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10章 最終―――決戦
最終話 彼なりの決着。最終決戦
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「ああ、お兄様ですか。本日はどんな要件ブベラ!」
僕、睦月優斗はドアの向こうに立ち、いやいや歓迎してくる男を蹴り飛ばした
「Dreamerを出せ」
僕はさっき蹴り飛ばした男を思いっきり踏んづける。拳銃を取り出す
「おおおお前、なんのようがは!」
僕は騒ぐ男を容赦なく撃った。
「どどどDreamer様は外に出てらっしゃいますぐほあ!」
発砲する。
今の僕に情はない
「…まあいい。自分の目で確認しに行こう。」
僕は腰にぶら下げていた巾着袋の中身を取り出す
皆驚きすぎて武器を構えていない
「……みんな死ね」
僕はその取り出したものを投げる。それは深く相手に突き刺さった。
僕が今投げたのは小さいナイフ。ただ殺傷能力は十分。
「お、お前ら、撃て―――」
立場が高そうな者の言葉を遮ってそいつに発砲する
「うるさい。睦月優斗が通るんだ。道を開けろ」
僕は容赦なく発砲し続ける。
今回サブマシンガンを持ってたのでリロードはほぼ要らない
ちなみにもう2つ拳銃を持ってきた
相手の銃弾の軌道を読んで躱しつつ、僕は相手を全滅させる
……腕時計を見ると、入ってきた時間から2分もかかっている。
こんなの、疾風なら30秒でできるだろうに
二階に上がる
「あ、優斗さまぶふぉ?!」
登った先に居た男を蹴り飛ばし、発砲を始める
数十人が声も上げずに倒れていく
「…おもしろくない」
僕は周りに倒れている男たちを一瞥して3階に上がる。上がった先には銃を構えている男。
ニヤついてて、待ってましたという感じだった。
しかしそれを想定していた僕は、既に銃を構えていた。
早打ちで真理奈以外に負けなしの僕に一人の男程度が勝てるはずもなく
「かはっ」
ドサッと倒れ込む。
……今日まで、Dreamerの兄としてここに来続けてよかった。
Numberであることは口止めしておいたため、僕はヤクザとして見られていた。
そのため信用を得られていた。
あいつとは喧嘩していたが。
まあこいつらもあいつと険悪な仲のやつは一定数居たらしいため別に気にされなかった。
今日、その努力が実を結んだ。
狭い道の曲がり角を曲がり、無造作に発砲する。
狭い道に立っていた男どもが、拳銃を構えながら倒れていく。
奥に居た人間も等しく。
僕はそいつらを踏みながら奥に進む
「あああああああああああああああああああ?!?!?!?!?!」
激痛でみんな叫ぶ。うるさかったため、みんなの頭をぶち抜いておいた
奥の部屋のドアを蹴り開ける
部屋には誰も居なかった。
「……Numberに向かったか」
僕はいつもならアイツが座っていたはずの木製の椅子に座る。
僕は目を閉じる。
何も考えず、ただただ一人の男を待っていた
15分くらい経った頃、無線が入った
「――?着いた?」
『うん。着いたよ。そっちはどう?』
「そう。こっちはいい感じだよ。とりあえず早くおいで」
無線を切る。
……そろそろだね
深く息をつき、再び目を閉じる。
10分くらい無心で待っていると
『―――。』
『――。』
『―――。』
内容は聞こえないが、二人が何かを話していることはわかった。僕は目を開ける。
扉が開いた。
僕は笑顔で、驚いている彼にこう告げる
「……遅かったね。ふたりとも」
「……なんでだ」
僕、神無月疾風は小さく呟いた
部屋の中にはDreamerは居らず、睦月優斗が、ただ一人木製の椅子に座っていた
「遅かった、か。まるで俺らを待っていた、というような口ぶりだな」
奏は力強くそういった
「はは。僕は確かに君等を待ってた」
優斗は微笑を浮かべる
「僕はね、ここに入ってきて、速攻でここを占領できた。それはなぜか。僕はこいつらの信用を勝ち取っていたからだ」
「なんで?」
「ここがDreamerだから」
……どういうことだ?
頭を抱える……いや、奏でなら何か知ってるかも?
僕は奏をチラッと見る
「…睦月優斗。お前はDreamerのことが嫌いだった、そうだろう?」
「ああ。」
優斗は首肯する
「僕はな、Dreamerの兄だ。奏は知ってるだろうが、疾風はしらないだろう?」
「…」
僕は一瞬口ごもる。
……言うべきだろうか?
いや、優斗に説明させる手間を省くために言うことにした
「…知ってる」
「え」
優斗は目を見開く
僕は小さく、でも確実に聞こえるように言った
「僕がDreamerの正体を知ったのは―――『睦月家』のアジトだった。……睦月家について、色々資料があったよ。睦月家は代々殺し屋。そして、その息子、睦月優斗、その弟、睦月―――」
「もういい」
優斗は微笑を貼り付ける
「…わかった。君たちが何もかも知っているということは。」
優斗は小さく咳払いをする
「僕はDreamerがきらいだ。あいつは人を統べる者の器は無かった。自己中で、短気で。あいつは―――ほんとうにクズだった。だから」
優斗は怒りをあらわにする
優斗は小さく息をついて、話を続ける
「僕は、ヤクザとしてこいつらと仲良くなった。この最終決戦に、簡単に勝つために。さて」
優斗は怒りを顔から引っ込め、微笑を貼り付けてパン、と両手を叩く
「僕はなんのために早く倒して君たち―――君、『Number.2』を待ってたのか?」
「……」
優斗の質問に僕は頭を抱える
うーん……理由、か
いくら考えてもわからん。
なにかわからないか、と言うふうに奏を見る
奏と一瞬目が合う。奏はふう、とため息をつく。優斗を見つめ、奏は口を開いた
「…贖罪でも、する気か?」
「イグザクトリー」
優斗はぱちんと指を鳴らす
「僕はあいつを殺し、自分も死ぬことで贖罪がしたいのだよ」
「…は?」
僕は素っ頓狂な声を出す
「バカ言え!優斗が死んでなんの贖罪になる?!」
「…僕はここに来るまでたくさんの人を殺した。そして、Numberであることも隠し、騙した。…なにより、自分が可愛くて、君たちに僕の弟がDreamerだなんて言えなかった。そして、僕の一族のことも。」
「……」
「奏。外に出てくれ」
優斗は優しい声音で言う
「…わかった」
優斗は扉の向こうへと消えた。
「…疾風。これは僕の意思だ。…僕と戦って、僕を倒してくれ。…殺してくれても、構わない」
優斗の哀愁漂う声に、僕は
「…はあ」
とため息をつき、こういった
「わーったわーった。……やればいいんでしょ」
僕は五月雨丸を構える。
「…ありがとう」
優斗は微笑みながらポケットからナイフを取り出し、そのナイフを構えた。
それは五月雨丸より一回り大きかった。
「…じゃあ、行くよ」
優斗はこちらに向かって走ってくる。
僕はナイフと体が触れ合うギリギリで避ける
優斗はそのまま走って、木製の壁にナイフを突き立てた。
その様子を見て、僕はため息を大きくついた
「…来るなら本気で来てよ。弱気の相手に圧勝するのは僕の性に合わん」
「…ごめん」
優斗はナイフを引っこ抜く。
優斗の近くには椅子があった
「…じゃあ、本気で行くね」
そういって、優斗は
椅子を、こちらに蹴り上げた―――
俺、夢咲奏は建物の外に居た
「…ふう」
タバコを吸い、白い煙を吐く。
ちなみに俺は未成年者だ
しかしDreamerでのストレスが半端なかったため始めた
ポリ公にはバレてない。
…が、しかし。Numberに来てからストレスというものと関わってない
「…辞め時、か」
俺は100均のライターを胸ポケットにしまう。
そしてタバコに息を吹きかけて火を消し、
箱ごと地面に落として靴の裏でグリグリと踏み潰した
「…はあ」
息を吐く
その息は、白かった。
「冬だなあ」
俺はぽつりとそうつぶやく。
天を見上げると、星空が広がっていたが、月は見えなかった
「新月か」
…睦月優斗、死にはしないだろうな?
