あの大空の下で 一部 始まりの「Number.2」

KsTAIN

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10章 最終―――決戦

四十六話 最終決戦…?

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「なんかあると身構えていたが何もなかったな」
「嵐の前の静けさだろ」
「まったくもってそのとおりだよ」
僕はジャンパーを着ながら苦笑する。
僕―――神無月疾風は1Fのロビーにて夢咲奏と合流していた。
羽飾りを頭につけ、腕時計に目を落とす。
腕時計が指す時刻は午後六時五十分。
2月1日、会議も終わり、優斗と色々話した後、僕らに再度招集がかかった。僕らの当日の動きについてだ。
僕らはもし先にDreamerが襲撃に来たら、全力でそれに応対。
もし来なかったら午後七時に僕らが出動。そのちょっと前に優斗が出動という形でまとまった。
今日は当日。そしてもう優斗は先に行った。
「……もう出て、バイクで出る準備するよ」
「ああ」
僕らは建物から出て、駐輪場へ向かう。
「寒いね。2月を感じるよ」
「どうでもいいけどお前、向こうに付いたらジャンパー脱げよ?邪魔なままなんだから」
「わかってるよ」
苦笑する。
僕らはヘルメットを被る。
バイクのカゴに救急処置キットを乗せる
手でバイクを押し、Number入口前まで運んだ。
そこには、数人が立っていた。
姉さんと、王牙さん、舞さん、愁、瞳が立っていた。
「ほんっと。あんたら今いい顔してるわね。これで終わりなんだって感じの」
「そうかい?」
姉さんの言葉に僕は笑みをこぼす。
「あの…これ…受け取ってださいまし」
「ん?」
瞳からなにか手渡される。それは
「お守り?」
「はい。必勝お守りです。…夢咲?さんも」
「ああ、ありがとう」
奏もそれを受け取る。
瞳も優しいな。初対面の人にお守りを渡すなんて
お守りには必勝守と書いてある。
「…受験かな?」
僕は思わずそう呟いた。その言葉に瞳はくすくすと笑う。
「まあ、頑張れや」
「愁。君だけは負けないでね?」
「ふん。俺を舐めるな」
愁は自信満々に鼻を鳴らす。
「こっちは私らに任せろ。」
「舞さんは頼れますね愁と違って」
「は?」
舞さんの言葉が今はとても頼もしい。
「……疾風、行ってらっしゃい」
「王牙さん?もっと頼もしそうに言ってください。マジで不安になるので」
「ごめんね?まあ、トップとして最善をつくすよ」
僕はその弱気な言葉に苦笑する
「もっと頼もしくなってください。あなたが弱気じゃなきゃダメですよ!」
「そうだ王牙。もっとシャキーンとしろ」
舞さんも同調する。みんなも苦笑交じりに頷く。
「…ああ。ごめん。―――Number.2。こっちには僕等がいる。背中は僕らに安心して預けろ。さあ、行って来い!皆の思いを背負って!」
さっきとは打って変わって声の元気さが変わった王牙さん。僕は笑う
「その意気ですよ!」
「ああ!」
腕時計を見る。時刻は七時ちょうど。サドルにまたがる
「奏」
「ああ。大丈夫だ」
「では―――」
僕は今できる最高の笑いを浮かべ、
「行ってきま―――」
「待ってください!」
スライド式の自動ドアが急に開く。みんな驚いてそちらを見やる。そこには
「…深雪」
「ここに居ましたか」
深雪はこちらに歩み寄ってくる。
「治ったのかい?」
「お陰様で。ちょうどさっき退院しました。貴方達を見届けるためにここまで来たんですよ!」
「それはまあ、ありがとう」
荒い息をする深雪に労いの言葉をかける。
「…夢咲さん、疾風さん。絶対勝ってください」
僕と奏は顔を見合わせる。そして深雪に向き直り
「ああ!」
「うん!」
と言った。僕はバイクにライトを付け、エンジンを掛け、足で方向転換する。
「―――行ってきます」
僕のその言葉に
『行ってらっしゃい!』
という六人の言葉が一斉に聞こえる。僕は足から地を離す
バイクは静かに発進する。後ろから奏が付いてくる音がする。
なにもない道を抜け、交差点に出る。信号が赤色だったため一時停止する。僕はバイクに付いているナビを見る。目的地はもちろん神奈川県Y市T区S町二2853-36。
Dreamerのアジトだ。
ここは東京のため、少々時間がかかる。だいたい高速を使って40分。
ここはK市とすごく近いため、Y市まではそんなもんである。
「高速乗るよ。一般で乗るからね、気をつけて、財布あるよね?」
「ああ。もちろん。万札何枚かあるぞ」
なら安心だ。
信号が変わる。
「左」
「了解」
左に曲がる。実はここ、案外交通の便がいい。
近くにJRの駅があり、高速まで約500Mだ。
とても素晴らしい立地なのである。
ただ、あそこの道だけなにもないけど
ちなみに、Number本部も特定されたらしい。
なんでも誰かが尾行されてたらしい。南無三。
まあそんなことはいい。僕らは無心でバイクを走らせる。
風が心地よかった。
高速の入口に入る。紙を受け取る。
多分切符のようなものなのだろう。初めて高速にのったためわからないが。
「降りるのは藤沢ICだ」
「了解」
僕らは夜の高速を静かに疾走する。
…これまで、色々あったな
急に女子校に転校して、彼方に告白されて
そして襲撃されて学校行かなくなって
そのあと如月敦人と戦って死にかけて
舞さんと深雪の力を借りて和歌山から諏訪に行って。
そういやあの後、王牙さんが舞さんに新しい車を買ってあげたらしい。仲いいなあほんと
で、もう最終決戦か。これで一年も経っていない。
僕は感傷に浸っていた。すると
「お前は、この最終決戦をどう思っているんだ?」
と奏が聞いてきた。
「そうだなあ」
その問いに僕はありきたりな答えしか返せなかった
「…やっと終わるって感じだね」
「…そうか」
奏も、彼の心を打ち明ける
「正直、俺はお前らをまだ信用しきってない。」
「だろうね」
苦笑する
関わってまだ一ヶ月も経ってないのだ。そう思うのも無理ない
「だけどな」
奏は一拍おいて
「少なくとも、お前だけは信用したいって、心の底からそう思う」
「…奏」
「なんて、冗談だ」
僕の感動を奏が壊す
「まあ、助っ人感覚で頑張らせてもらうぞ」
「……まあ、いいんじゃない?」
僕は苦笑する
『一緒に頑張ろう』じゃなくて『助っ人として頑張る』か…
奏らしいや。
前を駆ける車を横から抜かす。
前には『神奈川県』という標識が見えた。
その時無線が鳴った。
『あ~、疾風?』
かけてきたのは優斗だった。
「なに~?」
『そろそろ着くよ。』
「あとどんくらい?」
『10分くらい』
「OK。僕はあと30分くらいかな。さっき高速乗った。」
『わかった。相手が襲撃のためにアジトを出たら奇襲しとくね』
「頼んだ」
無線が切れる。……今優斗は高速を降りたのか。
だからこそ無線を使えてるのだろう
「さあて奏。急ぐよ」
「ああ」
僕らは思いっきりアクセルを踏む。
誰も走ってない高速道路を時速100km超えで疾走した








