上 下
14 / 107
第一章 死ぬまでにしたい10のこと

14話 どうしてこうなった。

しおりを挟む
「フェイトさん。助けていただいて、ありがとうございま、す」
 ゾーイがわたくしの手を握る。

「か、、かっこいい。フェイトさんは、私の憧れ、です」
 ゾーイの優しい瞳にはうっすらと涙が。

「フェイトさんと、一緒なら、私は怖くない、です」
 いつまでも、こうして手を握っていたかった。


 わたくしは、手をはねのける。


「えっ?」

 とまどう、ゾーイ。

「私、なにか失礼なことを、言いました? 謝りま、す」


「ゾーイさん。イザベラ達だけでなく、貴方のこともはっきりと言わせていただきます」
 淡々と言った。

「えっ」

「ゾーイさんのウジウジしたしゃべり方、オドオドした態度も……実は好きではなかったの。……そんな姿を見て、わたくしはいつも、イライラしておりました」

 ゾーイはわたくしの真意をはかるように目をこらしていた。

 彼女が勇気を出して、イザベラから助けてくれた場面が浮かぶ。


 ゾーイの為に、悲しみを減らす為に。勇気を出して、さあ! 言うのです!!!!


「でも、そんな臆病な貴方が、勇気を出してわたくしを助けてくださったことにいつも感動しておりました。ですが、それも今日まで! これからはわたくしはひとりで――」
 しゃべっている途中に、ふたたびゾーイに手を握られる。

「そ、そういう風に思っていたんですか、はじめて、本音で、お話してます。フェイトさんと、私は、マブダチです!」

 ――えええええっっ! どうしてこうなるんですか! マブダチって俗語で親友という意味、でしたわよね。わたくし、嫌われようと勇気を振りしぼったのですが、なぜ、マブダチへと関係性が深まってしまったのでしょうか!!!! ヴァイオレット様、教えてください。


「私、自分に自信が、なくて。フェイトさんと一緒にいてよいものか、ずっと悩んでいたんで、す。そんな私に、勇気が、あるなんて……嬉しい……いまの言葉は、私、一生、忘れません」

 顔が上気し、瞳がうるうるとしています。
 
 しかたない。ダメ押しです。
 わたくしは扇子で口元を隠す。

「わたくしは、ゾーイさんが嫌いです!」

「ええ。本音で話してくれて嬉しかった。私も、私が、、大嫌い……。でも、フェイトさんが、勇気があるって言って、くれた。いまこの瞬間から、胸をはって、生きていけま、す」

 ゾーイがわたくしを抱きしめる。


 ――わたくし、嫌われようとしましたのに……どうしてこうなった……。



 いままであまり話してこなかったクラスメイトが近寄ってきた。
 

 こ、今度はなんですの!


「みんなイザベラさんたちのこと目に余ってたけど、怖くて言えなくて、すっごいすっきりしたぁぁぁぁぁ! ゾーイさん、アシュフォードさん、よくぞ言ってくれたぁぁぁぁ!」


 いままでほとんど接点のなかったクラスメイトに囲まれ、歓声をあびた。

「み、みなさん。私、が、フェイトさんの初代親友、なのです。フェイトさんを、と、とらないで」
 
 ゾーイがわたくしの前に立ち、クラスメイトを牽制した。

「ゾーイさんもなんか勝手に話しかけづらいって思っていたけど、楽しい人だよね」

 ゾーイとわたくしはクラスから孤立していましたが、みんなと仲良くなれてよかった。


 あれ、これも、ゾーイの悲しみを減らす一環なのでは。

 わたくしがいなくなっても、お友達は残りますもの。


 結果オーライです。
 さて、最後にダメ押ししておきますか。

「みなさん、わたくしはひとり静かに残りの学園生活を送りたいので、明日から話しかけないでくださいね」

 わたくしは扇子で口を隠す。

 これは決まった!!!!!!!!
 もはや、ヴァイオレット様もびっくりの悪役令嬢でございましょう。


 クラスメイトは肩を震わせてたり、歯を食いしばっています。



 わたくしの悪役令嬢ぶりに恐れをなしているに決まっています。




 ようやくわたくしの悪役令嬢は完成したといっていいでしょう!!
  







「わはははははは!」



 えっ! なんでみんな笑っています……の??