俺はなぜか不安になる
あいつはDreamer時代よくしてくれた。
多分Dreamerが嫌いという共通認識があったからだろう。だから俺は睦月優斗はわりと好きな方だ
それにしても、
「この量の死体、どうするんだか」
俺はドアの向こうを見つめ、そうこぼした。
中には数十の死体。さすがにこの数、しかも全滅となれば隠蔽するのは無理あるだろう。
ポリ公はまだしも、世間にも
……燃やすか
幸い、この建物自体も木造だ。だから、
この死体とともに焼き尽くそうか。
俺、ぶっちゃけこの建物消し去りたいし。Dreamerとすっぱり別れたい。
「あいつらが終わったら、燃やすか」
俺はそう呟いた。ライター持っててよかった
…にしても、ぜひとも神無月疾風には勝ってもらいたいもんだ。いうなれば睦月優斗はラスボスみたいなわけなんだし
まあ
「アイツが負けるわけねえよなあああ」
俺のつぶやきは、白い息とともに天まで昇った
「あっぶね」
とんできた椅子を寸前で避ける。
木製の椅子と木製の壁がぶつかる
椅子は真っ二つに割れ、壁はベコ、という音を立てて凹んだ
というか、よく見るとこの部屋の壁穴だらけだな
Dreamerが癇癪起こしまくったからか?
てかこの部屋よく見たらベッドあるやん。なんのためにあるんやろ
「よそ見してる暇、あるのかな?」
「おっと」
穴の空いている壁を見つめていたら、いつの間にか優斗に懐に入り込まれていた
しかしそれを見切って僕は左足をあげ
「ふん」
思いっきり振り下ろした。かかと落としである
しかし優斗はナイフを縦にし、僕のかかとが落ちる位置に正確に合わせてきた。僕は左足をピタッと止める。そして右足で地を垂直に蹴って上に飛ぶ。
右足を曲げることでナイフを飛び越せた。
優斗は壁に激突する。
僕は左足をもどし、右足を伸ばして着地する。にしても狭いな、この部屋。
中距離の銃撃戦が得意な優斗にとってはだいぶ不利なバトルフィールドなんじゃないか?
優斗は立ち上がった。そして、腰についてる巾着袋の中に手を突っ込む。
なんだ?きびだんごか?
そして優斗はそれを投げてきた。僕は飛んできたものがなにか確認した後、冷静にそれを五月雨丸で上に跳ね返す。
それは天井に刺さった。
「……優斗は忍者かなんかなの?」
それは小さいナイフだった。僕はそれを危険と判断し、壁から離れた優斗の懐に全速力で潜り込む
「え」
「遅い」
優斗は横に回避する。しかし僕はその軌道を読んで正確に巾着袋を五月雨丸で切る
ナイフが床に四散した
僕はそのまま回し蹴りを叩き込む。
優斗は吹っ飛び、僕達が入ってきたこの部屋唯一の扉に激突する
「…」
あっけない。僕はそう思った
やはり、こういう狭いフィールドは優斗は苦手か
優斗はふらつきながら立ち上がり、ポケットからなにかを取り出した。それはあまりにも黒く光っていて、眩しかった
……本気モード、ってか
優斗はその黒い塊の引き金を思いっきり引いた
僕はその瞬間地に伏せた。僕は腕だけを上げて駿河を優斗に向ける。
優斗はこちらを向きながら後ろに走る。
僕は立ち上がる。ドアの向こうを見ると誰も居なかった
「あんにゃろ…」
僕は走った。
多分、バトルフィールドを変えるつもりなのだろう。
そして、優斗は二階に居た。
優斗は僕に微笑みかける
僕は真顔で愛銃、駿河を構える
優斗もまた構えてくる。
僕は静かに引き金を引く。優斗はそれをチョンと動いて避ける
さすが銃撃戦のプロじゃ。弾の軌道くらい、お見通し、ってか
優斗は僕に拳銃を向ける。
確かに、総合的な銃撃戦に関しては僕より優斗のほうが上だ
だがしかし
僕は素早く拳銃を構え、撃鉄を起こす。
優斗は慌てて引き金を引くが、もう遅い
僕は早打ちは優斗より早いのだよ……
僕は優斗が引き金を引ききる寸前に引き金を引ききる
そして横にジャンプする。
優斗もギリギリで避けたようだ。いやあ。さすがとしか言えねえ。これを避けるとは…銃撃戦の達人、は名だけじゃないなあ
今すぐ地を蹴りたい―――が、しかし。床が死体だらけなので身動きが取れない
死体に突っかかって転ぶなんてこともありえる
そしたら余裕で死ぬ。
……今有利なのは優斗だ。フィールドに関しては僕に分がない
…今、リーチされてるのは僕か
優斗は発砲してくる。僕はその場から動かなかった
「……心理戦だねえ」
弾は空を切る。そして、死体に直撃する
……威嚇射撃?
