あの大空の下で 一部 始まりの「Number.2」

KsTAIN

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八章 ただいま、みんな

三十六話 Dreamer、降臨

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「…最近平和だな」
「狩猟生活して山ごもりしてるのが平和なわけないんですが」
舞さんの呟きに突っ込む。前の深雪の暴走から2週間経った。この間襲撃は無い。なぜか狩猟免許を持っている舞さんに狩りをしてもらい、僕と深雪で料理する生活を今している。もともと車に食料があったのだが、まあ…燃えた。
金はあるので山頂に売店、自販機があれば水を大量購入していたので、幸い水にはあまり困っていない。
方位磁石も生きている。登山客に聞くと、今僕たちが居る山は諏訪に相当近いようだ。次の山を越えたら、諏訪らしい。
クリスマスから約一ヶ月はたっただろう。僕は今が何曜日かは知らない。ちなみに携帯、無線も燃えた。
「まあ、食料は余っているし、次の山を越えるまでは持つでしょう。」
深雪の冷静な判断。…そういや、深雪を精神病院につれていかなければ。
「…疾風、どういうことだ。」
舞さんの重い声。やっべ、心読まれた
「…いえ、気にすることは。」
僕はあっけらかんとして返す。深雪がきょとん、としているが、まあ気にすることはない。
舞さんから目をそらすように方位磁石に目を落とす
「あ、諏訪は北西方面なので、通る道が違いますね」
「…分かれ道の前にそれを言え…」
分岐している道を真っ直ぐ進んだとき、僕は呟いた。舞さんがすかさず突っ込む。僕たちは引き返し、もう一つの道に進む。
そこからは腹が減るまで平和な道をただただ北西に進み続ける。腹が減ったら、獲った肉を食う。それを繰り返し続ける。苦しいわけでもないし、寝る時に気をつければいいくらいだ。寝床はないから、僕は木に登って寝る。舞さんたちは…知らない。川が近くにあるなら、風呂には入れないけど、疑似シャワー的なことはできる。
襲撃にさえ気をつければ、安全に山を越えられる。まあ、もう襲撃が無いとは言い切れないが、あそこまでぼこぼこにしておけば、まあそう簡単には手出しできないだろう。
「油断は禁物だぞ?」
舞さんは冷淡な声で言う。が、少し、ほんの少し焦ってる。Number側からしたら、Number.2とNumber.81両名と音信不通なんて、たまったもんじゃない。
「まあ一番混乱してるのは本部でしょうがね~」
呟く。深雪は黙っている。舞さんは苦笑する。
そこからはほとんど黙ったままひたすら歩き続ける。ときどき道を間違えた時にしゃべる程度だ。
そして数時間がたった

