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八章 ただいま、みんな
三十九話 ただいま、みんな
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「ん…」
「…目、覚めた?」
僕は姉さんと愁の寝ている病室のベットに居た。
…先程の戦いで愁は負傷し、姉さんは気絶した。どうやら、僕の銃声を聞いてショックで倒れただけらしい。心配させおって。
諏訪支部にはこれ以上の攻撃はない、と判断され、残りは諏訪支部のおえらいさんに任せることとなった。まあしかし、よくあの数の敵を捌けたな。感心する。優斗は───わからない。音信不通だ。
舞さんと深雪は本部へ戻った。その際に僕達を病院に運んでくれた。全く、ありがたい話である。
優しいよな。舞さんは。
…深雪も精神病院に連れて行かなきゃな。
「…ここは…」
姉さんが起き上がる。愁のような外傷は負ってないため、一日で起き上がることができていた。
「病院だよ。姉さん」
「そう…病院…」
姉さんは頭を押さえる。病院服に着替えさせられている姉さんは、自分の服装を見て納得したような顔をする。
そしてベッドに寝ようとする。そして
「…ん?」
また起き上がる。僕の顔をじっと見つめた。
「今、姉さんって……」
「…うん」
姉さんの質問に僕はそう答えた。
沈黙が流れる。姉さんはもう一度僕の顔を見て―――
そして、こう言った。
「はや…て…」
姉さんは慌ててベッドから降りようとして、失敗し、態勢を崩す。それを支える。そして──耳元で囁いた
「…ただいま、真理奈」
そして姉さんは──ベッドから崩れ落ちた。自然と抱きしめてくる。強く、強く。
「…はや…て…疾風…」
うわーん、と大声で泣け叫ぶ姉さん。
「ごめんね…」
精一杯の謝罪をする。
優しい時間が流れる。
その間、僕達は喋らなかった。
言葉は要らない。僕達には。
割と長い時間が流れた。離れたのは姉さんだった。
「もう…誕生日会も潰して、葬式もやったあとに帰ってこないでよ、バカ!」
泣きながら───そして笑いながら優しく言う姉さん。僕はフッと笑い、
「何もかもを知っていたのに教えなかった王牙さんに文句を言うんだな!フハハハ!って、痛っ」
と言うと、姉さんは少し強い力でぽかぽか叩いてきた。
「ばかあ…」
そしてまた僕に抱きついてくる。…ちょっと調子が狂うな。でも、こういう姉さんもいっか。いつもより甘えてくる姉さんも、可愛いし。彼方には負けるけど?????????
…彼方にはあんなこと言っちゃったし…怒られるかなあ
姉さんは僕から離れる
「…愁も退院したらお祝いね」
「ふ…盛大に頼むよ」
そう言い残し僕は病室を去った。姉さんの寂しそうな視線が刺さる。面会時間ギリギリなんだ。ごめんね
さ、王牙さんを殴りに行こう
僕はそのビルのドアを開けた。久しぶりに来るなあこの事務所。事務の人たちが僕を見て唖然としていた。ま、そりゃそうだわな。あの人何も言ってないから僕が生きてるはずないし。普通に考えて。
エレベーターを使い最上階まで上がる
僕は歩いてその部屋にたどり着く。そして思いっきりドアノブをひねり上げ、蹴り飛ばした。
「お、う、が、さ~ん!」
猫なで声に殺意を折り込みながら言う。
「や、やあ疾風…ちょっと怖いと思うなあ~…」