「次の料金所だからね」
「ああ。」
青看には『藤沢』という文字と、左斜上の矢印マークがあった
僕らは左のレーンに移る。
「……もうなんか……緊張してくるね」
僕はぽつりと呟いた
「俺は今ウッキウキだぞ」
「なんでそういう事言うの???」
ガチでウッキウキな感じの声を出す奏に若干引く
「いやあ。お前よお。そんなにナーバスじゃ勝てるもんも勝てないぞ?」
奏がウッキウキな声で真面目なことを言う。……たしかに、奏の言うとおりだなあ
「奏……君もいいこと言うんだね……」
僕は感動する。
「お前は俺の父親か?」
奏がウッキウキと呆れを綺麗に織り交ぜた声を出す。こいつ歌い手になれるくらい声作るの上手いな
歌い手のこと知らんが
一般の料金所に入る。紙を渡す
「400円です」
「はい」
財布から500円玉を渡す
「はい。100円のお釣りです」
目の前の赤の黄色の縞々のバーが上がる
僕は前に進む。
周りは静かな道だった。
脇にはコンビニがあり、その他はマンションや店などが集まっていた。
コンビニと、24時間営業の
僕は脇に路駐する
「待ってくれるのな。優しいな」
奏が後から来る。
「よし行くか」
「おいおい無視するな」
奏の呆れ声を無視し、バイクのエンジンをかけて走り出す
静かに走るバイクは、まるで『電』のようだった。