わからない。でも、ここで戦うのはさすがに分が悪すぎる。
今地に捨てられてる死体は―――ざっと30。踏みながら移動するのはこういう戦いでは危ないだろう。
ん?てか、これが銃撃戦なら―――
僕はいつぞやの山での出来事を思い出す。
あのときは、僕が諏訪に向かってた時。
…Dreamerに襲撃されたとき…
脳裏に一閃の光が走る。なあるほど、ね。
僕は近くの死体を拾い上げる
「…げ」
「ふはは。肉壁だよ」
僕はそれを自分を守らせるように掲げながら優斗に近づく。優斗は移動するが、音をたどって優斗の位置を予測する
そして一瞬立ち止まる。優斗の足音がピタっと止んだ瞬間、僕は死体に拳銃を押し付け、引き金を引いた
「どわ?!?!」
優斗の慌てる声が聞こえる
弾は死体を貫通して優斗に向かっていく―――音がする
僕は死体を投げ捨て、走った。拳銃をポケットにしまう。
……たった今、隙ができた。
実は、僕は優斗を死体が少ないところに誘導していた。隠れて。
だからこそ。これがチャンスだ。
…最初で、最後の大チャンスだ
僕は今アドレナリンがドバドバ出てて最高の瞬発力、足の速さを引き出せた
さあ、ダブル役満のテンパイだ。
僕の手札は四暗刻単騎がテンパイしている。
さあ、ツモしてやろうじゃないか
この手で
「優斗ォ!」
「ッ―――」
優斗は僕に銃口を向け、慌てて引き金に手をかける―――が
「もう遅いよお?!」
僕は足を上に蹴り上げ、優斗の手にぶち当てる
「う…」
優斗がうめき声をあげると同時に拳銃が宙に浮く。
「くッ」
優斗は最後っ屁にナイフをもう片方の手で振り上げる。
……ナイフをここで安全に避けることもできる
しかし、ここで避けると最大のチャンスを逃すことになる。
ここを逃すと、もう―――チャンスを作ることは難しいだろう。
たしかに拳銃は優斗の手にはない。
今は、な
これを全力で避けるとなると、それなりに隙ができる
…そのときに拾われたら終わりだな
僕は考える。自分の動きがスローモーションに感じる。
…そして。僕が導き出した答えは―――
「…僕と君は、今一緒にロンしたんだ」
僕は相打ちを選択した
五月雨丸―――ではなく全力で握った拳で優斗の腹を殴る。
優斗はそれをくらう。しかし、エビのようになりながら僕に向かってナイフを振り下ろした―――
「っと。ま、僕はダブル役満。君はせいぜい…満貫、ってところかな?」
僕は少々深く斬りつけられた左肩を抑えながら言う。
勝負あり。僕の勝ちだ。僕は立っていて、優斗は倒れている。
まあ僕も怪我したわけだが
あ~あ。彼方との約束破っちゃった
……にしてもいってえ。少々多めに血が出ている。
「……ははは。はははははは!!…はは……」
優斗は地に伏せたまま笑った、そして
「…こんなの、贖罪になるのかな…」
優斗は、涙をこぼす。笑いながら、泣いていた。
僕はそれに対して高らかに笑い飛ばした
「罪なんか誰も裁けないぞ~?常世に生きるもの全てに」
僕は五月雨丸を鞘に納め、ポケットにしまう。複雑そうな優斗の顔とは対象的に満面の笑みを浮かべる僕。
「ま、楽しかったよ。僕は。だから」
僕は優斗にウィンクをして
「僕にそんな権利なくても、君を許すよ。僕を楽しませてくれたからね」
僕は下に降りるため後ろを向いて階段に向かった。もちろん、これは本心だ。優斗との戦い。とても楽しかった。奏のときもそうだったが、やはり互角の人間と戦うのは最高にハイになる。いやあ、気持ちいい。勝てたのでなお気持ちいい
「…うぅ…」
後ろから優斗の嗚咽が聞こえる。
「じゃけん奏呼んでくるわ。バイクまで行ったらその後はしっかり運転してくれよ?」
僕はそれだけ言って奏を呼びに行った
「あざ」
「ったく」
奏は呆れながらかごに入っている救急処置セットの中の包帯を左肩に巻いてくれる
あ~……いてえ
ちなみに今は上裸だ。許せ
「で、勝ったのか?」
「勝ってなきゃ僕ここに来れてないよね?」
声のトーンの一つも変えずに言ってくる奏にツッコむ。
「冗談だ」
「冗談が冗談に聞こえないよ?」
「そんな冗談に笑談(じょうだん)ってな」
「やかましいわ」
「ほい、終わったぞ」
バカみたいな雑談の中、奏は処置を終わらせてくれた。僕は服を着る。
「奏、ニ回に優斗がぶっ倒れてるからここまで運んできてやってくれ。」
「へいよ」
流石に僕の肩じゃ優斗を持てないので、奏にお願いする
「あ、神無月。俺、睦月優斗を連れてきたらここ燃やすから」
「は~い」
優斗はそれだけ言ってドアの向こうに消えていく。無線を取り出し、姉さんの番号にかける
「姉さ~ん」
『ん?終わった?』
「終わった。」
『そう。お疲れ。じゃ、はよう帰ってきてね。まだDreamer達来てないけど、来たら連絡するよ』
「うぃーす。」
僕は無線を切って脱力する。姉さんののんきな声は今は心に響いた。
は~終わった。あとは帰るだけだあ…早く、帰らなきゃな。上着を着て、ジャンパーを羽織る。
僕はヘルメットを被りバイクのサドルにまたがった
「……ん?ここを燃やす?」
「ほれ、立て」
俺は未だ涙を浮かべる睦月優斗に立つよう促す
手を差し伸べる
睦月優斗はその手を掴んで立ち上がった
「…ありがとう」
鼻声でそう言ってくる
「いいってことよ」
俺らは肩を組んで歩く
「睦月優斗。俺はお前を外に連れ出したらここを燃やすが、いいか?」
「ああ。いいさ。」
俺の質問に睦月優斗は即答する
やはりこんな場所燃やしたほうがいい、ってことか
睦月優斗は腹に手を添える。どうやら痛むらしい。こいつ絶対神無月に殴られたやろ
…はてはて。これで全部終わりか?
さっさと帰るか。深雪でも誘って焼肉に行こう…ぐへへへへへへ
「…奏」
「あ?」
睦月優斗は、つらそうに、でもはっきりと俺にこう言った
「ありがとう」
「…」
俺は一瞬黙った後、
「礼なら神無月に言ったらどうだ?」
と言った。睦月優斗は苦笑いをする
「…そうだね」
睦月優斗のつぶやきは、建物の中でだんだんと消えていった
「ありがと」
優斗は奏に連れられ、ヘルメットを被りバイクに乗る
奏は建物の方に戻っていった。マジでやるの?
まあいいか。
「運転できる?」
「それについては僕より君のほうが心配だよ?」
僕の問に優斗は苦笑しながらツッコむ
はは、肩の怪我程度でバイクが運転できなくなるわけないじゃあないか。
「僕は大丈夫だよん」
左肩を回しながら言う。
…いや、痛いわ。回すと痛い。
当たり前か。
僕は自問自答する
「…疾風。ほんとうn」
「うぃー帰るぞ」
優斗の発言を遮って奏があくびしながらこっちに来る。
後ろから黒煙と小さな赤い炎が見える
ガチでやったのかよ……僕は嘆息する。
「奏。さっさとズラかるよ」
僕はバイクに本気で力を入れる。
バイクは早いスピードを出して発進する
「ま、まってよ、疾風ぇ!」
後ろから優斗の慌てる声とエンジン音が聞こえる
「おいおい、焦るなよ」
さらにその後ろから奏の落ち着いた声と低いエンジン音が聞こえる
行きに曲がってきた突き当りを左に曲がる瞬間無線が鳴った
信号まで走ってから停車してから無線を取る。
なだ鳴っていた
「はい」
無線に出る
『疾風。Dreamer様たち来たわよ』
無線は姉さんからだった。
「…」
僕は息を大きく吸い込み
「……ふざけんなよおおおおおおおおおおおお」
いやタイミングよ。
「姉さん」
『何?』
「…僕負傷したから戦えないよ」
『ふ~ん…え!?ちょ、え???』
姉さんの本気で驚く声が夜の道に響く。やめろこっちを見るな通行人たちよ
「ごめんよ。じゃ」
無線を切る。
その瞬間、後ろで爆発音が響いた―――
爆発オチなんて、サイテー
そうして僕らはNumber本部に戻ってきた。駐輪場にバイクを止め、入口前に来る。
中からは悲鳴と銃声。
なにこれ地獄?
