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第二章 死ぬまでにしたい【3】のこと
76話【バルクシュタインside】初めてのアシュフォード家④ ふたりの出会い
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あたしとアシュフォード様は、ベッドに隣同士に座った。
「覚えていてくださって光栄です」
「もちろんです。アーロンがあれからどうなったのか気になっておりましたが、まさか、バルクシュタインだとは」
あたしたちは笑い合う。その瞬間に、いまよりもすこしだけ幼かった顔立ちにもどった気がした。
いまから二年前の春に、アルトメイアの伯爵領にてパーティが行われた。
バラ園が有名で、門を入ると、盛大に咲き誇っていた。濃くて、良い香りに満ちていて、息を思いっきりすいこんだ。
バルクシュタイン家はその数年前に子爵の爵位を買った成金として嫌われていた。まあそれだけではなかったけれど。
あたしは数人の令嬢から裏庭に呼び出された。
「気持ちわるーい! まーた。変な格好しているのね。バルクシュタイン。たしかにみすぼらしいドレスを着てきなさいよとは言ったけど、なめてるわよね」
「申し訳……ありません」
突き飛ばされ、石畳に倒れた。シルクハットが転がる。
取り巻きの令嬢が、ハットを踏み潰した。
「あらっ。ごめんあそばせ。足が滑ってしまいましたわ」
3人の薄ら笑いを心を無にして見ていた。
突き飛ばした令嬢は下品な青筋をたてた。
「いちいち勘に触る女ね。何度言ってもなおらないし、そうね、アンタのようなバカは額をこすりつけて土下座なさいな」
「ど・げ・ざ! ど・げ・ざ!」
取り巻きが調子をつけて、おどける。
あたしは、熱を持った石畳に手のひらをついて、言われたとおりに額をこすりつけようとした。
「まぁっ! アルトメイア帝国でも流行の兆しを見せているとは恐れいります」
そこに、1人の令嬢が立っていた。同い年ぐらいだろうか。あきらかに貴族令嬢とは違う容姿。
白く透きとおった髪に、赤と青のオッド・アイ。
堂々としていて、魅入ってしまう。
神々しい。そう思った。
「なんだ。弱小国の無能魔女もどきじゃない。アンタ、公爵令嬢なんでしょう。でもね、アルトメイアの方が強い国なの。だから、アンタは格下なのよ。わかる?」
「おっしゃるとおりですね。マルクールではいま、土下座が大流行しておりまして。ひとまず土下座さえすれば、許されるという悪習ですね。どうやら、アルトメイアでも流行しているようで驚きました。よろしければマルクール流の土下座、披露させてはいただけませんか」
オッド・アイの令嬢は、綺麗な白いドレスの膝を石畳につけた。
「マルクール王国、照覧の魔女。公爵令嬢であるフェイト・アシュフォードが土下座をいたします。とくと、ご覧くださいませっ!」
アシュフォード様は大声で言って、土下座をしようとした。
「なに、こいつ、気持ち悪いっ」
「人が来るよ。行きましょう」
令嬢たちは去って行った。
あたしたちは互いに土下座の最中で止まっていた。目があい、沈黙が続く。蝶々が優雅にアシュフォード様の手の甲にとまった。
急に、アシュフォード様の肩がガタガタと揺れだした。
蝶は急いで、ジグザグに飛んでいく。
「ど、どうしました?」
あたしは声を低くして言った。
「いまさら怖くなってしまいまして。恐怖を胸いっぱいに詰めこんだご令嬢でしたね」
あたしは目をまるくした。アシュフォード様も目をまるくした。
あたしたちは吹き出し、笑った。あおむけになって、石畳に寝転んで、ずっと笑っていた。
近くのベンチにふたりで座った。
「バラを見ていたら、揉めているのが見えて。ですが、令息と令嬢数人の諍い。わたくしが出ていっては余計話がこじれるかとも思ったのですが。やはり男性の土下座というのは、見るに忍びないもの。止めた後でとがめられてもわたくしの責任と思い、飛びこみました。とはいえ、令嬢の土下座にも違った良さがあると思うので、いつかわたくしも立派な土下座ができるようになりたいのです」