『200M先を右折。そのあと、目的地です』
ナビがそう僕に告げた
「ついにか……」
僕は小さくそうこぼす。赤信号のため停止する
さっきまでの緊張は無くなり、今は言葉では言い表せないほど興奮していた。
「ふう……今すぐ暴れたい今すぐ勝ちたいさっさと帰りたい」
とにかく、すぐ終わらせたかった。早く帰って彼方とイチャイチャしたい
「どうでもいいがお前って彼女いるか?」
奏が後ろから聞いてくる
「居るよ」
「マジか……まあ、お前には一人や二人居たって不思議じゃないな」
「二人いたらまずくない?」
僕は苦笑する。
「三人か?」
「もっとだめだよね????」
僕は小さく叫ぶ
何いってんだこいつマジで。僕が3股なんかできるわけ無いだろ
まずやる意思がないけど
僕は彼方が居るッ!
青信号に変わったのを確認し、発進する
『まもなく右方向です』
ナビに従い右に曲がる。
曲がった先には―――
「写真通り、か」
一本道が横に通っており、真ん中に大きな二階建てか3階建てらしき建物
看板には『なんでも屋夢見』
…間違いないな
僕は建物の近くにバイクを止める。近くには優斗のバイクもあった。
僕はジャンパーから銃を取り出し、そのままジャンパーを脱いでバイクのカゴに置いた
日本刀『三笠』は今日は無い。さすがにあんなんぶら下げて街を走れない。所持の許可は政府から出てるのだが…やはり街にそうそう持ち出せない。
代わりに五月雨丸を持ってきた。
ズボン(ジーンズ)のポケットの中にある。
無線を取り出し、優斗の番号にかけた
『疾風?着いた?』
優斗はすぐに出た
「うん。着いたよ。そっちはどう?」
『そう。こっちはいい感じだよ。とりあえず早くおいで』
それだけ言って無線は切れた
……おかしいな。もし戦闘中ならこんな早く出れるはず無い。
…いや、ただ移動中のだけかも知れない
考えすぎは良くないからな
僕に続いて奏もバイクを止める
そして建物の前に立つ。ドアは開いていた
壊された形跡はない
……Dreamerが自主的に開けたのか、すでに開いていたのか―――
ふと辺りを見渡すと、倒れてる人が何人か居た。
なるほど。外に出てきた奴らを倒して、そのまま開いているドアから入ったのか。
僕は納得する。
「行くよ」
「ああ」
僕は五月雨丸を取り出し、拳銃を右手に、五月雨丸を左手に中に突撃する。
しかし―――
「だれも居ない?…いや、みんな倒れている?」
奏が訝しげにつぶやく。
そう。みんな血を流して倒れていた。
「……これ全部、優斗が?」
僕は階段に向かう。
そこまで立っている人間は誰一人として居なかった。
それは二階もだった。どうやらこの建物は三階建てらしい。階段が上に続いている。
階段は2つあるようだ。
二階を念の為細かく探索する。隠れられるような場所はなく、柱の裏にも誰も居ない。
僕は反対側にある階段まで行き、その階段を上る。
3階は、通路しかなかった。狭い一本の通路の真ん中に曲がり角がある。
警戒しながら進む。またここも殺気が無かった。
拳銃を前に構えながら角を曲がる。そこには―――
「うわ……嘘だろ…?」
一本道と、部屋があった
そして、その道には―――


大量の死体があった


血と人でまともに歩く場所もない。
仕方ないので人を踏んで部屋に向かう。
奏がうなりながら後を着いてきた。
奏、こういうのは苦手なのかな
そして部屋にたどり着く。五月雨丸を一旦仕舞い、ドアノブを握る。鍵は無さそうだ。
「奏、僕の後ろにいる?」
僕は扉の向こうに聞こえないように小さく聞く。
「ああ」
奏も小さく返す。
心臓の鼓動を感じる。興奮はなぜか収まっていた。
やけに落ち着いている自分に内心驚く
「…行くよ」
僕は決意をするように言い、ドアノブを思いっきり押した。
そして、部屋には―――




「……遅かったね。ふたりとも」



優斗が唯一人、椅子に座っていた──────
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