その部屋に居たのは王牙さんと舞さん。舞さんはほくそ笑んでる。
「自業自得だ。殴られてこい」
「殴られるの?!え、偉い人は殴っちゃだめだよ!疾」
「殴っていいんですか?!」
舞さんに公式な許可をもらう。うふふ~さあ本気で殴ろう~
笑顔で王牙さんに近づく。
「落ち着け!疾風!僕は無罪だ!」
王牙さんがなにか言ってるが聞こえない。無罪とか全く聞こえてないから。
近寄って机の向こうに座っている王牙さんに向かって拳を思いっきり振る
「ぎゃああああああああああああああああああああ?!?!?!?!」
目を閉じて顔をそむけ、叫ぶ王牙さんを尻目に王牙さんの目の前で拳を止める。
「……とりあえず、殴りませんからなんで僕が生きてることを隠したのか教えて下さい」
拳を引っ込める。王牙さんは顔を戻し、目を開ける。王牙さんは明らかに安堵していた
「意気地なしが」
「疾風…疾風が死んでると思ってる真理奈たちに実は生きてました~なんてドッキリ、おもしろくない?」
舞さんを無視し、発言する王牙さん。僕は呆れる。そうだねこの人はこういう人だったね
だがしかしそれはそれ、これはこれだ。
「姉さんと愁を心配させまくって、上司としてどう思ってるんですかねえ?ねぇ????????」
にこにこする。にこにこ。笑顔だ、笑顔。
「……さて疾風、僕はこれから用事g」
「逃さねえぞ」
椅子から立ち上がって逃げようとする王牙さんを舞さんが笑顔で拘束する。gjです舞さん。
「ま、待ってくれ!僕は悪くない!曖昧なことを言いながら生きて帰ってくる疾風が」
「僕がなんですか?殴りますよ?」
悲痛な叫びを上げる王牙さん。懇願しても逃しませんよ?????僕達に慈悲はありませんので!てか許す意味無いんで。
「……悪かったって……舞のことも黙ってて……」
「そっちじゃなくて僕が生きていることを隠したことを謝れっつってんですよ王牙さん」
「口悪いって……ごめんね……」
「許しません」
「なんで?!」
「まだ最初の質問に答えてもらってないですから」
あくまで笑顔を貫き通す。
それが神無月疾風
「……君が生きていることは隠したほうが都合が良かったんだよ。真理奈たちが君の捜索に全力を出して諏訪をおろそかにしないようにね。」
王牙さんの口から出たのは割と正当な理由だった。そういや王牙さん頭良かったな。こういうこともやってのけるのか…すごいな
だがしかし
「理由はわかりましたが……許しはしませんよ?」
「理不尽!!!」
王牙さんはいつの間にか舞さんの拘束から逃げ出し、捕まえようとする僕からも逃れ、部屋を抜け出した。まったく、騒がしい人だ。何もしないのになあ。
「とりあえず、形だけでも言っておくか。おかえり、疾風」
舞さんの優しい労いの声。僕は
「形だけなら気持ちだけ受け取りますよ」
「……ハッお前らしい回答だな。」
とニヒルな笑みで言い、部屋を立ち去った。
…彼方に叱られる時が来たな。もう夕方だ。学校も終わっただろう。
窓があるこの部屋に、強い西日が入り込む。
……ドッキリだね。もはや。
さ、西賀家に行くとするか
「ふぅ……」
ヘルメットを外す。
バイク…なんだっけ、名前は。まあいいか
バイクを西賀家の駐車場の隅に置く。
…覚悟を決める。さて、西賀家に入らないといけなさそうだ。
チャイムを鳴らす。出てきたのは───
『…はい』
姉さんだった。なんで???
