうだろう。少なくとも明日は代表者だけの集まりってことだが。いずれ招集がかかるかもしれない」

 シルヴィがまだヴァルドのパーティを抜けたわけじゃない。俺と違って名義だけは冒険者ギルドにS級パーティ所属と登録されたままになっている。

「俺が知っているのはこの国最高の天才と云われた『魔法騎士』サラリバンだけだ。魔法自体もエンチャントも自由自在に使いこなす戦闘の天才でありながら数々の魔法式を構築した学者的天才でもある。俺もかなり魔力回路の構築のために多くの文献で世話になった。ヴァルドはその強気ぶりから『王の剣』として名が与えられていたな」

 だが、ダンジョンでのあの状態を見るに、代表として出てくるのだろうか。ヴァルドのパーティは他のS級と比べても圧倒的に実績が少ないし。実力も立場も、サポート的な役割として当てられるかもしれない。

「他の二組も、『鋼鉄の守護者』『雷神の閃光』と呼ばれていることだけは知ってるぜ。だがよ。そんな実力者たちが本気で戦って大丈夫なのかね?」

 ガレスが言った。

「何か考えがあるんだろ。ともかく、話を聞いてみるしかない」

 そして、俺はシルヴィに向き直った。

「シルヴィ、例のダンジョンのこと、会議の後に詳しく教えてくれないか?」
「そんなタイミングでいいの?」
「ああ。早く行きたくなってきた」
「まあ私はいつでもオッケーだよ。じゃあ準備しとくね」

 シルヴィは楽しそうに工房を出ていった。S級パーティ対抗戦は当事者だというのに、難しいことは考えないタイプだろうな。俺もそうやって楽観的に生きてみたいものだ。

 俺はパーティがS級に上がってからほとんど日を跨がずに追放された。だから、他の高ランクのパーティにどんな人物がいるのかをよく知らない。その人たちに満足してもらえるような装備を作らなければならないのか。

「やっぱり、スキルレベル3……その領域が必要なんじゃないのか……」

 そのためにも、俺は自分自身の進化を早める必要があった。
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