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第二章 死ぬまでにしたい【3】のこと
49話 リリー・バルクシュタインの回想 アラン殿下との密約
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文化祭より1ヶ月前の話。
「ごきげんよう。リリー・バルクシュタインです」
あたしはアラン殿下に挨拶をした。
「ああ。そこにかけてくれ」
通されたソファーは革がしっかりしていて、なおかつ、座り心地がよかった。金貨20枚ってところか。あたしの商会のやつの方が質がよいな。
アラン殿下の執務室にあたしは呼ばれた。殿下の執事より手紙を頂き、学校帰りに王城へと招かれた。
ウィンストン学園で見かけたことはあったが、話すのは初めてだ。アシュフォード様の婚約者。
プラチナブロンドの髪、蜂蜜色の瞳、色白の肌に、物憂げな表情、絶世の美男子だ。さぞかしモテるのだろうな。
執事がおじぎをし、挨拶をした。あたしへの敵意を隠そうともしない。
「紅茶、お茶、コーヒーをご用意できます」
「ありがとうございます。では、紅茶をいただけますか」
執事はカップをすっと置いて、あたしを値踏みするようにちら、と見た。
「下がってくれ。コナー」
執事のコナーは無表情で部屋を出て行った。
向かいの対となったソファーにアラン殿下はどかっ、と腰をかける。普通のご令嬢なら、ここで舞い上がってしまうのだろうな、とあたしは冷めた目で見ていた。
「単刀直入に言う。君はいくらだ?」
「……はぁ。くるんじゃなかったなぁ」
あたしは返事するのもおっくうになってしまった。
そういうことか。アシュフォード様の件で話がある、そう手紙には書いてあったから、わざわざ王城に出向いた。
「それは、あたしに妾や愛人になれって意味ですか」
あたしはすでに敬意みたいなものは捨ててしまい、足を組んで、姿勢を崩した。
殿下は考え込んだ。
「そうなる、な」
「アシュフォード様が正室で、あたしが側室ってこと」
「いいや。君と婚約する。フェイト……アシュフォード嬢とは、婚約を破棄する」
「あのですね! 理由がわからないのですが!!」
「プラチナブロンドの髪がよかった」
ぱんんんんっっっっっ。
あたしは殿下の頬を思いっきり、ぶっ叩いた。
「キモッッ! 殴っていいですか?」
「いや、もうすでに結構きついのをもらった。さらにもう一発という意味か?」
殿下は無表情で頬を押さえていた。
「すみません。言うよりも先にからだが動いてしまって。あたしも手が痛いので、おあいこですね」
商売人としての微笑をやめた。すでに眉間にみにくい皺ができまくっているだろうが、この馬鹿王子をなんとかしなくてはとあたまを巡らせていた。
「君を選んだ条件は他にもある。君のことは調べさせてもらった。アシュフォード嬢とのつながりまではわからなかったが、とても執着しているのはわかった。そして、君は商人。金でなんとかなると聞いた。それに、この通り、君は俺にまったく興味がなさそうだ。それも都合がよかった」
「女に金でなんとかなるとは、ひどい言い草だと思いませんか? はい、すべての女性を敵に回しました。 王子殿下でなければ殴られてますよ?」
「いや。もう……すでに殴られているのだがな」
あたしはため息をついた。
「で? 選んだ条件ってなんです? あたしの胸やプラチナブロンドの髪がタイプで側室にさせたい変態殿下でないとしたら、どんな意味があるのですか」
「するどいな。あたまもいい。君に声をかけてよかった」
「うるさいなぁ。さっさと話を進めて」
殿下はすこし間をあけて、話した。
「ここでの話は他言無用に願いたい」
「いいですよ。あたしも殿下と二人っきりで話したなんて、知られたくないですし。なんだったら、誓約書でも書きましょうか」