「…はいじゃないよ姉さん」
『あ、どうぞお入りください』
ガチャリ、と切られた。全く困る姉だこと。
門を開け、ドアを開けると、姉さんが居た。
…由香里と一緒に。
僕は全力で逃げようとしたが、事前に姉さんに無理やり引き上げられる。なんつー剛力……てかよくもまあ足で靴を脱がせながら引き上げられるわ。
リビングに連れて行かれると、
「はやて~!」
さっそく抱きついてくる由香里。ちょ、なにとは言わんが当たってる……彼方より少し大きい、何とは言わないけど、柔らかいものが……
「……驚かないんだね」
あくまで冷静さを通す。内心クッソ焦ってる。
「疾風が早々死ぬはず無いもん~」
と自信満々に言う由香里。はあ…こまった。なんで僕の周りはこう根拠なく人を信用する人が多いんだろうか
「……はあ……」
全く、困った人だ。てか、
「由香里、彼方は?」
「ああ、生徒会の会合よ。そろそろ帰ってくると思うわ。」
「じゃあ帰ってないのか」
頷く由香里。帰ろ。うん。
「じゃ、彼方が帰ってきたらまた来るね」
「はーい」
由香里から脱出して玄関に向かう。玄関に着き、ドアを開けた。
すると
「……え」
「あ」
居た。そこに。
ちょっと緑がかった髪。見慣れた童顔。ちょっと大きめの、だぼっとした制服。うっすらくまができたちっちゃい目。
間違い無い。この子は……
「はや、」
なにか言う前に僕の方から歩み寄る。そして
「……ごめんね、彼方。……ごめんね……」
優しく、優しく、でも強く抱きしめる。
それは彼方も同じだった。抱きしめ返してくる。
「疾風……はやて……なんでもう帰ってきてるの……もう。帰ってきたなら先に言ってよ。あんなこと言って、堂々と死ぬとか言ったのにね」
彼方は泣きながら笑ってそう言う。僕は、言った。
「……ごめんマジで。いやあ。生きて帰れるとは思わなくて」
「……ばかあ……ばかあ……」
彼方は僕の背中をぽかぽか叩いてくる。
「ごめんよ。言えなくて。……ただいま、彼方」
彼方はその言葉を皮切りに嗚咽を漏らした。
耐えられなかったようだ。一気に涙が溢れている。
彼方は一気に抱きしめるを強くした。
僕は彼方の背中をさする。
優しい時間が流れた。
陽が完全に落ち、電灯の明かりしか見えなくなったころ、彼方は僕から離れた。
「はあ……ひっさびさにこんな泣いたわね。あなたのおかげよ~?」
いたずらっぽく笑う彼方。
「……ははは。すみませんでした。」
「うむ!よろしい!」
謝ると彼方は満面の笑みで言ってきた。
「で、疾風。『別れちゃった』彼方ちゃんになんか言うことは?」
またもやいたずらっぽく言う彼方。僕はため息をつく。
「…なんか、言い方と脅迫のしかたが彼方らしいや」
「脅迫じゃないわよ?さ、ほら早く」
急かしてくる彼方。僕は真顔で彼方に向き合う
「西賀彼方さん。好きです、付き合ってください」
彼方が満面の笑みで僕に飛んで抱きついてくる。
「……うんっ!!!!もちろん!!」
「…目、覚めた?」
僕は姉さんと愁の寝ている病室のベットに居た。
…先程の戦いで愁は負傷し、姉さんは気絶した。どうやら、僕の銃声を聞いてショックで倒れただけらしい。心配させおって。
諏訪支部にはこれ以上の攻撃はない、と判断され、残りは諏訪支部のおえらいさんに任せることとなった。まあしかし、よくあの数の敵を捌けたな。感心する。優斗は───わからない。音信不通だ。
舞さんと深雪は本部へ戻った。その際に僕達を病院に運んでくれた。全く、ありがたい話である。
優しいよな。舞さんは。
…深雪も精神病院に連れて行かなきゃな。
「…ここは…」
姉さんが起き上がる。愁のような外傷は負ってないため、一日で起き上がることができていた。
「病院だよ。姉さん」
「そう…病院…」
姉さんは頭を押さえる。病院服に着替えさせられている姉さんは、自分の服装を見て納得したような顔をする。
そしてベッドに寝ようとする。そして
「…ん?」
また起き上がる。僕の顔をじっと見つめた。
「今、姉さんって……」
「…うん」
姉さんの質問に僕はそう答えた。
沈黙が流れる。姉さんはもう一度僕の顔を見て―――
そして、こう言った。
「はや…て…」
姉さんは慌ててベッドから降りようとして、失敗し、態勢を崩す。それを支える。そして──耳元で囁いた
「…ただいま、真理奈」
そして姉さんは──ベッドから崩れ落ちた。自然と抱きしめてくる。強く、強く。
「…はや…て…疾風…」
うわーん、と大声で泣け叫ぶ姉さん。
「ごめんね…」
精一杯の謝罪をする。
優しい時間が流れる。
その間、僕達は喋らなかった。
言葉は要らない。僕達には。
割と長い時間が流れた。離れたのは姉さんだった。
「もう…誕生日会も潰して、葬式もやったあとに帰ってこないでよ、バカ!」
泣きながら───そして笑いながら優しく言う姉さん。僕はフッと笑い、
「何もかもを知っていたのに教えなかった王牙さんに文句を言うんだな!フハハハ!って、痛っ」
と言うと、姉さんは少し強い力でぽかぽか叩いてきた。
「ばかあ…」
そしてまた僕に抱きついてくる。…ちょっと調子が狂うな。でも、こういう姉さんもいっか。いつもより甘えてくる姉さんも、可愛いし。彼方には負けるけど?????????
