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種明かし
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それからすぐに屋上に出たが、流石に寒さ厳しい十二月初旬の屋上には誰もいなかった。
「ちょ、ちょっと若葉さん、どうしたんだよ」
「うん、凛くんとちゃんとお話がしたくって」
「え、ま、ああ、そうなんだ……」
ちゃんとお話って何の話をするつもりだ?
俺には若葉さんと話す様な共通の話題は何もないぞ?
「まず、一昨日は本当にありがとうございました。もうダメかと思ったんです。凛くんは命の恩人です。言葉では言い表せないぐらい感謝しています」
「あ、ああ、まあ、たまたまだから気にしなくていいよ。うん」
こんなに真っ直ぐに人から感謝の言葉を向けられたのは生まれて初めてだったので面食らってしまった。
しかも感謝してくれている相手が学園のアイドル若葉葵さんなので、眩しすぎてまともに目を見れない。
「私一昨日はEランクのモンスター一体とFクラスのモンスター一体を相手にしていたんです。それが戦っている間にモンスターが増えてしまって、何とかEランクのモンスターは倒せたのですが、増えたモンスターと合わせて五体を相手にする事になってしまったんです。逃げながら応戦していたのですが、Eランクを倒すのに消耗したのと、数に圧倒されてしまって追い詰められていたところを凛くんに助けていただいたんです」
やっぱりそうか。本来別のターゲットだった俺の相手のモンスターが運悪く合流する形になってしまったのか。やはりFランクのクラスが突然増えるのは想定外だしきついよな。まあなんとか、若葉さんが襲われて怪我する前に俺が到着できて良かったが、それにしても同時に五体はイレギュラー過ぎるな。
「そう、でも気にする事は無いよ。運良く助ける事が出来ただけだし、同じ学園の生徒を見殺しにするわけにもいかなかったからね」
「本当にありがとうございます。凛くんが来てくれなければ私どうなっていたか分かりません」
「まあ、無事でよかったよ。それじゃあもういいかな」
「待ってください。まだお話の途中です」
「ああ、そうなんだ」
「今日はどうしても一昨日のお礼を言いたかったのでちゃんと言えてよかったです。それと質問とお願いがあります」
「質問とお願い?」
「はい。まずは質問ですが、凛くんはクワトロスキルホルダーなのですよね」
「…………うん、ちょっと違うけど」
やっぱり気がつくよな。完全に手の内を晒したもんな……
「でも、四種類のスキルを使用していましたよね」
「まあ、それはそうなんだけど、俺の場合そうじゃないと言うか……」
「それはクワトロスキルホルダーである事を隠していると言う事でしょうか?」
「いやそうじゃないんだけど、今から言う事はあんまり人に言わないって約束してもらえるかな」
「はい、絶対言いません」
「実は俺のオリジナルスキルは一つだけなんだ」
「えっ? でも……」
「うん、それなんだけど俺本来のスキルは『フェイカー』と言うスキルなんだ」
「『フェイカー』ですか? 聞いた事ありません」
「うん、俺も他に持っている人を知らないんだけど、このスキルは他の人のスキルを模倣出来るんだ」
「模倣ですか?」
「うん、そう。威力はかなり落ちちゃうんだけどね。例えば、ちょっと見ててね『エクスプロージョン』」
俺は一昨日模倣した若葉さんの『エクスプロージョン』を空に向かって放った。
「今のは、私の……」
「うん、気分を悪くしたならごめん。若葉さんのスキルを模倣したんだ。それで今俺は『フェイカー』で四つまでのスキルを模倣することが出来るんだ。だから若葉さんには四つのスキルを使いこなしている様に見えたってわけなんだ。種も仕掛けもある感じだよ。若葉さんが考えてたのと違ってがっかりしただろ」
「いえ、他人のスキルを模倣出来るスキル……。しかも四つもですか? すごいです。すごすぎです」
「えっ?」
若葉さんから返された言葉は俺の思っていた返答とは全く違うものだった。
「ちょ、ちょっと若葉さん、どうしたんだよ」
「うん、凛くんとちゃんとお話がしたくって」
「え、ま、ああ、そうなんだ……」
ちゃんとお話って何の話をするつもりだ?
