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あの大空の下で 第Ⅰ〜Ⅲ章 ture love
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プロローグ
「だから、お別れだ。僕らはここで終わり。」
「……なんで、なんでよ!!!」
私は精一杯目の前にいる恋人……いや、恋人だった疾風を睨みつける。
「……説明する義理はない。」
「……なんなのよ、なんなのよ!!!」
「なんなんだ、と言われてもなぁ……」
そう言うとなんと疾風は頭を掻きながらこう聞いてきたのだ
「逆に恋人が死んで居なくなるのを目の前で見るのと勝手にどっかで死ぬのどっちがいいと思う?」
「えっ……?」
疾風の口から零れた「死」この言葉は、私の全身を震わせた
「死ぬって……どういうことよ!!!」
私は怒鳴りながら聞いた。疾風は、
「そのままの意味だ。」
と、私に絶望を押し付けてきた
「なんで死ぬのよ!!!」
私は耐えられなくなり、溜まった怒りを爆発させた。
疾風が、死ぬ──そんなことしんじたくなかった。疾風と私が別れたって、絶対私は彼のことを想うだろう。
それなのに……
「……なんなのよ…ホントに…なんなのよ」
私はとうとう耐えられなくなり、涙を流した
「ごめんね」
疾風はそういって私を抱きしめてきた。
久々に感じた温かみだった
「…僕は人の気持ちが理解できない。空気が読めたとしても、人の感情は読み取ることが出来ないんだ。だから、僕は皆に嫌われるし、僕も皆が嫌いだ。…でも、彼方だけは違ったらしいな…僕にはわからないけどね」
疾風も泣いているようだった
「……」
私はもうなんの言葉も出なかった。
出るのは、嗚咽だけ。
しかし…私は、隼風が何を言いたいのか、遂に理解した。
「…生きて帰ってきてよね」
疾風は、私の為に命を懸けている。
『人を殺し、また私の為に戦闘することで。』
一話 素晴らしき新天地
『プルルルル!』枕元にある携帯電話が振動した。「んだよ朝っぱらから…」
僕―神無月疾風は眠かったため普通に無視をした。
…しかし
「鳴り止まねぇ…」
二分くらい鳴り止まなかったため、僕の怒りは最頂点に達した。
携帯の電源をいれて、乱暴に通話ボタンを右にスクロールする。
「…もしもし」
恐ろしく低い声で僕はそういった。
「…え、なんか怒ってる?」
と、通話越しに聞き慣れた、少し幼い声が聞こえた。
「…なんだ姉さんか」
電話の相手は双子の姉――霞雨真理奈であった。
「そうよ、疾風。今日は知らせがあるから伝えに来たのよ」
画面から心底嬉しそうな声が聞こえる。とても嫌な予感がした。
「…ちなみに朗報?悲報?」
話の雲行きが怪しくなってきたので、僕は一応姉さんに聞いた。
「朗報よ!」
上機嫌そうな声が聞こえる。うっわーこれろくな話じゃないわ
姉さんは、随分ご機嫌な様子だった。…なにか、僕の背筋に汗がツーーッと通る。嫌な予感がした。姉さんがこんなにもご機嫌な様子の時は、必ずと言っていいほどなにか裏があるのだ。
「…で、朗報っていうのは?」
僕は、恐る恐る声を震わせながら聞いた。
「なんと。…………」
姉さんは、「朗報」の内容を伝えてきた。僕は呆気に取られた。こんな馬鹿げたことがあるのか?…てか…
「なんで僕が…!」
話を聞き終えた僕は悲痛に満ちた叫びを出す。何故なら、その『朗報』とやらの内容は
「男が女子高に行くって…んなバカげた話があるのかよ!?」
そう。『朗報』とやらの内容は、「神無月疾風が女子高に転入する」というおそろしくバカげた話だった。
「あったのよ!そんな話が。」
姉さんはすこぶる上機嫌そうだ。…なぜだろう。この女の顔面を一撃ぶん殴ってやりたい衝動が襲いかかってきた。
「…決定は誰がしたの?」
地獄を見たような声で僕は姉さんにたずねる。すると、耳を疑うような答えが返ってきた。
「お義父さんと、お義母さん。」
「…は?」
おもわずすっとんきょうな声が出る。
「当たり前でしょ、校長なんだから」
姉さんがさもあたりまえだというように僕に告げて来る。
「………」
僕は黙り込む。
お義父さんとお義母さんに決定されたなら仕方なかった。僕はガックリ肩を落とす
こんなことって…あっていいことなのかな
「……なんで…なんで、僕は、女子校に…女子高に!行かなきゃ、ダメなんだ…!」
僕は膝を地面につけ、悲嘆した。こんなのあんまりじゃないか…
「大丈夫よ。貴方が来るから、もう共学よ!」
姉さんは楽しそうに言ってくる。マジで殺意が湧いてくる。
「…今度いっぺんぶん殴る」
「大丈夫よ。他の人も来るから」
僕以外の人も犠牲に…まあ一人よりはマシか
「しかも他の学校からも来るのよ!有志だから結構来るのよ!」
「……は?」
えマジで?…有志ってお前…女子目的で来る奴ぜったい居るやん…
最早人の了解を得ずに決めたお義父さんとお義母さんを殴りたくなってきた。
ていうかさ
「……僕、これからほぼ知ってる人が居ないところで生活するの?」
純粋な疑問を姉さんにぶつける。
「いや、そういう訳じゃないわ」
姉さんは淡々と答えてくる。…さっきまでのはしゃぎっぷりはどこに…
「じゃあなんなんだよ」
少々いらだってきた
「それは来てからのお楽しみってことで」
「マジで殴るからなお前」
少々殺気を込めてしまったため、姉さんは怯えたような声を出す。
「…怖いって」
「微塵も思ってないくせに」
なんかもう諦めた。
「マジで覚悟しとけよ」
「わーこっわーい★」
楽しそうに姉さんが言うので、今度はしっかり殺意をこめて言っててやることにした。
「……首へし折るぞ」
今度は本気で怯えた様子だった。
「えっ、何そのガチトーン…」
「覚悟しとけよクソ姉貴」
ガチャリ
電話を切った。
「……マジあいつ覚悟してろよ…」
頭を抱えて唸る。次会った時は地獄車してやるわあのクソ姉貴
『ピンポ-ン』インターホンが鳴った
「……はいはーい」
僕はドアを開ける。
「よう疾風」
そこには幼馴染である、文月愁が仁王立ちしていた。顔が整っていて、爽やかさがにじみでているため、怖さは若干軽減されてはいるが…声に少々怒りがこもっている。…まさか?!
「…なんだい、愁」
おそるおそる聞くと、予想していた最悪の答えが返ってきた。
「お前のお義父さんはいい人だねぇ」
「え、まさか、愁も…」
「真理奈から聞いてるぜ」
僕はため息をつく。…マジでこういうことは報せておけよ。てか愁には僕のこと言ったのに僕には言わなかったのかあのクソ姉貴。…fu○ken bitch
「…あいつしばくか」
僕は笑顔で言う。
「せやな」
不機嫌そうに愁が答える。
真理奈被害者会作れると思った瞬間である。
「まぁ、上がりなよ」
「へい」
僕は愁に家に上がるように促す。
「お茶飲む?」
僕は靴を脱いでいる愁にたずねた。
「いや、要らん」
愁はそう答えてリビングに入ってそうそうくつろぎ始める。君の家じゃないんだよ?
「そうか」
「水をくれ」
「了解」
愁がぶっきらぼうに水を要求する。僕は二つコップを出し、水を注いで、リビングのテーブルに運んで、そのまま置いた。
沈黙が続く。
「疾風」
沈黙を破ったのは愁だった
「…どうした」
「いや、お前、どうするんだ?」
愁は疑問符を浮かべる。…質問の意味がわからないのですが
「どうする、とは?」
「転校するんだろ?お前も」
愁は舌打ちをした
「…そんなイライラする?」
おそるおそる愁に聞く。すると案の定、
「俺は女子が嫌いなんだよ!女子高なんて地獄だよ!」
と返事が返ってきた。
そう。愁はその整った顔立ちから、大量の女子に告白されて、女性に苦手意識をもっている。ほんと、どうしたらあんなにモテるんだろう…
ちなみに愁に告白した人数は愁によると三十人をこえるらしい。…なんて罪作りな
ちなみに全部蹴ったらしい
「初対面の女子はキツイ…マジで二度と告白されたくねえ…」
愁のこの口ぶり。いやーモテる男は違いますねいっぺん死ねばいいのに
「一生童貞でいいのかお前」
この僕のセリフを翻訳すると、「お前彼女できねえなザマあみろヘッ」である。
「そ、それは困るけど…」
困るのかよ。
「…なら告白を甘んじて受け入れて好きな人探せ」
「お前それ矛盾してね?」
僕は苦笑する。…一生彼女ができないであろう僕の代わりに可愛い女の子と付き合ってほしいもんだ。しかし、
「お前イケメンだろ?お前だっていつか俺と同じ目に合うぞ」
「ブーーーッ?!」
愁が爆弾発言を投下するおかげで水を吹き出してしまった。少しむせる。
「…急になんだよ」
咳き込んで、息苦しい中で声を振り絞って言う。
「…なんでそんなこと言うんですかね」
「いや事実だろ」
愁がさも当たり前のように言ってくる。…なんなんだ、いったい
「えもしかしなくともお前無自覚?」
「…言ってる意味がわからないんだけど…」
「…重症だな、こいつ」
「…愁だってイケメンのくせに…」
「草」
愁が呆れたような視線で僕を見る。…えほんとになんなんだ…
そしてそのまま僕らは夜遅くまで談笑し、寝落ちした愁を家まで運んだのだった。
愁重くなった…?
そして月日はたち、僕は姉さんの学校の近くの姉さんの家引っ越した。さてさてこれからどうするものか……
「久しぶり姉さん」
家の玄関前まで出迎えに来てくれた姉さんに挨拶をする。
「おっ久しぶりだね~疾風」
姉さんは手を振っている。やはり今でも少し幼さが残っている。
「よっ」
愁が軽く手をあげる。
「愁も居るじゃない。いよっす」
姉さんはケロっとした顔で言ってくる。…愁もいるとわかってるくせになにを申すかこのクソ姉貴は
「……殴っていいかな、このクソ姉貴」
僕は独り言を呟く。すると
「別に殺しても天罰はくだらないと思うぜ」
愁が笑顔で言ってきた。決意した僕は姉さんを笑顔で手招きする。
「何~疾風…って殺る気マンマンじゃん……」
今日はやる気マシマシ二倍セールの日なんだよ。姉さん。姉さんはおびえながらこちらに寄ってくる。
「よくもめんどうごと作ってくれたな覚悟しろよクソ姉貴」
僕は近づいてきた姉さんに正拳中段突きを水月(鳩尾)に叩き込む
「ギャアあああああああああああ!!!」
姉さんは悲鳴―――というかもはやおたけびに近いソレをあげた。
「覚悟しろクソビッチ」
愁も加わってもはやいじめと化していた
「ちょ、やめ…」
姉さんがちょっと失神しかけたので殴るのを止める
「痛っ…ひっどーい…」
悲しそうに笑顔で言ってくる。どの口が言うかねえ…
「ドMなんお前
本気で引いている愁が姉さんに聞く。うんそれ僕も思ったよ。
「ち、違うわよ!」
…頑張って否定しても無駄だよ?
「お前も可愛いところあるんだな」
愁は姉さんをからかいたかっただけのようだ。まったく、意地悪な奴だ…
「…本当に痛かったんですけど」
「ごめんって」
悲痛の思いを姉さんが述べるため、適当にあやまっておくことにした。いやまあ、満足したからいいんだけどね
「ごめごめ」
愁も謝る。どうやら満足したそうだ。姉さんは足をふらつかせる。やべえやりすぎた?
「マジ頭フラフラするんですけど…」
ねえなんか姉さん脳震盪起きてそうだけど大丈夫なの???まぁいいか
「どんまい」
僕はどんまい、といったが、なんと愁はこう答えた
「草」
草ってなんだよ…マジで…
てか姉さんの顔が怖いです。うわぁこれは怒ってる
「…愁、一撃蹴らせてもらうわね」
姉さんはにこにこして愁に近づく。…愁、強く生きてくれ!!
「え、お前の蹴りはやばいんだって……」
愁がだんだん姉さんから遠ざかっていく。マジで恐怖にそまっているような声を絞り出している。心の底から怖がっていることを感じられる。
「問答無用!」
姉さんが愁にまわし蹴りをくらわせる。ドゴン、と鈍い音がする。あまりに痛々しかったため、僕は目を背ける。
「いてえええええええええええ!!!」
愁が絶叫をあげる。この視界には入らないが、いまごろ地にのたうち回っていることだろう。
「…ご愁傷さま。」
僕は愁にそう言った。愁がこちらに走り寄ってしがみついてくる
「…マジで痛かった…」
愁は涙目である。どんだけ痛かったんだよ。つうか姉さん痛くしすぎだろ
「…なんか僕も蹴られそう」
小並感ではあるが僕は蹴られるかもしれないと思った。口にでていたらしい
「やっていいの?」
姉さんは目を輝かせて僕に聞いてくる。
「やめてくださいお願いします」
僕は手をあげて降伏した。
「あら~遠慮しなくていいのよ♡」
「マジでやめてくれない?!」
とまぁ、騒騒しい日だった。
~翌日~
愁は今日未明新しい家に帰った。
そして、今は七時半である。
僕はハムエッグとトーストを作っていた。目の前のフライパンから香ばしいにおいがする。
「おふぁよ…」
上から姉さんがおりてくる。すげえ眠そうである。その証拠に目が半開き。
「おはよ姉さん。顔洗って髪溶かしてきな」
「ふぁい」
眼をこすりながら姉さんは洗面台に向かっていく。僕は姉さんの背中に向かって叫ぶ。
「ご飯はそろそろ出来るから待っててね~!」
「ふぇい」
すげえねぼけてそうな声で
姉さんは朝に弱い…忘れてた。恐ろしく寝惚けている。
「いたっ!」
姉さんの声が聞こえる。どうした、と思ってフライパンから離れて姉さんの様子を見に行く。姉さんは地に仰向けで倒れている。目には星が浮かんでいる。姉さんの目の前には…
「…壁?」
どうやら壁に頭をぶつけたらしい。…危なっかしい人だ。マジで
「大丈夫?」
心配であるため、一応聞く。
「だ、大丈夫よ…」
姉さんは額をさすりながら立ち上がる。まあ大丈夫かな。
「目覚ましてねえ~」
僕は姉さんに目を覚ますように促した後、フライパンの前に戻る。
「あちゃー…焦げちゃったかあ…」
まいった。頭を掻く。トーストが少々焦げてしまった。まあ少し焦げ目があったほうがおいしいので、別にいいのだが。怪我の功名とはこのことである。
「で、ご飯は?」
「マジ貴方どんな体質なの?」
さっきとはうってかわって目をぱっちり開いた姉さんがご飯を要求してくる。
「いやなんかさ、顔洗うと目が覚めるんよ」
姉さんは頬をぽりぽりかく。…まあ、そんなもんだとおもっていたよ。
「…凄いよね」
「その代わりいつも眠い」
「ダメじゃん」
一瞬感心したが、次のセリフで一気に呆れた。
「えへへ」
「褒めてないです」
「エヘ☆」
僕はトーストにハムエッグを乗せる。机にトーストを置いた皿を置く。
「ご飯ですよ~」
「あれ、無視…?」
僕は机の前の椅子に座り、姉さんにご飯を食べるように促す。…姉さんは、僕が無視したと思っているが、それには理由がある。
「…あの、時間見てみましょう。」
僕は時計を指さす。
「え…えちょ、うそでしょ?!」
今7時45分。始業時間、8時45分。通学時間およそ30分。姉さんは時間のやばさに気づいたらしい。…のんびりし過ぎである。
「…8時に家を出るんでしょ?」
僕は姉さんに確認した。
「え、えぇ…」
姉さんは少し時間のひっ迫に困惑しているようである。少し声に焦りが出ている。
「学校の支度できてるよね?」
僕は笑顔を浮かべる。
「…できてないわよ」
姉さんは絶望したような顔を浮かべて僕の質問に答える。やっぱりできてなかったらしい。…マジでこの姉は馬鹿なのでは?……いや、馬鹿なのだろう。僕は終わらないであろう自問に自答することで混乱に終止符を打つ。
「さっさと食べて、支度すれば?」
ため息をつく。よくみると、僕が言い終わる前に姉さんは朝ご飯をガフガフ食べ始めた。まったく、そんな急ぐと喉詰まるって…
「姉さんの支度はしておくからもう少しゆっくり…」
「モグモ…グッ…ガハッ!オエッ!」
姉さんは急ぎすぎすぎたようで、思いっきりむせる。ほら言わんこっちゃない
「…落ち着きなよ。はい水。」
「ふぁふぃふぁほう(ありがとう)」
僕は口にものを入れたままの姉さんに水を渡す。まったく…
「飲み込んでから喋る!」
「ふぁい!」
「人の話を聴く!」
僕は姉さんをどなる。やれやれ…
まったく、困った姉さんだ。…あれ前もこんなこと言ってたような。僕はトーストをかじりきる。
そして慌てて僕も準備を手伝う。え?僕の準備?もうできてるに決まってんじゃん
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
僕は支度を終わらせ慌てて玄関から出る姉さんを見送る。僕はこれから転校生として始業式に出るため少し遅めに行くのだ。しかも普通の転校生ではないから。
「はぁ…」
ため息をつく。…ほんと、なんでこうなったんだろ。学校の共学化って言われてもなぁ…
「まぁ、よくあるアニメ的漫画的展開だな。」
頭をぽりぽりかく。しかし、僕は人付き合いが苦手だ。狭く、深く関わるのが得意で、広く関わるのがとても苦手。そんな人なんだ。愁、西賀姉妹、姉さん、そして紹介してないけど他に沢山いるが、まぁ多くはない。…あとあと紹介することにしよう。
おっとそろそろ家を出る時間だ。愁が来るはず……
僕は、とりあえず愁が来るまで今までの思い出に想いを馳せる。まぁ、いや~な思い出もあったけどね。大半いい思い出だったよ。僕の周りには良い人しか居ないからね。
特に僕は昔西賀姉妹と愁と姉さんとあと、紹介してない二人で昔良く色んなところに出かけたりしてたなぁと幼き頃に想いを馳せた。…あれ、僕それ以降は「アレ」しかやってない……あれれ?おかしいな。
「…僕、人付き合い変えようかな」
頭を抱える。これを機に人付き合いを変えようと思った。……有名人になるのはアレだけどね。まぁいいでしょう。少しくらいなら、我慢しようかな
母さんにも友達いっぱい作るのよ、と釘を刺されているため、本当に頑張ろうか悩む。
「ピンポーン!」
そんなことをかんがえていると、インターホンが鳴った。
「ちょっと待っててね~愁。今出るよ!」
僕は玄関の前で待つ愁との思い出の感傷に浸りながら、靴を履き、ドアを開ける。
「疾風、行くぞ」
「行こっか。愁。」
今日の天気ははればれしい快晴だった。
二話 Huppy starts
「これで、第28回、始業式を終わります。」
「礼!!」
教頭先生の指示で僕達は頭を下げる。
そのままアリーナから生徒が出ていく。
始業式が終わった。…はぁ、疲れた
まさか実験台として全校生徒に紹介されるとは思わなかった。けっこう恥ずかしかった……
そして僕らは若干遅れてクラスの前に来る。中ではHRをやっているようだった。
「え~例の転校生の紹介です」
先生の声が聴こえた。
「入っていいよ~」
先生の言葉を合図に中に入る。
「…え?」
僕は小さく呟く。隣の愁も口を開けて驚いている。正直仰天しそうだ。
なぜならここには西賀姉妹の妹、西賀彼方が居たからだ。更に姉さんも居る。どうなってるんだ…
僕らは混乱しながら教壇の上に立つ。
「転校してきた神無月疾風君と文月愁君です。自己紹介をお願いします」
先生が自己紹介を促す。
僕は愁の脇腹を肘でつつく。愁は顔をしかめたが、すぐ納得したようだった。
「……文月愁です。これからよろしくお願いします」
僕は愁の自己紹介に続く。
「神無月疾風です。よろしく。」
みんなの間からヒソヒソ声が聞こえる。
僕は地獄耳なので「あの人たちイケメンだよね」という会話が聞こえてしまった。
「…先生、僕達の席はどこですか」
「あ~、疾風君の席は…」
先生が僕たちの席に案内してくれる。…僕は窓際だった。とても心地いい風が吹く。僕は快い気持ちになれた。愁は僕の右隣だった。姉さんはというと…廊下側に追いやられてたw
「姉さん廊下側においやられてて草」
「アイツだから仕方ないんだろ…」
「それはちょっとひどいでしょ」
「そんなことない。ハハハ」
「ふふ」
残りのHRを僕らは談笑によって過ごすのであった
「起立!礼!」
級長の号令がかかる。ここから学年別下校まで時間がある。だから僕は「あいつ」の席へ行こうとする。が
「なによ疾風、そんなによそよそしくて!」
「うわおびっくりした!」
既に先手を取られていた。
「なんだよ急に…彼方。」
「急にって、貴方私の席に来ようとしてたじゃん」
図星だったので僕は黙り込む。
「お前、まさか、投稿初日に…」
「そんな野暮なことしない!!!」
愁にからかわれた僕は、クラスの全ての喧騒に負けないくらいの怒号をあげた。
「前の仕返しができたな」
「…愁、根に持ちすぎだ」
「愁は執念深いからね~」
「いや、そこまで執念深くは…」
なんか図星だったのでもう少しつつこうかなとして、一人の存在を思い出した
「姉さんどこだ?」
「理奈?理奈ならさっき先生に連れ去られてたよ」
「あいつなんかしたん?」
愁が尋ねる
「…先生しかわからんよ」
僕に聞かれてもなあという本音は捩じ伏せた。はあ全く家の姉はこれだから……
あの人可愛いし優しいからモテるはずなのに天然が過ぎるからモテないんだよなぁ…可哀想な人だ。それに比べて僕なんて陰キャだから…ね?泣きそうだよ。
愁とか彼方みたいな陽キャは凄いよなと感じた。…まぁ陰キャも陽キャもクソもないんだけどね。語り出すと恐ろしくなるからやめておこう。
「…はぁ…全く家の姉さんはあれだから…」
「理奈可愛いし優しいのにねぇ」
彼方が僕の思考と同じことを言う。……あの人マジ可愛いし優しいという印象で通じるのやばいと思う。…もっとモテろや………
「あいつモテてるんだろ?」
愁がまた僕の思ってたことをそっくりそのまま言った。
「文化祭の時にはモテモテよ!」
知ってた。
「ここ桜ヶ丘女学院は可愛い子がいっぱい居ることで有名なのよ!だから他の私立男子高校生とか男子中学生がいっぱい来てナンパ目的で来たりすんのよ…」
ナンパ目的で来たりって豪語したよこの人。
「ナンパ目的でって…私立男子高校生とかは野獣しか居ないの?」
「…男は大半野獣じゃないの?」
「疾風と俺は野獣じゃないよ。」
「あぁ、そうだった。」
「…貴方達この世の中の大半の男が野獣だって言いたいの?」
「「うん!」」
僕と愁はハモって言う。だって実際野獣じゃん。W氏とかはトイレで不倫したらしいし。結局野獣なんだよねぇ…
「…すごいこと言うわね貴方達」
「そんなに?」
僕は普通だと思うなぁ…
とまあ、僕らはこんなくだらん雑談を姉さんが来るまでしていたのだった。
姉さんはあれから二時間でやって来た。
「…先生と話してたわ…」
と、姉さんはとても疲れた様子だった
「お疲れ様」
「乙~」
「お疲れ、理奈。」
僕らは労いの言葉を添える。
「…疾風」
僕は姉さんに呼ばれる。
「ん?」
「どうした、理奈」
姉さんにそうきくと、なんと
「貴方達先生に呼ばれてたわよ」
と爆弾発言をした。
「は?!」
「ええ…」
僕らは混乱しながら控え室に行くのだった。
「…柊先生。」
僕は先生、柊先生…いや、「義姉さん」の名前を呼ぶ。
「いや~ね疾風。昔みたいにユキさんって言ってくれればいいのに」
「…僕らの関係がみんなにバレたらどうするんですか。ユキさん。」
「私が全責任をとるわよ。」
ユキさんは色っぽくウィンクする。
実は僕は実母は居るのだが、金銭的と、時間的な問題でとある家、てかこの高校の校長に引き取られた。ユキさんは校長のお姉さんなので、一応義姉である。まあ、本人には義姉さんじゃなくてユキ、って呼べって言われてるけど。一応年上なのでさん付けしてる。
「…そんなウィンクされても信用できませんよ?」
僕は本音を漏らす。
「私がいつ信用できないようなことをしたっていうのよ!」
僕はユキさんが嘘ついた回数を数える
「…無いですね」
0だったので僕は苦笑する。もうユキさんに頼むしかない様だ。
「まぁゆっくり話しましょうや」
「え、彼方達は…」
「理奈に帰るよう伝えたわ」
「えぇ…」
とまぁユキさんと雑談を繰り広げるのであった。
家に帰ると時刻は既に8時を過ぎていた。
で、疲れてたのでそのまま寝ることにした。
~翌日~
今日は学校に早く着いた。何故かって?ユキさんに呼び出されたからだ。
「…朝っぱらからユキさんの相手かよ…」
まぁ文句タラタラ言うのもあれなんでとりあえず教室のドアを開ける
「おはよう」
僕は高々と宣言した。教室の視線がこちらに向く。…凄まじい殺気を感じた。殺気の方向に顔を向けてみると、なにかを囲んでいるように女子が数人
「……!」
僕は身構えた。すると女子達はヒソヒソ話始めた。……え~なになに「あの転校生じゃん。やばくね?」だって?
