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変わりゆく世界

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 街の復興作業が進む中、俺は鍛冶場で作業を続けていた。

「最近は魔石も高くなったな……」

 俺は呟きながら、手元の魔石を眺める。魔王との戦争で半壊した街々の復興には、大量の魔石が必要だった。魔石があれば、魔法が使えない人でも魔道具や魔装置を使って生産活動ができる。そのため、多くの人々がダンジョンに潜るようになったのだ。

 確かに、魔王討伐後は凶悪なモンスターが減った。だが、D級ダンジョンであったとしても、一般人が入れば命の保証はない。

 ダンジョン管理組織が設立され、ポータルを通じてダンジョンに入るシステムが確立された。彼らは難易度評価やその保証、護衛斡旋などの割引サービスを提供している。しかし、その分のコストは冒険者たちの負担となり、ダンジョンの入場料として、挑むダンジョンのランクが高いほど多くの金を取られる。S級とA級のダンジョンが消えてしまったので、B級ダンジョンはもはやオークションレベルの値の吊り上がりようだ。踏破したところで元が取れるのやら。

「S級パーティも大変そうだな……」

 かつての仲間たちの噂を耳にする。彼らは今や、稀にしか見つからなくなったB級ダンジョンを自力で探し、高純度・高密度の魔石と有用なアイテムを集めることに必死になっている。だが、ダンジョン管理組合が人海戦術でC級とB級のダンジョンを抑えに走っているので、独力で高ランクのダンジョンを探し出すことは不可能に近い。というより運の要素が強すぎて、高ランクのダンジョンを踏破するだけではもう食っていけないのだ。護衛の仕事もここ最近は依頼件数が爆増しているらしいが、強くてもC級ぐらいしかモンスターがいないんじゃ、B級パーティにまでお呼びはかからないってことだ。

 彼らの持つA級装備を売れば一生暮らしていけるだけの金にはなるだろうが、数年挑んでようやく踏破したS級ダンジョンでさえ数個しか手に入らなかったA級装備を、彼らが易々と手放せるはずもない。そのうえ、安い単価で仕事を引き受けることも、無職でいるのもプライドが許さず、古巣のS級パーティたちは必死に身の振る舞い方を模索しているらしい。

 そんな複雑な思いを埒外に追いやって、俺は手元の作業に集中する。レベル2 ダンジョンテーラリングスキル『ダンジョンストラテジスト』、レベル1特殊能力付与スキル『ギアメイカー』。これらのクラフトスキルを発動しながら鍛冶道具を操ると、特殊素材が魔素となって砕けでD級装備に流れていく。そして、金属が形を変えて一回り大きくなり、小さい魔力線の入った斧の姿になった。

「よし、できた!」

 俺が作り上げたのは、特殊な能力を持つ武具だった。魔石を効率的に採掘できる斧や、ダンジョン内での生存率を上げる防具など、どれも冒険者たちにとって必須のアイテムだ。

「これなら、誰でも安全にD級ダンジョンに潜れるはずだ」

 俺の作る装備は、魔法が使えない人でも簡単に扱える。しかも、一般に売られていない特殊な魔道具としての価値もある。

 街の掲示板には、新たな告知が貼られていた。

「ダンジョンが各地で無数に発見される!? ランクは低いみたいだけど……魔王討伐で強大な魔力がダンジョンに分散か」

 俺は驚きの目で告知を読む。無数に存在するダンジョン。それは、冒険者たちにとって希望であると同時に、新たな危険でもあった。

「これからもっとビギナー向けの装備が売れるな」

 決意を新たにし、俺は鍛冶場に戻る。俺は次の装備の製作に取り掛かった。レベル1特殊能力付与スキル『ギアメイカー』とレベル2装備者テーラリングスキル『ハーモナイザー』を組み合わせ、使用者の能力を最大限に引き出す装備の製作を始める。

 わずか数分で、新たな装備が完成した。『適応型エンチャントアーマー』。使用者の能力に合わせて性能が変化する防具だ。クラフトスキルなしにこれを作ろうと思ったら、いったいどれだけの時間をかけ、失敗作の山を築くことになるやら。

「これなら……C級を目指す人間も売れるよな」

 俺は満足げに完成品を眺めた。そして、次の製作に取り掛かる。

「ふう……さすがに疲れてきたな。ってか、素材も魔石も使いすぎた……」

 外では、復興作業の音が鳴り響いていた。新たな時代の幕開けを告げるかのように。
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