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心のありよう

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どう考えてもわざとやっているとしか思えないな。

「Eランク? こいつが? 若葉さん流石にそれは盛りすぎでしょ。こいつは最低ランクのサバイバーだろ」

いや、お前も昨日まで最低ランクだったんだから人の事言えないだろ。しかも今の俺はFランクだ。

「あなた達はどうしようもありませんね。命を助けてもらったのに凛くんにお礼の一つも言わずに、それですか。人としてどうなんですか? 流石に無いと思います。最低ですね。凛くん行きましょう」
「あ、ああ」

また、葵は俺の為に怒ってくれたんだな。
俺は別に何を言われても気にはしないが、葵がこうして庇ってくれると正直嬉しくて泣いてしまいそうだ。
俺のパートナーである葵は本当に優しい。
この葵の優しさに触れられただけでも今回無理して本田達を助けた意味はあったな。

「え……若葉さん」
「すいませんがもう話しかけないでください。学園でも遠慮していただけますか? では失礼します」

本田達を完全に断ち切り、葵がその場を去ろうとしているので、俺もそれについて一緒に帰る。

「あ~、もう。頭にきました。この前の人と言い、あの人達は常識というものが無いのでしょうか?」
「前のもだけど今回の本田は俺のクラスメイトなんだ。前も言ったけど、俺クラスでは無能者で通ってるから」
「私はそれが許せないんです。凛くんのどこが無能者なんですか? 誰よりもスキルを使いこなしてるじゃ無いですか。学園が始まったら凛くんのクラスで言ってやります」
「それは、やめて。変に目立ちそうだし、それに二年生になったらクラス替えだしね」
「そうですか。でもクラス替えは楽しみですね」

正直、クラスが替わったとしても、俺の立ち位置が変わるとも思えないのでそれ程期待してはいないが、運良く葵と一緒のクラスになれたらいいなとは思う。
しかし、元旦の朝から目一杯働いてしまった。狩り初めからハードだったが、流石にこの後は一日ゆっくりしたい。
部屋に戻ると、葵が遅い朝ごはんを作ってくれた。

「これは………雑煮?」
「お正月ですからね。お餅は買って来たものですけどいかがですか?」
「うん、おいしい。お餅なんか食べるのはいつ以来だろう」
「やっぱりお正月にはお餅ですよね」
「久しぶりに食べたけどいいもんだな。お正月になった実感が湧くよ」
「それはよかったです。作ったかいがあります」

お正月の朝から雑煮を食べる。
これは世間では普通の事なのかもしれないが、俺ひとりなら絶対食べていない。
俺にとっては極めて特別な事で、これも葵と出会ってからの大きな変化の一つだろう。
お正月にテレビを見ているが、これも葵が持って来たままになっているテレビで、本来俺の家ではテレビを見る事は出来なかった。
葵に出会ってから俺の日常の生活がどんどん変わっていく。
今までの俺には無い変化に戸惑う事も多いが、俺にとってはいい事なのだろうと思う。
今までボッチだったのは能力的なものもあるが、俺が自ら人を寄せつけなかったのも大きな理由だ。
寄せつけ無いと言っても、話しかけられれば応じるし聞かれれば答える。ただ心のありようとしておれから人に寄っていく事は無かった。
周りもそんな俺に何か感じるところがあるのだろう、気がつくといつの間にか物理的にもクラスメイトとは距離が出来ていた。
俺の根源にあるもの……
俺は人に裏切られるのが怖い。
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