「…僕が居ることに不都合でもあるのか?」
僕が殺気を全身から放ちながらそう言うと、女子達は大きく震えた。
「…なんで」
「生憎と、地獄耳でね。君達の会話は聴こえるんだよ」
これが僕の「アレ」の力だった。
「アレ」のおかげで耳も良いし、目も良い。デメリットがあるのがアレだが。
「…そんな転校生に見せては行けないことをやってるのか?」
恐ろしい殺気を自らから感じた。…溢れ出し過ぎたか。女子達は震えてヒェと喉から声にならない悲鳴をあげる。
「悲鳴上げたって俺はあんたらを追及する。」
女子達はその場で崩れ落ちる
…目に涙を溜めてるようだ。しかし、まだ黙っている。……僕は本気でイライラしてきた。
「…黙ってんじゃねぇよ。てめぇらが何をしていたか聞いてんだよ」
僕が殺気を全身から放ちながらまたそう言うと、女子達は大声で泣き出した。そして、その輪の中に人がいることに気づいた。…人?
「…!」
その子は怪我をしていた。……軽傷だが、痣は多い
その子は僕に視線を向ける。
僕にはその視線が畏怖の視線と、救済の懇願の視線に見えた。
「……虐めは禁忌だっつってんだろうが…てめぇら、僕が何をしたいかわかってんのか?」
このままではただの偽善者だ。僕は、偽善者なんかじゃない。それは自分がよく知っていた。何故なら…
「僕はあんたらのせいで虐めてる時のあんたらの楽しそうな笑い声と虐められっ子の泣き声とか呻き声を聞くだけでそれが邪魔なんだよ。地獄耳だから全部聞こえちまうんでな。イライラするんだよ。」
だから、と僕は一拍を置いて、こう言い放った。
「…イライラするから、元凶のお前らを潰す。それだけだ。」
そこまで言うと、ユキさんがやってきた。
「…神無月君、何してんの」
僕が殺気を全身から放ってることに気づいたユキさんはあくまで僕達の関係が気づかれないように言う。
「…虐めを止めてるだけですが」
「…それにしてはあの子達が大号泣してるんだけど…まぁとりあえず話聞かせてくれる?」
「あ、はい。」
僕はユキさんの言われるがままにユキさんの控え室に連れてられるのであった。トホホ…
全事情を話し終え、ユキさんとの雑談を終えた頃には時すでにHR五分前で、姉さんも彼方も愁も来てた。
「疾風~、なんで遅かったの~?」
興味津々で姉さんが聞いてくる。
「…ちょっと…な?」
僕は言葉を濁す。
「またやったんか」
愁が図星をついてくる。全く、前から愁は人の心とか行動を読むのが上手いよな…と感心しながら呆れる
「ま、そういうことだね」
と僕があっけらかんというと
「…転校初日から問題起こすって流石疾風ね。」
彼方が呆れた声音で言う。視線も哀れみの視線だった。止めてまじで僕が惨めになる。てか僕なんか悪いことした?前みたいに蹴りぶち込んだり殴ったりはまだしてないんだけど…
「まぁ蹴らなかっただけマシか」
愁がため息をつく。いやこの人まじサトリなん?いや、これが付き合いが長いってことか?僕は混乱してきた。
そして先程のことについて散々聞かれたらもうHRの時間になった。
HRが終わり一時間目になる。一時間目にはどうやら席替えを行うようだった。
先生がその旨をみんなに伝えると皆は狂喜乱舞して踊るものも居れば叫ぶ者もいた。ここは動物園か何かかな?僕は苦笑し、席を選ぶクジを引く。…どうやら運良くまた窓際の席らしい。僕はなんていう席運なんだろう(席運とは如何に)そして僕はその席に荷物を持って言って座り、皆がクジを引き終わるまで空を眺めていた。
「あの…」
何分たっただろうか。不意に右から声がした。
「どうしたの?…!」
そこには先程助けた少女がちょこんと座っていた。
「あの、さっきはありがとうございました…よろしくお願いします」
少女は震えた感じで頭を下げる。
「あぁ。あれは僕がやりたかったからやっただけだし気にしなくていいよ。あと敬語外して全然いいよ」
僕の本心を伝える
「じゃあ…遠慮なく」
と少女は敬語を外す。
「私は新村結衣。よろしくね。」
某有名芸能人みたいな名前だな。
「僕の名前は…まぁ知ってるか。とりあえずよろしく」
またなんか個性的な子だなと僕はつくづく感じた。
席替えが終わると、僕は愁の席に直行した。
「…遠いな。」
僕は思わず呟く。
「…遠いな。たしかに。クジだから仕方ないか…」
窓際だけでも運はいいが愁はなんとど真ん中の列だった。ちなみに全部で七列。
「愁は隣の子どうだった?」
僕が聞くと、愁は
「…すげぇ生意気でうざかった…」
と悲嘆しながら項垂れてた。
「あらら…」
「なんかお嬢様みたいな感じで一撃ボディプレしてやろうかと思ったわ…マジあいつ次はぶん殴ってやる…」
「女子殴るのは草」
「草じゃねぇよマジあいつ殴りたい」
「僕が殴ろうか?」
「やだね。俺がイライラするから殴ってやるわ」
と愁から恐ろしい殺気を感じた。…久しぶりにこんな愁が殴りたい欲求を丸出しにしてるのを見た。やっぱこいつに手を出すと死ぬな。うん。
「…そういやなんか後ろから視線感じるな…」
僕は呟いた。なんか後ろから二つの視線を感じた。
「そうか?」
「僕は視線に敏感なんでね」
なんか僕は敏感になるものが多いなぁと感じた。…今更遅いか。って感じた。
「はぁ…とりあえず君達何用?」
僕は振り返りながら言う。女子達は驚いていた。あれ、その中にさっきの結衣がいた。…もう一人は白髪の大人しそうな子だった。清楚系ってやつか?なんで髪染めてるんだろと思ったが、ハーフか?という思いに至る。
「…疾風君」
結衣が近づいて来て言う。
「愁君だっけ。私は新村結衣。疾風君の席の隣なの。よろしく」
結衣が愁に挨拶する。愁は混乱しながら
「あぁ、疾風のご近所か。よろしく」
と言っていた。
「こちらは竹内ソフィア。アメリカと日本人のハーフなの。」
やはりハーフか。僕は予想的中した。…白髪だから当たり前か?まぁいいか
「竹内ソフィアです。よろしく。」
とても流暢な日本語で喋る。ハーフと思えないほど顔が日本人似だった。こんな人居るんだなぁと感じた。
「よろしく。僕は神無月疾風だよ。でこのもやしが文月愁」
僕が愁のことをもやしというと
「…疾風、こっち来い」
と愁は廊下に出た。僕が廊下に出たや否や愁は
「誰がもやしじゃぁ!」
と叫びながら拳を振り抜いてきた。
「すみませんでした」
とりあえず殴られる前に言うが、その拳はもう既に目の前に振られていた。トホホ………
「痛い…」
「お前が俺の事もやしっていうからだ」
僕らは授業が終わり帰路に着いていた。彼方と姉さんは他の人と帰っていった。
「ごめんって。でもあんなに本気じゃなくても……」
「骨折しなかっただけマシだろ」
「マシじゃないでしょ……」
とりあえず僕が悪いらしい。悲しいな。トホホ……
今日は濃い1日だったな~と実感する。
「なんか疲れたな……」
愁が呟いた。
「……ね」
僕も相槌を打つ
「……そうだ!」
愁が急に大声を出す
「何何どうしたの?」
と僕が聞くと、なんと愁は
「今日お前の家に泊まっていいか?」
と聞いてきた。……爆弾発言だな。僕は内心でそう呟きながら
「全然いいよ。姉さんが愁を断るはずないし」
と、僕は呆気なく了承した。
「よっしゃ。久々に疾風の家だ!」
いや新居には愁来てないでしょ
「まぁ新居には行ってないがな」
流石愁。僕の思ったことを的確に言った。
「まぁ泊まるならゆっくりして行きなね」
この後、あんな事が起きるなんて僕達は想像すらできなかったとさ。めでたしめでたし((((終わりません。))))
三話 翡翠の刃
そして僕は帰宅する。愁は家に荷物(何を持ってこようとしてるんだ)を取りに行った。……爆薬とか持ってこないよな?愁ならC4を持ってくる危険もある。まぁないか…そしてドアが開き、姉さんが帰宅する。
「おかえり姉s……は?」
なんと姉さんは西賀姉妹を引き連れていた。
「久しぶりね!疾風!」
「あ、あぁ、久しぶり、由佳里…」
西賀姉妹の姉、西賀由佳里(さいがゆかり)はこちらに駆け寄って来る。
「…なんで二人が…」
僕が疑問を述べると
「なんか二人が泊まりたいって言うからさ」
と姉さんが言った。…いや、愁も泊まりに来るんですけど
「これから愁誘うのよ。疾風、一緒に来る?」
と彼方が聞いてくる。
「…あの」
僕が言うと、三人が首を傾げたため、僕は
「…愁も今日泊まるんですけど」
と僕が教えた。
「な~んだ手間が省けたわ!流石疾風!」
と由佳里が僕の背中をバンバン叩く。……地味に痛いのは黙っておこう。
「ってことだからよろしく!」
彼方と姉さんはウィンクをした。
「…そんなウィンクされても…僕なんかするんすか?」
僕はなんかされそうで怖かった
「そんなことより久しぶりにお泊まりなんだから何も気にせず楽しみましょうよ!」
由佳里が肩を組んでくる。あれこの人こんなにボディタッチしてきたっけと思ったが、昔っから西賀姉妹はボディタッチ多かったなと思い出す。小四の時に由佳里に抱き締められた記憶もあるんだが?やばいなんか恥ずかしくなってきた。顔が赤くなってるかもしれん。まぁいいか。で突如インターホンがなる。
「愁来たよ」
僕はぶっきらぼうにそう言う。
「愁来た?!」
姉さんは驚く。だからさっき来るって言っただろうが。西賀姉妹と姉さんは愁を迎えに行く。愁が外で「なんでお前ら居んの?!」てか由佳里も「?!え?なんで?!」と困惑しながら叫ぶ声が聴こえる…うわぁ…。愁はパニクってる。
なんか由佳里か彼方がボディタッチ(では無いが)をしたのか「アイムパニック!」と叫ぶ声が丸聞こえだった。…僕が地獄耳だから聞こえるのか?まぁ地獄耳じゃなくても聞こえるだろう。その位デカい声だった。(近所迷惑だから苦情来るかもしれん)あの人達はまだ愁に悪絡みしてんのか?十分くらいで四人が帰ってきた。
愁は恐ろしく疲れた様子だったが西賀姉妹と姉さんはピンピンしてた。……愁も西賀姉妹を相手にすると恐ろしく疲れるらしい。いや、由香里が疲れるだけか?…まぁなんでもいいや
「愁お疲れ」
僕が声をかけると
「…ガチで疲れた」
と愁は苦笑してた。いったい何されてたんだか
「いや~でも二人に会うのは本当に五年ぶりかしら?全然会ってないから心配してたわよ~!」
と由佳里は陽気な口調で言った。
「…姉妹揃って元気だな」
僕はぼそっと呟く。
「久しぶりに会うんだから当たり前じゃん!」
由佳里はまだ興奮してる。やめて欲しい。
「…由佳里、興奮しすぎだ。」
愁が僕の気持ちを代弁してくれる。流石だ。
「私も興奮してるわよ~」
と彼方がのほほんとしながら言う。いや貴方達どんだけ僕の家に泊まるの楽しみなん?
「まぁ私の家でお泊まり会は久しぶりだからね~」
と姉さんが言う。久しぶりもクソも3年ぶりだよね…やばくて草
「俺はちょくちょく疾風の家に泊まってたがな」
そう。愁は週に一回くらい僕の家に泊まっていっていた。凄い頻度である。
「私も彼方も理奈の家に偶に泊まりに来てたわよ」
「…貴方達私の家に強行突破してくるでしょ…姉妹揃って」
「私はやってないよ?!」
初耳だった。由佳里と彼方が共同で姉さんの家(兼僕の家)に突撃してたなんて…
「彼方も偶に手伝ってたでしょ…まぁいっか」
ほんとに仲のいい三人である
「ほんとお前ら仲良いよな」
また愁が僕の思ったことをそっくりそのまま言う。愁はまさかサトリの子供なのだろうか?いや多分サトリだな。うん多分そうだ。…違うか。僕達の思考回路が似てるってことか…ほぼ一致してるし
「そういや何する?」
姉さんが何をするか募集してた。
「戦闘」
愁が淡々と言う。何言ってんのこの人
「まぁ僕も久々に愁と闘いてえなあ」
と思いつつも僕は腕を回す。殺るきマンマンだ
「家で暴れるのはやめなさい」
彼方が静止する。
「久しぶりに二人の闘い見たかったんだけどねぇ~」
姉さんが呑気に呟く
「私も見たかったわ~」
由佳里も同意したような感じだった。
「…室内壊れるからやめなさい」
彼方が静止をかけるため、僕達は戦闘態勢を解放する。
「…やりたかったがな」
愁がいかにも残念そうな口調で言う。待って顔ニヤけてるし声が恐ろしく陽気なんだけど
「……で何する?」
姉さんが聞いてくる。いや思いつかないよー……しばらく沈黙が流れる
「みんなで駄弁ってればいいじゃん!」
由佳里が助け船を出してくれる。……雑談は楽しいので普通に賛成である
「賛成。雑談楽しいじゃんか」
僕はその旨を述べる
「俺も賛成だな。やることないし駄弁ろうぜ」
愁も賛成らしい。僕も賛成だったので満場一致で雑談になった
結構な時間雑談して、気づいたら22時になっていた頃、由佳里が僕の中学時代の頃について聞いてきた。
「…中学時代?」
僕は愁と目を合わせる。愁も聞くのを躊躇っていた。
「私も気になるわ~」
「私も!疾風の中学時代の武勇伝聞きたいわ~」
姉さんと彼方が水をさしてくる。……嘘やろ…僕の黒歴史なんやが…まぁ姉さんと彼方と由佳里が「聞かせて!聞かせて!」と言わんばかりに興味津々な顔で僕を見つめてたので、僕が中学時代やらかした数々を教えることにする。
「えっと、まずクラスメイトへの顔面骨折、靭帯損傷、ヤクザへの脳震盪とくも膜下出血、先生へアキレス腱断裂、先輩への脳震盪…」
と僕がやらかしてきた数々を述べる。愁が隣で呆れていた。彼方と姉さんは興味津々な顔で聞いてたが、由佳里は苦笑し、「流石疾風ね」という感じだった。
「…まぁ、これが黒歴史兼武勇伝だね」
僕は話終わるとどっと疲れが出てきた。
「なんというか…疾風らしいわね」
由佳里が言う。やめて僕が傷つく。
「……同感だわ」
「…私も」
「…俺もだ」
「四人揃って僕のこと虐めないでやめて」
泣いていいだろうか。久々にこんな惨めな気持ちになった。
とまぁ、風呂が湧いたんで僕は愁と一緒に入ることにした。
「…お前、その傷どうしたんだ?」
愁が僕の肩をまじまじと見つめてくる。
「あぁ、前言わなかった?撃たれたんだよ」
僕はあっけらかんと言う
「あ~ヤクザとの抗争の時に撃たれたって聞いたな」
「あの時弾丸が掠ってね。若干跡が残ってるんだよ」
「流石疾風だ…でも気をつけろよ~」
愁も陽気で、別に気にしてないようだった。…胸を撃たれたことが無いのが幸いである。僕は昔のヤクザとの抗争を思い出す。中学生高校生で構成された暴走族に一人で殴り込みに行ったのだ。あれくらい余裕だったが……人数も四十人程度、僕の攻撃による死傷者三十五人程度。降伏五人程度。それくらいフルボッコにした。死者は少なくなかった。……銃使ったから当たり前か?え?僕の正体?それは二章でわかるよ。まぁそんなことより愁も傷があることの方が大切だけどね
「愁も切り傷あるやん」
僕は切り傷の跡がある事を指摘する。
「あ~これはすげぇ前に殺られたんだよ」
小学生時代だろうか。それすら僕も知らないため、何をしたからわからない。……ヤンキーへのカチコミか。と即行理解する。
「…二人揃って傷がある…か。…まぁお前もナイフには気をつけろよ」
「拳銃は怖くないしね」
…何故だろう。自分が哀れに思えてきた。…拳銃怖くないとか一般的には頭おかしいだろ…と思う。僕達はおかしい人種だからか。
まあまあそんな感じで愁と雑談をしながら風呂に入ってそのまま出て、寝ましたとさ。
~翌朝~
僕は早めに起床していた。何故かって?朝ごはん作るんだよ。今日は休みのため、みんながまだグースカ寝てる。
「今何時だろ…」
僕は時計を見る。七時三十分だった。
…昔の記憶から、最初に起きる人を想像する。まあ合っているだろう。そんな感じでみんなを待ちながら僕は朝食に魚を捌く。今は愛用の刀、五月雨丸を研いでいる。こいつは八年間共に過ごしてきたいわば相棒だ。研ぎ終わると、また僕は魚を捌きはじめた。
ちょうど五人分捌き終わると由佳里が降りてきた。
「おはよう疾風」
「おはよう由佳里。彼方と姉さんと愁は?」
「まだ寝てるわよ」
由佳里に彼方と姉さんと愁が寝てるか確認をとる
「じゃあ、朝ごはんだから起こしてきてくれる?」
「わかったわ。」
僕は由佳里に起こしてもらうことにした。上から「彼方~愁~理奈~ご飯よ~!」
上から由佳里の声が聞こえる。…あの三人が起きるかなと心配するが、普通に降りてきた。
「全員顔を洗う!!!」
僕は号令をかける。みんなが並んで洗面所に行く。う~ん草。なんかモルモットみたいである。みんなが顔を洗って帰ってきた。
「座ってね~。じゃあ食べていいよ~。」
そう言うと「頂きます!」とみんなが言い、食べ始める。ちなみに僕は先に食べていたため、用事のために外へ出た。
「…寒いなあ」
ドアを開けると、冷たい風が体を襲った。まだ、朝は寒いようだ。いうて四月だ。仕方ないのだろう。僕は五月雨丸をポケットに入れると、用事を済ませるために足を踏み出した。
「ただいまぁー…は?」
家のドアを開けるとくそ散らかったリビングが見えた。何が起きたしと思って中に入ると愁と姉さんが殴り合いをしてた。そして由佳里と彼方がそれを観戦するという地獄絵図であった。いやいや何が起きたんと思ったらすぐ察した。姉さんが愁と戦いたいと言ったのだろう。…楽しそうだから加わってやろう。そう思って僕は五月雨丸を引き抜いた。
「何やっとんじゃわれぇぇぇぇぇぇ!」
僕は大声で怒鳴り、五月雨丸をぶん投げるのだった。
「すみませんでした。」
「すまん」
壁に刺さった五月雨丸の前にて、姉さんと愁が土下座をしていた。何故かって?さっきの喧嘩でくそ散らかったからだ。今は彼方と由佳里があと片付けをしている。可哀想な西賀姉妹だ。
「…二度とやるんじゃないよ?やるとしてもいつもの僕の部屋でやること。いいね?」
僕はあくまで優しい口調で諭す。まぁ五月雨丸ぶん投げたから優しくは無いが。
「疾風の部屋でやってきましょ?」
「せやな」
と二人は僕の部屋へ向かったため僕は
「片付けが先に決まってるだろうが」
と言った。二人は恐怖に震えたように片付けを始めた。まったく、困った四人だ…僕はため息をつく。まあ前もあったからなあ。二回目だし反省するだろう。僕は翡翠の埋まった五月雨丸の柄を引き抜いた。今日は一層輝きが増していた。赤い液体が滴りかける。僕は洗面台に行き、五月雨丸を綺麗に洗う。銀色の光沢がまた現れた。そして僕は朝食の片付けに入る。皿を洗うときの水が冷たくて心地よかった。今日はいい一日だ。そう感じれる一日の始まりは、久々だった。
四人も片付けが終わり、僕は部屋に戻る。部屋にある自分の宝物を見る。心が癒された。鉄の塊だらけだが、共に歩んできた相棒達だ。……今日はどこへ遊びに行こう。僕はそれを聞きに下へ降りるのだった。
四話 水晶の想い
楽しかった日曜日が明け、月曜日がやって来る。月曜日が来ることは憂鬱である。…あぁ眠い。そんなことを思いながら僕はまだ僕の家で寝てる四人分の朝ごはんを作る。今何時だ…時計を確認すると7:30だった。そろそろ由佳里が降りてくる時刻である。
僕は今日の朝ごはんのお肉を捌く。昨日の残り物である。朝は時間が無いため、なるべく小さく斬り、食べやすくする。時間が短くなるからである。
トン、トンと階段から優しい音が響く。由佳里が降りてきたのだろう。だが足音は二つ聞こえた。…彼方も起きたのだろう。流石由佳里、起こしたのだろうか。
「おはよう」
僕が声をかけると
「おはよう」
「ぬっはろ~」
ぬっはろ~とはいったいなんだろう。彼方が変な挨拶と由佳里と共に降りてくる。
「朝ごはん作ってるから顔洗ってきな。僕は作り終えたら愁と姉さん叩き起してくるから」
「ありがとう」
「は~い」
朝の間抜けな感じで二人が洗面台へ向かう。二人が戻ってくる頃には既にご飯はできていた。僕は姉さんと愁を起こしに行く。…あの人たち起きれんのかな?
「姉さん、愁、時間だよ。今日は学校なの忘れてないよね?」
と僕は部屋のドアを開ける。案の定爆睡してた。
「起きろ」
たんたんと僕は告げ、手刀を叩き込む
「痛い!」
「いってえ!」
呻き声をあげて愁と姉さんが起きる。
「起きろ。学校だ。」
低く言う。
ヒエと声を上げて二人はそそくさと下へ降りる。
まぁそのまま五人で僕らは学校へ向かうのだった
キ-ンコンカ-ンコ-ン
「起立!礼!!」
級長が号令をかける。今代数の授業が終わった。…代数なんて簡単なのにな…
僕は席を立とうとする。
「…ねぇ」
隣から声がした。…誰だろうと振り返ると
「…結衣か」
結衣がこちらをノートを開きながら見つめてた。
「疾風君…ちょっと、ここ分からなかったんだけど、教えてくれる?」
結衣がノートに書かれた問題を指さす。……なんだ。ただの連立不等式を活用した文章題じゃないか
「…どれどれ。えっと、これはね…」
僕は問題の説明をしていく。若干レベルが高い問題だったため、僕も説明に手こずるが、結衣は「うんうん」と頷きながら真剣に話を聞いてくれた。…何故か何処かでみおぼえある、と感じた。
ヤクザに絡まれてた子か?もう忘れた。
そんな雑念を抱えながらあくまでも淡々と問題の説明をしていく。けっこう時間がかかった。五分くらいの説明を結衣はずっと真剣に聞いてくれていた。一途な子なのだろう。僕はそう感じた。
「ありがとう、疾風君」
そのまま結衣は立ってどこかへ行ってしまった。
「あ~」
若干疲れたため、肩を回す。ゴキゴキといい音が鳴った。
「さ~て」
愁の席へ行こう。雑談しよう。疲れた時は愁と話そう。そう決めた僕は、愁の席に向かうのだった
~新村結衣の独白~
「結衣~」
ソフィアが話しかけてくる
「ん~?」
「最近好きな人とかできたー?」
急にソフィアが聞いてくる。何故急にそんな質問するのだろうか
「なんか最近疾風君によく視線行くからさ。疾風君のこと気になってるのかなぁって」
ソフィアがそう指摘してくる。…そんなに視線を向けてるだろうか。
「…そんな事ないよ」
そんなこと言いながら私は動揺しているのをなんとか隠していた。そう。ソフィアの言うことは図星だったのだ。
私は疾風君の事が気になっている…というより恋をしているというのだろうか?
