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勇者を超える
しおりを挟む「もう、おしまいにするよ。それじゃあ死んでくれよ『ファントムブレイド』」
再び三宅が俺に向けて剣を振るったので、素早く横に躱すが、やはり風切り音がする。見えない飛ぶ斬撃というところか。
だがやはり直線的な攻撃の様で相手の狙いを見定めて躱せばどうという事は無い攻撃だ。
「お前何者だよ。マジで俺の攻撃躱してるのかよ。本当に村人Aか?」
「意味が分からないな『アイスジャベリン』」
俺はお返しに氷の槍を三宅に向けて放ってやった。
「うぉっ! お前……スキルが使えるのか? お前現地人かと思ったらもしかして勇者なのか?」
「違う。俺はブレイブスレイヤーだ」
「は~? 厨二野郎かよ。完全に騙されたぜ! お前どこのグループだよ」
完全に俺の事を勇者と勘違いしている様だが、この際どうでもいい。
剣を構え直し、三宅の元に走る。
「おい! マジかよ。PK野郎か!」
三宅が更にスキルを放ってくる。三宅自身スピードはそれなりにある様に見えるが、剣はただ闇雲に振るっているだけだ。
俺は左右にステップを踏みながら攻撃を躱しながら近づいて行き、三宅に向かって剣を振るう。
「ぐっ……。お前、パワータイプか?」
俺が振るった剣に対して二刀をクロスして受け止めてきたのでそのまま力を込めていくが、どうやら力も俺の方が上らしい。
「お前こそ偉そうにしていたが、完全に初心者勇者じゃ無いのか?」
「ふざけんな、俺はここに来てから一年以上経つんだ! 初心者なんかじゃ無い!」
「それじゃあ、その間ずっとさぼっていたのかそれとも才能が無いのかもな」
俺の言葉に三宅が怒ったのか、先程よりも力を入れて押し返して来ようとするが
やはり俺よりステータスが低い様で俺にはまだ余力が残っている。
「お前本当に何者だよ! クソッ!」
「じゃあ、さっきの続きだ。岡田義親について知っている事を教えてくれないか」
「お前本当に勇者かよ。なんで岡田の事知らないんだよ!」
「俺は勇者では無いからな」
「ふざけんな! 俺のスキルを舐めんな!」
三宅は、俺の剣を受け止めていた二刀の力を弱め、後ろへと飛び退いてから大袈裟に二本の剣を上段に構えてスキルを発動した。
『ダブルファントムブレイド』
三宅は上段に構えた二刀を十字に切って下に振り下ろした。
先程までよりも強い圧を感じたので、俺は大きく左方向に飛び退きながらナイフを投げた。
『トリックorトリート』
俺はナイフをコントロールして三宅の右肩口に突き刺した。
「イッテ~! 刺さってる! 刺さってる!」
ナイフを投げて命中したのだから刺さるのは当たり前だ。こいつはそんな当たり前の事に何を大袈裟に騒いでいるんだ。
俺はナイフをもう一本投げ今度は左の肩口にダメージを与えた。
「イテ~! ふざけんな。イテ~。血が出てる。お前……まじかイテ~」
そう言って大袈裟に騒いで三宅は持っていた剣を二本共に地面へと落としてしまった。
ああ……こいつは本当に戦いの素人だ。勇者のステータスだけを頼りに、今まで好き勝手していたのが戦いを通じて伝わってくる。
「そろそろ終わりにするか……」
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