…彼方にはあんなこと言っちゃったし…怒られるかなあ
姉さんは僕から離れる
「…愁も退院したらお祝いね」
「ふ…盛大に頼むよ」
そう言い残し僕は病室を去った。姉さんの寂しそうな視線が刺さる。面会時間ギリギリなんだ。ごめんね
さ、王牙さんを殴りに行こう
僕はそのビルのドアを開けた。久しぶりに来るなあこの事務所。事務の人たちが僕を見て唖然としていた。ま、そりゃそうだわな。あの人何も言ってないから僕が生きてるはずないし。普通に考えて。
エレベーターを使い最上階まで上がる
僕は歩いてその部屋にたどり着く。そして思いっきりドアノブをひねり上げ、蹴り飛ばした。
「お、う、が、さ~ん!」
猫なで声に殺意を折り込みながら言う。
「や、やあ疾風…ちょっと怖いと思うなあ~…」
その部屋に居たのは王牙さんと舞さん。舞さんはほくそ笑んでる。
「自業自得だ。殴られてこい」
「殴られるの?!え、偉い人は殴っちゃだめだよ!疾」
「殴っていいんですか?!」
舞さんに公式な許可をもらう。うふふ~さあ本気で殴ろう~
笑顔で王牙さんに近づく。
「落ち着け!疾風!僕は無罪だ!」
王牙さんがなにか言ってるが聞こえない。無罪とか全く聞こえてないから。
近寄って机の向こうに座っている王牙さんに向かって拳を思いっきり振る
「ぎゃああああああああああああああああああああ?!?!?!?!」
目を閉じて顔をそむけ、叫ぶ王牙さんを尻目に王牙さんの目の前で拳を止める。
「……とりあえず、殴りませんからなんで僕が生きてることを隠したのか教えて下さい」
拳を引っ込める。王牙さんは顔を戻し、目を開ける。王牙さんは明らかに安堵していた
「意気地なしが」
「疾風…疾風が死んでると思ってる真理奈たちに実は生きてました~なんてドッキリ、おもしろくない?」
舞さんを無視し、発言する王牙さん。僕は呆れる。そうだねこの人はこういう人だったね
だがしかしそれはそれ、これはこれだ。
「姉さんと愁を心配させまくって、上司としてどう思ってるんですかねえ?ねぇ????????」
にこにこする。にこにこ。笑顔だ、笑顔。
「……さて疾風、僕はこれから用事g」
「逃さねえぞ」
椅子から立ち上がって逃げようとする王牙さんを舞さんが笑顔で拘束する。gjです舞さん。
「ま、待ってくれ!僕は悪くない!曖昧なことを言いながら生きて帰ってくる疾風が」
「僕がなんですか?殴りますよ?」
悲痛な叫びを上げる王牙さん。懇願しても逃しませんよ?????僕達に慈悲はありませんので!てか許す意味無いんで。
「……悪かったって……舞のことも黙ってて……」
「そっちじゃなくて僕が生きていることを隠したことを謝れっつってんですよ王牙さん」
「口悪いって……ごめんね……」
「許しません」
「なんで?!」
「まだ最初の質問に答えてもらってないですから」
あくまで笑顔を貫き通す。
それが神無月疾風
「……君が生きていることは隠したほうが都合が良かったんだよ。真理奈たちが君の捜索に全力を出して諏訪をおろそかにしないようにね。」
王牙さんの口から出たのは割と正当な理由だった。そういや王牙さん頭良かったな。こういうこともやってのけるのか…すごいな
だがしかし
「理由はわかりましたが……許しはしませんよ?」
「理不尽!!!」
王牙さんはいつの間にか舞さんの拘束から逃げ出し、捕まえようとする僕からも逃れ、部屋を抜け出した。まったく、騒がしい人だ。何もしないのになあ。
「とりあえず、形だけでも言っておくか。おかえり、疾風」
舞さんの優しい労いの声。僕は
「形だけなら気持ちだけ受け取りますよ」
「……ハッお前らしい回答だな。」
とニヒルな笑みで言い、部屋を立ち去った。
…彼方に叱られる時が来たな。もう夕方だ。学校も終わっただろう。
窓があるこの部屋に、強い西日が入り込む。
……ドッキリだね。もはや。
さ、西賀家に行くとするか
「ふぅ……」
ヘルメットを外す。
バイク…なんだっけ、名前は。まあいいか
バイクを西賀家の駐車場の隅に置く。
…覚悟を決める。さて、西賀家に入らないといけなさそうだ。
チャイムを鳴らす。出てきたのは───
『…はい』
姉さんだった。なんで???
