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主食はカップラーメン
しおりを挟む「まあ、俺も一応同じクラスだから」
「はい。睦月さんが居てくれるだけで本当に心強いです」
「いや、俺はあんまり役に………」
「睦月さんだけが頼りなんです。見捨てないでください」
「当たり前だ! 俺が依織の事を見捨てる訳がないだろ」
「ありがとう………ござい…ます」
やばい。依織が涙ぐんでいる。俺の不用意な発言が不安にさせたんだ。やってしまった。
だが実際のところ俺が学校で役に立てる事はそれ程多くない気がする。
学校での俺は普通……よりも少し下ぐらいのポジションだ。
クラスに親しい友達と呼べるのは2人。
学校の成績はそれなりに良い方だと思うがクラスではそれは認知されていない。
見た目は自分ではそこそこだと思うのだが、残念ながら女の子に評価された事はない気がする。
現実は厳しく俺はクラスの中ではあまり目立たない存在となっている。
それに対して依織はクラスで断トツに目立つ存在だった。
所謂スクールカーストの頂点トップオブトップ。
彼女の周りには常に人で溢れていたので、記憶を無くしたとはいえすぐに周りの人達が色々と手を尽くしてくれるのが今からイメージできてしまう。
そんな彼女に中の下の俺がしてあげられる事はあるのだろうか?
登下校の道案内と靴箱やロッカー、教室への案内ぐらいはしてあげれると思うが………
「睦月さん、ところで今日のご飯なんですが、どうすればいいですか?」
「あ~、確かカップラーメンが二つあったと思うからそれでも食べる?」
家には食材は一切無いが、かろうじてカップラメーンが二つ残っていたはずだ。備えあれば憂なしと言うが俺を褒めてやりたい。普段1個しか無い事が多いのに今日は二個あった。
二人分あって良かった………
お湯を沸かして二人分の用意をする。
三分待ってから食べ始める。
「久しぶりだからうまいな。やっぱりシーフード味が一番だよ」
「そうですね。おいしいです」
「この味毎日食べても飽きないんだよな」
「そうなんですね」
あれ? 依織がさっきまでと違い何か難しい顔をしている気がする。
「依織どうかした?」
「睦月さん、普段の食事はどうされているのですか? まさかいつもカップラーメンを食べているのでしょうか?」
「いやいや、確かにカップラーメンを食べる事も多いけど、カップ焼きそばも食べるし、スーパーで弁当買ったりもするよ」
あれ? 依織の顔が更に険しくなってる気がする。
「睦月さん。カップラーメンもカップ焼きそばも一緒です。つまり睦月さんは、カップ麺かスーパーのお弁当だけで生活していると言う事でしょうか?」
「まあ、健康の為に週に一回カップサラダは食べてるよ」
「………そうですか。分かりました。今日からはカップ麺もスーパーのお弁当も禁止です」
「え~! いや普通に無理だよ依織。俺の筋肉はカップ麺で出来ているんだ。血はカップ麺のスープで出来ているし心はカップサラダで出来てる」
「………睦月さん、そんな人間はいないです。今日から禁止です。良いですね」
依織が怒った? 初めて怒った依織を見た気がする。学校でも怒った依織を見た記憶が全く無いのに今は完全に怒っている気がする。
俺の冗談が通じなかったのか?
もっと真面目に答えた方が良かったのか?
『俺の主食はカップ麺です』と。
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※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
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