僕たちは広い場所に出た
「…腹減ったな」
舞さんがぼそっと呟く。食料は───肉と果物しか無い、か。基本的に山菜を獲って食べたりもしていた。糖分はどうしょうもない。果物の木があれば別だが。どんぐりも食べられるぞ
「ちょこっと山菜獲ってくるわ」
舞さんはすたすた山菜を採りにどこかに行った。
「…私、ちょっと寝ますね」
深雪は木の幹まで歩いてもたれかかった。
そのときだった。僕はなにか気配を感じた。
「…気配を消すのが上手ですね」
僕は後ろを振り向いて拍手する。
「…よく気づいたな、Number.2」
ザッザッザッ。木の陰からそいつが姿を表した。その堂々とした歩き方。只者ではない。そして、気配は一つ。護衛は無い。如月敦人でさえ、護衛は居た。あいつは、最高幹部だった。それでも護衛が居た
でも今回の相手は、単機だ。これが意味するのは最高幹部以上の実力者であるということ。それならば、こいつは。こいつこそが。
「…まさかそっちからやってくるとは、ね。」
僕は一泊置き、地を蹴る。相手は拳銃を構えるが、相手の早打ちより僕のジェットシューズのほうが早い。五月雨丸と拳銃がぶつかる。鉄と鉄がぶつかる鈍い快音。
「Dreamerサン?」
押し負けるとふんだのか、Dreamerのボス、つまり本当の「Dreamer」は一歩引いた。
「…思ったとおりの火力だな。…後ろで寝てるのは天ノ川深雪君かな?」
僕も一歩退く。相手の質問を鼻で笑い飛ばす。
「わかってることを聞くな」
完全なNumber.2モードに入る。日本刀を如月敦人を仕留めるときに持っていかなかったことを後悔する。日本刀があれば完全なリーチ有利が僕に生まれるのだが。相手が日本刀がある可能性は少ないだろう。背中にあるという可能性も否定できる。なぜなら、相手が背中に刀を隠し持っているならば、ここまで身軽に動けない。
「君の拳銃の弾が無くなるのと、僕の体力が尽きるの、そして、舞さんが戻ってくるのはどれが一番最初だろうね?」
忍び足で少しづつ近づく。近づきすぎると簡単に拳銃の餌食になる。
相手も拳銃を構える。僕も拳銃を取り出すふりをする。そうすると、相手は普通しめた、と撃つはずだが
「君は撃たないのね」
あいては撃たなかった。僕は拳銃を出す。
「…何が望みだ?」
僕はDreamerに聞いた。
「…自由だ」
淡々として答えてくる。拳銃を二人共構えている、切迫した空間。
引き金に同時に手をかける。いつ引くかの読み合い。早打ちではない緊張感。初めての緊張感
この空気。実に気分がいい。快感も感じる。
「…引くか?」
僕は問う
「…さあ。Number.2様ならどうするかな」
不敵な笑みを浮かべるDreamer。そこには気持ち悪さなどは無く、ただただ自身に満ち溢れているDreamerの姿があった。
さらに場が緊張する。このチキンレース、読み勝ってしまった方が、負ける
リボルバーは一々撃鉄を落とさなければならない。いつもならその程度容易いのだが、Dreamerはそんな隙き、与えてくるはずがない。
緊張の一瞬。勝負はここで始まった。
いつもより大きな銃声が辺りに響く。
「…まさか、こうなるとはね」
「全くだ」
僕たちは二人同時に引き金を引いた。そして、僕は右方向に、Dreamerは左方向に避けた。
「でも、遅いよ!」
しかし、避けたあとの行動は僕のほうが早かった。撃鉄を落とし、相手の銃に銃口を向け、発砲する。相手の銃は悲鳴をあげて、粉々に砕ける。
「勝負あり、かな?」
もう一度撃鉄を落とす。Dreamerの脳天を狙った駿河の銃口はいつにも増して黒く輝いている。
「油断大敵って知ってるか?」
Dreamerが呟いた。油断はしてないさ。だって、
「こんなんで勝っちゃったら、君は本当に弱いよ?さあ、本気を見せてみな!」
僕は叫ぶ。Dreamerが地を蹴る。それに合わせて駿河をDreamerに向かってぶン投げた。もちろんそれは腕や手で弾かれるのだが、そうすると、片手が塞がることになる。もう片方の手に向かってドロップキックを放つ。さらに、Dreamerは地を蹴ったばっかで、足が地から離れている。回避は無理だ。
「グァッ」
しかし、Dreamerは変なうめき声を上げて体を捻って回避する。流石に驚いた。ドロップキックを外した足は虚しく着地する。
僕たちの間で閃光が走る。
にらみ合いが続く。Dreamerがしかけてきた。そしてそれをいなそうと行動に出た瞬間────
「貴様ッ!何をしている!」
舞さんの大声が響く。Dreamerはびっくりしたようで、狙いを定められなくなったようで、思いっきり攻撃を外した。しめた。顔をぶん殴る。Dreamerは血を吐いて吹っ飛ぶ。仰向けで地とぶつかっていた。
「…今回は俺の負けだ。しかし、次あった時は、本気で行かせてもらう。君とはいい勝負ができると期待しているよ。」
Dreamerは立ち、そう言って、立ち去って行こうとした。
「君の名前は?」
僕は大声で聞いた
「睦月優斗だよ。神無月疾風君」
立ち止まってそう返したDreamer。…名前が割れている。そして、『睦月』という名字。優斗という名前。睦月優斗。あの優斗と同じ名前だ。でも、実力、戦い方、話し方。すべてが優斗と違う。つまり。

Dreamerは優斗に親しい関係の者だ
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