「…はいじゃないよ姉さん」
『あ、どうぞお入りください』
ガチャリ、と切られた。全く困る姉だこと。
門を開け、ドアを開けると、姉さんが居た。
…由香里と一緒に。
僕は全力で逃げようとしたが、事前に姉さんに無理やり引き上げられる。なんつー剛力……てかよくもまあ足で靴を脱がせながら引き上げられるわ。
リビングに連れて行かれると、
「はやて~!」
さっそく抱きついてくる由香里。ちょ、なにとは言わんが当たってる……彼方より少し大きい、何とは言わないけど、柔らかいものが……
「……驚かないんだね」
あくまで冷静さを通す。内心クッソ焦ってる。
「疾風が早々死ぬはず無いもん~」
と自信満々に言う由香里。はあ…こまった。なんで僕の周りはこう根拠なく人を信用する人が多いんだろうか
「……はあ……」
全く、困った人だ。てか、
「由香里、彼方は?」
「ああ、生徒会の会合よ。そろそろ帰ってくると思うわ。」
「じゃあ帰ってないのか」
頷く由香里。帰ろ。うん。
「じゃ、彼方が帰ってきたらまた来るね」
「はーい」
由香里から脱出して玄関に向かう。玄関に着き、ドアを開けた。
すると
「……え」
「あ」
居た。そこに。
ちょっと緑がかった髪。見慣れた童顔。ちょっと大きめの、だぼっとした制服。うっすらくまができたちっちゃい目。
間違い無い。この子は……
「はや、」
なにか言う前に僕の方から歩み寄る。そして
「……ごめんね、彼方。……ごめんね……」
優しく、優しく、でも強く抱きしめる。
それは彼方も同じだった。抱きしめ返してくる。
「疾風……はやて……なんでもう帰ってきてるの……もう。帰ってきたなら先に言ってよ。あんなこと言って、堂々と死ぬとか言ったのにね」
彼方は泣きながら笑ってそう言う。僕は、言った。
「……ごめんマジで。いやあ。生きて帰れるとは思わなくて」
「……ばかあ……ばかあ……」
彼方は僕の背中をぽかぽか叩いてくる。
「ごめんよ。言えなくて。……ただいま、彼方」
彼方はその言葉を皮切りに嗚咽を漏らした。
耐えられなかったようだ。一気に涙が溢れている。
彼方は一気に抱きしめるを強くした。
僕は彼方の背中をさする。
優しい時間が流れた。
陽が完全に落ち、電灯の明かりしか見えなくなったころ、彼方は僕から離れた。
「はあ……ひっさびさにこんな泣いたわね。あなたのおかげよ~?」
いたずらっぽく笑う彼方。
「……ははは。すみませんでした。」
「うむ!よろしい!」
謝ると彼方は満面の笑みで言ってきた。
「で、疾風。『別れちゃった』彼方ちゃんになんか言うことは?」
またもやいたずらっぽく言う彼方。僕はため息をつく。
「…なんか、言い方と脅迫のしかたが彼方らしいや」
「脅迫じゃないわよ?さ、ほら早く」
急かしてくる彼方。僕は真顔で彼方に向き合う
「西賀彼方さん。好きです、付き合ってください」
彼方が満面の笑みで僕に飛んで抱きついてくる。
「……うんっ!!!!もちろん!!」
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