ちなみに悲鳴はすべて野太いものだった
おいこれDreamerが蹂躙されてるだけじゃん
苦笑する。
「……」
優斗は黙って中に入った。……優斗。Dreamer―――弟と本当の決着をつけたいのか、顔がマジだった。
「…まあ、優斗は中で戦うだろうし。僕らはここで退路を塞いどくか」
僕はそうつぶやき、中に入る。ロビーには何人かが倒れており、受付嬢がカウンターに座っていた。何あの人、肝座りすぎでしょ
「Number.2様、おかえりなさい」
笑顔でそういう受付嬢。
「お疲れさま。…僕はここで退路を―――」
「神無月。俺がここに居るからお前は他の階に行け」
振り向くと、奏がやる気満々にそういう。
「おいおい、一応元仲間でしょ?」
「あんなやつら仲間じゃないから全員捕獲しろ」
笑顔で言う奏。僕は呆れる。まあ。右腕は生きている。戦うかあ
「じゃよろしく…」
「めんどくさそうだなあおい」
そうツッコむ奏を尻目に僕は階段へと向かった。
階段を上っていると―――
「ふざけてんじゃねえ!」
優斗の怒鳴り声が聞こえた。…多分彼らは三階か四階に居るか?
僕は階段を駆けのぼる。
「てめえは!てめえってやつは!」
「おちついてください!優斗さん!」
更に聞こえてくる怒鳴り声。瞳の声も聞こえてくる。
…急ごう。
「こんの!」
そして四階につくと、優斗が居た。
優斗は彼の目の前に居る男に殴りかかろうとしていた
「優斗!」
後ろから怒鳴る優斗はハッとこちらを振り向く。
「…疾風。止めないでくれ。」
優斗は懇願するように言う。
「優斗さん!いくらなんでも実の弟に―――!」
「瞳…」
優斗は瞳を一瞥し、その『弟』に向き直る
「…瞳の言葉でも……僕はッ」
優斗は叫んだ
「こいつを!!!!!!!!!!許すことは!!!!!!!!!!!!!!!!!!できない!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そして優斗は『弟』を殴った。ボゴッ、という鈍い音がする
「がは…」
『弟』は血を吐いた
僕はそれを傍観する。
……僕は今思った
優斗に好きにさせてあげよう。彼は今激昂している。恨みが爆発した。
「おいてめえ!Dreamer様に何を―――うっ!」
それを見て騒ぎ出す男。しかし、次の瞬間パン、と言う音が聞こえる
「うっさいわね。邪魔しないで頂戴」
男は倒れた。しかし血は出てない。
後ろにいる声の主に振り返る
「…ねえ…Number.0」
後ろに居たのは姉さんだった
「ふう。この空気銃。改良したおかげでこの距離でも正確に当たるわね」
ふぅ、とその空気銃の銃口を吹いた。いつもと違って凛としている。かっこいいよ姉さん
「…Dreamer、いや。…わが弟、睦月翔馬よ」
優斗はDreamer―――睦月翔馬の胸ぐらを掴む。
「…許さん。絶対お前だけは……もう限界だ殺してやる」
「…お、おまえ。何する気だ、クソ兄貴…」
優斗は黒光する物体を取り出し、睦月翔馬の額に押し付ける
「優斗さん!」
瞳の叫びも、優斗には届かなかった。
彼の瞳は、睦月翔馬しか見えてなかった
「ひ、引けるもんなら引いてみ」
睦月翔馬が、喋り終わる前に
優斗は―――引き金を引いた―――
しかし
「…これがリボルバーだったらな……クソ。僕は最後の最後で…」
睦月翔馬は血を出していなかった。優斗は膝から崩れ落ちる
「…いやあ。複数作っといてよかったわあ……」
姉さんは空気銃を撫でた。なるほどあれ空気銃か
まあ空気銃あたまに撃たれたら脳震盪くらい…起こすのか?
わからんなあ
「…優斗さん」
瞳が優斗の肩に手を添える
「優斗」
僕は優斗に近づく
「……お疲れ様」
僕は優斗の頭をぽんぽんとする
「…疾風。ほんとうに、ほんとうに……」
優斗は涙を浮かべながら、奏に遮られたその言葉を発した
「……あり、……がとう………!!!!!」
僕はその言葉にこう返した
「…こちらこそ、ありがとう。楽しかったよ」
それだけ言うと、優斗はプツンと糸が切れた人形のように倒れかかる。瞳が受け止める。
現在膝枕状態だ
「うぅ…あああ…」
優斗はそのまま嗚咽をこぼし始めた。瞳がそれをあやす。
僕は無言で睦月翔馬を抱えあげてその場を立ち去った
「終わった…な」
僕は睦月翔馬をロビーまで運ぶ
ロビーにはまだ奏が居た。
「…ああ。終わった。受付嬢さん、ロープを」
「投げますね」
受付嬢さんからロープを受け取る
「サンキューです」
そのロープでDreamerを縛り上げそこら辺に放おり投げる
「………そうか」
奏は睦月翔馬を見つめながら
「……明日辺り、焼肉行くか。お前と、深雪と。一応Line交換してるし、行けるだろ?」
と僕に聞いてきた。僕は笑う
「いいよ。だけど、他のみんなも誘うよ?」
その言葉に奏は笑って
「なら俺と深雪の二人で行く。」
と言った。苦笑する。
「みんなで楽しもうよ…」
「しゃーねえな」
奏は不服そうにそういった。声は不服そうだが顔はちょっと嬉しそうだ。
「よっしゃあ!待ってろよ、深雪ぃぃぃぃいいいい!!!」
そう叫んで走り出す奏。僕はその背中を見つめる
「……ほんとに終わったんだな」
ほんとうに色々あった
僕は天井を見上げる
目を力強く瞑る
「……彼方。終わったよ?―――約束通り、死なずに帰るね」
僕は目を開ける。
身を翻し、ロビーを出た。
これからは、平和にバカみたいに笑えるんだろうな
大きな宿敵が新たに現れなければ
僕らは基本、もう自由だ
入り口から出る
にしても最後はあっけなかったなあ
あんだけ僕らを苦労させたDreamerが、Bossが。こんなすぐ捕まるとは
「まあ」
星空を見上げる。
とても綺麗で、冬の大三角形がはっきりと見えた
「終わりよければ全てよし!」
僕はスキップして駐輪場に向かった
~fin~
僕、睦月優斗はドアの向こうに立ち、いやいや歓迎してくる男を蹴り飛ばした
「Dreamerを出せ」
僕はさっき蹴り飛ばした男を思いっきり踏んづける。拳銃を取り出す
「おおおお前、なんのようがは!」
僕は騒ぐ男を容赦なく撃った。
「どどどDreamer様は外に出てらっしゃいますぐほあ!」
発砲する。
今の僕に情はない
「…まあいい。自分の目で確認しに行こう。」
僕は腰にぶら下げていた巾着袋の中身を取り出す
皆驚きすぎて武器を構えていない
「……みんな死ね」
僕はその取り出したものを投げる。それは深く相手に突き刺さった。
僕が今投げたのは小さいナイフ。ただ殺傷能力は十分。
「お、お前ら、撃て―――」
立場が高そうな者の言葉を遮ってそいつに発砲する
「うるさい。睦月優斗が通るんだ。道を開けろ」
僕は容赦なく発砲し続ける。