「……。そうですか。えっ? 令嬢の土下座? 良さ? と、とにかく、助かりました。恥ずかしいところを見られてしまいましたね」
後半の話は半分も理解できなかったが、ごまかした。
「わたくしはフェイト・アシュフォードと申します」
ああ、どうしよう。あたしはとっさに言った。
「アーロンとお呼びください。男爵家です」
「ごきげんよう。アーロン。ちなみにわたくしは恥ずかしいなどと思っておりませんよ。あのご令嬢、相当な恐怖の使い手。それを数人で囲まれては、いくら男の子とはいえ、臆するのは普通のこと。わたくしも、ほら。こんなになっております」
手がブルブルと震えていた。
「そんなに怖いなら、助けなくてもよかったのでは?」
「いいえ。見てしまった以上はどんなに恐怖を感じても、そこに飛びこまなくてはなりません」
あたしは自分の姿を見た。黒のタキシードに、泥汚れのついたシルクハット。片眼鏡をかけている。おまけに、黒色の短いかつらを被り、男性のショートカットを模している。
「どうしたら、貴方のように強くなれますか?」
あたしはアシュフォード様を見つめる。
息をのんだ。
なんと神秘な雰囲気なのだろう。
両目の色が違うと、いったいどんな景色が見えているのか。
「わたくしは強くはありませんよ。さきほどのように容姿はいつもバカにされ、無能と罵られるのも慣れました。自分が人と違うということを物心ついた時から嫌でも思い知らされる。辛いと思う時もありました。しかし、わたくしには秘密がありまして。聞きたいですか?」
いたずらっぽく笑うアシュフォード様はほんとうにかわいらしくて。自分が男装をしていることも忘れ、手をにぎってしまう。
「はい、是非!!!!」
勢いのまま、顔を近づけてしまった。顔と耳に熱を感じる。アシュフォード様はあたしを見つめ、言った。
「アーロンはとても、綺麗な顔立ちをしていますね。ドレスを着て、髪を伸ばしたら、評判の美しいご令嬢になれそうです」
あたしはアシュフォード様からからだを離して、口もとを手で隠した。
「そ……そうですね。昔から、女性っぽいと言われて、からかわれました」
「わたくしは好きですよ。女性的も、男性的も関係ない。人として美しいと思います」
にっこりと笑うアシュフォード様から目が離せなかった。
「覚えていてくださって光栄です」
「もちろんです。アーロンがあれからどうなったのか気になっておりましたが、まさか、バルクシュタインだとは」
あたしたちは笑い合う。その瞬間に、いまよりもすこしだけ幼かった顔立ちにもどった気がした。
いまから二年前の春に、アルトメイアの伯爵領にてパーティが行われた。
バラ園が有名で、門を入ると、盛大に咲き誇っていた。濃くて、良い香りに満ちていて、息を思いっきりすいこんだ。
バルクシュタイン家はその数年前に子爵の爵位を買った成金として嫌われていた。まあそれだけではなかったけれど。
あたしは数人の令嬢から裏庭に呼び出された。
「気持ちわるーい! まーた。変な格好しているのね。バルクシュタイン。たしかにみすぼらしいドレスを着てきなさいよとは言ったけど、なめてるわよね」
「申し訳……ありません」
突き飛ばされ、石畳に倒れた。シルクハットが転がる。
取り巻きの令嬢が、ハットを踏み潰した。
「あらっ。ごめんあそばせ。足が滑ってしまいましたわ」
3人の薄ら笑いを心を無にして見ていた。
突き飛ばした令嬢は下品な青筋をたてた。
「いちいち勘に触る女ね。何度言ってもなおらないし、そうね、アンタのようなバカは額をこすりつけて土下座なさいな」
「ど・げ・ざ! ど・げ・ざ!」
取り巻きが調子をつけて、おどける。
あたしは、熱を持った石畳に手のひらをついて、言われたとおりに額をこすりつけようとした。
「まぁっ! アルトメイア帝国でも流行の兆しを見せているとは恐れいります」
そこに、1人の令嬢が立っていた。同い年ぐらいだろうか。あきらかに貴族令嬢とは違う容姿。
白く透きとおった髪に、赤と青のオッド・アイ。
堂々としていて、魅入ってしまう。
神々しい。そう思った。
「なんだ。弱小国の無能魔女もどきじゃない。アンタ、公爵令嬢なんでしょう。でもね、アルトメイアの方が強い国なの。だから、アンタは格下なのよ。わかる?」