「アシュフォードさんって冗談言えたんですね。いつも言葉遣いが綺麗で礼儀ただしいから、ギャップがすごくて。というか、めちゃくちゃ話しかけちゃいますって。いままで、公爵令嬢の超お嬢様だし、王太子妃になられる方なので、話したかったけど、なかなか話しかけづらくて……。今回だって、ゾーイさんとクラスの為に、イザベラさん達、やっつけてくれたんでしょう。めちゃくちゃかっこよかったですよー」


 クラスメイトが笑う。ツボにはいって、笑い転げている人までいる。


 わたくしが笑いをとっている……。


 だれもが恐れる悪役令嬢に、なっているとばかり思っていましたのに。


 悪役令嬢の振りをするたびに、墓穴を掘ってないか。
 帰ったら、死ぬまでにしたいリストの変更をしよう。
 
 イザベラは黙ってクラスの成り行きを見ていた。

 ミラーとウィレムスは立ち上がり、「お、覚えてなさい!」と捨て台詞をはく。



 ミラーたちの方がよっぽど悪役令嬢です。悔しい!!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死が二人を別こうとも。

すずなり。
恋愛
同じクラスに気になる女の子がいる。かわいくて・・・賢くて・・・みんなの人気者だ。『誰があいつと付き合うんだろうな』・・・そんな話が男どもの間でされてる中、俺は・・・彼女の秘密を知ってしまう。 秋臣「・・・好きだ!」 りら「!!・・・ごめんね。」 一度は断られた交際の申し込み。諦めれない俺に、彼女は秘密を打ち明けてくれた。 秋臣「それでもいい。俺は・・・俺の命が終わるまで好きでいる。」 ※お話の内容は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もございません。 ※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※誤字脱字や表現不足などは日々訂正していきますのでどうかご容赦ください。(目が悪いので見えてない部分も多いのです・・・すみません。) ※ただただこの世界を楽しんでいただけたら幸いです。   すずなり。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

幼馴染に冗談で冤罪を掛けられた。今更嘘だと言ってももう遅い。

ああああ
恋愛
幼馴染に冗談で冤罪を掛けられた。今更嘘だと言ってももう遅い。

申し訳ないけど、悪役令嬢から足を洗らわせてもらうよ!

甘寧
恋愛
この世界が小説の世界だと気づいたのは、5歳の頃だった。 その日、二つ年上の兄と水遊びをしていて、足を滑らせ溺れた。 その拍子に前世の記憶が凄まじい勢いで頭に入ってきた。 前世の私は東雲菜知という名の、極道だった。 父親の後を継ぎ、東雲組の頭として奮闘していたところ、組同士の抗争に巻き込まれ32年の生涯を終えた。 そしてここは、その当時読んでいた小説「愛は貴方のために~カナリヤが望む愛のカタチ~」の世界らしい。 組の頭が恋愛小説を読んでるなんてバレないよう、コソコソ隠れて読んだものだ。 この小説の中のミレーナは、とんだ悪役令嬢で学園に入学すると、皆に好かれているヒロインのカナリヤを妬み、とことん虐め、傷ものにさせようと刺客を送り込むなど、非道の限りを尽くし断罪され死刑にされる。 その悪役令嬢、ミレーナ・セルヴィロが今の私だ。 ──カタギの人間に手を出しちゃ、いけないねぇ。 昔の記憶が戻った以上、原作のようにはさせない。 原作を無理やり変えるんだ、もしかしたらヒロインがハッピーエンドにならないかもしれない。 それでも、私は悪役令嬢から足を洗う。 小説家になろうでも連載してます。 ※短編予定でしたが、長編に変更します。

年に一度の旦那様

五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして… しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

婚約破棄後のお話

Nau
恋愛
これは婚約破棄された令嬢のその後の物語 皆さん、令嬢として18年生きてきた私が平民となり大変な思いをしているとお思いでしょうね? 残念。私、愛されてますから…

バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~

スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。 何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。 ◇◆◇ 作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。 DO NOT REPOST.

完 1週間だけ、わたしの彼氏になっていただけませんか? (番外編更新済み!!)

水鳥楓椛
恋愛
 双葉結菜はある日、父に1週間後に顔も名前も知らぬ相手と結婚をするように命じられる。  周辺では有名な名家の生まれである結菜には、一切の選択の余地などない。  だからこそ、結菜は『恋がしたい』という願いを叶えるために、遊び男と名高い月城陽翔に『1週間だけ彼氏になってくれないか』と告白する。  恋人初日から初めてのことに溢れている世界に、結菜は凍え切っていた心を溶かし始める。  けれど、陽翔の行動に少しずつ違和感を感じ始めて………?  結菜の実家で明かされるは悲しき事実。  最後に決めた2人の選択とは………。

処理中です...