今回サブマシンガンを持ってたのでリロードはほぼ要らない
ちなみにもう2つ拳銃を持ってきた
相手の銃弾の軌道を読んで躱しつつ、僕は相手を全滅させる
……腕時計を見ると、入ってきた時間から2分もかかっている。
こんなの、疾風なら30秒でできるだろうに
二階に上がる
「あ、優斗さまぶふぉ?!」
登った先に居た男を蹴り飛ばし、発砲を始める
数十人が声も上げずに倒れていく
「…おもしろくない」
僕は周りに倒れている男たちを一瞥して3階に上がる。上がった先には銃を構えている男。
ニヤついてて、待ってましたという感じだった。
しかしそれを想定していた僕は、既に銃を構えていた。
早打ちで真理奈以外に負けなしの僕に一人の男程度が勝てるはずもなく
「かはっ」
ドサッと倒れ込む。
……今日まで、Dreamerの兄としてここに来続けてよかった。
Numberであることは口止めしておいたため、僕はヤクザとして見られていた。
そのため信用を得られていた。
あいつとは喧嘩していたが。
まあこいつらもあいつと険悪な仲のやつは一定数居たらしいため別に気にされなかった。
今日、その努力が実を結んだ。
狭い道の曲がり角を曲がり、無造作に発砲する。
狭い道に立っていた男どもが、拳銃を構えながら倒れていく。
奥に居た人間も等しく。
僕はそいつらを踏みながら奥に進む
「あああああああああああああああああああ?!?!?!?!?!」
激痛でみんな叫ぶ。うるさかったため、みんなの頭をぶち抜いておいた
奥の部屋のドアを蹴り開ける
部屋には誰も居なかった。
「……Numberに向かったか」
僕はいつもならアイツが座っていたはずの木製の椅子に座る。
僕は目を閉じる。
何も考えず、ただただ一人の男を待っていた
15分くらい経った頃、無線が入った
「――?着いた?」
『うん。着いたよ。そっちはどう?』
「そう。こっちはいい感じだよ。とりあえず早くおいで」
無線を切る。
……そろそろだね
深く息をつき、再び目を閉じる。
10分くらい無心で待っていると
『―――。』
『――。』
『―――。』
内容は聞こえないが、二人が何かを話していることはわかった。僕は目を開ける。
扉が開いた。
僕は笑顔で、驚いている彼にこう告げる
「……遅かったね。ふたりとも」
「……なんでだ」
僕、神無月疾風は小さく呟いた
部屋の中にはDreamerは居らず、睦月優斗が、ただ一人木製の椅子に座っていた
「遅かった、か。まるで俺らを待っていた、というような口ぶりだな」
奏は力強くそういった
「はは。僕は確かに君等を待ってた」
優斗は微笑を浮かべる
「僕はね、ここに入ってきて、速攻でここを占領できた。それはなぜか。僕はこいつらの信用を勝ち取っていたからだ」
「なんで?」
「ここがDreamerだから」
……どういうことだ?
頭を抱える……いや、奏でなら何か知ってるかも?
僕は奏をチラッと見る
「…睦月優斗。お前はDreamerのことが嫌いだった、そうだろう?」
「ああ。」
優斗は首肯する
「僕はな、Dreamerの兄だ。奏は知ってるだろうが、疾風はしらないだろう?」
「…」
僕は一瞬口ごもる。
……言うべきだろうか?
いや、優斗に説明させる手間を省くために言うことにした
「…知ってる」
「え」
優斗は目を見開く
僕は小さく、でも確実に聞こえるように言った
「僕がDreamerの正体を知ったのは―――『睦月家』のアジトだった。……睦月家について、色々資料があったよ。睦月家は代々殺し屋。そして、その息子、睦月優斗、その弟、睦月―――」
「もういい」
優斗は微笑を貼り付ける
「…わかった。君たちが何もかも知っているということは。」
優斗は小さく咳払いをする
「僕はDreamerがきらいだ。あいつは人を統べる者の器は無かった。自己中で、短気で。あいつは―――ほんとうにクズだった。だから」
優斗は怒りをあらわにする
優斗は小さく息をついて、話を続ける
「僕は、ヤクザとしてこいつらと仲良くなった。この最終決戦に、簡単に勝つために。さて」
優斗は怒りを顔から引っ込め、微笑を貼り付けてパン、と両手を叩く
「僕はなんのために早く倒して君たち―――君、『Number.2』を待ってたのか?」
「……」
優斗の質問に僕は頭を抱える
うーん……理由、か
いくら考えてもわからん。
なにかわからないか、と言うふうに奏を見る
奏と一瞬目が合う。奏はふう、とため息をつく。優斗を見つめ、奏は口を開いた
「…贖罪でも、する気か?」
「イグザクトリー」
優斗はぱちんと指を鳴らす
「僕はあいつを殺し、自分も死ぬことで贖罪がしたいのだよ」
「…は?」
僕は素っ頓狂な声を出す
「バカ言え!優斗が死んでなんの贖罪になる?!」
「…僕はここに来るまでたくさんの人を殺した。そして、Numberであることも隠し、騙した。…なにより、自分が可愛くて、君たちに僕の弟がDreamerだなんて言えなかった。そして、僕の一族のことも。」
「……」
「奏。外に出てくれ」
優斗は優しい声音で言う
「…わかった」
優斗は扉の向こうへと消えた。
「…疾風。これは僕の意思だ。…僕と戦って、僕を倒してくれ。…殺してくれても、構わない」
優斗の哀愁漂う声に、僕は
「…はあ」
とため息をつき、こういった
「わーったわーった。……やればいいんでしょ」
僕は五月雨丸を構える。
「…ありがとう」
優斗は微笑みながらポケットからナイフを取り出し、そのナイフを構えた。
それは五月雨丸より一回り大きかった。
「…じゃあ、行くよ」
優斗はこちらに向かって走ってくる。
僕はナイフと体が触れ合うギリギリで避ける
優斗はそのまま走って、木製の壁にナイフを突き立てた。
その様子を見て、僕はため息を大きくついた
「…来るなら本気で来てよ。弱気の相手に圧勝するのは僕の性に合わん」
「…ごめん」
優斗はナイフを引っこ抜く。
優斗の近くには椅子があった
「…じゃあ、本気で行くね」
そういって、優斗は
椅子を、こちらに蹴り上げた―――
俺、夢咲奏は建物の外に居た
「…ふう」
タバコを吸い、白い煙を吐く。
ちなみに俺は未成年者だ
しかしDreamerでのストレスが半端なかったため始めた
ポリ公にはバレてない。
…が、しかし。Numberに来てからストレスというものと関わってない
「…辞め時、か」
俺は100均のライターを胸ポケットにしまう。
そしてタバコに息を吹きかけて火を消し、
箱ごと地面に落として靴の裏でグリグリと踏み潰した
「…はあ」
息を吐く
その息は、白かった。
「冬だなあ」
俺はぽつりとそうつぶやく。
天を見上げると、星空が広がっていたが、月は見えなかった
「新月か」
…睦月優斗、死にはしないだろうな?