私には初めての経験であった。…運命というのは感じたことは無いが、奇跡だとは思っている。
これは疾風君にすら言ってないが、昔私は誘拐されたことがある。嘘では無い。本当だ。そして捜索願いが出された後、警察よりも何よりも先に誘拐されたアジトに来たのが疾風君だった。疾風君はあの時、こう言ってたなぁ…
「…誘拐犯っつうのは儲かるらしいねぇ…君はあの組織の幹部かい?」
私には最初狂った共犯にしか見えなかった。しかし、あの組織の幹部という言葉に一人が頷くと、次の瞬間その人が倒れた。
「…Dreamer幹部なら、死闘を繰り広げてでも勝つしかない。何人がかりでも、武器を使われようとも、関係無い。…お前ら幹部、僕に勝てるかな?」
そう言って疾風君は幹部に向かって刃物を向け、間合いを詰めた。幹部は焦った表情でナイフを振る。(あれ、ポン刀って言うらしいよ)火花が散る。そして幹部は拳銃を取り出し、撃鉄を起こした。疾風君は避けようとしたが、肩に掠ったらしく、肩から血が出た。
「…やめ…て」
私はあの時、確かに静止をかけた。しかし、その声が届くはずもなく、二人は戦闘を続ける。途中何度か疾風君が負傷していた。それくらい幹部は強いのだ。しかし、幹部が油断して見せた一瞬の隙に疾風君は右肩からするっとナイフを滑り込ませた。次の瞬間、幹部が呻き声をあげ、倒れた。私はその時、あぁ、私はやっと誘拐犯から開放されるのか…あの暴力から開放される…と思い気が抜けた。疾風君は肩から血を滴らせながら私を縛る縄を切ってくれた。
「警察がもうすぐ来る。動くんじゃないぞ」
疾風君はそう言って右肩を抑えてアジトを後にした。私からは疾風君の背中から一直線に血が出てることに気づいたが、あえて無視をした。そして10分程度経ち、警察がやって来た。そして私は無事家に帰れた。
これが私と疾風君との出会いだった。そして疾風君と出会うとその特徴が一致していた。……疾風君は、本当に私を助けた疾風君なのかは知らないが、とりあえずあの優しさに惚れているのは事実だった。
「…私は恋バナが苦手なのよ。」
私はそうやってソフィアとの話をそらすのであった。
~再び話は疾風に戻る~
「…で、なんだ彼方」
僕は何故か知らんが彼方に校舎裏に呼び出されていた。本当になんでだ。愁と姉さんがニヤニヤしながらこっちを見ていたから殴りかけたが、まぁとりあえず来た。で今は何の用事か聞いているのである
「貴方に用事なんて1つしかないでしょ。しかも内密にして欲しいんだから、察してちょうだい」
彼方が唇をとがらせながら言う。
「…どんな依頼?」
僕はメモ帳を出す。彼方が内密に頼むことなんて少ないだろう。
「……」
彼方は顔が真っ赤っかだ。なんだなんだ。いったい。なんか気まずいぞ?どうしたんだマジで…
「…どうしたの?」
僕はもう一度聞くが、彼方はそっぽを向いて
「…やっぱなんでもないわ。急に呼び出してごめんね」
と去っていった。僕は頭の中が?でいっぱいになった。
「…一体なんなんだ」
本当に混乱した僕であった
~西賀彼方の独白~
「まったく、気づきなさいよあのバカ!」
そう言いながら私はずんずん中庭を進む。あのバカ…人の気持ちに鈍感過ぎだ。何故あそこまで恋愛に鈍感なのだろうか。何故あいつはあそこまで鈍感なんだ!!!何故私が惚れてることに気づかない!!!しかも三年前から!!!おかしい!!!まぁこんな事言うのもあれだけどね。昔っからあいつが好きなのにねぇ…気づかないのがあいつの恋愛に疎い証拠ね。まぁ昔「大きくなったら疾風のお嫁さんになる!」とか言ったらしいけど…まぁ疾風の事だ。覚えてないだろう。……気まずかったから逃げてきたが、いつ、告白するか決めないとね…
私はそう思いながら歩くのだった。
~疾風に三度~
「マジで意味わからねぇ…」
僕は本を見ながら頭を抱える彼方からの呼び出しの後、愁が「お前恋愛小説読んでこい」と言い、言われるがままに読むのだが、ヒロインが主人公を好きになる理由がわからなかった。題名は…アオハル…らしい。聞いたことない。なんだこれ…主人公の取り柄が見つからないし、好きになる理由がわからない。これが恋愛小説なのか?僕は初めて読む恋愛小説に呆れた。僕はミステリー小説以外全くと言っていいほど興味が無い。ライトノベル系は、僕がやりたかった、昔憧れた内容のものが多々あったのでたまに読む。まぁ、要するに僕は恋愛小説なんて読まないんだよ。なんか「お前恋愛に疎すぎ」って愁に言われたんよ…そんなに恋愛に疎いかな?この僕の独白を見てる人に問いたい。なぁ、僕は恋愛に鈍感か?そんなに鈍感か?
まぁこの答えなんて無いのだろう。僕にすらわからないのだから。
まぁ女性不信の僕だ。当たり前か?
…待て、なぜ僕は女性不信なのに結衣に話しかけられてもなんもなかったんだ?なんかの知り合いか?僕は記憶の深淵を手繰る。本を読むことすら忘れて。
「……あの女の子か…」
僕は中学時代のDreamerの幹部との死闘を思い出す。Dreamerというのは…まぁ二章で明らかになるよ。で、その幹部との死闘を繰り広げて助けた女の子か、と今更思い出した。もしかして結衣が僕に惚れてることに僕が気づかないのが鈍感なのか?僕は混乱してきた。とりあえずよく分からないアオハルとかいう本を読み進めることにする。全く面白くもクソもなかったため、読むのに時間がかかった。トホホ。時間の無駄遣いだわ…明日愁に文句言ってやる。ぜってーぶん殴ってるわ。…でもなんかあいつ感想文書かせそう。それが怖いため僕は本を読み進める。
案の定明日本を愁の机に叩き返すとしっかり400文字原稿を渡されたため一撃ぶん殴った。
まぁ感想文くらい書いてやろう。僕は適当に感想文を書くことにした。
五話 水無月王牙
なんでこうなったんだ…?
僕は目の前に広がる世界に絶望する。
あれもこれも全部あの女のせいだ。
だから女は嫌なんだ。
だから人間が嫌いなんだ
ダカラ…
ハッと目が覚める。僕は自分の体から水分を感じた。
…どうやら汗をかいてるようだ。あんな悪夢を見たからであろう。時間は七時五十分。最悪だ。朝食が食べられない。
急いで着替えて下へ降りると案の定姉さんが居た。
「遅かったわね。疾風。」
…姉さんは自分でハムエッグを作って食べていた。しかも僕の分も作ってくれていたようだった。
「…なんかごめん。」
僕は罪悪感を感じ、謝るが、
「こういう時はお互い様よ!今日は疾風の支度も私がやってあげるからゆっくり食べてなさい」
姉さんは全く気にしてない様子で僕にウィンクする。…流石姉さん、器が広い。…あそこでも姉さんが姉御肌があるの人気なのはこういうことか?いや、的確な司令を出せるその勘の良さか…僕には理解できないが、一つだけ、わかることがある。姉さんはあんなでも根は優しいということだ。…誰でもわかるか。僕の支度をしてくれる姉さんの背中を見つめながら僕はさっさとご飯を食べるのであった。
「…目覚めが最悪な日は授業にも集中できねぇ…」
僕は学校で早速船を漕いでた。悪夢を見た日はいつもこうだ。もう先生の話は全て理解したため、そのまま寝ることにした。
と、寝て何分経っただろう。級長の「起立!」という叫び声が聞こえた。授業が終わったのだろう。僕は重い腰をあげる。
「礼!!!」
礼をする。これでもまだ僕は眠かった。なので、そこから愁の席へ行く気も無く、そのまま寝ることした。…悪夢を見るのは本当に辛い。あの悪夢から開放される日は絶対来ない。僕は確信した。
…あの悪夢の内容は話したくもない。話したら精神が壊れそうだ。そんだけ僕のトラウマでもある。…そんな雑念もあり、休み時間はそこまで寝れなかったため、次の授業で爆睡した。…その授業はユキさんだったため、事情を察してくれたのか全く気にしていなかった。僕は悪夢による睡眠不足の解消のためにせっせかせっせか船を漕ぐのだった。
「クソネミいって時に限って君は来るのね。」
僕は昼休み中庭でお昼寝しようと出たら、何故か旧友の睦月優斗が来ていた。
「優斗違う学校なのに何故ここに居るんだ…」
意味不明だと僕が呟くと、優斗は苦笑し、
「王牙さんから司令が届いてね。放課後すぐ来てくれだとよ。」
「……王牙さんから…だと?」
王牙さん。水無月王牙さん。僕たちのいわば上司。まぁ詳細は後で説明しようかな。
「うん。王牙さん。僕も瞳も司令かけられてないからさぁ…な~んかめんどくさいんだよね」
瞳とは西園寺瞳のことである。優斗の親友だ。
…瞳も司令がかかってるということは…
「…姉さんと愁にも司令が来たの?」
僕は顔をしかめながら優斗に聞く。優斗のやけに暗そうな顔で
「…実は、疾風だけの招集なんだ」
僕は仰天する。あの人に限って僕達をセットで呼ばないなんてことあるだろうか。まぁ、直々の招集なので学校は早退せざるを得ない。
「僕は今から早退手続きをしてくる。優斗はもう学校に戻ってて」
「あいよ」
優斗を見送った僕は早退手続きの為に控え室に行った。ユキさんに伝え、さっさと手続きをとる。ユキさんは察した様子で「いってらっしゃい」と笑顔で送り出してくれた。僕はLINEで姉さんと彼方と愁に「招集が来た。僕と優斗と瞳だけの招集だから僕は行く。」と送った。
そして僕は原付バイクを走らせる。…この愛用原付バイク、名前付けようかな…僕は雑念を抱えながらアジトに向かう。アジトまでバイクで約30分かかる。とてもめんどくさい。その30分の間で考え事をしたり、愛用バイクの名前を考えたりした。ちなみにバイクの名前は電(イナズマ)に決まった。なかなかにカッコイイだろう。まぁ姉さんの発明品の名前の方が凄いけどね()
さてさて、そんなことより王牙さんは僕に何用なのだろうか?
…何となく察してはいるがまぁ行かないとわからないだろう。僕は怪訝な顔をしながら電を走らせた。
ピンポーン
僕はアジトのインターホンを鳴らす。
『どなたですか?』
向こう側から怪訝な声が聞こえた。
「Number.2だ。」
僕はあくまで無機質な声で答える。
『Number.2様ですか。どうぞ』
ガチャリとドアの鍵が開く。僕はノブをひねり上げた。
「…Number.2だ。王牙さんは今どこにいる。」
中に入り、周りにいる人に聞く。
「王牙様なら、会長室に居ますよ。」
「ありがとう」
僕はまだ疑い深い顔をしながらいつもの会長室に向かうのだった…
「…すみません。Number.2…神無月疾風です」
僕は会長室のドアをノックする。
「…入ってきて」
奥から声が聞こえる。
「…わかりました。」
僕はドアのノブを捻りあげる。開いた奥には、王牙さんが暗い顔をして座って、頭を抱えていた。そうとう深刻な事態なのだろう。とても重たい溜息をついていた。沈黙が長い時間続いた
「…王牙さん」
沈黙に耐えられなかった僕は王牙さんを呼ぶ。こんな張り詰めた空気は嫌だった
「……あぁごめん疾風。」
王牙さんは慌てた様子で返事をする。未だに焦っているようだった。そんなにやばいのだろうか。重大臭い案件だろうか。僕は不安になる。そして現実に起こってることは僕の危惧していたものよりも遥かにやばいものだった。なんと王牙さんは
「……Dreamerが……動き始めた」
「……え?」
僕は心底驚いた。Dreamer。それは昔とてつもない大事件を起こした組織だった。今も事件を起こしてるが、最大だと死者80人、被害総額はなんと500億。自衛隊も出る事態になった。そんなやばい組織が動いてるのだ。王牙さんが焦っても仕方がない。しかし
「……何故僕だけに言うんですか?そんな大事なことなら、他の組員にも言うべきだと思いますが」
僕は今の今まで疑問だった、僕だけを呼び出した理由を聞いた。とても重大な事のはず。Dreamerなんてこっちの構成員を殺したりもするのに……
「…実はな……」
王牙さんが今回のDreamerの動きを説明する。僕は耳を疑った。Dreamerうんぬんかんぬんじゃなくてこれは酷すぎる。そんな内容だった。
「…これじゃあ姉さんも愁も手は出せませんね」
僕は落胆する。これは僕にしか出来ないと悟った。
「…わかりました。引き受けます。報酬は幾らですか」
いつもは報酬は聞かないが、今回ばかりは命を張るためたんまり貰わないといけない気がした。
「…50万でどうだ」
王牙さんはとんでもない金額を言う。思わず僕は目を見開いた
「そんな無茶な?!なんでそんなに……」
「…この依頼は疾風にしかできない。いつも俺はみんなに合計で50万は払う。だから一人のミッションだから50万払うんだ」
絶句した。そんなにキツいミッションなのか。僕は絶望した。……正直このミッションだといくら僕でも難易度は跳ね上がる。死者は低く見積っても50人は出るだろう。…一般人からも出るかもしれない
「…死者は何人以下ですか」
一般人からも出る予感がした僕は王牙さんに聞く。
「……高くても80人で頼む」
「はちじゅう?!」
80は僕が初めての数字だ。てか正直そろそろ捕まるかもしれん。
「……10人以下で済ませてきます」
僕はとにかくこの地獄を何とかしたいという一心で王牙さんに宣言した
「……頼んだよ。俺には完遂できないミッションなんだ」
王牙さんは暗い顔でそう呟いた
…最悪だ。ミッションの日が水曜日だなんて。
「…死ぬのはごめんだなぁ」
僕は心の底からの思いを呟いた。学校へ欠席連絡をして、覚悟を決め、愛用の原付バイク、電を走らせる。今ある装備の中で信じられるのは短刀五月雨丸、SMG(サブマシンガン)と愛銃、駿河と己の力量のみだった。相手はDreamer。簡単に勝てる相手では無い。死ぬ覚悟を決めながら電を走らせる。
「…僕は神無月疾風だ。いや、俺はNumber.2。これくらいはできる」
僕は神無月疾風という仮面を脱ぎ捨て、Number.2になることにした。……余談だが、Numberは一~七の階級がある。一~四は事務関係の仕事で、五になると軍事に加わる。そして軍事最強の12人が七階層。七階層の人達は''コードネームNumber.〇''を与えられる。数字は自分で選べる。僕は七階層のトップ、Number.2だ。まぁ余談をしている間に目的地に着いた。って事で戦闘開始まで残り僅かである。僕は肩を回し、
「行きますか」
と呟く。…少し歩くと、敵が見張っていた。…見張りは一人。僕はフシュ-と息を吐くと、身体を屈め、敵の現在の視界に入らないよう敵が真後ろを向いた瞬間、僕は音も無く地面を蹴った。距離は20メートルと言ったところなのですぐ距離は縮まる。敵が僕に気づいて拳銃を発砲する。それを僕は地面スレスレでよけ、そのまま見張りの手首に手刀を叩き込む。敵が拳銃を落としたところで腹に回し蹴りをし、敵を倒す。そのまま拘束した。
僕はドアを開けた。すると中には拳銃を構えたDreamerの人達がいた。
「……えーっと……」
拳銃を構えているのはざっと数えて八人。…少ないな、と感じながら作を練ろうとするが、敵が撃鉄を起こした。唐突な事態に、思わず避けたが左肩に命中する。
「ヴヴ…」
僕は呻き声をあげる。そのままムーンウォークで外に出て、扉を締める。その寸前にまた撃たれ、僕は腹に傷をおった。かすり傷だが、左肩は命中してるため致命傷に近かった。やはり無謀かと思うが、かてないわけではなかった。応急処置としていつも持ち歩いている包帯を巻いて、電を持ってきてをドアに向かって全速力で走らせる。電がうねりをあげる。直後僕が逃げたと思って追いかけようとしてドアを開いた人達が電の犠牲になった。その人たちはみんな拘束した。
「…これは死んでもおかしくないな」
いつ伏兵が来るかわからないので足で駿河を握りながら、進み始める
案の定一人が横から飛び出してきた。その時は五月雨丸でナイフを飛ばしたあと手刀で気絶させたが、やはり左肩を負傷してる限り、これ以上進むのは良くない。しかし、逃げたら奴らはおってくるはずだ。監視カメラくらいあるだろう。僕は監視カメラに気をつけながら慎重に出口に向かう。誰も居なかったため僕は安心した。しかし敵の方が一枚上手だった。僕がドアに手をかけた途端ドタドタ足音が聞こえた。
「今来るか?!」
僕は慌ててサブマシンガンを取り出し発砲する。しかしだれも倒れなかった。…罠か!僕が振り向くと、案の定外に大量の敵が居た。終わった…僕は確信した。僕は歩みを止める。敵はジリジリ近ずいてくる。僕はドアを閉めようと手を伸ばそうとするが、拳銃を向けられ、とっさに手を止める。僕は死を確信した。
「…Game overだな。」
僕はそう呟いた。死ぬしかないこの状況をどうしよう…。しかし、そんな事を考えてる間も敵はじりじり近づいてくる。…今の僕は両手は塞がっている。そう。「両手」は。
僕はつまさきをバレないように敵の拳銃に向ける。そして、次の瞬間轟音が轟いた。
「んなっ?!」
敵が驚く声が聞こえた。敵の視線は一気に倒れて呻き声をあげる人に向いた。なぜなら、「僕は両手が塞がっていて何も出来ないはず」だからだ。しかし僕は
「残念だな。足に拳銃を隠しているんだよ」
靴の中に拳銃を隠しておくのは僕の戦略である。僕は近くに倒れていた(さっき吹っ飛ばしたからこんなところにあるんだよなあ)電にある「ボタン」を押したあと、を発進させる。もう拳銃を撃たれることは無かった。…いや、撃てないのだろう。僕は後ろを見る。
「…成功だな。」
後ろには白い煙がたっていた。そう、電には、最悪逃げるために煙幕を吐く機能を搭載してるのだ。おかげで今回逃げることが出来た。しかし
「…痛え…」
こんな撃たれた左肩ではもうしばらく戦闘はできないだろう。しかもミッションも失敗してしまった。これは、僕が久しぶりに経験する、敗北だった。
★一章終★
六話 Number.2の過去
「…ということで、今回のミッションは失敗してしまいました…すみません。」
僕は左肩を抑えながら王牙さんに言う。まだ顔をしかめてしまう。
「…失敗なのは仕方ないんだ。一人でアジトに偵察した上でボス暗殺とか無理だよ。」
僕は目を見開く。許してもらえるのか…まぁ難易度が難易度だから、生存するだけで奇跡なのかもしれない。
「……わかりました。次は必ずや成功させます」
僕は頭を下げる。その時に思わず左肩の圧迫を外してしまった。案の定王牙さんが目を見開く。…王牙さんは暗い顔で
「…銃で撃たれたか?」
と聞いてきた。とても低い声だったため、僕は若干恐怖する。
「…はい。我ながら失敗しました。」
僕はそう答える。王牙さんは顔をしかめ、
「…それじゃ闘えない。完治までの休養を要請する。」
王牙さんは爆弾発言をした。僕は目を見開く。それなら、もう敵も準備が整ってしまう
「…学校を休んで、休養をとるんですか?」
僕は一応聞いた。王牙さんは暗い顔のままで
「…もちろんだ」
と消え入りそうな声で呟いた。
「そんな無茶な?!敵との戦闘はどうするんですか?!僕だって戦力なんですよ?!」
と僕は訴えるように叫ぶが、
「疾風の身体の方が大事だ!!!」
王牙さんは悲痛な声で叫ぶ。
僕は絶句した。
「…休め。命令だ」
王牙さんはそう言い残すとスタスタと部屋から出て行った。僕はその背中を見送ることしかできなかった
「…その傷だと全治三週間…といったところでしょうか」
僕は医者から言われた言葉を思い出す。なんとなくイライラしてきた。
「っち……」
僕はベッドの上で舌打ちをする。
何故三週間もこんな生活を……
僕はホントにイライラするったらありゃしない。しかし、
「……痛いよ……」
左肩の傷が痛むのは相変わらずだった。思わず顔をしかめてしまう。
「……いつ治るんだ……」
僕は考えるのをやめ、寝ることにした。今はとにかく何も考えたくなかった。無心になりたかった。だから、寝る。
寝る時には、夢を見る。
それがどんな悪夢であっても…………
夢というのは、時々過去を見せる。今日の夢はまさしく、自分の過去の話だった。……悪夢といえる過去の夢。
「さっさとやらんかい!!!」
父親の怒号が辺りを響き渡る。……この時僕は六歳。こんな時から僕は虐待を受けてたのかと絶望する。今絶望したって過去は塗り替えられないけどね。
「……はい」
僕はボロボロの服を着て、ボサボサの髪で……ととても酷かった。父親が稼ぐATMのため、僕は働くしか無かった。……そう、その時は。
僕は七歳にして学校にも行かず、トレーニングを続けた。身長が高いおかげで、トレーニングをしてもなんとか身長の伸びが止まるのは避けられた。
そして僕は小学校一強くなった。三年生になると、イラつくやつはみんな殴り飛ばすようになってしまったため、友達は少なかった。……今つるんでるやつらくらいだろう。
おっと、何故僕がここまでやったか説明しとこう。
僕には一歳年下の妹が居た。名前は神無月恵。とても愛嬌があり、僕にとても甘えてくる可愛いやつだった。恵が悲しい顔をしない為ならどんな事でもやった。虐めるやつは殴り飛ばす。
''お兄ちゃん!''
''どうしたの?''
''助けてくれてありがとう!''
あたりまえだった。虐めは少なかったが。父親にも反抗し始めた。反抗する度に殴られ、恵は心配してくれたが、僕は大丈夫と言っていた。
「お兄ちゃん、今度どこかに行こうよ。」
「お兄ちゃん、」
そうやって恵のことだけに熱中できた。姉さんや仲良い親友などとも仲良く、恵と一緒によく遊んでいた。…とても幸せな日々だった。失いたくなかった。しかし、まぁそんな生活が続くわけもなく。悲劇としか言えない殺人事件が起きる。なんと道端でいじめっ子が恵を突き飛ばしたのだ。''車が通る寸前の交差点の車道に''。そして僕はその一部始終を見てしまった。恵が車に撥ねられる。僕は発狂しながら恵に近寄るが、もう息をしてなかった。この時僕は決心した。…こんな悪いことする人間が居るなら、
「…死んでしまえばいい」
僕はそう呟いた。とても暗かった。歩道でいじめっ子がギャーギャー笑う。クラクションが僕をどくように促す。そしてその二つは、
「…死んでしまえ…」
いじめっ子を殺す為の感情に火をつけた。
「…殺す」
この時僕はとんでもない顔をしてたと思う。僕は恵を地面に置く。近くの人が通報したのか、救急車のサイレンが聞こえた。だが僕は救急車なんか気にならなかった。
「…人殺しが!死ね!」
僕は未だに歩道で笑ういじめっ子共に発狂しながら走る。いじめっ子達はまだガハガハ笑っていた。とても余裕そうだったため、いじめっ子のリーダーであろうやつの鳩尾に本気の拳を叩き込んでやった。いじめっ子は胃液を吐きながら呻き、そのまま倒れた。
僕は怒り狂い、そのままいじめっ子を殴り続けた。…途中でいじめっ子を殴る手の感触が無くなる。後ろから僕は警察に手を捕まれた。
「…ボク、ちょっと交番来てくれる?」
といじめっ子と僕を連れていった。
こっからは覚えていない。僕はこの時既に生きる意味を失っていたのかもしれない。とにかく交番のことは思い出したくは無かった。さっさと帰ろう。僕はそうやって家に向かおうとする。すると
「…坊や」
後ろから声をかけられた。
僕は後ろを振り向く。そこには見知らぬ青年がいた。
「君、強いね。」
それが青年の最初に言った言葉だった。
「…僕の組織に来ない?」
急に僕は勧誘されたので断ろうとした。しかし、首は勝手に縦に振られていた。青年のにこにこした表情には断れなかった
これが王牙さんとの出会いだった。…ここも夢に出るとは…
そして、僕はここでこの夢が途切れた。
次の夢は、どの過去だ。
僕は暗い公園にいた。…父親と共に。
どうやらその時の僕は四年生だったらしい。ナイフを構えていた。そして父親に斬りかかっていた。でも父親はナイフを悠々と取り上げた。僕が絶望していると、それに構わずナイフを振り下ろした。しかし、僕は背中にナイフを隠していたらしい。僕は顔をニヤつかせながら背中に手を回しナイフを取り出した。次の瞬間驚いた父親のナイフを余裕で躱し、地を蹴って頸動脈を斬り伏せた。
一瞬だった。
これが僕が父親を殺した一部始終だった。
何故ここまでするかって?
姉さんとお母さんにも酷いDVをしていたからだ。僕だけにしてればいいものを…
僕が後片付けをして、その場から立ち去って行くのが僕の目に洗礼に焼きつかれた。
そしてまた僕は夢から覚める。
「…悪夢だらけだったな」
恵の死亡を見るのは完璧に悪夢である。ちなみに恵は未だに死にもせず生きてもいずベッドに意識不明のまま寝ている。
「…今日の夢?」
今日の夢ではない。これはいつも見る夢だ。
「…僕がどれだけ恵を大切に思っていたか…?」
愚問だな
「…アイツが居なきゃ、今の僕は居ないさ。僕は、恵の意志を継いでいる。」
僕は胸を張ってそう言える。恵の意志、それは
『お兄ちゃん、私以外の人を大切にして、救ってあげて』
…僕はこの言葉を聞いてから、恵を一層大切にした。それでも、恵は死んだ。だから、恵以外の人も大切にして、救う。それがNumberの仕事と僕のエゴだった。だから
「僕は優しい人でもない。誰かのために動いてるのではない。自分の為に動く、偽善者のエゴイストだ」
七話 Number.2の後輩
「もう完治しました。大丈夫です」
先程医者にそう言われ、退院手続きを取った。今は家に帰っている。…三週間学校を休むため、お義父さんに「拳銃の流れ弾に当たった」と言ったらお義父さんが「病気で体を壊したらしい」とユキさん以外の先生に説明してくれた。優しいお義父さんだ。さらにユキさんも、病気とみんなに伝えてくれたらしい。やれやれ、拳銃の弾に当たるなんて恥ずかしい。Numberとしてはずかしいわ…
ちなみにお見舞いに来る人も居たが、姉さんと愁と西賀姉妹と身内以外面会しなかった。もちろん傷がバレると思ったからだ。…今思ったが、僕は誰に語りかけてるのだろう。
「…僕の日記を見てる人が居るのかな?」
まぁそれは置いといて。僕は思い足取りで家に帰る。
「ただいま~」
僕がそう言うと、あっけらかんと姉さんが
「あ、おかえり」
と返してきた。…元気そうでなによりだ。まぁ僕も肩撃たれただけだし心配されることも少ないだろう。あと、姉さんは僕が絶対戻ってくると信じていたんだろう。我ながら幸せである
「まぁ今回は失敗しちまったよ」
僕は頭をカリカリかく。マジで左肩ぶち抜かれたのはヤバすぎる。アホにも程があるわ。てか胸じゃなかっただけマシか?まぁ生きてるから関係ないか
「…次変なミスおかしたらぶん殴るわよ」
姉さんはドスの効いた声で言ってきた。やだこのこ怖い
「左肩くらい何ともないんですがそれは」
「仕事できなくなるでしょ?」
姉さんは優しい声音で、笑って言う。…目が笑ってねぇ(((())))
「…それに皆が心配するし」
ん?何故か聞こえなかった。ボソボソと呟いているようだ。
「…まぁ…すんまへん」
僕は頭を下げる
「次から気をつけるように!!!」
もう姉さんは笑顔になっていた。しっかり目も笑っている。いつもの姉さんの姿に僕はホッとする。その日は姉さんにご馳走を作ってもらい、ゆっくり休んだ。え?勉強?それはねぇ、もう僕は高一レベルの勉強してるから大丈夫。王牙さんが一応として教えてくれたのだ。ほんと、感謝してもしきれないわな。あの人は優しすぎるんだよな…まぁそれが僕が王牙さんを好きな理由だが。…ホモじゃないからね?
