上 下
52 / 54

勇者を超える

しおりを挟む

「もう、おしまいにするよ。それじゃあ死んでくれよ『ファントムブレイド』」

再び三宅が俺に向けて剣を振るったので、素早く横に躱すが、やはり風切り音がする。見えない飛ぶ斬撃というところか。
だがやはり直線的な攻撃の様で相手の狙いを見定めて躱せばどうという事は無い攻撃だ。

「お前何者だよ。マジで俺の攻撃躱してるのかよ。本当に村人Aか?」
「意味が分からないな『アイスジャベリン』」

俺はお返しに氷の槍を三宅に向けて放ってやった。

「うぉっ! お前……スキルが使えるのか? お前現地人かと思ったらもしかして勇者なのか?」
「違う。俺はブレイブスレイヤーだ」
「は~? 厨二野郎かよ。完全に騙されたぜ! お前どこのグループだよ」

完全に俺の事を勇者と勘違いしている様だが、この際どうでもいい。
剣を構え直し、三宅の元に走る。

「おい! マジかよ。PK野郎か!」

三宅が更にスキルを放ってくる。三宅自身スピードはそれなりにある様に見えるが、剣はただ闇雲に振るっているだけだ。
俺は左右にステップを踏みながら攻撃を躱しながら近づいて行き、三宅に向かって剣を振るう。

「ぐっ……。お前、パワータイプか?」

俺が振るった剣に対して二刀をクロスして受け止めてきたのでそのまま力を込めていくが、どうやら力も俺の方が上らしい。

「お前こそ偉そうにしていたが、完全に初心者勇者じゃ無いのか?」
「ふざけんな、俺はここに来てから一年以上経つんだ! 初心者なんかじゃ無い!」
「それじゃあ、その間ずっとさぼっていたのかそれとも才能が無いのかもな」

俺の言葉に三宅が怒ったのか、先程よりも力を入れて押し返して来ようとするが
やはり俺よりステータスが低い様で俺にはまだ余力が残っている。

「お前本当に何者だよ! クソッ!」
「じゃあ、さっきの続きだ。岡田義親について知っている事を教えてくれないか」
「お前本当に勇者かよ。なんで岡田の事知らないんだよ!」
「俺は勇者では無いからな」
「ふざけんな! 俺のスキルを舐めんな!」

三宅は、俺の剣を受け止めていた二刀の力を弱め、後ろへと飛び退いてから大袈裟に二本の剣を上段に構えてスキルを発動した。

『ダブルファントムブレイド』

三宅は上段に構えた二刀を十字に切って下に振り下ろした。
先程までよりも強い圧を感じたので、俺は大きく左方向に飛び退きながらナイフを投げた。

『トリックorトリート』

俺はナイフをコントロールして三宅の右肩口に突き刺した。

「イッテ~! 刺さってる! 刺さってる!」

ナイフを投げて命中したのだから刺さるのは当たり前だ。こいつはそんな当たり前の事に何を大袈裟に騒いでいるんだ。
俺はナイフをもう一本投げ今度は左の肩口にダメージを与えた。

「イテ~! ふざけんな。イテ~。血が出てる。お前……まじかイテ~」

そう言って大袈裟に騒いで三宅は持っていた剣を二本共に地面へと落としてしまった。
ああ……こいつは本当に戦いの素人だ。勇者のステータスだけを頼りに、今まで好き勝手していたのが戦いを通じて伝わってくる。

「そろそろ終わりにするか……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

処理中です...