俺はなぜか不安になる
あいつはDreamer時代よくしてくれた。
多分Dreamerが嫌いという共通認識があったからだろう。だから俺は睦月優斗はわりと好きな方だ
それにしても、
「この量の死体、どうするんだか」
俺はドアの向こうを見つめ、そうこぼした。
中には数十の死体。さすがにこの数、しかも全滅となれば隠蔽するのは無理あるだろう。
ポリ公はまだしも、世間にも
……燃やすか
幸い、この建物自体も木造だ。だから、
この死体とともに焼き尽くそうか。
俺、ぶっちゃけこの建物消し去りたいし。Dreamerとすっぱり別れたい。
「あいつらが終わったら、燃やすか」
俺はそう呟いた。ライター持っててよかった
…にしても、ぜひとも神無月疾風には勝ってもらいたいもんだ。いうなれば睦月優斗はラスボスみたいなわけなんだし
まあ
「アイツが負けるわけねえよなあああ」
俺のつぶやきは、白い息とともに天まで昇った
「あっぶね」
とんできた椅子を寸前で避ける。
木製の椅子と木製の壁がぶつかる
椅子は真っ二つに割れ、壁はベコ、という音を立てて凹んだ
というか、よく見るとこの部屋の壁穴だらけだな
Dreamerが癇癪起こしまくったからか?
てかこの部屋よく見たらベッドあるやん。なんのためにあるんやろ
「よそ見してる暇、あるのかな?」
「おっと」
穴の空いている壁を見つめていたら、いつの間にか優斗に懐に入り込まれていた
しかしそれを見切って僕は左足をあげ
「ふん」
思いっきり振り下ろした。かかと落としである
しかし優斗はナイフを縦にし、僕のかかとが落ちる位置に正確に合わせてきた。僕は左足をピタッと止める。そして右足で地を垂直に蹴って上に飛ぶ。
右足を曲げることでナイフを飛び越せた。
優斗は壁に激突する。
僕は左足をもどし、右足を伸ばして着地する。にしても狭いな、この部屋。
中距離の銃撃戦が得意な優斗にとってはだいぶ不利なバトルフィールドなんじゃないか?
優斗は立ち上がった。そして、腰についてる巾着袋の中に手を突っ込む。
なんだ?きびだんごか?
そして優斗はそれを投げてきた。僕は飛んできたものがなにか確認した後、冷静にそれを五月雨丸で上に跳ね返す。
それは天井に刺さった。
「……優斗は忍者かなんかなの?」
それは小さいナイフだった。僕はそれを危険と判断し、壁から離れた優斗の懐に全速力で潜り込む
「え」
「遅い」
優斗は横に回避する。しかし僕はその軌道を読んで正確に巾着袋を五月雨丸で切る
ナイフが床に四散した
僕はそのまま回し蹴りを叩き込む。
優斗は吹っ飛び、僕達が入ってきたこの部屋唯一の扉に激突する
「…」
あっけない。僕はそう思った
やはり、こういう狭いフィールドは優斗は苦手か
優斗はふらつきながら立ち上がり、ポケットからなにかを取り出した。それはあまりにも黒く光っていて、眩しかった
……本気モード、ってか
優斗はその黒い塊の引き金を思いっきり引いた
僕はその瞬間地に伏せた。僕は腕だけを上げて駿河を優斗に向ける。
優斗はこちらを向きながら後ろに走る。
僕は立ち上がる。ドアの向こうを見ると誰も居なかった
「あんにゃろ…」
僕は走った。
多分、バトルフィールドを変えるつもりなのだろう。
そして、優斗は二階に居た。
優斗は僕に微笑みかける
僕は真顔で愛銃、駿河を構える
優斗もまた構えてくる。
僕は静かに引き金を引く。優斗はそれをチョンと動いて避ける
さすが銃撃戦のプロじゃ。弾の軌道くらい、お見通し、ってか
優斗は僕に拳銃を向ける。
確かに、総合的な銃撃戦に関しては僕より優斗のほうが上だ
だがしかし
僕は素早く拳銃を構え、撃鉄を起こす。
優斗は慌てて引き金を引くが、もう遅い
僕は早打ちは優斗より早いのだよ……
僕は優斗が引き金を引ききる寸前に引き金を引ききる
そして横にジャンプする。
優斗もギリギリで避けたようだ。いやあ。さすがとしか言えねえ。これを避けるとは…銃撃戦の達人、は名だけじゃないなあ
今すぐ地を蹴りたい―――が、しかし。床が死体だらけなので身動きが取れない
死体に突っかかって転ぶなんてこともありえる
そしたら余裕で死ぬ。
……今有利なのは優斗だ。フィールドに関しては僕に分がない
…今、リーチされてるのは僕か
優斗は発砲してくる。僕はその場から動かなかった
「……心理戦だねえ」
弾は空を切る。そして、死体に直撃する
……威嚇射撃?