てかいつも思うんだけど僕は誰に語りかけてるんでしょうかね。僕の日記を見てる人でもいるのかな?
まぁそれは置いといて。今日は彼方と愁と由香里とユキさんも来て退院祝い(?)をしてくれた。まあ楽しい夜だった。幸い今日は日曜日なので明日は学校に行けそうだ。…お義母さんとお義父さんにも報告しなければ…ということで朝一に校長室に行くことにした。
「…まぁ、ということで僕は完治したよ。」
僕は今校長室にてお義母さんとお義父さんに会っている。で、完治した報告と次いでにNumberとDreamerのことを話に来た。
「疾風~!無事でよかったわ~」
お義母さんー霞雨葵(かすみさめあおい)ーが僕の背中をバンバン叩く
「…せめてもっと音小さくしてよ…ユキさん以外にバレるでしょ()」
僕とお義母さんとお義父さんの関係はユキさんと西賀姉妹、姉さん、愁しか居ない。ってことであまり学校内でスキンシップをとられるとバレてしまう。
「…まあ葵、落ち着きなよ。疾風の完治祝いはまた楓も合わせて皆でやればいいさ」
お義父さんがそうお義母さんをなじる。
…ほんとお義母さんは若いなぁと思う。なんでこんな元気なんだ?若干呆れながらそう思う
「まぁ怪我には気をつけてよ。死ぬとは思ってないし。胸を貫かれるとかいうアホらしい怪我はしないように。」
お義父さんが僕を叱る。あぁ…こんなめんどい事になんなら二度と怪我しねぇと心中で苦情を述べるのであった……
まぁ教室に入ると大丈夫?大丈夫?とか尋問されたり色々されてクソだるかったのは言うまでもないだろう……
「疲れた…」
学校が終わり、僕は独りごちりながらバイクを走らせる。え?何故バイクかって?Numberのアジトに行ってんだよだよ馬鹿野郎
「あんたが怪我するからでしょ…」
隣で姉さんもバイクを走らせる。ちなみに愁も居る。
「左肩損傷で三週間はアホだろ」
愁が真顔で言う。左肩損傷じゃなくて左肩ぶち抜かれただけだからなぁ…そこまで…ってか三週間も休まなくていいのにぃ…って感じに心の中で苦情を述べながら僕達はNumberのアジトに向かうのであった。
「ご苦労だったな、Number.2、Number.0(霞雨真理奈のことね)、Number.8(愁ね。)」
Numberのアジトに着いた僕は、出迎えをされる。…いやちょっと待て
「すみません、王牙さんはどこですか?」
僕は怪訝な顔をして目の前の女の人に聞く。
「…その前に私がいることに驚けよ…Number.2」
目の前の女性はそう呟く。
「えぇ、そうですね。舞さん。…いえ」
僕は目の前の女性ー葉月舞ーさんを見つめながら
「Number.81さん」
と呼ぶ。愁と姉さんはけっこう目を見開いて驚いてるようだ。まぁ、Number.81、葉月舞さんがここに居るのは中々ないからだ。
「…舞さん、王牙さんはどこですか?私と愁と疾風が呼び出されたんですけど…」
姉さんが舞さんに尋ねる。
「普通にいつもの部屋に居るだろ」
舞さんはいかにもめんどくさそうな顔で呟く。まぁ、ですよね
「僕ならここにいるよ」
後ろから声がしたため振り返ると、そこには王牙さんが居た。
「…どこにいたんですか」
僕は一応王牙さんに聞く。
「いや、なんでお前ここにいるんだよ」
舞さんは怪訝そうに言う
「ごめんごめん。新人と色々あってね」
王牙さんは頭をカリカリかく。
「…俺が言うのもなんですが、遅れそうなら事前に連絡ください…」
愁は明らかに不機嫌そうに、呟いた。と、待て。一つだけ触れてないことがある。
「…新人って…まさか」
僕は震える声でそう尋ねる。姉さんと愁と舞さんはキョトンとしていたが、王牙さんはため息をついて、
「…察しよ過ぎない?」
と呟いていた。簡単の声か呆れた声かよくわからない。
「…まぁ要するに、君たちの後輩さ。」
僕ははぁとため息をついただけだが、姉さん達は驚いていた。
「後輩?!六階層ってことですか?」
「五階層か?」
「…後輩って…そんな急に…」
まぁ三人はそれぞれの回答をしていた。
「…後輩が入ってきたんだよォ…階層は一応六だね……とても強い子だったよ。」
いかにも嬉しそうな表情だった。それほど強かったんだろう。僕は七階層に来れるだろうかと期待する。
「……王牙さん、その新人に会わせて下さい」
僕は王牙さんに言う。その新人とやらのレベルを確かめたかった。
「僕に匹敵するか見てみたい……」
僕は腕の裾をまくる。やる気満々だ。
「……あんたがやると気絶するでしょ…てか新人が怖がるからやめなさい」
姉さんが止めてくる。舞さんも愁も同調していた。
「疾風……やりたいならいいけど、程々にね」
王牙さんは許可をくれた。姉さんたちは心配してたが、僕を誰だと思っているのか……
「じゃあ先輩達にご挨拶してね。入ってきて。」
王牙さんはその新人に向かって
「天ノ川深雪君」
と呼んだ。……その新人ーいや、天ノ川深雪とはどんな人なのだろう
ドアが遠慮するように開かれる。ゆっくりと。そしてドアが全開になり、人影、天ノ川深雪の姿が見える。その容姿は、朗らかな童顔と、上品なワンピース、白い靴という、見たものを引きつける美しさを持ってるようだった。端的に言おう。
ロリコン歓喜である。
「……幼そうですみません」
天ノ川は怒った口調でそう言う。
「僕はそんなこと思ってないぞ。さっさと準備してくれ」
僕はぶっきらぼうに言う。これがいつもの新人が入ってきた時の対応だ。姉さん達も黙って見ている。……まぁこれは演技だが
「……準備とは?」
天ノ川はそう聞いてきた。
「決まってんだろ。僕と闘うんだよ」
僕はそう突き放すように言い、腰を下ろす。天ノ川はため息をつき、
「……それだけですか」
と呟き、腰を落とした。
「……行くぞ」
僕は地を蹴った。間合いを詰める。天ノ川との間合い約5m。約1mになったとき、天ノ川は足を思いっきり払った。僕はその足を避けるが、不覚にも態勢を崩してしまう。天ノ川は右足でかかと落としをきめようとしてきたので、僕は足を上に払う。しかしそのかかとは落とされず、右足を横に振った。僕はその足に衝突する。また態勢が崩れる。僕は地面に倒れた。天ノ川は近づいて、またかかとを上げた。そして振り下ろされた瞬間、僕は足を曲げ、思い切り地を蹴る。そのままバク転をする。そして足が地に着いた瞬間、僕はまた地を蹴り、頭から天ノ川に突っ込む。天ノ川は呆気にとられ、そのまま頭が鳩尾に入る。
「ガハ…」
そのまま天ノ川は倒れた。やべえ気絶してる。やりすぎた……やべえ
「……疾風、やりすぎ」
まぁこの後姉さんに散々怒られたのは言うまでもない
「昨日はすまなかったね」
僕は第七階層の部屋で後輩となった天ノ川に謝る
「いえいえ…私が弱いのが悪いですし……」
まぁやりすぎたからなぁ……弱い強い関係無いわ……
「君の技量は素晴らしい。これからよろしく頼むよ。後輩くん」
僕はわざと色っぽくウィンクしたのだった
「……よろしくお願いします」
天ノ川はにこやかな笑顔でそう答えた。ふと窓を見ると、空には雲がなかった
八話 沈黙
「今日は素晴らしい日だ…」
僕は窓の外を眺めながら呟く。
窓の外では、青い風景が広がっていて、心地いい風が、空いた窓から入ってくる。
「…澄んだ空気、心地いい風、雲ひとつない空…う~ん、今日はいい一日になりそうだ。」
僕はのびをしながら呟く。
今日は日曜日だから学校は無い。…Numberの仕事は変わらずあるがね!!
まぁNumberの仕事はそこまで負担じゃないし勉強も負担にすらならないので、今日はゆっくり過ごせそうである。
「まぁこんな日に限ってなんか事件とか起きそうだなあ」
死亡フラグだろうか?まぁフラグ回収とかヤバい話にならなければええんやがなぁ
まぁ大丈夫だろう。日曜日に事件起こす暇人なんて居ないだろ
「う~ん」
僕は思いっきり伸びる。やはり窓から心地いい風が入るのは良い。
「…ああ、仕事は無い…けっこう暇やな」
僕は暇なので、彼方とか愁の家に行こうかなと検討する。まぁあいつらどうせ暇だしいいか。
「…そういや今日何日だ?」
僕はカレンダーを見る。今日は六月七日。僕が転校してからちょうど二ヶ月経った。(学校名言ってなかったな…転校する前が県立平塚中等教育学校で、転校してからは横浜サイエンスフロンティア高校だ)ちなみに主は全然違うところの学校だぞ
「…ふぁー…眠い~」
昨日は夜に事件が起きたため徹夜で仕事を終わらせた。だから恐ろしく眠いのだ。ましてや今日全然寝てないんだよなあ……最近仕事のあとは眠れないので、今日は、というより今日も眠れてない。
「…そういや、五月雨丸を研がないと…」
昨日の戦闘でけっこう五月雨丸を使ったので、刃が若干刃こぼれしていた。ちなみに死人は居なかったため、血や脂は着いていない。多少負傷者は出たが全員駿河に撃たれたからだ。(可哀想に。)Numberにも負傷者が出たためちょっとヤバかったけどね。…ヤクザとの闘いだったが、まぁ組長は逮捕されたし、結果オーライである。僕は戸棚から包丁研ぎを出し、五月雨丸を研ぎ始めた。その間は基本的に無心で取り組んでいた。そうじゃなきゃ五月雨丸がまた刃こぼれするからね。ちなみに姉さんはその間も寝ていて、研ぎ終わり起こすときに恐ろしく苦労した。あぁ、この人マジで休日寝すぎでしょ…まあなんやかんやあって、僕たちはご飯を食べて愁の家に向かうことにした
「……で、何処へ行くの?」
僕は愁と彼方の家に向かい、二人を連れて歩いている(由香里は…居なかったんだわ…)で、行くあてもなかったため、今こうやって彼方が僕に聞いてきているのだ。
「…あはは…どうしよ」
僕は笑いながら行く場所を考える。
「…あそこでいいだろ」
愁がそう言う。僕は首を傾げた。姉さんも彼方も頭にクエスチョンマークを浮かべている。
「あそこって?」
僕は愁に聞いた。そしたら愁は
「小鳥遊組(たかなしぐみ)」
と答えやがった。
「…あそこ行くの?」
姉さんは怠そうに呟く。
「小鳥遊組?行こうよ!!」
彼方は大はしゃぎである。全く、困った人だ。
「…まぁ久しぶりに行こっか」
僕は頭を掻きながらそう言ったのであった
~小林圭の独白~
俺は小林圭。小鳥遊組の組長である。小鳥遊組というのは、普通の暴力団である。俺達はヤクには手を出さないし、抗争はしても死者は出さない。それがうちらのモットーだ。更にNumberの主要メンバー、Number.2の古い友人であるため、Numberとも仲がよかった。何回手伝って貰ったか覚えてないくらい共に闘った程俺達はNumberと仲がいい。でも、Numberには入らない。今の仲間達とヤクザのシノギをやるのが楽しかったのだ。Numberはどんだけ強くても事務仕事はやる。俺達はNumberに入って義務の仕事をやるより、自由に働きたいのだ。更に俺は人の下につくのは嫌いだ。だから俺はNumberの管轄には絶対入らなかった。
まぁそんな平和な小鳥遊組でも、遂に若い奴がヘタこいてしまった。なんと強盗をやっちまったのだ。そのせいで俺達は捜査されている。俺は何もしてない。何も知らない。俺は即その若い奴に指を詰めろと言い放った。しかし、手下の一人が止めたため、組を追い出すだけにした。そしたらなんと、俺の他の手下がやった、と思いっきりサツにホラ吹きやがった。ったく、あいつ次会ったら絶対指詰めてやる……ってまあそんなこんなで今思っくそ家宅捜索&職質を受けている。ああめんどい。俺は一度も歌った(自白するということ)事がなく、それが俺のモットーであった。俺に非が無いなら、事実を言ってあとは沈黙を守る。
「黙ってんじゃねぇよ!!!」
警官が怒鳴るが、そんなのお構いなく、俺は沈黙を続けた。俺は黙る。小鳥遊組は俺が守るんだ。てか何故俺は小鳥遊組のアジトで職質受けてるんだよ……ったく
俺は沈黙を破ることにした
俺は大きくため息をつき、
「貴様達があんなクソ野郎の言葉信じてんのが悪いんだよ」
俺は舌打ちする。まずまず戦闘で負けるはずないから大丈夫だろう。俺は産まれてこのかた戦闘しまくったが基本的には負けない。大丈夫だろう。
「…てめぇ立場わかってんのか!」
警官が台パンする。
立場?冤罪を押し付けられてる俺の方が上だわ。
そうやって泥の職質を延々続けていると、
「……圭、お前何したん?」
前から聞き覚えのある声がした。前に共に戦った戦友の声が
「……お前、なんでこんな時に来た?」
俺はそいつを見ないようにしながらそう聞く。
「暇つぶし。」
そいつは何気なくそう言いやがったのだった。
「なんで職質受けてんの?」
僕は圭にそう聞いた。
「…濡れ衣だよ」
僕は圭の回答にとてもビビった。
「……彼方達を外に置いといてよかったわ」
僕は頭を掻きながらそう言う。
「…ったくどこの馬の骨ともわからんやつが…俺の遊びを邪魔しおって…」
僕は思わず口調を変えてしまう。
「だっ、誰だ!」
警官は僕に銃を向けてきた。
「…俺に銃は無効さ。な~に。俺はNumberのやつだよ。小鳥遊組のこいつと仲良いんでな。遊びに来たんだ。で来たらこのザマ。ったく、お前らヤクザを信用しろよ……」
僕は呆れてため息が出る。
「…で、そのヘタこいたやつは誰?圭」
僕はNumberと聞いて硬直している警官を尻目に圭に聞いた。
「…和田恵一。そいつが俺に濡れ衣かけたやつだ。」
「了解した。このザマ、僕がどうにかしてみせるばい。」
「…頼んだぞ」
「僕を誰だと思ってんだ?……世紀のNumber.2様やぞ」
僕は口角を上げ、その和田恵一とやらをしばき倒す計画を考えながら彼方達の元へ行くのだった
「……ったく、圭ってやつはこんな時に迷惑かけやがって……」
僕は地団駄を踏む。
「…圭に何が起きたのよ」
彼方が不思議そうに聞いてくる。まぁ僕がキレてるし仕方ない…か
「実はな」
僕はさっき圭に説明されたことをそっくりそのまま話した。
「…は?」
愁は口をぽかんとさせ、姉さんは無言で口をつぐみ、彼方は下を向いて俯いていた。…あ~あ、その和田ってやつめんどうごと作ったなあ……
「ってことでそいつ特定してシバく。」
と僕は宣言する。三人は顔を見合せたあと、こくこくと頷いた。
「まぁ今から特定するからお出かけ中止かなあ…てか行く場所無いし特定次いでに雑談するか」
僕はそう提案した。彼方は「雑談するんならいいわよ」といい、愁は「特定してやらあ……」と言い、姉さんは「シバキ倒してやる……」と言っていた。あれ待ってまともな返事したの彼方だけ???その他の二匹唸り声立てて殺意剥き出しにしてシバキ倒そうって呟いてるんですがそれは…まぁいい意気込みか。…一体そうなのかなあ?まぁ、なんでもいいや。てか正直僕もキレてるからなあ……なんてったって圭が迷惑蒙ってるし…てか小鳥遊組崩壊の危機だわこりゃ……
「まぁ圭が沈黙を保ってくれるなら…これで特定はできるか……」
まぁ結局時間は圭に任せられる。圭が沈黙を保たないなら時間ないしなあ……
ちなみにこの後和田恵一の件を解決した(話し飛んでるけど、ここ別に面白くないしいいよね)僕らは普通に帰宅していた。え?和田恵一はどうしたって?察にぶち込んだわ。これで圭の罪は晴れるだろう。
さあさあこれにて小鳥遊組崩壊の危機は脱却と。さあ久しぶりにほのぼのLIFEが送れそうだぜ
九話 Summer vacation~First Helf~
「起立!礼!」
僕は一学期最後の礼をする。これで一学期終了。夏休みだ。え?成績?
三段階の中でオール3だ当たり前だろ
てか姉さん酷かったな……オール1て……まぁ仕方ないのか?あのアホ姉は……まぁ過ぎたことは知らん。それが僕のモットーだ。え?恵?お前マジでぶっ飛ばすぞ?
「やっと夏休みや~」
僕は思い切り伸びをする。今日は快晴。只今の時刻10:45。高校一年生が帰る時刻は11:00のためあと十五分は暇なのだ。ってことで僕は愁の席へ向かう。
「愁~!」
僕は愁の背中を叩く。しかし愁は反応しなかった。机に突っ伏してる。耳を澄ますといびきが聞こえる。この人まさかだけど寝てんの?嘘やん……僕暇なん?十五分?マジで?彼方他の友達と話してるのに?姉さんはいつも通り寝てんのに?僕Alone(孤独)なの?(唐突な英語)
まぁそんなこんなで僕は結局愁の、席で寝たんでこの話終わり!
「海行きましょ海!」
家に帰った僕は、姉さんにそう言われた。いや急に海って言われても…マジで言ってんのこの人?
「いや別に良いけどどこ行くん?」
「いつものロングビーチよ」
なるほどね。昔よく行ったあそこの海か。まぁ良いでしょ。てか何人で行くんだよ
「彼方と愁は?」
「一緒に行くに決まってるじゃない」
はい。断言されました。マジで海行くなら有給取らなきゃいけない件について…一週間でいいか。一年に一ヶ月未満だし。あれ、そういや左肩の傷で3週間使っちゃってるやん…あ~二日で有給取るか…あと水着の新調もしなきゃダメやん?交通手段考えなきゃじゃん?で愁と彼方と予定合わせるじゃん?どんくらいかかるんだよ()
「…僕有給どうすんの」
僕はため息をつく。
「はぁ?左肩の傷の件は有給じゃないに決まってるじゃない」
ちょっとまて。
「え、あれ有給じゃないの?」
僕は驚愕する。てか有給じゃないとか初耳なんですけど?!いや…王牙さんは有給取るって言って…ああ、そういえばあの人病人とか怪我人に対して有給としてカウントしなかったなあ。優しすぎるだろ……マジで。王牙さん、敵に情けはかけないで欲しいけどなあ…僕は心中で呟いた。いやマジで……あの人優しすぎるのが玉に傷……なんてね。
「…もちろん行くよ。いもけんぴの所なら楽しめるだろうし」
「やったー!ちなみに日程は…」
姉さんは意気揚々としながら僕に予定を告げる。最初から無理やり行かせるつもりだったのかよ……ったくこの姉は……!変なところは用意周到だな!!!クソが!!!……まぁ優しいし役にもたつし頼りになるし…姉さんは素晴らしいと思う。僕はどーせエゴイストだし姉さんには勝てないよ。純粋に人を助けたいという姉さんには。僕は自分のために人を助けるからかぁ
あっ、口が過ぎたな
ともかく僕は、というか僕達は2週間後と決まっているビーチへのバカンスを楽しみにするのだった。
「久しぶりだな……この海」
ここの海のビーチは温泉街で、近くに愁の実家がある。で今は僕、姉さん、由香里、彼方、愁でビーチに来ている。この海は昔みんなでいもけんぴを食べた所なので隠語で僕達は「いもけんぴ」と呼んでいる。で今僕は水着に着替え、ビーチに三畳のレジャーシートをひいて寝ていた。着替え終わったのは僕だけなので、僕は日焼け止めを塗り、残りの四人を待っていた。ちなみに日陰に居る。それでも暑いし、潮の匂いがする。やはりいもけんぴは素晴らしい場所だ。昔来た時も感動したもんだ。こんな素晴らしい所が愁の実家の近くにあるのか、と目を輝かせていた。
「昔の思い出も良いもんだなあ」
僕が回想をしていると
「お待たせ~」
と彼方が来た。
「よっ。遅かったね」
「…遅くて悪かったわね」
彼方は顔を赤くしていた。やはり彼方をいじるのは楽しい。(まってなんか僕ドSになってない?)
「あはは。まぁ残りの三人はどうせアイスでも買ってるんでしょ」
「えぇ、そうね…あの人たち暑い暑いってヒーヒーしてたからねw」
「早いなあwここに海の家があってよかったねえw」
「あの人たち暑がりだからねえ。」
「流石だなあw」
「やっぱ理奈はチョコで愁がバニラでお姉ちゃんがストローベリーなのかしら…w」
「小学校の時と一緒じゃん」
「やめて…思い出させないで…」
「あははw」
「てかやっぱ潮の匂いが良いわねぇ~」
「そりゃ良いさ!僕の最高のお気に入りだよ」
「海なんて久々だわ~」
とまぁ、僕は彼方と雑談をしながらアイスを買いに行った残りの三人を待っていたのだった。ちなみにあまりに遅かったので僕達も飲み物を買いに行きましたとさ。
「お待たせ~」
「待たせたな」
「遅れてごめ~ん!」
で僕達が話していたらいつしか三人が来ていた。何故かアイスが握られていなかった。この人たちまさかもう食ったのか?
「……もう食べたの?」
彼方がにこにこした顔で問う。
「え、そうだけど……あれ、地雷?」
「…すみませんでした」
「何分待たせとんじゃわれえ!」
彼方がキレながら愁の肩を掴んでブンブン振り回していた。いや怖ぇよ彼方さん。僕は持ってきたスイカをムシャムシャ食べてた。あ~美味しいんじゃ~
まぁ彼方が暴れてるのを片目に僕はスイカを食べていたわけだが食べ終わったんで持ってきたバレーボールをオーバーで投げる。そしたら何故か今土下座している愁にぶち当たった(ちなみにわざとである)で球を拾ってサーブで姉さんにボールをぶち当てる
「少しは反省しなさい。」
僕は温かい目でそう言った
「「「はい」」」
三人はハモってそう言うのだった
「冷たぁい!」
「冷たっ」
「冷てぇ……」
姉さんと愁と由香里は海に足をつけて冷たいと言っていた。迷惑極まりないわぁ…てか真夏の海ってそんなに冷たいか???ったく、この人達は……
「早く来なよ~」
彼方が声をかける。
そんなこんなやってるとヒーヒー言いながら三人がやってきた。
「一キロ泳いでくれば~?」
僕は鬼のようなことを言った。彼方はクスクスと笑っており、三人は震え上がっている。なんでそんな僕を鬼みたいな目で見るの???まぁこの後普通に海で楽しんだけどね。(別にエロ同人誌みたいな展開なんてないぞ?お前ら期待してたやつ絶対居るだろ???)
海で遊ぶのは楽しいなぁ……と思える一日だった!
海に遊びに行った日から2日後、僕達はショッピングに行くことにしていた。正直何買いに行くんだ?と思ったが、なんか服買いに行きたいらしい(僕欲しい服ないんですが?!)まぁ服以外にも色々買いに行くらしい(色々ってなんだよ…)あとランチも行くらしい(多分僕の奢り)なんか色々酷いなあ……何となく僕はめんどくさいと思っていた。てか海行ってから二日後だぞ?!なんでそんなしか経ってないのに大型ショッピングモールに来てんだよ?!少し休ませて?!(まぁ有給一週間しかないからなあ…はぁ……また有給取るか…)ちなみに今はなんかみんな各々好きな服を選んでんので、僕はベンチで待っていた。でもこの服屋には服以外にもネクタイ等もあるらしい。…ネクタイが最近ボロボロになってきたと感じている僕はネクタイを二着買うためにネクタイを選ぶことにした。そうしてネクタイコーナーに来て、ネクタイを選び始めた。けっこうな種類があるため、時間がかかりそうだ…はぁ…で、僕好みのネクタイを探してると、
「お前もネクタイ買いたかったんだな」
後ろから急に背中を叩かれた。この声といい背中を叩く強さといい、この人物は
「…なんだよ、愁」
愁だろうと考えた。
「俺もちょうどネクタイを選びに来たんだが、そこに疾風が居たもんでな」
「背中を叩くな。」
僕は感動の再開のようなテンションの愁と裏腹に恐ろしく低かった(眠いのだ)眠いったら眠いんだよごら
「てか愁もネクタイ選びに来たんだな」
「…ボロボロになったからな」
どうやら愁もくそボロになったらしい。まぁ戦闘ばっかしてたからなぁ…仕方ないか。
「おっこれ良いじゃん!」
僕は赤と青のチェックのネクタイを見つけた。値段は…いや高っ。24,000だってさ。あはは笑えねえ。まぁ24,000なんて払えるか…ったくネクタイで二万も消費するなんて…まぁ耐久性も高そうだし、品質も良さそうだし、よしとしよう。
「たけぇ!」
隣で愁が絶叫する。どれどれ、と値段を覗いてみたらなんと40,000円。いや高すぎて草
「草」
「草生やすなよ……」
「僕24,000のやつ買うわ」
「俺もそれにしよ…はぁ…」
ブランド物とは、とてもめんどくさいものである。 僕は心中でだからブランドは嫌いなんだと思う。てか今思い出したけど、僕ネクタイ以外にパジャマも無かったんだわ…今夏やし、薄いパジャマ探そ…
「僕パジャマコーナー行くけど愁来る?」
僕は愁を一緒にパジャマコーナーに行こうと誘うが、
「俺は他のコーナー行きたいから、すまんが行けない」
と返ってきた。
「了解した。じゃあまたあとで」
「またな~」
僕は愁と一旦別れ、パジャマコーナーに向かうのだった
(…ここは高い物しかないのか?)