「実は、アシュフォード嬢……照覧の魔女を、隣国のアルトメイア帝国、第二皇子ジョシュア殿下の妃として、迎えたいという旨の書簡を受け取った」
「ごきげんよう。リリー・バルクシュタインです」
あたしはアラン殿下に挨拶をした。
「ああ。そこにかけてくれ」
通されたソファーは革がしっかりしていて、なおかつ、座り心地がよかった。金貨20枚ってところか。あたしの商会のやつの方が質がよいな。
アラン殿下の執務室にあたしは呼ばれた。殿下の執事より手紙を頂き、学校帰りに王城へと招かれた。
ウィンストン学園で見かけたことはあったが、話すのは初めてだ。アシュフォード様の婚約者。
プラチナブロンドの髪、蜂蜜色の瞳、色白の肌に、物憂げな表情、絶世の美男子だ。さぞかしモテるのだろうな。
執事がおじぎをし、挨拶をした。あたしへの敵意を隠そうともしない。
「紅茶、お茶、コーヒーをご用意できます」
「ありがとうございます。では、紅茶をいただけますか」
執事はカップをすっと置いて、あたしを値踏みするようにちら、と見た。
「下がってくれ。コナー」
執事のコナーは無表情で部屋を出て行った。
向かいの対となったソファーにアラン殿下はどかっ、と腰をかける。普通のご令嬢なら、ここで舞い上がってしまうのだろうな、とあたしは冷めた目で見ていた。
「単刀直入に言う。君はいくらだ?」
「……はぁ。くるんじゃなかったなぁ」
あたしは返事するのもおっくうになってしまった。
そういうことか。アシュフォード様の件で話がある、そう手紙には書いてあったから、わざわざ王城に出向いた。
「それは、あたしに妾や愛人になれって意味ですか」
あたしはすでに敬意みたいなものは捨ててしまい、足を組んで、姿勢を崩した。
殿下は考え込んだ。
「そうなる、な」
「アシュフォード様が正室で、あたしが側室ってこと」
「いいや。君と婚約する。フェイト……アシュフォード嬢とは、婚約を破棄する」
「あのですね! 理由がわからないのですが!!」
「プラチナブロンドの髪がよかった」
ぱんんんんっっっっっ。
あたしは殿下の頬を思いっきり、ぶっ叩いた。
「キモッッ! 殴っていいですか?」
「いや、もうすでに結構きついのをもらった。さらにもう一発という意味か?」
殿下は無表情で頬を押さえていた。
「すみません。言うよりも先にからだが動いてしまって。あたしも手が痛いので、おあいこですね」
商売人としての微笑をやめた。すでに眉間にみにくい皺ができまくっているだろうが、この馬鹿王子をなんとかしなくてはとあたまを巡らせていた。
「君を選んだ条件は他にもある。君のことは調べさせてもらった。アシュフォード嬢とのつながりまではわからなかったが、とても執着しているのはわかった。そして、君は商人。金でなんとかなると聞いた。それに、この通り、君は俺にまったく興味がなさそうだ。それも都合がよかった」
「女に金でなんとかなるとは、ひどい言い草だと思いませんか? はい、すべての女性を敵に回しました。 王子殿下でなければ殴られてますよ?」
「いや。もう……すでに殴られているのだがな」
あたしはため息をついた。
「で? 選んだ条件ってなんです? あたしの胸やプラチナブロンドの髪がタイプで側室にさせたい変態殿下でないとしたら、どんな意味があるのですか」
「するどいな。あたまもいい。君に声をかけてよかった」
「うるさいなぁ。さっさと話を進めて」
殿下はすこし間をあけて、話した。
「ここでの話は他言無用に願いたい」
「いいですよ。あたしも殿下と二人っきりで話したなんて、知られたくないですし。なんだったら、誓約書でも書きましょうか」
「実は、アシュフォード嬢……照覧の魔女を、隣国のアルトメイア帝国、第二皇子ジョシュア殿下の妃として、迎えたいという旨の書簡を受け取った」
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