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3章 バチェラー2日目
21話 マシューの悪だくみ
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僕の執務室に来た執事は喉に何か詰まったような顔をした。
「なにか喉に詰まった――」
「金庫があと半年ほどで空になります」
執事は僕の言葉をさえぎって、言った。
「喉は、平気か?」
「喉は問題ありません。金庫です。問題は」
「状況を確認したい。僕はお金持ちの男爵だ。あっているか?」
執事は喉に何か詰まったような顔をした。
「やはり、喉――」
「違います。当家は火の馬車に油がまかれ、森に突っこむような状態です」
「その例えのわかりにくさは……喉からきているものか」
執事は額につぶの汗をかいていた。
「暑いのか? 窓をあけようか」
「たしかに、窓をあけたほうが良いようです」
執事は窓をあけて、言いにくそうに、顔をしかめ、喉に何か詰まったような顔をした。
「やはり、暑さではなく、喉か?」
「喉から、いったん、離れましょう。金庫のことをお話ししてもよいでしょうか」
「わかった。しかし、喉は大事だぞ。疎かにはするな」
執事はうなずいたような、首をかしげたような、微妙な角度で首を振った。
「アニマ様が以前当家をおとずれた際、事業計画をたててくださったのです。その件を進めとうございます」
「待て。アニマは演劇をやっていたな。なぜ、事業計画などを立てたんだ? 俳優という仕事は事業計画を立てる仕事なのか」
「当家の歴史、問題点などを注意深く傾聴くださり、それから、なにも言わず、事業計画をその場でかき上げられたのです。こういったことをどこで学ばれたのか伺うと、本で読んだ、と。聞くと膨大な数を読破されていて。できあがったものも素晴らしい計画でした」
「そうだったか。しかしアニマを呼ぶことはできない。ケイティが怒って出て行ってしまったらどうするんだ」
執事はだまった。喉に何か詰まったような顔をしていなかった。
「喉の具合はいいようだな。しかしお前も頭が悪いな。アニマが事業計画を作っているなら、その通りにバーナード領を立て直せばいいだろう」
「計画にはアニマ様の演劇ギルドの給料も入っておりましたし、完成版ができあがる前にアニマ様が屋敷に来なくなったので、続きを相談したいのです。また、あの時と状況がかわって、ケイティ様のその――。ドレスや宝石代が相当な額になっております。それに、最初はみんなアニマ様を怖がっていたですが、屋敷中の使用人と粘り強くコミュニケーションをとってくださり、いつの間にか、みんなアニマ様が好きになってしまいました。いらっしゃらなくなり、さびしくて仕事の指揮も下がっている状態です」
執事は言いたいことを言えたからか、すっきりとした顔をしていた。
「アニマよりもケイティの方が可愛いから、使用人の指揮が上がっている、の間違いだろう? 可愛いは正義だ。復唱してみてくれ。せーの。カワイイは正義だ」
執事は喉に何か詰まったような顔をした。
「喉――。おまえ、まさか、その喉わずらいはケイティがかわいすぎるからか? だめだぞ。ケイティはわたさない」
「よくお考えください。このままでは間違いなく破産です。そうしたらケイティ様はどうなりますか。どうかアニマ様を連れてきていただけないでしょうか」
僕はブロンドの髪をかきむしった。
ケイティの部屋へ行って事情を説明した。
「アニマって女をこの屋敷に連れてきて、お金と領土を管理してもらうってことね。別に……構わないわ」
「ありがとう。さすが僕の可愛いケイティだ」
「その代わり、もっとドレスと宝石が必要ね。アニマって子の立場をわからせるために」
「……わかった。明日、また、商人を呼ぼう」
「なにか喉に詰まった――」
「金庫があと半年ほどで空になります」
執事は僕の言葉をさえぎって、言った。
「喉は、平気か?」
「喉は問題ありません。金庫です。問題は」
「状況を確認したい。僕はお金持ちの男爵だ。あっているか?」
執事は喉に何か詰まったような顔をした。
「やはり、喉――」
「違います。当家は火の馬車に油がまかれ、森に突っこむような状態です」
「その例えのわかりにくさは……喉からきているものか」
執事は額につぶの汗をかいていた。
「暑いのか? 窓をあけようか」
「たしかに、窓をあけたほうが良いようです」
執事は窓をあけて、言いにくそうに、顔をしかめ、喉に何か詰まったような顔をした。
「やはり、暑さではなく、喉か?」
「喉から、いったん、離れましょう。金庫のことをお話ししてもよいでしょうか」
「わかった。しかし、喉は大事だぞ。疎かにはするな」
執事はうなずいたような、首をかしげたような、微妙な角度で首を振った。
「アニマ様が以前当家をおとずれた際、事業計画をたててくださったのです。その件を進めとうございます」
「待て。アニマは演劇をやっていたな。なぜ、事業計画などを立てたんだ? 俳優という仕事は事業計画を立てる仕事なのか」
「当家の歴史、問題点などを注意深く傾聴くださり、それから、なにも言わず、事業計画をその場でかき上げられたのです。こういったことをどこで学ばれたのか伺うと、本で読んだ、と。聞くと膨大な数を読破されていて。できあがったものも素晴らしい計画でした」
「そうだったか。しかしアニマを呼ぶことはできない。ケイティが怒って出て行ってしまったらどうするんだ」
執事はだまった。喉に何か詰まったような顔をしていなかった。
「喉の具合はいいようだな。しかしお前も頭が悪いな。アニマが事業計画を作っているなら、その通りにバーナード領を立て直せばいいだろう」
「計画にはアニマ様の演劇ギルドの給料も入っておりましたし、完成版ができあがる前にアニマ様が屋敷に来なくなったので、続きを相談したいのです。また、あの時と状況がかわって、ケイティ様のその――。ドレスや宝石代が相当な額になっております。それに、最初はみんなアニマ様を怖がっていたですが、屋敷中の使用人と粘り強くコミュニケーションをとってくださり、いつの間にか、みんなアニマ様が好きになってしまいました。いらっしゃらなくなり、さびしくて仕事の指揮も下がっている状態です」
執事は言いたいことを言えたからか、すっきりとした顔をしていた。
「アニマよりもケイティの方が可愛いから、使用人の指揮が上がっている、の間違いだろう? 可愛いは正義だ。復唱してみてくれ。せーの。カワイイは正義だ」
執事は喉に何か詰まったような顔をした。
「喉――。おまえ、まさか、その喉わずらいはケイティがかわいすぎるからか? だめだぞ。ケイティはわたさない」
「よくお考えください。このままでは間違いなく破産です。そうしたらケイティ様はどうなりますか。どうかアニマ様を連れてきていただけないでしょうか」
僕はブロンドの髪をかきむしった。
ケイティの部屋へ行って事情を説明した。
「アニマって女をこの屋敷に連れてきて、お金と領土を管理してもらうってことね。別に……構わないわ」
「ありがとう。さすが僕の可愛いケイティだ」
「その代わり、もっとドレスと宝石が必要ね。アニマって子の立場をわからせるために」
「……わかった。明日、また、商人を呼ぼう」
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