僕は心中で苦情を述べる。いやパジャマ一着8,000円って何事?高いとかいう話じゃない件。あ~辛い
「何故僕の好きな白の無地が無いんだ???」
ここはブランド物なのに白の無地は無いのか?頭狂ってるだろ。と思いながら探していると、赤の無地があった。
「無地あるじゃん」
白の無地があるのを期待するが、悲しいことに期待は裏切られ、無地は青と赤敷かなかった。いや怨むわ。しかも上下合わせて12,000…違う店で買えばよかったわ。そういや言うの忘れてたけど、彼方と姉さんと由香里は違う安い店に行ったらしい。ああ服屋なんて使わないから高い安いとかわからねぇよ…女は服屋にちょくちょく来るらしいから安いところがわかるらしい。凄いよな。僕はそこまで服屋来ねぇんだよぉぉおおおなんで女は服屋に良く来るんだよおおおおかしいだろおおおおおお
とまぁ心中で発狂するが、どうせ白の無地なんて無いと吹っ切れたので僕は諦めて青の無地を買うことにした。いやダサい…と途中で赤の無地にしたけど!まぁ買いたいもんも買ったしさっさと愁と合流して、彼方と由香里と姉さんの居る所へ行かなきゃ…と思い、愁に僕は電話をした。
「おお、疾風、今どこだ?」
電話に出てきた愁は開口一番そう聞いてきた。
「レジで金払って、今店の前」
「さっきネクタイ買った店だよな?」
「うん」
「了解。俺も近くにいるから、すぐレジ済ませて行く。」
「わかった。」
愁もまだ同じ店に居たらしい。で、レジ済ませてこっち来るらしい。で僕は待っていた
「お待たせ」
愁がきた。
「おかえり。今から彼方達と連絡とる」
「了解」
僕は愁と事務的な会話をした後、彼方に電話をした。
「彼方、今どこだ」
「お姉ちゃんと理奈と一緒に最初の店にいる」
「了解。僕は愁と一緒に今から向かう」
「わかったわ」
僕は彼方との連絡を終え、愁に彼方達の場所を告げ、さっさと行くことにした。
「にしてもお前も彼方好きだよな~」
急に愁がそう話しかけてきた。
「お前しばかれたいの?」
僕は思いっきり睨んでやった
「そう怒んなって…でも少なくとも彼方は疾風のこと好きだろ」
「友達としてだろ?」
「さあな」
愁は終始ニヤニヤしていたので、
「覚悟!」
僕は水月に膝蹴りを叩き込んでやるのだった。
「「すみませんでした」」
僕と愁は彼方達に頭を下げていた。あの後愁が気絶したため、僕は65キロある愁の体をおぶって彼方達のところへ向かったため、恐ろしく遅れてしまったのだ。そしてたいそう怒られたので今頭を下げている──────────という事だ。誰だよ膝蹴り叩き込んだやつ…
「いやマジでなんで気絶してたん…」
由香里が呆れた口調で聞いてくる。正直くだらな過ぎたし、彼方の前で話すのも恥ずかしかったので二人で一緒に「ぶつかったんだよ」と嘘をついた。我ながら酷いなと思った。(実際愁に睨まれたしな)ああいとをかし
「まぁ気にしてないしいいわよ。これから気をつけてね」
彼方が優しい声音で言う。(若干呆れた顔してたけど黙っておこ!)てか目が笑ってない気が…いやそれは姉さんだわ
「てか貴方達何円使った?」
彼方は急にそう聞いてきた。
「ちなみに私は五千円よ」
姉さんはパンパンの袋を出してきた。…え待ってこれで五千円?!差が酷い……
「36,000円」 「40,000円」
僕達はハモって言う。すると
「「「貴方達どんな店行ったらその量で合計76,000円かかるのよ!!!」」」
と三人に怒鳴られ、服選びのいろはを教えられた。いやめんどくさすぎて草も生えなかった。トホホ、今日はとことん不幸だ、と自分のアホさと彼方達から溢れ出るオーラに震え上がりながら僕はそう心中で悲しく言ったのだった。ちなみにこの後、服屋のいろはを叩き込まれた上、さらに僕はネクタイとパジャマ、愁はネクタイと私服しか買ってないのがバレ、罰として更なる女子達の買い物に付き合わされ、帰る時には空はオレンジ色に色付いていた。で家に帰ると、三日月が空を覗いていた。もう遅い時間だから、ということでみんな僕の家に泊まることになった。僕は綺麗だなあと考えながらフラフラになった足を動かし、家のドアを開けた。そして疲れた体のまま夕飯を作り、気づけば時計は神も認めた四十五度を作り上げていた。飯が食い終わった時には時すでに八時半でしたとさ。こっからは僕はぶっ倒れて皆が風呂入ったあとに入ったという始末。もはや皆元気すぎて僕はさっさと寝たが、なんか皆は深夜二時くらいまで騒いでたらしい。いや頭おかしいだろ僕十時に寝たぞ。そういやあの人たち夜行性だったわ…と、僕は朝起きて朝食を作りながら由香里に昨日の話を聞いたのだった。
十話 Summer Vacation~Letter Helf~
夏休みも後半に差し掛かった。正直お泊まり会ばっかしてた記憶。てかずっとお泊まり会してたけど、なんかお母さんとお義母さんとお義父さんとユキさんが来るらしい。いやマジで?と思いながらその三人が来る日には彼方達とのお泊まり会も入れ、僕は歓迎の準備をした。てか酒買わなきゃあかんやん。これは王牙さんからもらうか…五万で買えるかな?そういや家計が最近若干苦しいんだが……いや多分ほとんどは昨日の買い物のせい。あとお泊まり会しまくったから食材費がヤバかったのだろう。僕はヒーヒー言いながら姉さんとお母さん達が来る日に備えて準備を進めていたのだった。ちなみに部屋は若干足りなかったので僕と姉さんと愁は同じ部屋で寝ることになった。いや狭すぎてわろうわ。ちなみに今までは愁と僕が同じ部屋なだけでみんなそれぞれの部屋で寝ていた。なんかくそ広くねえかこの家。まぁいうて部屋は七つしかない。まぁここには姉さんの研究部屋もあるから、そこで寝てもいいんだよなあ……マジで僕はヒーヒー言うのだった
~霞雨楓の独白~
久しぶりに疾風の家に行けることが決まった時、私は発狂するほど喜んだと思う。まあいうて四ヶ月ぶりだが、それでもとても嬉しかった。いや正直葵と聖菜とユキと愁君達と疾風の家に泊まれるのはマジで幸福だと思う。優しいいい息子になったなあとしみじみ感じた。さぁ疾風の家に行く時のために服選びとお酒を選ばなきゃ…てか私今何歳だっけ??……37歳だわ。まだ四十路手前かぁ…まぁそろそろ体力落ちてくるだろうし今のうちに楽しんでおこう。私はそう思った。さぁさぁお酒はどこかな~
~霞雨聖菜の独白~
「…僕達疾風の家に泊まって何すんの?まぁ疾風の家に泊まるのはクソ久しぶりだけど」
僕は葵にそう問うていた。いやもう疾風の家に行くのが久しぶりすぎて泣きそうなんだが葵がおおはしゃぎしてるのでなんか気持ちを葵に持ってかれた気がして…まぁ嬉しいのは変わらないが!いや当たり前だろ楽しみじゃなかったらこんなこと葵に聞かねーっつーの
「何する…って疾風達と雑談するんじゃないの?」
葵は首を捻りながら言ってきた。まぁ普通の答えだわな。
「まぁそうだよな…」
「そんなことより疾風の家行けるんだからもっと喜びましょうよ!」
マジで葵はなんでこんなはしゃいでるんだ?まぁ楽しみなのは僕も同じだけど、流石に元気すぎて……
「葵も元気だよなあ」
「私は永遠の三十歳だもん!」
僕がため息をついても葵は元気良くそう返してきた。いや葵お前もう三十五でしょ…と心の中でツッコミを入れる。まぁ口に出すと命が危ういので心の中だけに留めている。葵マジで怖すぎるんだよなあ…
「ともかく、疾風の家に泊まりに行く日は近いんだから、準備進めるよ」
僕は葵に呼びかけたが、葵は
「酒と洋服以外終わってるわよ」
と言ってきた。…この人元気なだけじゃなく仕事も家事も両方こなすから凄いよな…と僕はいい嫁を持ったと思ったのだった
~神無月疾風視点~
「神は僕を殺す気か?」
僕は苦情を述べる。お泊まり会は今日だ。で昼ご飯からここに滞在するみたいなので今速攻で昼飯を作っている。正直クソ疲れている。
「私も手伝おうか?」
意地でも一人でやる僕に姉さんが呆れた口調でそう聞いてくる。いや姉さんは休んでろっつっただろ…と僕は心中で言い、建前として
「大丈夫だよ」
と投げかけた。いや姉さんさっき食材の仕入れでやばいほど疲れてるのになんでこんな元気なん?僕同じ年齢なのに疲れやすいなあと思ったがすぐに原因がわかった。多分前行った海とか色々の準備で体を酷使していたからだろう。僕の心身はけっこうボロボロだった。まぁ僕、姉さん、お母さん、お義母さん、お義父さん、愁、彼方、由香里、ユキさん、総じて八人分の昼飯を作ってるから疲れるのは当たり前…か。八人ってそこまで苦労しないと思ってたが、前作っていた五人分の倍近くあるのでクソ辛かった。ちなみに昼飯は麻婆豆腐にした(みんなで訳あって取る中華料理の方式にした方が正直クソ楽だった)で、麻婆豆腐八人分なのでけっこうやばい量だった。まぁ麻婆豆腐以外にも豚肉の生姜焼きとか一応副菜は作っている。サラダも作ってるのでまあ負担と時間はヤバかった。
「神は僕を殺す気か?……」
僕はそう神を恨みながら呟いたのだった
「ただいま~」
「ここあなたの家じゃない件」
お母さんが普通に自分の家発言しながら家に上がってきたため僕はツッコミを入れる。この人何ちゃっかり……お義母さんとお義父さんは姉さんと話していた。姉さんは心底楽しそうだ。ちなみに愁と彼方と由香里はまだ来ていない。あの人たち何してるんだ???今もう十二時……いやはよ来いよ
「久しぶりね~疾風」
お義母さんが近づいてくる。
「久しぶり。」
お義父さんも近づいてくる。ちなみにお母さんは今姉さんの所へ向かった。
「久しぶり二人とも……って前左肩損傷したときの報告以来だからけっこう最近にあったよね?」
「「あはは!確かにそうだね」」
僕がツッコミを入れるとしっかり肯定してきた。いやこの人達認めたよ。久しぶりじゃないって認めたよ。 僕が怪我した時の話認めたよ。
「……怪我の時…まぁ嫌だったなあ」
はぁ、と僕がため息をついていると、ピンポ-ンと聞きなれた音がした。
「はいはい今行きますよ~」
僕は玄関に向かい、ドアを開ける。
「「「来たよ~」」」
予想通り愁と彼方と由香里だった。ほんと、この人達元気だなあ。
「上がって~」
「「「お邪魔しマース」」」
三人が家にあがり、手を洗ってそのままご飯を食べた。
「そういや疾風、高校では彼女できた?」
急にお母さんが聞いてきた。僕は思わず吹き出してしまった
「できるわけないじゃん」
僕が笑いながら言うと、
「「「「「「「貴方イケメンだから一人は居るもんだと」」」」」」」
と、その場に居た七人が同意した。この人達死にたいのか?僕は思っくそ不機嫌な顔を奴等に向けた。てか実際不機嫌な件。ぶち〇したいわ
「…彼女ねぇ…いつかできたらいいな?」
僕は半ギレしながらそう言った
「冗談だってw」
お母さんが言い訳をする。…冗談でも許せる冗談と許せない冗談があるんだよ。と心の中でキレながら僕は顔ではハハハ、と笑っていた。(多分目は笑ってなかった。)我ながら怖いな。と思考を巡らせていると
「そういや高校での武勇伝聞かせてよ!」
とお母さんが言ってきた。お義母さんもお義父さんもユキさんもうんうんと頷いていた。武勇伝って……あれ待ってデジャブ半端ないんだけど(三話:翡翠の刃参照)ねぇなんでこの人達愁と同じような質問してくるの?てかお義母さんとお義父さん、ユキさんに関しては
「中学の時のも聞かせて」
と言わんばかりだった
「……中学まずクラスメイトへの顔面骨折、靭帯損傷、ヤクザへの脳震盪とくも膜下出血、先生へアキレス腱断裂、先輩への脳震盪等等…高校の時はヤクザの組の破壊、虐めっ子の退学、小鳥遊組の一人を刑務所にぶち込み……」
とまぁやばいほどの黒歴史を語った。正直アホらしい。まあ皆さん「いかにも疾風らしい」という顔をしていた。
「……貴方達は私の黒歴史を聞いて何が楽しいんだァァ!!!」
僕の怒りは頂点に達し、大声で雄叫びを上げるのだった。
ちなみにこの後夕食を取ったり、恋バナをしたりと色々あったが、主の疲労と日記の付けずらさから省略するとしよう。夏休みの思い出はこれで終わりだった。
まぁ色々濃い夏ではあった。(まあ秋の方が濃い生活だったけど)久しぶりにお母さん達に会えたからもうよしとしよう。僕的には満足できる夏だった
二章 終
十一話 Love Letter
僕的には最悪の目覚めだった
今日は九月一日。そう、二学期最初の日だ。めんどくさすぎる。まったく、二学期に入ったらどうなるのやら
僕は起きて早々ため息をつく。何だか久しぶりに姉さんの朝食を朝早く起きて作る気がする(夏休みは朝食はなるべく各々で作るようにしていた)現在六時半。変な時間に起きてしまった。とりあえず弁当を作ろうと決めた。(朝食は十五分程度でできる)昼飯には肉を焼こうと考えた。……なんか、弁当のことをこんな考えたのは久しぶりである。新学期だから仕方ないか、と僕は片付ける。正直めんどくさいかもしれない…いや、前の地獄の連続お泊まり会よりはマシか…まぁそんなこと考えながら僕は弁当の肉を焼き、それを詰めるのだった。
「これで、始業式を終わります」
四分にわたる校長(お義父さん)の話を終え、諸連絡を伝えられた始業式は、今終わった。いや~校長(お義父さん)の話は要約されてて短いし言いたいこと伝わるから良いな~。そして、話もおもしろいので、よく生徒間から笑いが起きる。やはりお義父さんは素晴らしき校長だ… そのカリスマ性には惚れ惚れする。しかも人事も完璧って…マジで凄い人だよな…過去に何があったらこんな人間になれるのやら。僕でさえこんなクズ人間になったから、相当いい教育をされてきたのだろう。僕もいつか子供ができたら…そんな教育がしたいなあ。まぁ自分が妻ができるような人間では無いとは自覚してるけどね。あれ、おかしいな目から汗が…
とまぁそんなクソくだらないことを考えていると、
「高校一年生、教室に戻りなさい」
と、生徒会長からの指令がかけられた。全く朝会をしたアリーナから教室までどんだけ苦労すると思ってんのこの人達。なんて心の中で苦情を呟く。
下駄箱なう(なんとなくJK語使ってみた)僕はアリーナから上履きに履き替えるために下駄箱に居た。。僕は疲れたためため息をつき、下駄箱を開ける。
「……は?」
下駄箱開けたらなんかあるんですけど。紙入ってるんですけど。しかも二通。誰だよ空き巣でもきたん?てか展開早くない?朝会抜け出したやっおんの?え?いや怖すぎて震えるんだけど。周りからどんどん生徒が減っていく。予令が鳴る。本令が鳴る。それでも僕は硬直していた。中身を開きたくない。なんかハートで彩られてるし。怖すぎて草も生えんわ。
「…開けてみるか」
僕は恐る恐る開けてみることにした。一通は『昼休み、話があるので屋上へ来てください』と書いてあり、もう一通目は、『放課後、話があるので屋上に来てください』と書いてあった。あ~ラブレターですか?二つともラブレターですか??僕モテないのだけど?てかなんか三章に入って急に展開早くね?(メタいメタい)マジ三章すぐ終わるんじゃねぇの???僕的には最早疲れたんだが。てか一番今日が疲れてるわ。なんでラブレターなんてあるんだよおかしいだろ。とまぁどうせ暇だし昼休みまで屋上で寝るか(ユキさんの授業あるけど…まいっか)今日位いいよね?一応成績全部3(最高は3です)だから別に授業なんて…まぁ雑念があると寝れない。これから三時間寝るのだから、無心になって寝よう。そうしよう。そして午後の授業は参加しよう。僕は一日のプランを決め、上履きに履き替えてとっとこ屋上へ歩き出した。屋上に着いた僕は、さっさと眠りにつくことにした。ああ、今日も朝日が綺麗だ…
「な~に寝てんのよ」
誰かに額をツン、とつつかれ、僕は目が覚める。すると聞きなれた声が上から聞こえた。なんでこの人ここに居るのかな……周りを見渡すと、お昼を食べているカップルが発生していた(イチャイチャ目障りだから殺したい)まぁもう昼休み、ということなのだろう。今日は良く寝たなあ…いやそんなことよりも
「まさかあの手紙の書き主姉さん?」
僕は姉さんに確認をとった。そしたら姉さんは頷いて、無言の肯定を表していた。僕は頭を抱える。なぜ姉さんがあんなまどろっこしいことするんだ……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙コイツコロシテヤル
「まぁNumber関連だから誰にもバレたくなかったのよ」
姉さんは珍しく僕に真面目な事を言った。いや、どんだけ重大な任務だっていうんだよ…
「…次の任務のこと?」
僕はため息をつきながら姉さんに聞いた。すると姉さんは僕の予想とは裏腹に、
「いや、圭のことについてよ。」
と、小鳥遊組総長の、小林圭(八話参照)のことについて話があるらしい。え待って圭になんかあったの?