わからない。でも、ここで戦うのはさすがに分が悪すぎる。
今地に捨てられてる死体は―――ざっと30。踏みながら移動するのはこういう戦いでは危ないだろう。
ん?てか、これが銃撃戦なら―――
僕はいつぞやの山での出来事を思い出す。
あのときは、僕が諏訪に向かってた時。
…Dreamerに襲撃されたとき…
脳裏に一閃の光が走る。なあるほど、ね。
僕は近くの死体を拾い上げる
「…げ」
「ふはは。肉壁だよ」
僕はそれを自分を守らせるように掲げながら優斗に近づく。優斗は移動するが、音をたどって優斗の位置を予測する
そして一瞬立ち止まる。優斗の足音がピタっと止んだ瞬間、僕は死体に拳銃を押し付け、引き金を引いた
「どわ?!?!」
優斗の慌てる声が聞こえる
弾は死体を貫通して優斗に向かっていく―――音がする
僕は死体を投げ捨て、走った。拳銃をポケットにしまう。
……たった今、隙ができた。
実は、僕は優斗を死体が少ないところに誘導していた。隠れて。
だからこそ。これがチャンスだ。
…最初で、最後の大チャンスだ
僕は今アドレナリンがドバドバ出てて最高の瞬発力、足の速さを引き出せた
さあ、ダブル役満のテンパイだ。
僕の手札は四暗刻単騎がテンパイしている。
さあ、ツモしてやろうじゃないか
この手で
「優斗ォ!」
「ッ―――」
優斗は僕に銃口を向け、慌てて引き金に手をかける―――が
「もう遅いよお?!」
僕は足を上に蹴り上げ、優斗の手にぶち当てる
「う…」
優斗がうめき声をあげると同時に拳銃が宙に浮く。
「くッ」
優斗は最後っ屁にナイフをもう片方の手で振り上げる。
……ナイフをここで安全に避けることもできる
しかし、ここで避けると最大のチャンスを逃すことになる。
ここを逃すと、もう―――チャンスを作ることは難しいだろう。
たしかに拳銃は優斗の手にはない。
今は、な
これを全力で避けるとなると、それなりに隙ができる
…そのときに拾われたら終わりだな
僕は考える。自分の動きがスローモーションに感じる。
…そして。僕が導き出した答えは―――
「…僕と君は、今一緒にロンしたんだ」
僕は相打ちを選択した
五月雨丸―――ではなく全力で握った拳で優斗の腹を殴る。
優斗はそれをくらう。しかし、エビのようになりながら僕に向かってナイフを振り下ろした―――
「っと。ま、僕はダブル役満。君はせいぜい…満貫、ってところかな?」
僕は少々深く斬りつけられた左肩を抑えながら言う。
勝負あり。僕の勝ちだ。僕は立っていて、優斗は倒れている。
まあ僕も怪我したわけだが
あ~あ。彼方との約束破っちゃった
……にしてもいってえ。少々多めに血が出ている。
「……ははは。はははははは!!…はは……」
優斗は地に伏せたまま笑った、そして
「…こんなの、贖罪になるのかな…」
優斗は、涙をこぼす。笑いながら、泣いていた。
僕はそれに対して高らかに笑い飛ばした
「罪なんか誰も裁けないぞ~?常世に生きるもの全てに」
僕は五月雨丸を鞘に納め、ポケットにしまう。複雑そうな優斗の顔とは対象的に満面の笑みを浮かべる僕。
「ま、楽しかったよ。僕は。だから」
僕は優斗にウィンクをして
「僕にそんな権利なくても、君を許すよ。僕を楽しませてくれたからね」
僕は下に降りるため後ろを向いて階段に向かった。もちろん、これは本心だ。優斗との戦い。とても楽しかった。奏のときもそうだったが、やはり互角の人間と戦うのは最高にハイになる。いやあ、気持ちいい。勝てたのでなお気持ちいい
「…うぅ…」
後ろから優斗の嗚咽が聞こえる。
「じゃけん奏呼んでくるわ。バイクまで行ったらその後はしっかり運転してくれよ?」
僕はそれだけ言って奏を呼びに行った
「あざ」
「ったく」
奏は呆れながらかごに入っている救急処置セットの中の包帯を左肩に巻いてくれる
あ~……いてえ
ちなみに今は上裸だ。許せ
「で、勝ったのか?」
「勝ってなきゃ僕ここに来れてないよね?」
声のトーンの一つも変えずに言ってくる奏にツッコむ。
「冗談だ」
「冗談が冗談に聞こえないよ?」
「そんな冗談に笑談(じょうだん)ってな」
「やかましいわ」
「ほい、終わったぞ」
バカみたいな雑談の中、奏は処置を終わらせてくれた。僕は服を着る。
「奏、ニ回に優斗がぶっ倒れてるからここまで運んできてやってくれ。」
「へいよ」
流石に僕の肩じゃ優斗を持てないので、奏にお願いする
「あ、神無月。俺、睦月優斗を連れてきたらここ燃やすから」
「は~い」
優斗はそれだけ言ってドアの向こうに消えていく。無線を取り出し、姉さんの番号にかける
「姉さ~ん」
『ん?終わった?』
「終わった。」
『そう。お疲れ。じゃ、はよう帰ってきてね。まだDreamer達来てないけど、来たら連絡するよ』
「うぃーす。」
僕は無線を切って脱力する。姉さんののんきな声は今は心に響いた。
は~終わった。あとは帰るだけだあ…早く、帰らなきゃな。上着を着て、ジャンパーを羽織る。
僕はヘルメットを被りバイクのサドルにまたがった
「……ん?ここを燃やす?」
「ほれ、立て」
俺は未だ涙を浮かべる睦月優斗に立つよう促す
手を差し伸べる
睦月優斗はその手を掴んで立ち上がった
「…ありがとう」
鼻声でそう言ってくる
「いいってことよ」
俺らは肩を組んで歩く
「睦月優斗。俺はお前を外に連れ出したらここを燃やすが、いいか?」
「ああ。いいさ。」
俺の質問に睦月優斗は即答する
やはりこんな場所燃やしたほうがいい、ってことか
睦月優斗は腹に手を添える。どうやら痛むらしい。こいつ絶対神無月に殴られたやろ
…はてはて。これで全部終わりか?
さっさと帰るか。深雪でも誘って焼肉に行こう…ぐへへへへへへ
「…奏」
「あ?」
睦月優斗は、つらそうに、でもはっきりと俺にこう言った
「ありがとう」
「…」
俺は一瞬黙った後、
「礼なら神無月に言ったらどうだ?」
と言った。睦月優斗は苦笑いをする
「…そうだね」
睦月優斗のつぶやきは、建物の中でだんだんと消えていった
「ありがと」
優斗は奏に連れられ、ヘルメットを被りバイクに乗る
奏は建物の方に戻っていった。マジでやるの?
まあいいか。
「運転できる?」
「それについては僕より君のほうが心配だよ?」
僕の問に優斗は苦笑しながらツッコむ
はは、肩の怪我程度でバイクが運転できなくなるわけないじゃあないか。
「僕は大丈夫だよん」
左肩を回しながら言う。
…いや、痛いわ。回すと痛い。
当たり前か。
僕は自問自答する
「…疾風。ほんとうn」
「うぃー帰るぞ」
優斗の発言を遮って奏があくびしながらこっちに来る。
後ろから黒煙と小さな赤い炎が見える
ガチでやったのかよ……僕は嘆息する。
「奏。さっさとズラかるよ」
僕はバイクに本気で力を入れる。
バイクは早いスピードを出して発進する
「ま、まってよ、疾風ぇ!」
後ろから優斗の慌てる声とエンジン音が聞こえる
「おいおい、焦るなよ」
さらにその後ろから奏の落ち着いた声と低いエンジン音が聞こえる
行きに曲がってきた突き当りを左に曲がる瞬間無線が鳴った
信号まで走ってから停車してから無線を取る。
なだ鳴っていた
「はい」
無線に出る
『疾風。Dreamer様たち来たわよ』
無線は姉さんからだった。
「…」
僕は息を大きく吸い込み
「……ふざけんなよおおおおおおおおおおおお」
いやタイミングよ。
「姉さん」
『何?』
「…僕負傷したから戦えないよ」
『ふ~ん…え!?ちょ、え???』
姉さんの本気で驚く声が夜の道に響く。やめろこっちを見るな通行人たちよ
「ごめんよ。じゃ」
無線を切る。
その瞬間、後ろで爆発音が響いた―――
爆発オチなんて、サイテー
そうして僕らはNumber本部に戻ってきた。駐輪場にバイクを止め、入口前に来る。
中からは悲鳴と銃声。
なにこれ地獄?