「おっしゃるとおりですね。マルクールではいま、土下座が大流行しておりまして。ひとまず土下座さえすれば、許されるという悪習ですね。どうやら、アルトメイアでも流行しているようで驚きました。よろしければマルクール流の土下座、披露させてはいただけませんか」
オッド・アイの令嬢は、綺麗な白いドレスの膝を石畳につけた。
「マルクール王国、照覧の魔女。公爵令嬢であるフェイト・アシュフォードが土下座をいたします。とくと、ご覧くださいませっ!」
アシュフォード様は大声で言って、土下座をしようとした。
「なに、こいつ、気持ち悪いっ」
「人が来るよ。行きましょう」
令嬢たちは去って行った。
あたしたちは互いに土下座の最中で止まっていた。目があい、沈黙が続く。蝶々が優雅にアシュフォード様の手の甲にとまった。
急に、アシュフォード様の肩がガタガタと揺れだした。
蝶は急いで、ジグザグに飛んでいく。
「ど、どうしました?」
あたしは声を低くして言った。
「いまさら怖くなってしまいまして。恐怖を胸いっぱいに詰めこんだご令嬢でしたね」
あたしは目をまるくした。アシュフォード様も目をまるくした。
あたしたちは吹き出し、笑った。あおむけになって、石畳に寝転んで、ずっと笑っていた。
近くのベンチにふたりで座った。
「バラを見ていたら、揉めているのが見えて。ですが、令息と令嬢数人の諍い。わたくしが出ていっては余計話がこじれるかとも思ったのですが。やはり男性の土下座というのは、見るに忍びないもの。止めた後でとがめられてもわたくしの責任と思い、飛びこみました。とはいえ、令嬢の土下座にも違った良さがあると思うので、いつかわたくしも立派な土下座ができるようになりたいのです」
「……。そうですか。えっ? 令嬢の土下座? 良さ? と、とにかく、助かりました。恥ずかしいところを見られてしまいましたね」
後半の話は半分も理解できなかったが、ごまかした。
「わたくしはフェイト・アシュフォードと申します」
ああ、どうしよう。あたしはとっさに言った。
「アーロンとお呼びください。男爵家です」
「ごきげんよう。アーロン。ちなみにわたくしは恥ずかしいなどと思っておりませんよ。あのご令嬢、相当な恐怖の使い手。それを数人で囲まれては、いくら男の子とはいえ、臆するのは普通のこと。わたくしも、ほら。こんなになっております」
手がブルブルと震えていた。
「そんなに怖いなら、助けなくてもよかったのでは?」
「いいえ。見てしまった以上はどんなに恐怖を感じても、そこに飛びこまなくてはなりません」
あたしは自分の姿を見た。黒のタキシードに、泥汚れのついたシルクハット。片眼鏡をかけている。おまけに、黒色の短いかつらを被り、男性のショートカットを模している。
「どうしたら、貴方のように強くなれますか?」
あたしはアシュフォード様を見つめる。
息をのんだ。
なんと神秘な雰囲気なのだろう。
両目の色が違うと、いったいどんな景色が見えているのか。
「わたくしは強くはありませんよ。さきほどのように容姿はいつもバカにされ、無能と罵られるのも慣れました。自分が人と違うということを物心ついた時から嫌でも思い知らされる。辛いと思う時もありました。しかし、わたくしには秘密がありまして。聞きたいですか?」
いたずらっぽく笑うアシュフォード様はほんとうにかわいらしくて。自分が男装をしていることも忘れ、手をにぎってしまう。
「はい、是非!!!!」
勢いのまま、顔を近づけてしまった。顔と耳に熱を感じる。アシュフォード様はあたしを見つめ、言った。
「アーロンはとても、綺麗な顔立ちをしていますね。ドレスを着て、髪を伸ばしたら、評判の美しいご令嬢になれそうです」
あたしはアシュフォード様からからだを離して、口もとを手で隠した。
「そ……そうですね。昔から、女性っぽいと言われて、からかわれました」
「わたくしは好きですよ。女性的も、男性的も関係ない。人として美しいと思います」
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