「…圭が遂にNumberに入るとでも言うのか?」
僕はマジで頭が痛くなってきた。なんでですかねぇ…
「いや、圭の話っていうのは冗談」
こいつ殺そうかな。
「新しい任務なのね。結局」
僕は盛大なため息をついた。姉さんも肯定している様子だった。いやどうせ三章ではその任務しないんだし(メタいメタい)まぁ四章なのかそれとも裏でやるのか…とそんなこと思っていたが心配は無かった。なぜなら
「次の任務は…紅葉の時期よ」
そう、次の任務は何ヶ月か先なのである。しかも、
「……Dreamerとの、最終決戦と見たわ。」
僕は跳ね上がった。え?Dreamerとの最終決戦だと……?!僕は目を剥いた。そして硬直してる僕に姉さんは紙を突き出してきた。
「……何これ?」
またラブレターですか?まぁそんなはず無く、次の任務の話らしい。そしてその紙を開くと……
「……なに…これ……」
その紙に書いてあったことは、
''Dreamer is dying. K.A. February Tuto fall and Number''
と書いてあった。何これ……てか、
「…2月、つと、秋と、Number……どういうことだよ」
僕は頭を抱える。しかし、何故かこの紙の真相が少し見えた。姉さんはまた無言で紙を突き出してきた。
''Base Tokyo 五角形 近く building''
これはすぐ意味がわかった。多分拠点の住所だろう。そして姉さんはため息をつき、また紙を渡してきた。
''―・・・/・――・・・/ ―・―・・/―・・―― /・・――/・・――・・ /――――/―――・/――・―・― /・―・―・/――・―・・・/・――・''
なんだこれは……頭がおかしくなりそうだ…しかしモールス信号ってことだけは解った。まぁ、放課後まで考えてようかな…てか途中の意味わからん単語なり…くだらんミステリーも甚だしい。小説みたいな事するなよったく…あほらし
「ありがとう姉さん。とりあえず考えておくよ」
姉さんはため息をつき、
「まぁ、任せたわよ。」
と、ご飯を食べに教室に戻っていった。僕も立ち上がり、屋上を出た。何故かって?察しが悪いなあ。
「すみません、ユキさん。仕事の関係で今日は午後も授業に参加しません。」
僕は職員室にてユキさんに頭を下げていた。ちなみに事情は説明している。あんな紙見せられたらなあ…ユキさんも困惑していた。
「…なんか最近仕事多くない?」
ユキさんはそう聞いてきた。いや正直Dreamerとの最終決戦だから仕方ないんですが。Dreamerだぜ?もう倒すために学校休んでもいいくらいだ。
「…Dreamerとの闘いも大詰めなので」
僕は頭をポリポリ掻きながらそう答える。いやさ?Dreamerとの闘いは、第五階層の人達が頑張ってくれてるのよ。食い止めてくれてるのよ。凄いよねあの数に対抗するの(僕も偶に参戦していた)まぁこんな余談はいいんだよ。
「そう…くれぐれも身体には気をつけてね。もう行っていいわよ」
ユキさんは、そう言った。僕はお辞儀をし、その場を離れようとした。すると肩に手をかけられた。僕が後ろを向こうとする瞬間、後ろから
「死なないでね」
と、声が聞こえた。…ああ、死なないさ。たとえ
『僕が消えようとも』
「…本当にどういう事だよ…」
僕は頭を掻く。いや、モールス信号を調べながらでも意味がわからん。何がどうなってるんだ。一応モールス信号の方は解いたが、意味がわからない。…正直仮説は思いついてるのだが、確証は無いのだ。仕方ないんですよ。
「それに…一枚目のDreamer is dyingの価値が、ある必要性が感じられない…」
僕はますます混乱してきた。正直解ける気がしない。これは骨が折れそうだ。二枚目に関しては、解けた。
「…東京の五角形なんていったら、アレしかないよな…そして、その近くのビル…か」
僕はメモ帳にペンを走らせる。腕も痺れてきた。目の端では、空がオレンジ色に色づく様子が見えた。それでもまだわからない。いや、解りたくないのだろう。真実というのは、知らなくていいことだろうか…僕は頭が狂いそうだ。何故こんな事になったのだ…二枚目は段々検討がついてきた。
「…2月…という事は、如月か…」
如月という苗字を思いつき、僕はギョッと目を剥いた。実は如月というのはお義母さんの旧名だ。何故如月か、というのはすぐ解った。…わかりたくない事実ではあったが。わかったものは仕方ないのだ。僕は三枚目を解き始める。そんな時には、六時限目の終わりのチャイムが鳴った。放課後になった…ということは
「あのラブレターの持ち主が来る時間…か」
僕は正直そんなことには目もあててないわ。仕事の方が大事だ。きっぱり断ってやる。なんか可哀想だなそれはそれで()てか、誰が来るんだろうか。結構気になってたりする。かわい子ちゃんかな?(あれ、キャラ崩壊してね?)クールな女の子だろうか。それともホモだろうか。正直だれでもいいんだけど。僕は顔より中身を優先するんだよ(それでも可愛いというだけで優遇される姉さんって…)そういや余談だけど、この学校には僕と愁の他に入った男子の人数は、この学校は中高合わせて三十六クラス、各クラス二人だから、なんと七十二人も入ってきたことになる。凄い数だ。まぁカップル成立も起きているわけで…カッコイイ男はモテるんだよなあ…ああ世界は無情
こんなこと言いながら僕は恋愛にあまり興味無いんだよね。あれ?僕何言ってるんだろ。てかなんだろう。目から汗が…(本日二回目)まぁそんな茶番をやってるうちにドアが開いた。中からはイケメン男が出てきた。いや怖すぎて草。え?ホモ?と思ったが後ろから頬を赤らめた女子がやってきた。制服の襟章のマークと色は…男が中の緑…中二か。で女が赤…中一?部活の先輩後輩の関係か?(うちの学校は赤が中一と高一、緑が中二と高二、青が中三と高三である。)またカップルかよ。と思ったが、今まさに告白するという場面であるらしい。何か女が男に告げている。僕の地獄耳によると、「好きです、付き合ってください!」と言っているそうだ。うわぁベターすぎて笑う。他に言葉無いのかよ。と思った今度は男が女に何か言っている。え~なになに「俺も好きだ。」と言っているらしい。なんだこのムカつくイケボ野郎は。てか僕が盗み聞きしてるの気づいてないの?この人達。アホ過ぎない?そして今二人の体格に注目すると、足が細く、背が高かった。…バレーボールか、バスケだろう。バスケ部にあんな奴いたか?まぁ僕は帰宅部だからそんなの知らないけど。僕も部活そろそろ入るか…適当にバレーボールで良いかな。中学の時やってたし。まぁ幽霊確定だけどなあ…あれおかしいな目から汗が(本日三回目)まぁ今耳を傾けてみると、「行くぞ、○○」と言っていた。(名前までは聞き取れないわ!!!)二人は手を繋いでいる。いやラブラブだなあ。そして途中一回キスをして、屋上から去っていった。正直僕はアホらしくなり、見なきゃ良かったと思う。後輩のあんなもん見せられたら精神壊れるわ。はぁ、しかも誰も来ねぇし…もう帰ろう。そう思い立った。すると次の瞬間、
「帰ろうとはいい度胸じゃない。」
と後ろから声が聞こえた。聞き慣れた、幼なじみの声が。僕はギョッと目を剥いて後ろを振り返る
「人の盗み聞きしてすぐ帰るなんて、私失望しちゃうわよ」
と目の前の女はつきながら、ニヤついた顔で言った。
「…ラブレターじゃなく、まさかお前からの手紙なんてな。」
僕はため息をつきながら目の前に居る彼方に向かって言った。
「…で、何の用でしょう」
僕は彼方に聞いてみた。すると、彼方は驚くべき発言をした。
「…その手紙は、ラブレターよ。」
彼方はそう言った。僕は驚く。なんだ、相手が違うのか?そう思い耳を傾けると、彼方は頬を赤らめながら、
「それは正真正銘、私からあんたへのラブレターよ」
と、僕に人差し指を指しながらそう言った
十二話 幕間~Dreamerができるまでの物語~
「なんなんだよ!!!」
俺は足踏みをする。イライラする…クソっ、クソクソクソクソ…なんで俺が左遷なんだよ…イライラする!!!俺は道の人目も気にせず近くのビルを殴る。…NumberからBlack Numberへの左遷が決まったのは四時間前。俺はNumberで密告によって左遷された。…無実の罪なのだ…俺は絶望した。二度とNumberには戻れない。Black Numberの男達は麻薬でもなんでもやる。Numberの管轄下では無いのだ。要するに
「用無しのクソ野郎が行くところ」
なのだ。イライラする。しかし、絶望に染まりまくる訳にはいかない。復讐だ。…復讐。Numberへの復讐。なんでもいい。時間がかかってもいい。Numberをぶっ壊す!!!そのためには内通者が必要だ。さらにBOSSの信任も得なければならない
「…めんどくせえ」
俺はBlack Numberのアジトへと足を運ぶのであった
「…てめぇが新入りか」
目の前のBOSSはそう聞いてくる。俺は首肯する。
「俺は如月真太(キサラギシンタ)、Black NumberのBOSSだ。」
目の前のBOSS、如月真太はそう言う。
「…俺は葉月翔真です」
俺は名前をBOSSに告げる。
「…葉月翔真…か…う~んいい名前だ」
BOSSはうんうんと首を上下に動かしながらワインを飲む。なんて陽気な人だ…
「君は、目標はあるかね?」
BOSSはそう聞いてきた。俺は
「Numberをぶっ壊す事です」
と、答えた。BOSSはふ~んと頷き、そしてニヤニヤしながら、
「それはBlack Number全体の目標だ。素晴らしい」
と答えた。俺は興奮して、
「ありがとうございます!」
と答えた。全身が熱くなる。仲間が居ること、それがどれ程嬉しいか、みんなわ
かるか?俺にはわかる。自分と同じ目標を掲げている組織に入れるということ。それは、生きる意味でもあった
「これからよろしく頼む」
BOSSが挨拶したので、俺は息を思いっきり吸い込んで、
「はい!!」
と答えた。
俺はBlack Numberに入ってから精一杯努力した。理不尽な先輩が居ても、辛い仕事でも頑張った。全てはBOSSの信任を得るため。Numberを潰すため。自分の目標に突っ走るため。 そうしていくうちに、BOSSの信任を得て、五年目、遂に幹部になった。
「ありがとうございます!」
俺はBOSSに頭を下げていた。
「いやいや、お前は素晴らしい人材だ。」
俺はBOSSに褒められ、俺はとても嬉しかった。全身が暑くなる気分だ。熱でもあるのかな
「…ありがとうございます。」
俺は言葉では反応しきれず、ありがとうございますと繰り返した。
「そこでだ。お前に1つ頼みたい」
BOSSは急にそう言ってきた。なんだ、頼みって
「…頼みとはなんでございましょう?」
俺が聞くと、BOSSは、
「お前に、この組織を独立させて貰いたい。」
BOSSは急にそう言った。…何故だろう。俺は全身に悪寒が走った。何故そんな事を、入って五年の俺に…
「…俺はそろそろ引退する」
BOSSはそう言った。何を言ってるのだ?この人は?何もわからなかった。いや、解りたく、なかったのだろう。俺は。でも、わからなくちゃいけない。
「…なんで、」
俺は目に涙を溜め込みながら、
「…なんで、Black Numberから離れるんですか?」
と聞いた。自分でわかるほど鼻声だった。
「…俺は死ぬんだ」
今、なんて言った。BOSSはなんて言った。俺は、今度こそ、ホントにわかりたくなかった。
「…なんで、どうして」
俺は耐えきれず涙を流した
「癌なんだよ。昔から。だから指示しか出さず、俺は何もしてこなかったのだ。」
背筋がこおる。背中に汗がツ----ッと走る。クソ…俺は嗚咽を漏らした。BOSSの前で、こんな醜態を晒したくなかったが、この時の俺は我を失っていた。
「だから組織をお前に託す」
BOSSは、俺に
「一番信頼できた、お前にな」
と言った。BOSSは、今まで本当に信頼できる仲間は居なかったと話してくれた。だから、俺を見つけて、息子を得たような気分だったらしい。俺は嬉しくてまた涙が出た。
「俺には息子ー如月敦斗ーがいる。俺が死んだら、ここに来るから、良くしてやってくれ」
BOSSは、それを言って、去っていった。俺は、目を潤ませながら、聞こえないであろう言葉を、大声で叫んだ
「絶対、貴方の夢ーいや、俺達の夢を叶えます!!!」
あれから一年経った。俺はBOSSになり、新たな仲間、如月敦斗を迎えてNumberに対して反乱を起こした。ちなみにこの時Number.2等は居なかったため、余裕でこちらの要求が呑まれた。この組織の代理はなく、もう即解雇となるらしい。それがいい、水無月王牙。お前には、その程度の方がいい。…でも、まだ夢は叶えられていない。
「…まだ、Numberは潰れてないのだ」
俺は、そう呟いた。そして、後ろにいる仲間達に向かって、
「…俺たちは、夢を見るもの。俺達はBlack Numberでは無い。俺たちは、新しく、Dreamerとなろうじゃないか!」
俺は堂々と宣言した。後ろからおぉー!と歓声があがる。
そうして、Dreamerという組織ができた。秘密結社のため、基本的にNumberと警察以外、俺達を知らない。でも、Dreamerは嘘の勧誘をしたりするので、構成員は一気に増えた。
「さて、復讐といこうじゃないか」
俺は、葉月翔真ーいや、もうそろそろ息子に座を譲るから、これからのBOSSは葉月優斗ーかな?とりあえず、あいつには俺の意志を継いでもらいたい。俺は、大声で、
「今度こそ、Numberをぶっ壊す!!!」
俺はそう叫んだ
十三話 Confession
「今…なんて?…ああ、冗談か」
僕は乾いた笑いを浮かべる。何故か上手く笑えなかった。彼方が僕に告白?へっ、そんな筈ない。どうせ罰ゲームかなんかだろう。僕よりも良い男なんてこの学校にクソほどいる。しかも僕は殺人者だ。なんで、そんなクソ野郎と…
僕が思案していると、彼方は純粋な笑みで、
「貴方何言ってんの?冗談なわけないじゃない」
と言ってきた。少し怒っている様子だ。てか怒ってる。絶対キレてる。
「…なんで、僕に?こんな、殺人者の、僕に。もっと良い男が居る中で、僕に」
僕は純粋な質問を彼方にぶつけた。彼方は怒るかもしれない。でも、僕は、何故僕に彼方が告白するのかが全くわからなかった。いや、解りたくないのか?自分の気持ちが理解できない。そもそもの話、僕は彼方に何を聞きたいんだ?理由か?何故だろう。僕は全くわからなかった。また思案してると、
「…貴方ねぇ」
と顔を膨らませた彼方が、
「…なんで人が好きになってやったのに、理由なんて聞くの?」
と言ってきた。僕は絶句した。マジの目だ。マジで言ってる、この人。
「…理由…ねぇ…僕は、他の男が居るだろってことをー」
「貴方以上に良い男なんて、私の中で居るもんですか!!!」
僕が地雷を踏んだのか、彼方はマジギレしてきた。僕はその圧力に足を引いてしまう。怖い、怖い。彼方にこんな威圧があるだろうか。
彼方は足を一歩進める。同時に僕は足を一歩引く。とにかく彼方が怖かった。…僕以上に良い男が居ないって…本気で言ってるのか?
とりあえず罰ゲームではないことを知り、僕は彼方の気持ちを聞きたくなってきた。しかし、彼方は聞かずとも言ってきた。その理由を。
「貴方は!」
彼方は一拍置き、
「貴方は!何度私を救ってきたと思ってんのよ!私が貴方にどう思ってると思ったのよ!!!」
と、涙声で、嗚咽を漏らしながら叫んだ。
――――――――――――――――――
~西賀彼方の独白~
なんなのよ、疾風。こいつは。なんで私の気持ちを理解できないのよ。てかラブコメじゃないのよ。舐めてんのかしらこいつ。マジで泣けるわ。嗚咽が漏れる。正直、恥じらいなんて無かった。自分の気持ちを伝えられたら、それで良い。私は、そう思っている。だから、今から、
「今から、貴方に、教えてやるわよ。私の気持ちを」
教えてやるわよ。疾風に。私の''本当の気持ち''を。私の発言に対し、疾風は、
「…聞かせて頂こうかな」
と、震えながら呟いた。
――――――――――――――――――
~西賀彼方の回想~
私は、疾風に何度も救われた。それは小学生の頃からだ。あいつは、いつも私のそばに居た。
「彼方に傷つけんなよ」
そう言って、私を傷つける人を倒した。私は、疾風に対して、この頃から恋心を抱いていたのかもしれない。しかし、疾風への恋心に気づいたのは、小学六年生だった。
「なあ彼方」
小学六年生に進級した時、疾風はそう言った。
「なぁに?」
私がそう答えると、疾風は、
「…春って、良いよな」
疾風は自分のクラス表を思いっきり握りしめながらそう言った。
「…ええ、良いわね」
暖かく、桜舞い散るこの春が、誰が嫌いなのだろう。少なくとも、私は好きだ。この日差しが心地いい
「なあ彼方」
疾風は、聞いてきた
「お前、僕に助けられるの、嬉しいか?」
疾風は、ガチトーンでそう聞いてきた。…疾風は、この時から自分がエゴイストと考えていて、救っても相手が傷ついてる可能性を考えていたのだろう。私は、
「もちろん。貴方が助けてくれるから、私は気持ちよく生きられるのよ」
と答えた。すると疾風は、
「…なら、僕は、お前を助け続けてあげるよ。どこに居ても、いつでも。」
疾風は、そう言ってくれた。
「…貴方がそういうことをするとは思えないけどね」
私は微笑みながら疾風の額に人差し指を突きつけた。
「…なんだよ、人が折角いいこと言ってあげたのに」
疾風はそっぽを向いた。でも顔は赤かった。嬉しかったのだろう。同時に私も嬉しかった。全身が熱かった。その時に私は疾風に抱いている恋心に気づいた。ああ、私はこいつが好きだったんだな、と。理由なんてそれだけでいい。好きだから、好き。それだけ。そして、私は一つの夢を持った
(いつか、あの、桜が咲く、あの大空の下で、こいつに付き合え、と言いたいわ)
という、夢。私は、そこから、疾風に対する恋心を進めていった
でも、中学が別々と聞いた時、私は酷いショックを受けて、食事が喉を通らなかった。それほど悲しかった。寂しかった。疾風にとっては寂しいな、位なのだろうけど、私にとっては夢だ。夢が離れるんだ。悲しいのだ。そして私は学校の近くに引っ越した。そこから疾風に再開するまで私は楽しいながらも、不満を持っていた。神無月疾風の不在という、不満を。私は高校で再開して、家に帰ったら跳んで喜んだ。夢との再会。どこでもい。昔桜舞い散った、ーいや、今の時期だと、紅葉が舞い散るあの大空の下で、絶対告白する。付き合えと言う。その為の下準備だ。これから私は疾風に言う。
「紅葉公園に行くよ」
と。
――――――――――――――――――
~再び視点は疾風に戻る~
「…彼方…」
彼方は目を瞑っていた。過去の回想でもしてるのだろう。僕はそういう人間を幾度なく見てきた。そして何秒、何分が経った時、決心したのか彼方は、僕に、
「紅葉公園に行きましょう」
と言った。僕は、彼方の気持ちを聞くためなら、公園に行っても良かった。いや、その公園で聞きたかったのだろう。彼方の「本当の気持ち」を。彼方は、黙って着いてこい、というメッセージの表れなのか、くるりと身を翻し、屋上から出た。僕は彼方の背中を追う。何処までも。いつまでも。しかし、いつになっても、夕日は落ちなかった。今は九月。当たり前か。今は六時だ。そして、彼方は歩みを止めた。僕も歩みを止める。周りは、紅葉がちっていた。さらに、夕陽も差し込んでいた。僕は、その綺麗な景色に見入っていた。こんな綺麗な景色、''桜ヶ丘公園''以来だ。
「……私ね、思ったの」
彼方は急に話はじめた。
「私、いつか、貴方に、言いたかった。綺麗な景色で、晴れた時、こういう公園で。」
いつしか、雲が近づいてきた。夕陽が遮られる。夕立だろう。ザーザー一気に降り出した。全身濡れても、彼方はそんなこと気にせず話を続けた。
「私は、貴方への想いを抱いた。好き、という。それだけ。憧れである存在。」
彼方は、涙声になる。雨のせいで見えないが、彼方は泣いているのだろう。懐かしき昔、暗いけど、明るい過去を。僕たちと共に歩んだ過去を。
「…私は、この公園で告げるわ。貴方に。」
彼方は接近してくる。僕は、退かない。覚悟はできた。彼方が何が言いたいかわかった。全て理解した。
彼方は、僕の腰に手を回し、背伸びをしながら、
「神無月疾風━━私と、付き合ってくれませんか?」
その、一言を彼方は言い、彼方は僕の唇に唇を重ねてきた。
十四話 Love enemy
あぁ、昨日は黒歴史確定だ。
彼方の告白から一日が経ち、僕は頭がショートしかけている。マジで黒歴史だわ…姉さんにすらまだ話してない。僕は時計を見る。うわあボーっとしてたら既に七時半だよ…コンビニ行って買ってもらうか…やっちまったわ
しかも考え事はまだある。
「…あの紙よ…あの一枚目と、三枚目の…意味…」
一枚目は、何か人名が書いてある予感がする。如月なんちゃらだろう。問題は三枚目だ。三枚目のモールス信号は、
「○○○○○○が真実」と書いてあった。そこには人名が当てはまったのだが…多分、
「…彼処(あそこ)のDreamerアジトに行くしか…ないか」
僕は決心した。九月二十四日、アジトに突撃する。決死の思いだ。
「疾風~?」
後ろから急に声がした。聞き慣れた声
「……姉さん?」
僕は振り返る。やはり姉さんだった。
「な~にボーッとしてるのよ。弁当くらい買ってやるっつーの」
事情を察してくれたのか、姉さんは優しくそう言ってくれた。やっぱこの人には話した方がええんかな
「疾風君?」
姉さんはニコニコしながら、
「なにか私に隠し事してるでしょ」
の言ってきた。心臓が飛び跳ねる気分だ。いやバレたよ。そんな露骨だった?
「ちょっと……ね」
僕はお茶を濁すことにした。(詮索されたら終わりだけど)
「そう…まぁ元気出しなさいよ」
バンバンと、姉さんは背中を叩いてきた。笑いながら叩いてくるのはホント恐怖。怖いよぉ…
「…元気でしょ」
僕はめんどくさくなったので、
「ほら、コンビニ行くんだから、さっさと準備していくよ」
と、姉さんに告げた。姉さんは首肯して、自分の部屋に学校の支度をしに行った
「……いい姉さんだよな」
僕は、足音が消えたあと、本音を呟いた
ーーーーーーーーーーーーーーーー
~霞雨真理奈の独白~
「疾風ったら、なにをかくしてるのかしら」
私はそう呟いた。あいつ、明らかに様子がおかしい…多分、あの紙の影響もあるのだろうけど、確実に他に理由がある。女に告白されたのかしら?そういや前下駄箱に紙入れた時になんかあったわね…あれラブレターだったのかしら?疾風が混乱してるじゃない。絶対ぶち○してやるわあ…まあ、ラブレターなら、詮索するべきではないだろう。まず私はあいつに気は無いし、男は興味無いから…なんかトラウマだなあ。まあ話しておこう。
――――――――――――――――――
~霞雨真理奈の回想~
話をしよう。あれは四年前だったか……五年前だったか……まあそんな事はどうでもいい。
私は、疾風とは違う目に遭っていた。
あれは私のむねが膨らみ始めた時(というよりだいたいBカップくらいになった時かしら……まぁどうでもいいわね★胸なんてあれば同じなのよ。え?貧乳ロリはこそ至高だって?死にたいのかしら?)だったかしら。(キャラ崩壊してる雰囲気が否めない)
なんかね、あのクソ父親がなんかねぇ…胸触らせろとか言ってきたり腰に手を回してきたり…いろいろなとこに手を突っ込んできたり風呂凸してきたり(自主規制
まぁこんな感じだったのよ。
「お前そろそろ俺に○させろよ」
って言われたのよ。いや自分の子供と○るとか頭いかれてんのかしら。
で、
「あんた何言ってんの?散々私の○器触ってきたのに、今更…嫌に決まってんでしょ、訴えるわよ。近親相姦とかイカれてんの?犯罪よ?」
こうやって怒りが限界突破したか、断ったらどうなったと思う?
「拒否すんなよ。ガキが」
って殴ってきやがったのよ?清々しい程のクズよね。死ねばいいのに♪まぁ今は野垂れ死んでんか。まぁ今では思い出だわな。死ねばいいのに♪(本日二回目)
な~んか短いわね。まあ思い出したくないのよ……察してくれないかしら……
全く、ただでさえ思い出したくないのにまだ思い出しちゃうわ……本能って怖いわね。もうなんも考えたくないわ…
――――――――――――――――
~霞雨真理奈の独白~
まあ過去なんて思い出すもんじゃないわ。そんな事より、疾風の気持ちくらい休ませてあげないとだわ…正直、はやては今まともにNumberで働けるとは思えない。戦場になるなんて無理だ。最悪捕まって殺される。私があいつの代わりになってやろう。私はそう決心した。仕方ない。疾風があんな状態なら。弟は姉に守られるもの。私は、
「絶対、疾風を守り抜いてやるわ。それが、良い姉さんってやつだもの。」
――――――――――――――――――
~視点は再び神無月疾風に戻る~
「ふんふんふふ~ん」
僕は気を紛らわす為に鼻歌を歌いながら、教室の席へと向かった。彼方も姉さんも一緒だ(今はそれぞれ席に向かったけど)さ~て机の中に色々ブツをいれようか。そうして、教科書を取り出し
「うがぁぁぁぁぁ」
僕は机の中を除くと、発狂した。
「どうしたの?」
未だに隣の結衣が心配そうに聞いてくる
「机に…手紙が……怖いよぉ……」
僕は自分を抱き締めながら震える。今日の気温何度?(そんなに寒くないだろ)
「大丈夫?怖いわね……」
結衣は同調してくれた。心の奥底から心配してるようでは無い気がするが、まあ脳みその一番端に追い込んでやる!
「ちょっとあいつらのとこ行くわ……」
僕は結衣に暗い声と暗い顔でそう言った。
『手紙を持ちながら』
何故か結衣からの視線を感じた
「なんやこれ」
「僕の机の中に入ってたんだよ」
「「怖いわね」」
「いや怖……」
「愁読んでよ」
「はいよ」
僕は愁の所に来て、手紙を渡して、読んでもらっている(中身怖くて見たくないんだよ!!!)
姉さんも彼方も居る。ヤバい雰囲気なんだが。てか彼方と気まず過ぎて笑う……(笑えねえわ)
「何何…なんだよ、ラブレターか?」
ラブレターという言葉に、彼方と僕が凍りついた
「「「……ラブ、レター?」」」
僕と彼方と姉さんがハモってきく。いや、またラブレター?…勘弁してくれ。
またラブレター?二通目じゃねえか。
「なんか六時に屋上に来てください、話がありますだってさ。ラブレター確定じゃん」
「うわあ……」
僕は絶句した。何僕モテたの?僕女苦手なんだけど((()))そんなことよりなんか彼方がめっちゃ暗い顔なんですが。
「彼方、どうかした?」
心配だったのか、姉さんが彼方に聞いた。
「…なんでもないわ」
彼方は低いトーンそう突き放し、くるりとUターンしてから廊下に出た。
「大丈夫なのか……」
僕は一瞬背中を見せてるはずの彼方の顔が見えた。彼方は……
――――――――――――――――――
~西賀彼方の独白~
ラブレターですって?私が書いた次の日に?確実におかしいと思う。私は今、醜く歪んだ顔をしてるだろう。行き場の無い気持ちに追いやられた。私の恋は成就するのか?いや、無理かもしれない。
「……だって、相手は、あいつに今一番近い人間だものねえ…」
あいつは、学校では一番疾風と関わっている。しかも前一緒に話した時、疾風の話が出たのだ。おかしくない。多分私の仮説は合っている。まったく、主さんは、こんな事だけに私の枠を取って、大丈夫なのかしら。暇なのかしら。アホらしいなあ。まぁどうでもいいけど。私は、その手紙の書き主に、自分にしか聞こえない声で呟いた
「あんたは私の恋敵よ。絶対勝たせてもらうわよ?」
私は、拳を握りしめ、そう決意し、教室では無く、屋上へ向かった。何故か気分は清々しかった
――――――――――――――――――
~神無月疾風視点~
「なんで僕が…」
僕は明日のジョーの最終話の如く柵によっかかっていた。何処のかって?屋上に決まってんだろ。なんか視線感じるう((()))なんか怖い…てか今何時だよ。……五時半…あと三十分あんの?!よし寝よう。すぐ寝よう。僕はラブレターの事なんて忘れてグースカ寝るのであった
「ふぁぁ……」
起床。ただいま五時五十五分
「ギリギリで草」
六時前に起きれたことにホッとする。遅刻厳禁(これ当たり前!)
てか別にどうせたいしたことないし……なんかまた告白とかされるのはめんどくさいけど…こういう時って別になんもないんだよなw(中学の時何回そういうことがあったことか……)よし。寝よう。あと五分寝よう。おやすみ。
「あのぅ……」
寝ようと思って目を閉じた瞬間、優しい声音でそう言われた。なんだ?呼び主か?でも何故か聞き慣れている声だった。僕は推理する。多分困惑してるだろう女の子の前で。そして、僕は女の子の正体を理解した。
「結衣か。」
僕がボソッと呟くと、結衣は、
「う、うん」
と反応した。結衣確定だろう。僕は目を開ける。やはり結衣だった。
「まぁ予想はしてたけどね……」
僕はため息をつく。結衣は緊張している様子だ。今震えている。若干あれが……(罪悪感あるよね)
「あ、あの、疾風君……」
結衣は急に話しかけてきた。やべえめっちゃ緊張してる顔だ(((())))ガチガチじゃん。まあ良いか。お話とやらを聞くとしよう。
「どうした?」
僕は聞いた。柔らかい笑顔で。すると結衣は、
「……好きです、付き合ってください」
と言ってきた。僕はそれを予想していたので、もちろん答えも考えてある。
「考えておくよ」
そう、保留だ。二人に告白されたからこれが一番最適である。
「ほら、遅いし帰った帰った」
僕はまだ緊張がほぐれてない結衣の背中を押した。
「……答え、期待してるよ」
結衣は、赤く染まった頬を撫で、そう言った。そして、屋上から消えていった。
これで終わりなわけない。僕が先に結衣を帰したのはしっかり理由がある。僕は顔を強ばらせる。さあ、『視線』の主に会いに行こうじゃないか。
「さっきから見てるのはわかってんだよ、彼方」
僕は視線の主、彼方の名前を呼ぶ。するとすぐに笑い声と共に、
「流石疾風ね!私の事わかるなんて」
彼方は未だに高笑いしている様子だった。いや怖いって。まぁこれが彼方か……
「さっきからジロジロ見てたんだから当たり前だろ。まったく、人の行動監視しやがって……まだ恋人じゃないだろ?」
僕が呆れながら言うと、彼方はまた笑い声を上げながら、
「恋人じゃないって……w貴方面白い人ね、やっぱ」
彼方は意味不明な言葉を放った。彼方は今日一番の笑顔だった。多分、結衣の答えを保留にしてることに納得してるんだろう。てか喜んでるだろ。あはは、怖い子。
「遅い時間なんだからさっさと撤収するぞ」
僕はそう言うと、
「そうね、遅いから撤収しましょうか」
と彼方が言い、彼方は屋上のドアへ走っていった。
「…情緒不安定だな」
僕は少しにっこりした顔で、彼方の背中を追いかけながら屋上のドアまで全力疾走するのだった
――――――――――――――――――
~新村結衣の独白~
「…なんて言うか、あの人らしいわ。」
私はため息を零した。どうせ彼方さんが私たちの会話を見ていたのだろう。まぁあの人らしいわ。やりかねないわよね。私は前彼方さんに言われた言葉を脳内で復唱する。
「この恋、悪いけど勝たせてもらうわ」
ふふ……勝つのは私ですよ?彼方さん。
保留ってことはやはり彼方さんに告白の早さは負けたけど、私が負ける事は無いように振舞ってきた。あの人も私を思い出しただろう。…あの昔助けた少女だと。
「まぁ、黙っててもいいかもしれないわね」
私は、清々しい気分で、家路を辿るのだった。
十五話 疾風の選択
「恋愛ってめんどくさいのな」
僕は、台所にて愚痴っていた。黙々と料理を作るのもめんどくさい。なんか呟きながらの方がやりやすいってものだ。……てか今日土曜日だから別に学校無いけどね。姉さんのメシは僕が作るのよ。
「なんで二人から告白受けるかなあ……ったく……」
僕は目玉焼きを焼きながらそう呟く。気分は晴れていたが、やっぱりめんどくさいものはめんどくさいのだ。(この気持ちわかる?)だから若干暗い顔をしていると思う。僕は恋愛経験ゼロなのよ。死ねばいいと思う。僕を殺す気か?!