ちなみに悲鳴はすべて野太いものだった
おいこれDreamerが蹂躙されてるだけじゃん
苦笑する。
「……」
優斗は黙って中に入った。……優斗。Dreamer―――弟と本当の決着をつけたいのか、顔がマジだった。
「…まあ、優斗は中で戦うだろうし。僕らはここで退路を塞いどくか」
僕はそうつぶやき、中に入る。ロビーには何人かが倒れており、受付嬢がカウンターに座っていた。何あの人、肝座りすぎでしょ
「Number.2様、おかえりなさい」
笑顔でそういう受付嬢。
「お疲れさま。…僕はここで退路を―――」
「神無月。俺がここに居るからお前は他の階に行け」
振り向くと、奏がやる気満々にそういう。
「おいおい、一応元仲間でしょ?」
「あんなやつら仲間じゃないから全員捕獲しろ」
笑顔で言う奏。僕は呆れる。まあ。右腕は生きている。戦うかあ
「じゃよろしく…」
「めんどくさそうだなあおい」
そうツッコむ奏を尻目に僕は階段へと向かった。
階段を上っていると―――
「ふざけてんじゃねえ!」
優斗の怒鳴り声が聞こえた。…多分彼らは三階か四階に居るか?
僕は階段を駆けのぼる。
「てめえは!てめえってやつは!」
「おちついてください!優斗さん!」
更に聞こえてくる怒鳴り声。瞳の声も聞こえてくる。
…急ごう。
「こんの!」
そして四階につくと、優斗が居た。
優斗は彼の目の前に居る男に殴りかかろうとしていた
「優斗!」
後ろから怒鳴る優斗はハッとこちらを振り向く。
「…疾風。止めないでくれ。」
優斗は懇願するように言う。
「優斗さん!いくらなんでも実の弟に―――!」
「瞳…」
優斗は瞳を一瞥し、その『弟』に向き直る
「…瞳の言葉でも……僕はッ」
優斗は叫んだ
「こいつを!!!!!!!!!!許すことは!!!!!!!!!!!!!!!!!!できない!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そして優斗は『弟』を殴った。ボゴッ、という鈍い音がする
「がは…」
『弟』は血を吐いた
僕はそれを傍観する。
……僕は今思った
優斗に好きにさせてあげよう。彼は今激昂している。恨みが爆発した。
「おいてめえ!Dreamer様に何を―――うっ!」
それを見て騒ぎ出す男。しかし、次の瞬間パン、と言う音が聞こえる
「うっさいわね。邪魔しないで頂戴」
男は倒れた。しかし血は出てない。
後ろにいる声の主に振り返る
「…ねえ…Number.0」
後ろに居たのは姉さんだった
「ふう。この空気銃。改良したおかげでこの距離でも正確に当たるわね」
ふぅ、とその空気銃の銃口を吹いた。いつもと違って凛としている。かっこいいよ姉さん
「…Dreamer、いや。…わが弟、睦月翔馬よ」
優斗はDreamer―――睦月翔馬の胸ぐらを掴む。
「…許さん。絶対お前だけは……もう限界だ殺してやる」
「…お、おまえ。何する気だ、クソ兄貴…」
優斗は黒光する物体を取り出し、睦月翔馬の額に押し付ける
「優斗さん!」
瞳の叫びも、優斗には届かなかった。
彼の瞳は、睦月翔馬しか見えてなかった
「ひ、引けるもんなら引いてみ」
睦月翔馬が、喋り終わる前に
優斗は―――引き金を引いた―――
しかし
「…これがリボルバーだったらな……クソ。僕は最後の最後で…」
睦月翔馬は血を出していなかった。優斗は膝から崩れ落ちる
「…いやあ。複数作っといてよかったわあ……」
姉さんは空気銃を撫でた。なるほどあれ空気銃か
まあ空気銃あたまに撃たれたら脳震盪くらい…起こすのか?
わからんなあ
「…優斗さん」
瞳が優斗の肩に手を添える
「優斗」
僕は優斗に近づく
「……お疲れ様」
僕は優斗の頭をぽんぽんとする
「…疾風。ほんとうに、ほんとうに……」
優斗は涙を浮かべながら、奏に遮られたその言葉を発した
「……あり、……がとう………!!!!!」
僕はその言葉にこう返した
「…こちらこそ、ありがとう。楽しかったよ」
それだけ言うと、優斗はプツンと糸が切れた人形のように倒れかかる。瞳が受け止める。
現在膝枕状態だ
「うぅ…あああ…」
優斗はそのまま嗚咽をこぼし始めた。瞳がそれをあやす。
僕は無言で睦月翔馬を抱えあげてその場を立ち去った
「終わった…な」
僕は睦月翔馬をロビーまで運ぶ
ロビーにはまだ奏が居た。
「…ああ。終わった。受付嬢さん、ロープを」
「投げますね」
受付嬢さんからロープを受け取る
「サンキューです」
そのロープでDreamerを縛り上げそこら辺に放おり投げる
「………そうか」
奏は睦月翔馬を見つめながら
「……明日辺り、焼肉行くか。お前と、深雪と。一応Line交換してるし、行けるだろ?」
と僕に聞いてきた。僕は笑う
「いいよ。だけど、他のみんなも誘うよ?」
その言葉に奏は笑って
「なら俺と深雪の二人で行く。」
と言った。苦笑する。
「みんなで楽しもうよ…」
「しゃーねえな」
奏は不服そうにそういった。声は不服そうだが顔はちょっと嬉しそうだ。
「よっしゃあ!待ってろよ、深雪ぃぃぃぃいいいい!!!」
そう叫んで走り出す奏。僕はその背中を見つめる
「……ほんとに終わったんだな」
ほんとうに色々あった
僕は天井を見上げる
目を力強く瞑る
「……彼方。終わったよ?―――約束通り、死なずに帰るね」
僕は目を開ける。
身を翻し、ロビーを出た。
これからは、平和にバカみたいに笑えるんだろうな
大きな宿敵が新たに現れなければ
僕らは基本、もう自由だ
入り口から出る
にしても最後はあっけなかったなあ
あんだけ僕らを苦労させたDreamerが、Bossが。こんなすぐ捕まるとは
「まあ」
星空を見上げる。
とても綺麗で、冬の大三角形がはっきりと見えた
「終わりよければ全てよし!」
僕はスキップして駐輪場に向かった
~fin~
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私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
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