俺には若葉さんと話す様な共通の話題は何もないぞ?
「まず、一昨日は本当にありがとうございました。もうダメかと思ったんです。凛くんは命の恩人です。言葉では言い表せないぐらい感謝しています」
「あ、ああ、まあ、たまたまだから気にしなくていいよ。うん」
こんなに真っ直ぐに人から感謝の言葉を向けられたのは生まれて初めてだったので面食らってしまった。
しかも感謝してくれている相手が学園のアイドル若葉葵さんなので、眩しすぎてまともに目を見れない。
「私一昨日はEランクのモンスター一体とFクラスのモンスター一体を相手にしていたんです。それが戦っている間にモンスターが増えてしまって、何とかEランクのモンスターは倒せたのですが、増えたモンスターと合わせて五体を相手にする事になってしまったんです。逃げながら応戦していたのですが、Eランクを倒すのに消耗したのと、数に圧倒されてしまって追い詰められていたところを凛くんに助けていただいたんです」
やっぱりそうか。本来別のターゲットだった俺の相手のモンスターが運悪く合流する形になってしまったのか。やはりFランクのクラスが突然増えるのは想定外だしきついよな。まあなんとか、若葉さんが襲われて怪我する前に俺が到着できて良かったが、それにしても同時に五体はイレギュラー過ぎるな。
「そう、でも気にする事は無いよ。運良く助ける事が出来ただけだし、同じ学園の生徒を見殺しにするわけにもいかなかったからね」
「本当にありがとうございます。凛くんが来てくれなければ私どうなっていたか分かりません」
「まあ、無事でよかったよ。それじゃあもういいかな」
「待ってください。まだお話の途中です」
「ああ、そうなんだ」
「今日はどうしても一昨日のお礼を言いたかったのでちゃんと言えてよかったです。それと質問とお願いがあります」
「質問とお願い?」
「はい。まずは質問ですが、凛くんはクワトロスキルホルダーなのですよね」
「…………うん、ちょっと違うけど」
やっぱり気がつくよな。完全に手の内を晒したもんな……
「でも、四種類のスキルを使用していましたよね」
「まあ、それはそうなんだけど、俺の場合そうじゃないと言うか……」
「それはクワトロスキルホルダーである事を隠していると言う事でしょうか?」
「いやそうじゃないんだけど、今から言う事はあんまり人に言わないって約束してもらえるかな」
「はい、絶対言いません」
「実は俺のオリジナルスキルは一つだけなんだ」
「えっ? でも……」
「うん、それなんだけど俺本来のスキルは『フェイカー』と言うスキルなんだ」
「『フェイカー』ですか? 聞いた事ありません」
「うん、俺も他に持っている人を知らないんだけど、このスキルは他の人のスキルを模倣出来るんだ」
「模倣ですか?」
「うん、そう。威力はかなり落ちちゃうんだけどね。例えば、ちょっと見ててね『エクスプロージョン』」
俺は一昨日模倣した若葉さんの『エクスプロージョン』を空に向かって放った。
「今のは、私の……」
「うん、気分を悪くしたならごめん。若葉さんのスキルを模倣したんだ。それで今俺は『フェイカー』で四つまでのスキルを模倣することが出来るんだ。だから若葉さんには四つのスキルを使いこなしている様に見えたってわけなんだ。種も仕掛けもある感じだよ。若葉さんが考えてたのと違ってがっかりしただろ」
「いえ、他人のスキルを模倣出来るスキル……。しかも四つもですか? すごいです。すごすぎです」
「えっ?」
若葉さんから返された言葉は俺の思っていた返答とは全く違うものだった。
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