「彼方と結衣とか……どう選べばいいものか…」
僕が愚痴っていると、急に後ろに気配を感じた。背中に汗がツ---ッと流れる。まさか聞かれてた?あ、終わった
「…ねえ、さん……?」
僕は震えながら振り向いた。やはり姉さんが立っていた。怖い。姉さんの笑顔が怖い。何考えてるのこの人。僕は足を一歩引く……と、フライパンにぶち当たった。『柄じゃないところの』
「アヂィィィィィィ」
僕が死にそうな顔をしながら発狂する。くるくる踊るぜえええ!!!すると姉さんは高笑いした。最近見た中で1番大きい笑いである。いやこわ。
「疾風も恋に悩むのねぇww」
こいつ舐めてんのか?ぶち〇すぞ。なんか身体が熱くなってきたわ。恥ずかしさと怒りでもう何が何だか…てかやばいそんなことより尋問される気しかしないや。外が曇ってきた。ああ神様、どうか私の気持ちを晴らしてください……
「どんな感じなの?今」
姉さんはそう聞いてきた。姉さんは興味津々で、好物に飛びつく子供のように喜んでいた。怖。まぁ姉さんには愚痴ってもいいかな…姉さんだし。さあ、僕の話をしよう。
「はあ……まぁいいよ話すよ……」
僕は彼方の告白の話と、結衣の告白の話を一気にした。ちなみにファーストキスのことは全く話す気は無い。流石に二人の秘密だ。
話し始めてからなんと十五分経過して、やっと全貌を話せた。いや疲れたし恥ずかしいし泣きたいわ。こっちにはデメリットしてないんだねえ!腹が立つねえ^^。ところで姉さん寝てないか?目を瞑ってるんだけど。シンキングタイムか?怖いなあ
「姉さん?」
僕は不安になったため、姉さんに話しかけたところ、姉さんはハット目を覚ませ、こう言いやがった
「ごめん聞いてなかった」
「死ね」
ぶちギレた僕は姉さんの腹に一撃ぶち込んだのだった。(ちなみに一時間は目覚めなかった)
「だからこういうことだっつーの」
僕は目を覚ました姉さんに先程と全く同じことを言った。(朝飯の用意をしながら……今九時なんだけど)
「へぇ~」
姉さんは興味津々な顔を保っていた。怖い。僕は凍りついていた。先程よりは緊張はほぐれていたが。(僕ってこんな人間だっけ?)少し経つと、姉さんは僕に
「疾風も変わったわね」
と言ってきた。正直僕も変わったと自覚している。何故変わったのか?決まっている。彼方との再開だ。あの時に変わったんだろう。愁と共に一変した生活に、僕も変わっていったのだろう。
「疾風~?手が止まってるわよ」
姉さんに指摘されるまで、僕は手を止めて考えてることに気がつかなかった
「ごめんごめん、すぐ用意する」
僕は慌てて準備を進めた。
朝飯を食べ終わり、読書をしている時だった。(現在10:30)
「ぴんぽーん」
急にチャイムが鳴った。なんだ?愁達か?
「ハイハイ今出ますよ~」
僕は読書を進める手を止め、玄関に向かおうとしたが、姉さんが、
「サノ〇ァウィッチ」
と某エロゲの誤作動をそっくりそのままやってきたのでぶん殴ってから玄関に向かった。
「おっすおっす~来てるよ~」
ドアを開けると、やはり愁が居た。他に優斗、瞳(初登場かな?)と彼方が居た。
「由香里は?」
僕が聞くと、
「お姉ちゃんなら私情で今日居ないわよ」
と彼方が答えてくれた。なんだ~……居ないのか。残念だわさ
まぁいいかぁ……てか彼方が普段の調子なのが意外である。なんかもっとあわあわしてるかと思った。まあどうでもいいか★
「まぁ四人とも上がりなよ」
僕は彼方達に家に上がるよう促した。
「初めてだわ~疾風の家」
「うん、僕もだわ」
優斗と瞳は僕の家に上がるのは初めてだだからはしゃいでいる。全くガキが……申し訳ございませんでした西園寺瞳様
「ったく、No.14という自覚を持てや、優斗。瞳もNo.52なんだから……」
僕はあいつらに聞こえないように嘆息する。あいつらは今洗面所にて手を洗っている。だから聞こえないだろう。僕は玄関からリビングに向かうのだった
「まさかお前達飯食うとか泊まるとかいうだけの理由でここ来たの?」
僕は先程作った昼飯(肉じゃが)をバクバク食う(姉さん含めた)五人に言った。この人たち食欲凄くない?僕こんな食べる自信ないよ。てか食費がやばいからやめて欲しい。まぁ仕方ないよな。僕は諦めたようにため息をつく。そんなことすら気にせずに(彼方除いた)四人はバクバク食う。どんどん肉じゃがが減っていく。これがNumberで鍛え抜かれた第七階層の男女の食欲か。凄いや。僕そんなに食欲ないんだよなぁ……ちなみに僕はさっき自分で作った肉じゃが以外に冷凍の小籠包を適当に食っていた。(一人で)一人飯は美味いか?皆は。僕は凄く美味しいと思う。清々しいね。
「いや、普通に暇だから来たのよ」
僕がクソみたいなことを考えていると、彼方が答えた。この人たち暇過ぎない?てかまだ食べるの?僕はため息をつく。まったく、やれやれだぜ
「朝飯食べてないのよ、私たち」
「俺も」
なんとあいつら(姉さんを除く三人)朝飯食べてないらしい。信じられん。飯くらい食えよったく…アホらしいなあ。迷惑極まりない
「朝飯は食べなさい。Numberの決まりでしょ?」
僕は(姉さんを除く)三人にそう諭した。
すると瞳と優斗は
「「どうやって僕たちの家から飯食って二時間でここに来るの?」」
と言った。そう、瞳と優斗の家は僕達の家からクソ遠いのだ。それを僕は忘れていた。
「すみませんでした」
僕は土下座謝罪した。彼方と姉さんと愁がクスクス笑っている。殺していいかな
「まったく、疾風はしょうがねえなあ」
愁がおどけた口調で言う。
「そうだよ。疾風は仕方ないねえ」
「そうねぇ」
優斗と瞳もおどけた口調で言う。殺したろかカス
「すみませんね゙ぇ゙」
僕は半ギレしながらニコニコして言った。結構怖い顔だったでしょうねえ()
まあこの後もどんちゃん騒ぎしまくって、気づいたら空は暗くなっていた。
「随分と長い時間僕の家に居たんだね、君たち」
「そうね。だいたい八時間くらい貴方達居たわよ?」
僕と姉さんは呆れた口調でそういう。現在六時。いい時間である。優斗と瞳は飛ばしても二時間近くかかるんだから早く帰ればよかったものを……
「楽しかったのよ。仕方なく無言わよね~優斗」
瞳はおどけた口調で、楽しそうにそう言った。瞳は、心の底から楽しそうな表情だった。
「まあ、お前達めっちゃ楽しそうにしてたからな」
愁が呆れたようにそう言った。でも、愁の顔も「あ~楽しかった」という顔をしていた。知らんけど。
「うん。すげえ楽しかった。また来るぜ、疾風」
優斗も瞳と同じように、心の底から楽しそうに言った。まったく、
「やれやれだぜ」
僕は某オラオラ言ってる人の口調に真似てそう言った。瞳と優斗は、「また来るね~!」と言ってバイクに乗って去っていった。僕と姉さんと愁と彼方は手を振って二人を見送った。
「さて、俺は帰るわ」
愁はニコニコしながら僕の家を去っていった。さて。残るは彼方だけだが、
「……」
彼方は帰る気配がない。
「彼方もそろそろ帰ったらどう?」
姉さんは若干怪訝そうな表情で彼方に言った。すると彼方は、
「疾風、ちょっと来てくれないかしら?」
と、僕に指をさしながらそう言った。真剣なマジ顔だった。やれやれだぜ、まったく……彼方は既に家から離れていた
「そんな訳だ。姉さん、先に家でゆっくりしてておいて」
僕は彼方の背中を追いかけるようにして家をはなれたのだった
――――――――――――――――――
~霞雨真理奈の独白~
「疾風もいいお年頃ねえ~」
私は疾風の背中を目で追いながらそう呟いた。疾風も思春期なんだろう。可愛い弟だ。一生守ってやりたいわ~
「彼方と結衣、貴方なら、どちらを選ぶかしら?」
私は、長い髪を靡かせながらクルリと回転し、とびきりの笑顔で、
「貴方なら、彼方を選ぶんじゃないかしら?」
そう、疾風と彼方に聞こえないように予言した。私を誰だと思ってんのよ。神無月疾風と一番長く一緒に居た相手よ?疾風のことなら何だってわかるわよ。疾風の好きな人とか、そういうのまで。疾風も私のことならなんでもわかる。これが、双子。双子でしかなし得られないもの。これが、絆。愛。兄弟愛とは、相手のことを真っ先に考え、自分は遠慮することでは無い。相手のことを考えるのは事実、兄弟愛ではあるが、本当の兄弟愛は、
「心から守ってやりたい、好きだと言える、人間として一番好きだと言える。夫婦とか、そういうのは関係なく、自分達でお互いに好きだと言えること。それが、」
兄弟愛ってやつよ。
「我ながらいいこと言ったわね~」
一日一善という訳にはいかないが、今日はいいこと言っただろう。清々しい気分だった。
「今日は疾風のためにご馳走でも作ってあげようかな~♪」
私は、自覚するほどのいつもと違う上機嫌で、玄関のドアを開け放つのだった
――――――――――――――――――
~神無月疾風の選択~
「この紅葉公園で何が言いたいんだい?彼方」
僕は紅葉公園で止まった彼方にそう言う。彼方は、僕を真摯な目で見つめてくる。真顔だった。僕も真顔だ。相手の気持ちに敬意を持って接する。それは、人間としての、性だ
「決まってんでしょ。貴方の返事を聞きたいのよ」
彼方はずんずん近づいて、僕の額に人差し指を立てた。怖い、怖いよ彼方さん
「まったく……結衣と彼方に告白されてから2人に告白されたって事でめんどくさいんだよ、返事も」
返事する側にもなって欲しいわ。まあこっちも返事される側になるべきだろうが。まあどうでもいいんだよそんなこと
「はあ、返事か。まぁ決めたことだし、今言ってあげるよ」
僕は覚悟を決めた。
「返事だけど、僕は…………」
時は月曜日。今登校している。(愁と姉さんと彼方と)
「めんどくせえなあ……」
愁がボヤく。同意だ。とてつもなくめんどくさい。なんでこうなるんだよお……正直今は秋だからもう寒くなってきたし、やっぱ登校するのがきつくなってきた。現在気温は12℃(あの頼りにならんニュースキャスターによると)。寒いよね。僕はどちらかと言うと寒がりなので手袋をしている。
「確かにねぇ……金曜日はブラックフライデーがあるけど月曜日は毎週ノーハッピーマンデーよ……」
姉さんがため息をつきながらそう言う。
「そんなになの?姉さんは。」
僕は呆れながら姉さんにそうきいた。すると姉さんは、
「当たり前でしょ……学校なんてめんどくさい……」
と、ため息なんてレベルでは無く、その場に倒れそうな苦しそうな顔をしながら言った。そんなにか?最早拒絶反応出てるじゃん
「私は理奈程ではないけど月曜日は嫌いねえ…やっぱ学校は辛いわあ……」
彼方も姉さんに同意していた。
「僕的には学校なんてクソほどどうでもいいんだけどねえ」
僕は学校はどうでもいいんのでそう答えた。てか普通に関係ないんだよなあ
「どうでもいいからめんどくさいんだよお……ああ……」
愁はその場にがっくり膝をつきそうな勢いで項垂れた。ほんとにNumberか?この人達は……
「貴方達ほんとにNumberなの?」
彼方が僕が思ったことをそっくりそのまま言ってくれた。ああ、ありがてえ……まさか僕コミュ障?
「「Numberだわ!」」
とNumber.0(笑)とNumber.8(笑)が大声で答えた。まったく、これだからこの2人は……一緒にいて楽しいんだけどね
「やれやれだぜ」
僕はそう言い残してスタスタ歩いた。
「ちょ、待ってよ!」
「俺たちを置いてくな!」
「私まで置いてかないでよ~!」
後ろから三人の咆哮が聞こえたが、僕は無視してスタスタ歩くのだった。
「まったく、結衣は偉いよね」
僕は席に着いた瞬間、結衣にそう愚痴った。
「えっえっ?ど、どうしたの急に……」
結衣はおもっくそ慌ててた。
「家のさんばかは学校ヤダヤダ言ってんのにお前は文句言わないやん」
僕は本心を結衣に語った。(別に告白の件は関係ないです。ここ重要。)
「……グラッツェ」
結衣は僕に聞こえない声でボソボソ呟いている。顔を赤らめているが、どうしたのだろう?
「顔赤いけど大丈夫?」
僕が結衣に聞くと、結衣は、
「……知らない」
とぶっきらぼうに答えた。
そっから何分か、無言の時間が流れた。あれ、僕、結衣に用事あったよね?なんだっけ。僕は思考をめぐらせ、結衣に言いたいことを思い出した。
「そういえば、結衣」
僕は沈黙を破り、結衣に言った。
「今日放課後時間ある?ちょっとお話あるのよにぇー」
僕は結衣にそう聞いた。すると結衣は、ビックリした様子で、
「あ、空いてるけど……お話って何?」
結衣は聞いていたが、僕はニッコリした顔で、
「紅葉公園に来てくれたらわかるよ。」
そう言って僕はトイレのために立ち上がるのだった
「まあお話があるわけですよ」
結衣に面と向かって僕は言う。
「と言っても結衣には反応して貰いたく無いんだけどね」
僕は結衣に前置きして、自分の話をしようとする。結衣は黙っていた。よし、話す時だ。
「話をしよう。
これは君だけの話だ。
君は僕に告白をした。その返事を今返そう」
僕は、覚悟を決めて、彼方に告げた時のように、息を吸い込んで、こう、結衣に告げた
「謹んで、お断りさせていただきます」
結衣への返事は、「No」だった
皆は察してるだろう。僕は彼方に「Yes」と返したのだ。理由?一つだけだ。誰も傷つかず、いい関係を保てると思ったのは、
「結衣と友達で居て、彼方を選択すること……かもしれないな。」
結衣は傷つくかもしれない。しかし、だから僕はあいつと友達で居るのだ。
「これからも、友達として、宜しく出来ないかな?」
僕は、唇を噛む結衣に手を差し出す。数分時間が経ち、結衣は、
「……うん」
と、僕の手を思いっきり握りしめてきた。
三章 終
「だから、お別れだ。僕らはここで終わり。」
「……なんで、なんでよ!!!」
私は精一杯目の前にいる恋人……いや、恋人だった疾風を睨みつける。
「……説明する義理はない。」
「……なんなのよ、なんなのよ!!!」
「なんなんだ、と言われてもなぁ……」
そう言うとなんと疾風は頭を掻きながらこう聞いてきたのだ
「逆に恋人が死んで居なくなるのを目の前で見るのと勝手にどっかで死ぬのどっちがいいと思う?」
「えっ……?」
疾風の口から零れた「死」この言葉は、私の全身を震わせた
「死ぬって……どういうことよ!!!」
私は怒鳴りながら聞いた。疾風は、
「そのままの意味だ。」
と、私に絶望を押し付けてきた
「なんで死ぬのよ!!!」
私は耐えられなくなり、溜まった怒りを爆発させた。
疾風が、死ぬ──そんなことしんじたくなかった。疾風と私が別れたって、絶対私は彼のことを想うだろう。
それなのに……
「……なんなのよ…ホントに…なんなのよ」
私はとうとう耐えられなくなり、涙を流した
「ごめんね」
疾風はそういって私を抱きしめてきた。
久々に感じた温かみだった
「…僕は人の気持ちが理解できない。空気が読めたとしても、人の感情は読み取ることが出来ないんだ。だから、僕は皆に嫌われるし、僕も皆が嫌いだ。…でも、彼方だけは違ったらしいな…僕にはわからないけどね」
疾風も泣いているようだった
「……」
私はもうなんの言葉も出なかった。
出るのは、嗚咽だけ。
しかし…私は、隼風が何を言いたいのか、遂に理解した。
「…生きて帰ってきてよね」
疾風は、私の為に命を懸けている。
『人を殺し、また私の為に戦闘することで。』
一話 素晴らしき新天地
『プルルルル!』枕元にある携帯電話が振動した。「んだよ朝っぱらから…」
僕―神無月疾風は眠かったため普通に無視をした。
…しかし
「鳴り止まねぇ…」
二分くらい鳴り止まなかったため、僕の怒りは最頂点に達した。
携帯の電源をいれて、乱暴に通話ボタンを右にスクロールする。
「…もしもし」
恐ろしく低い声で僕はそういった。
「…え、なんか怒ってる?」
と、通話越しに聞き慣れた、少し幼い声が聞こえた。
「…なんだ姉さんか」
電話の相手は双子の姉――霞雨真理奈であった。
「そうよ、疾風。今日は知らせがあるから伝えに来たのよ」
画面から心底嬉しそうな声が聞こえる。とても嫌な予感がした。
「…ちなみに朗報?悲報?」
話の雲行きが怪しくなってきたので、僕は一応姉さんに聞いた。
「朗報よ!」
上機嫌そうな声が聞こえる。うっわーこれろくな話じゃないわ
姉さんは、随分ご機嫌な様子だった。…なにか、僕の背筋に汗がツーーッと通る。嫌な予感がした。姉さんがこんなにもご機嫌な様子の時は、必ずと言っていいほどなにか裏があるのだ。
「…で、朗報っていうのは?」
僕は、恐る恐る声を震わせながら聞いた。
「なんと。…………」
姉さんは、「朗報」の内容を伝えてきた。僕は呆気に取られた。こんな馬鹿げたことがあるのか?…てか…
「なんで僕が…!」
話を聞き終えた僕は悲痛に満ちた叫びを出す。何故なら、その『朗報』とやらの内容は
「男が女子高に行くって…んなバカげた話があるのかよ!?」
そう。『朗報』とやらの内容は、「神無月疾風が女子高に転入する」というおそろしくバカげた話だった。
「あったのよ!そんな話が。」
姉さんはすこぶる上機嫌そうだ。…なぜだろう。この女の顔面を一撃ぶん殴ってやりたい衝動が襲いかかってきた。
「…決定は誰がしたの?」
地獄を見たような声で僕は姉さんにたずねる。すると、耳を疑うような答えが返ってきた。
「お義父さんと、お義母さん。」
「…は?」
おもわずすっとんきょうな声が出る。
「当たり前でしょ、校長なんだから」
姉さんがさもあたりまえだというように僕に告げて来る。
「………」
僕は黙り込む。
お義父さんとお義母さんに決定されたなら仕方なかった。僕はガックリ肩を落とす
こんなことって…あっていいことなのかな
「……なんで…なんで、僕は、女子校に…女子高に!行かなきゃ、ダメなんだ…!」
僕は膝を地面につけ、悲嘆した。こんなのあんまりじゃないか…
「大丈夫よ。貴方が来るから、もう共学よ!」
姉さんは楽しそうに言ってくる。マジで殺意が湧いてくる。
「…今度いっぺんぶん殴る」
「大丈夫よ。他の人も来るから」
僕以外の人も犠牲に…まあ一人よりはマシか
「しかも他の学校からも来るのよ!有志だから結構来るのよ!」
「……は?」
えマジで?…有志ってお前…女子目的で来る奴ぜったい居るやん…
最早人の了解を得ずに決めたお義父さんとお義母さんを殴りたくなってきた。
ていうかさ
「……僕、これからほぼ知ってる人が居ないところで生活するの?」
純粋な疑問を姉さんにぶつける。
「いや、そういう訳じゃないわ」
姉さんは淡々と答えてくる。…さっきまでのはしゃぎっぷりはどこに…
「じゃあなんなんだよ」
少々いらだってきた
「それは来てからのお楽しみってことで」
「マジで殴るからなお前」
少々殺気を込めてしまったため、姉さんは怯えたような声を出す。
「…怖いって」
「微塵も思ってないくせに」
なんかもう諦めた。
「マジで覚悟しとけよ」
「わーこっわーい★」
楽しそうに姉さんが言うので、今度はしっかり殺意をこめて言っててやることにした。
「……首へし折るぞ」
今度は本気で怯えた様子だった。
「えっ、何そのガチトーン…」
「覚悟しとけよクソ姉貴」
ガチャリ
電話を切った。
「……マジあいつ覚悟してろよ…」
頭を抱えて唸る。次会った時は地獄車してやるわあのクソ姉貴
『ピンポ-ン』インターホンが鳴った
「……はいはーい」
僕はドアを開ける。
「よう疾風」
そこには幼馴染である、文月愁が仁王立ちしていた。顔が整っていて、爽やかさがにじみでているため、怖さは若干軽減されてはいるが…声に少々怒りがこもっている。…まさか?!
「…なんだい、愁」
おそるおそる聞くと、予想していた最悪の答えが返ってきた。
「お前のお義父さんはいい人だねぇ」
「え、まさか、愁も…」
「真理奈から聞いてるぜ」
僕はため息をつく。…マジでこういうことは報せておけよ。てか愁には僕のこと言ったのに僕には言わなかったのかあのクソ姉貴。…fu○ken bitch
「…あいつしばくか」
僕は笑顔で言う。
「せやな」
不機嫌そうに愁が答える。
真理奈被害者会作れると思った瞬間である。
「まぁ、上がりなよ」
「へい」
僕は愁に家に上がるように促す。
「お茶飲む?」
僕は靴を脱いでいる愁にたずねた。
「いや、要らん」
愁はそう答えてリビングに入ってそうそうくつろぎ始める。君の家じゃないんだよ?
「そうか」
「水をくれ」
「了解」
愁がぶっきらぼうに水を要求する。僕は二つコップを出し、水を注いで、リビングのテーブルに運んで、そのまま置いた。
沈黙が続く。
「疾風」
沈黙を破ったのは愁だった
「…どうした」
「いや、お前、どうするんだ?」
愁は疑問符を浮かべる。…質問の意味がわからないのですが
「どうする、とは?」
「転校するんだろ?お前も」
愁は舌打ちをした
「…そんなイライラする?」
おそるおそる愁に聞く。すると案の定、
「俺は女子が嫌いなんだよ!女子高なんて地獄だよ!」
と返事が返ってきた。
そう。愁はその整った顔立ちから、大量の女子に告白されて、女性に苦手意識をもっている。ほんと、どうしたらあんなにモテるんだろう…
ちなみに愁に告白した人数は愁によると三十人をこえるらしい。…なんて罪作りな
ちなみに全部蹴ったらしい
「初対面の女子はキツイ…マジで二度と告白されたくねえ…」
愁のこの口ぶり。いやーモテる男は違いますねいっぺん死ねばいいのに
「一生童貞でいいのかお前」
この僕のセリフを翻訳すると、「お前彼女できねえなザマあみろヘッ」である。
「そ、それは困るけど…」
困るのかよ。
「…なら告白を甘んじて受け入れて好きな人探せ」
「お前それ矛盾してね?」
僕は苦笑する。…一生彼女ができないであろう僕の代わりに可愛い女の子と付き合ってほしいもんだ。しかし、
「お前イケメンだろ?お前だっていつか俺と同じ目に合うぞ」
「ブーーーッ?!」
愁が爆弾発言を投下するおかげで水を吹き出してしまった。少しむせる。
「…急になんだよ」
咳き込んで、息苦しい中で声を振り絞って言う。
「…なんでそんなこと言うんですかね」
「いや事実だろ」
愁がさも当たり前のように言ってくる。…なんなんだ、いったい
「えもしかしなくともお前無自覚?」
「…言ってる意味がわからないんだけど…」
「…重症だな、こいつ」
「…愁だってイケメンのくせに…」
「草」
愁が呆れたような視線で僕を見る。…えほんとになんなんだ…
そしてそのまま僕らは夜遅くまで談笑し、寝落ちした愁を家まで運んだのだった。
愁重くなった…?
そして月日はたち、僕は姉さんの学校の近くの姉さんの家引っ越した。さてさてこれからどうするものか……
「久しぶり姉さん」
家の玄関前まで出迎えに来てくれた姉さんに挨拶をする。
「おっ久しぶりだね~疾風」
姉さんは手を振っている。やはり今でも少し幼さが残っている。
「よっ」
愁が軽く手をあげる。
「愁も居るじゃない。いよっす」
姉さんはケロっとした顔で言ってくる。…愁もいるとわかってるくせになにを申すかこのクソ姉貴は
「……殴っていいかな、このクソ姉貴」
僕は独り言を呟く。すると
「別に殺しても天罰はくだらないと思うぜ」
愁が笑顔で言ってきた。決意した僕は姉さんを笑顔で手招きする。
「何~疾風…って殺る気マンマンじゃん……」
今日はやる気マシマシ二倍セールの日なんだよ。姉さん。姉さんはおびえながらこちらに寄ってくる。
「よくもめんどうごと作ってくれたな覚悟しろよクソ姉貴」
僕は近づいてきた姉さんに正拳中段突きを水月(鳩尾)に叩き込む
「ギャアあああああああああああ!!!」
姉さんは悲鳴―――というかもはやおたけびに近いソレをあげた。
「覚悟しろクソビッチ」
愁も加わってもはやいじめと化していた
「ちょ、やめ…」
姉さんがちょっと失神しかけたので殴るのを止める
「痛っ…ひっどーい…」
悲しそうに笑顔で言ってくる。どの口が言うかねえ…
「ドMなんお前
本気で引いている愁が姉さんに聞く。うんそれ僕も思ったよ。
「ち、違うわよ!」
…頑張って否定しても無駄だよ?
「お前も可愛いところあるんだな」
愁は姉さんをからかいたかっただけのようだ。まったく、意地悪な奴だ…
「…本当に痛かったんですけど」
「ごめんって」
悲痛の思いを姉さんが述べるため、適当にあやまっておくことにした。いやまあ、満足したからいいんだけどね
「ごめごめ」
愁も謝る。どうやら満足したそうだ。姉さんは足をふらつかせる。やべえやりすぎた?
「マジ頭フラフラするんですけど…」
ねえなんか姉さん脳震盪起きてそうだけど大丈夫なの???まぁいいか
「どんまい」
僕はどんまい、といったが、なんと愁はこう答えた
「草」
草ってなんだよ…マジで…
てか姉さんの顔が怖いです。うわぁこれは怒ってる
「…愁、一撃蹴らせてもらうわね」
姉さんはにこにこして愁に近づく。…愁、強く生きてくれ!!
「え、お前の蹴りはやばいんだって……」
愁がだんだん姉さんから遠ざかっていく。マジで恐怖にそまっているような声を絞り出している。心の底から怖がっていることを感じられる。
「問答無用!」
姉さんが愁にまわし蹴りをくらわせる。ドゴン、と鈍い音がする。あまりに痛々しかったため、僕は目を背ける。
「いてえええええええええええ!!!」
愁が絶叫をあげる。この視界には入らないが、いまごろ地にのたうち回っていることだろう。
「…ご愁傷さま。」
僕は愁にそう言った。愁がこちらに走り寄ってしがみついてくる
「…マジで痛かった…」
愁は涙目である。どんだけ痛かったんだよ。つうか姉さん痛くしすぎだろ
「…なんか僕も蹴られそう」
小並感ではあるが僕は蹴られるかもしれないと思った。口にでていたらしい
「やっていいの?」
姉さんは目を輝かせて僕に聞いてくる。
「やめてくださいお願いします」
僕は手をあげて降伏した。
「あら~遠慮しなくていいのよ♡」
「マジでやめてくれない?!」
とまぁ、騒騒しい日だった。
~翌日~
愁は今日未明新しい家に帰った。
そして、今は七時半である。
僕はハムエッグとトーストを作っていた。目の前のフライパンから香ばしいにおいがする。
「おふぁよ…」
上から姉さんがおりてくる。すげえ眠そうである。その証拠に目が半開き。
「おはよ姉さん。顔洗って髪溶かしてきな」
「ふぁい」
眼をこすりながら姉さんは洗面台に向かっていく。僕は姉さんの背中に向かって叫ぶ。
「ご飯はそろそろ出来るから待っててね~!」
「ふぇい」
すげえねぼけてそうな声で
姉さんは朝に弱い…忘れてた。恐ろしく寝惚けている。
「いたっ!」
姉さんの声が聞こえる。どうした、と思ってフライパンから離れて姉さんの様子を見に行く。姉さんは地に仰向けで倒れている。目には星が浮かんでいる。姉さんの目の前には…
「…壁?」
どうやら壁に頭をぶつけたらしい。…危なっかしい人だ。マジで
「大丈夫?」
心配であるため、一応聞く。
「だ、大丈夫よ…」
姉さんは額をさすりながら立ち上がる。まあ大丈夫かな。
「目覚ましてねえ~」
僕は姉さんに目を覚ますように促した後、フライパンの前に戻る。
「あちゃー…焦げちゃったかあ…」
まいった。頭を掻く。トーストが少々焦げてしまった。まあ少し焦げ目があったほうがおいしいので、別にいいのだが。怪我の功名とはこのことである。
「で、ご飯は?」
「マジ貴方どんな体質なの?」
さっきとはうってかわって目をぱっちり開いた姉さんがご飯を要求してくる。
「いやなんかさ、顔洗うと目が覚めるんよ」
姉さんは頬をぽりぽりかく。…まあ、そんなもんだとおもっていたよ。
「…凄いよね」
「その代わりいつも眠い」
「ダメじゃん」
一瞬感心したが、次のセリフで一気に呆れた。
「えへへ」
「褒めてないです」
「エヘ☆」
僕はトーストにハムエッグを乗せる。机にトーストを置いた皿を置く。
「ご飯ですよ~」
「あれ、無視…?」
僕は机の前の椅子に座り、姉さんにご飯を食べるように促す。…姉さんは、僕が無視したと思っているが、それには理由がある。
「…あの、時間見てみましょう。」
僕は時計を指さす。
「え…えちょ、うそでしょ?!」
今7時45分。始業時間、8時45分。通学時間およそ30分。姉さんは時間のやばさに気づいたらしい。…のんびりし過ぎである。
「…8時に家を出るんでしょ?」
僕は姉さんに確認した。
「え、えぇ…」
姉さんは少し時間のひっ迫に困惑しているようである。少し声に焦りが出ている。
「学校の支度できてるよね?」
僕は笑顔を浮かべる。
「…できてないわよ」
姉さんは絶望したような顔を浮かべて僕の質問に答える。やっぱりできてなかったらしい。…マジでこの姉は馬鹿なのでは?……いや、馬鹿なのだろう。僕は終わらないであろう自問に自答することで混乱に終止符を打つ。
「さっさと食べて、支度すれば?」
ため息をつく。よくみると、僕が言い終わる前に姉さんは朝ご飯をガフガフ食べ始めた。まったく、そんな急ぐと喉詰まるって…
「姉さんの支度はしておくからもう少しゆっくり…」
「モグモ…グッ…ガハッ!オエッ!」
姉さんは急ぎすぎすぎたようで、思いっきりむせる。ほら言わんこっちゃない
「…落ち着きなよ。はい水。」
「ふぁふぃふぁほう(ありがとう)」
僕は口にものを入れたままの姉さんに水を渡す。まったく…
「飲み込んでから喋る!」
「ふぁい!」
「人の話を聴く!」
僕は姉さんをどなる。やれやれ…
まったく、困った姉さんだ。…あれ前もこんなこと言ってたような。僕はトーストをかじりきる。
そして慌てて僕も準備を手伝う。え?僕の準備?もうできてるに決まってんじゃん
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
僕は支度を終わらせ慌てて玄関から出る姉さんを見送る。僕はこれから転校生として始業式に出るため少し遅めに行くのだ。しかも普通の転校生ではないから。
「はぁ…」
ため息をつく。…ほんと、なんでこうなったんだろ。学校の共学化って言われてもなぁ…
「まぁ、よくあるアニメ的漫画的展開だな。」
頭をぽりぽりかく。しかし、僕は人付き合いが苦手だ。狭く、深く関わるのが得意で、広く関わるのがとても苦手。そんな人なんだ。愁、西賀姉妹、姉さん、そして紹介してないけど他に沢山いるが、まぁ多くはない。…あとあと紹介することにしよう。
おっとそろそろ家を出る時間だ。愁が来るはず……
僕は、とりあえず愁が来るまで今までの思い出に想いを馳せる。まぁ、いや~な思い出もあったけどね。大半いい思い出だったよ。僕の周りには良い人しか居ないからね。
特に僕は昔西賀姉妹と愁と姉さんとあと、紹介してない二人で昔良く色んなところに出かけたりしてたなぁと幼き頃に想いを馳せた。…あれ、僕それ以降は「アレ」しかやってない……あれれ?おかしいな。
「…僕、人付き合い変えようかな」
頭を抱える。これを機に人付き合いを変えようと思った。……有名人になるのはアレだけどね。まぁいいでしょう。少しくらいなら、我慢しようかな
母さんにも友達いっぱい作るのよ、と釘を刺されているため、本当に頑張ろうか悩む。
「ピンポーン!」
そんなことをかんがえていると、インターホンが鳴った。
「ちょっと待っててね~愁。今出るよ!」
僕は玄関の前で待つ愁との思い出の感傷に浸りながら、靴を履き、ドアを開ける。
「疾風、行くぞ」
「行こっか。愁。」
今日の天気ははればれしい快晴だった。
二話 Huppy starts
「これで、第28回、始業式を終わります。」
「礼!!」
教頭先生の指示で僕達は頭を下げる。
そのままアリーナから生徒が出ていく。
始業式が終わった。…はぁ、疲れた
まさか実験台として全校生徒に紹介されるとは思わなかった。けっこう恥ずかしかった……
そして僕らは若干遅れてクラスの前に来る。中ではHRをやっているようだった。
「え~例の転校生の紹介です」
先生の声が聴こえた。
「入っていいよ~」
先生の言葉を合図に中に入る。
「…え?」
僕は小さく呟く。隣の愁も口を開けて驚いている。正直仰天しそうだ。
なぜならここには西賀姉妹の妹、西賀彼方が居たからだ。更に姉さんも居る。どうなってるんだ…
僕らは混乱しながら教壇の上に立つ。
「転校してきた神無月疾風君と文月愁君です。自己紹介をお願いします」
先生が自己紹介を促す。
僕は愁の脇腹を肘でつつく。愁は顔をしかめたが、すぐ納得したようだった。
「……文月愁です。これからよろしくお願いします」
僕は愁の自己紹介に続く。
「神無月疾風です。よろしく。」
みんなの間からヒソヒソ声が聞こえる。
僕は地獄耳なので「あの人たちイケメンだよね」という会話が聞こえてしまった。
「…先生、僕達の席はどこですか」
「あ~、疾風君の席は…」
先生が僕たちの席に案内してくれる。…僕は窓際だった。とても心地いい風が吹く。僕は快い気持ちになれた。愁は僕の右隣だった。姉さんはというと…廊下側に追いやられてたw
「姉さん廊下側においやられてて草」
「アイツだから仕方ないんだろ…」
「それはちょっとひどいでしょ」
「そんなことない。ハハハ」
「ふふ」
残りのHRを僕らは談笑によって過ごすのであった
「起立!礼!」
級長の号令がかかる。ここから学年別下校まで時間がある。だから僕は「あいつ」の席へ行こうとする。が
「なによ疾風、そんなによそよそしくて!」
「うわおびっくりした!」
既に先手を取られていた。
「なんだよ急に…彼方。」
「急にって、貴方私の席に来ようとしてたじゃん」
図星だったので僕は黙り込む。
「お前、まさか、投稿初日に…」
「そんな野暮なことしない!!!」
愁にからかわれた僕は、クラスの全ての喧騒に負けないくらいの怒号をあげた。
「前の仕返しができたな」
「…愁、根に持ちすぎだ」
「愁は執念深いからね~」
「いや、そこまで執念深くは…」
なんか図星だったのでもう少しつつこうかなとして、一人の存在を思い出した
「姉さんどこだ?」
「理奈?理奈ならさっき先生に連れ去られてたよ」
「あいつなんかしたん?」
愁が尋ねる
「…先生しかわからんよ」
僕に聞かれてもなあという本音は捩じ伏せた。はあ全く家の姉はこれだから……
あの人可愛いし優しいからモテるはずなのに天然が過ぎるからモテないんだよなぁ…可哀想な人だ。それに比べて僕なんて陰キャだから…ね?泣きそうだよ。
愁とか彼方みたいな陽キャは凄いよなと感じた。…まぁ陰キャも陽キャもクソもないんだけどね。語り出すと恐ろしくなるからやめておこう。
「…はぁ…全く家の姉さんはあれだから…」
「理奈可愛いし優しいのにねぇ」
彼方が僕の思考と同じことを言う。……あの人マジ可愛いし優しいという印象で通じるのやばいと思う。…もっとモテろや………
「あいつモテてるんだろ?」
愁がまた僕の思ってたことをそっくりそのまま言った。
「文化祭の時にはモテモテよ!」
知ってた。
「ここ桜ヶ丘女学院は可愛い子がいっぱい居ることで有名なのよ!だから他の私立男子高校生とか男子中学生がいっぱい来てナンパ目的で来たりすんのよ…」
ナンパ目的で来たりって豪語したよこの人。
「ナンパ目的でって…私立男子高校生とかは野獣しか居ないの?」
「…男は大半野獣じゃないの?」
「疾風と俺は野獣じゃないよ。」
「あぁ、そうだった。」
「…貴方達この世の中の大半の男が野獣だって言いたいの?」
「「うん!」」
僕と愁はハモって言う。だって実際野獣じゃん。W氏とかはトイレで不倫したらしいし。結局野獣なんだよねぇ…
「…すごいこと言うわね貴方達」
「そんなに?」
僕は普通だと思うなぁ…
とまあ、僕らはこんなくだらん雑談を姉さんが来るまでしていたのだった。
姉さんはあれから二時間でやって来た。
「…先生と話してたわ…」
と、姉さんはとても疲れた様子だった
「お疲れ様」
「乙~」
「お疲れ、理奈。」
僕らは労いの言葉を添える。
「…疾風」
僕は姉さんに呼ばれる。
「ん?」
「どうした、理奈」
姉さんにそうきくと、なんと
「貴方達先生に呼ばれてたわよ」
と爆弾発言をした。
「は?!」
「ええ…」
僕らは混乱しながら控え室に行くのだった。
「…柊先生。」
僕は先生、柊先生…いや、「義姉さん」の名前を呼ぶ。
「いや~ね疾風。昔みたいにユキさんって言ってくれればいいのに」
「…僕らの関係がみんなにバレたらどうするんですか。ユキさん。」
「私が全責任をとるわよ。」
ユキさんは色っぽくウィンクする。
実は僕は実母は居るのだが、金銭的と、時間的な問題でとある家、てかこの高校の校長に引き取られた。ユキさんは校長のお姉さんなので、一応義姉である。まあ、本人には義姉さんじゃなくてユキ、って呼べって言われてるけど。一応年上なのでさん付けしてる。
「…そんなウィンクされても信用できませんよ?」
僕は本音を漏らす。
「私がいつ信用できないようなことをしたっていうのよ!」
僕はユキさんが嘘ついた回数を数える
「…無いですね」
0だったので僕は苦笑する。もうユキさんに頼むしかない様だ。
「まぁゆっくり話しましょうや」
「え、彼方達は…」
「理奈に帰るよう伝えたわ」
「えぇ…」
とまぁユキさんと雑談を繰り広げるのであった。
家に帰ると時刻は既に8時を過ぎていた。
で、疲れてたのでそのまま寝ることにした。
~翌日~
今日は学校に早く着いた。何故かって?ユキさんに呼び出されたからだ。
「…朝っぱらからユキさんの相手かよ…」
まぁ文句タラタラ言うのもあれなんでとりあえず教室のドアを開ける
「おはよう」
僕は高々と宣言した。教室の視線がこちらに向く。…凄まじい殺気を感じた。殺気の方向に顔を向けてみると、なにかを囲んでいるように女子が数人
「……!」
僕は身構えた。すると女子達はヒソヒソ話始めた。……え~なになに「あの転校生じゃん。やばくね?」だって?
「…僕が居ることに不都合でもあるのか?」
僕が殺気を全身から放ちながらそう言うと、女子達は大きく震えた。
「…なんで」
「生憎と、地獄耳でね。君達の会話は聴こえるんだよ」
これが僕の「アレ」の力だった。
「アレ」のおかげで耳も良いし、目も良い。デメリットがあるのがアレだが。
「…そんな転校生に見せては行けないことをやってるのか?」
恐ろしい殺気を自らから感じた。…溢れ出し過ぎたか。女子達は震えてヒェと喉から声にならない悲鳴をあげる。
「悲鳴上げたって俺はあんたらを追及する。」
女子達はその場で崩れ落ちる
…目に涙を溜めてるようだ。しかし、まだ黙っている。……僕は本気でイライラしてきた。
「…黙ってんじゃねぇよ。てめぇらが何をしていたか聞いてんだよ」
僕が殺気を全身から放ちながらまたそう言うと、女子達は大声で泣き出した。そして、その輪の中に人がいることに気づいた。…人?
「…!」
その子は怪我をしていた。……軽傷だが、痣は多い
その子は僕に視線を向ける。
僕にはその視線が畏怖の視線と、救済の懇願の視線に見えた。
「……虐めは禁忌だっつってんだろうが…てめぇら、僕が何をしたいかわかってんのか?」
このままではただの偽善者だ。僕は、偽善者なんかじゃない。それは自分がよく知っていた。何故なら…
「僕はあんたらのせいで虐めてる時のあんたらの楽しそうな笑い声と虐められっ子の泣き声とか呻き声を聞くだけでそれが邪魔なんだよ。地獄耳だから全部聞こえちまうんでな。イライラするんだよ。」
だから、と僕は一拍を置いて、こう言い放った。
「…イライラするから、元凶のお前らを潰す。それだけだ。」
そこまで言うと、ユキさんがやってきた。
「…神無月君、何してんの」
僕が殺気を全身から放ってることに気づいたユキさんはあくまで僕達の関係が気づかれないように言う。
「…虐めを止めてるだけですが」
「…それにしてはあの子達が大号泣してるんだけど…まぁとりあえず話聞かせてくれる?」
「あ、はい。」
僕はユキさんの言われるがままにユキさんの控え室に連れてられるのであった。トホホ…
全事情を話し終え、ユキさんとの雑談を終えた頃には時すでにHR五分前で、姉さんも彼方も愁も来てた。
「疾風~、なんで遅かったの~?」
興味津々で姉さんが聞いてくる。
「…ちょっと…な?」
僕は言葉を濁す。
「またやったんか」
愁が図星をついてくる。全く、前から愁は人の心とか行動を読むのが上手いよな…と感心しながら呆れる
「ま、そういうことだね」
と僕があっけらかんというと
「…転校初日から問題起こすって流石疾風ね。」
彼方が呆れた声音で言う。視線も哀れみの視線だった。止めてまじで僕が惨めになる。てか僕なんか悪いことした?前みたいに蹴りぶち込んだり殴ったりはまだしてないんだけど…
「まぁ蹴らなかっただけマシか」
愁がため息をつく。いやこの人まじサトリなん?いや、これが付き合いが長いってことか?僕は混乱してきた。
そして先程のことについて散々聞かれたらもうHRの時間になった。
HRが終わり一時間目になる。一時間目にはどうやら席替えを行うようだった。
先生がその旨をみんなに伝えると皆は狂喜乱舞して踊るものも居れば叫ぶ者もいた。ここは動物園か何かかな?僕は苦笑し、席を選ぶクジを引く。…どうやら運良くまた窓際の席らしい。僕はなんていう席運なんだろう(席運とは如何に)そして僕はその席に荷物を持って言って座り、皆がクジを引き終わるまで空を眺めていた。
「あの…」
何分たっただろうか。不意に右から声がした。
「どうしたの?…!」
そこには先程助けた少女がちょこんと座っていた。
「あの、さっきはありがとうございました…よろしくお願いします」
少女は震えた感じで頭を下げる。
「あぁ。あれは僕がやりたかったからやっただけだし気にしなくていいよ。あと敬語外して全然いいよ」
僕の本心を伝える
「じゃあ…遠慮なく」
と少女は敬語を外す。
「私は新村結衣。よろしくね。」
某有名芸能人みたいな名前だな。
「僕の名前は…まぁ知ってるか。とりあえずよろしく」
またなんか個性的な子だなと僕はつくづく感じた。
席替えが終わると、僕は愁の席に直行した。
「…遠いな。」
僕は思わず呟く。
「…遠いな。たしかに。クジだから仕方ないか…」
窓際だけでも運はいいが愁はなんとど真ん中の列だった。ちなみに全部で七列。
「愁は隣の子どうだった?」
僕が聞くと、愁は
「…すげぇ生意気でうざかった…」
と悲嘆しながら項垂れてた。
「あらら…」
「なんかお嬢様みたいな感じで一撃ボディプレしてやろうかと思ったわ…マジあいつ次はぶん殴ってやる…」
「女子殴るのは草」
「草じゃねぇよマジあいつ殴りたい」
「僕が殴ろうか?」
「やだね。俺がイライラするから殴ってやるわ」
と愁から恐ろしい殺気を感じた。…久しぶりにこんな愁が殴りたい欲求を丸出しにしてるのを見た。やっぱこいつに手を出すと死ぬな。うん。
「…そういやなんか後ろから視線感じるな…」
僕は呟いた。なんか後ろから二つの視線を感じた。
「そうか?」
「僕は視線に敏感なんでね」
なんか僕は敏感になるものが多いなぁと感じた。…今更遅いか。って感じた。
「はぁ…とりあえず君達何用?」
僕は振り返りながら言う。女子達は驚いていた。あれ、その中にさっきの結衣がいた。…もう一人は白髪の大人しそうな子だった。清楚系ってやつか?なんで髪染めてるんだろと思ったが、ハーフか?という思いに至る。
「…疾風君」
結衣が近づいて来て言う。
「愁君だっけ。私は新村結衣。疾風君の席の隣なの。よろしく」
結衣が愁に挨拶する。愁は混乱しながら
「あぁ、疾風のご近所か。よろしく」
と言っていた。
「こちらは竹内ソフィア。アメリカと日本人のハーフなの。」
やはりハーフか。僕は予想的中した。…白髪だから当たり前か?まぁいいか
「竹内ソフィアです。よろしく。」
とても流暢な日本語で喋る。ハーフと思えないほど顔が日本人似だった。こんな人居るんだなぁと感じた。
「よろしく。僕は神無月疾風だよ。でこのもやしが文月愁」
僕が愁のことをもやしというと
「…疾風、こっち来い」
と愁は廊下に出た。僕が廊下に出たや否や愁は
「誰がもやしじゃぁ!」
と叫びながら拳を振り抜いてきた。
「すみませんでした」
とりあえず殴られる前に言うが、その拳はもう既に目の前に振られていた。トホホ………
「痛い…」
「お前が俺の事もやしっていうからだ」
僕らは授業が終わり帰路に着いていた。彼方と姉さんは他の人と帰っていった。
「ごめんって。でもあんなに本気じゃなくても……」
「骨折しなかっただけマシだろ」
「マシじゃないでしょ……」
とりあえず僕が悪いらしい。悲しいな。トホホ……
今日は濃い1日だったな~と実感する。
「なんか疲れたな……」
愁が呟いた。
「……ね」
僕も相槌を打つ
「……そうだ!」
愁が急に大声を出す
「何何どうしたの?」
と僕が聞くと、なんと愁は
「今日お前の家に泊まっていいか?」
と聞いてきた。……爆弾発言だな。僕は内心でそう呟きながら
「全然いいよ。姉さんが愁を断るはずないし」
と、僕は呆気なく了承した。
「よっしゃ。久々に疾風の家だ!」
いや新居には愁来てないでしょ
「まぁ新居には行ってないがな」
流石愁。僕の思ったことを的確に言った。
「まぁ泊まるならゆっくりして行きなね」
この後、あんな事が起きるなんて僕達は想像すらできなかったとさ。めでたしめでたし((((終わりません。))))
三話 翡翠の刃
そして僕は帰宅する。愁は家に荷物(何を持ってこようとしてるんだ)を取りに行った。……爆薬とか持ってこないよな?愁ならC4を持ってくる危険もある。まぁないか…そしてドアが開き、姉さんが帰宅する。
「おかえり姉s……は?」
なんと姉さんは西賀姉妹を引き連れていた。
「久しぶりね!疾風!」
「あ、あぁ、久しぶり、由佳里…」
西賀姉妹の姉、西賀由佳里(さいがゆかり)はこちらに駆け寄って来る。
「…なんで二人が…」
僕が疑問を述べると
「なんか二人が泊まりたいって言うからさ」
と姉さんが言った。…いや、愁も泊まりに来るんですけど
「これから愁誘うのよ。疾風、一緒に来る?」
と彼方が聞いてくる。
「…あの」
僕が言うと、三人が首を傾げたため、僕は
「…愁も今日泊まるんですけど」
と僕が教えた。
「な~んだ手間が省けたわ!流石疾風!」
と由佳里が僕の背中をバンバン叩く。……地味に痛いのは黙っておこう。
「ってことだからよろしく!」
彼方と姉さんはウィンクをした。
「…そんなウィンクされても…僕なんかするんすか?」
僕はなんかされそうで怖かった
「そんなことより久しぶりにお泊まりなんだから何も気にせず楽しみましょうよ!」
由佳里が肩を組んでくる。あれこの人こんなにボディタッチしてきたっけと思ったが、昔っから西賀姉妹はボディタッチ多かったなと思い出す。小四の時に由佳里に抱き締められた記憶もあるんだが?やばいなんか恥ずかしくなってきた。顔が赤くなってるかもしれん。まぁいいか。で突如インターホンがなる。
「愁来たよ」
僕はぶっきらぼうにそう言う。
「愁来た?!」
姉さんは驚く。だからさっき来るって言っただろうが。西賀姉妹と姉さんは愁を迎えに行く。愁が外で「なんでお前ら居んの?!」てか由佳里も「?!え?なんで?!」と困惑しながら叫ぶ声が聴こえる…うわぁ…。愁はパニクってる。
なんか由佳里か彼方がボディタッチ(では無いが)をしたのか「アイムパニック!」と叫ぶ声が丸聞こえだった。…僕が地獄耳だから聞こえるのか?まぁ地獄耳じゃなくても聞こえるだろう。その位デカい声だった。(近所迷惑だから苦情来るかもしれん)あの人達はまだ愁に悪絡みしてんのか?十分くらいで四人が帰ってきた。
愁は恐ろしく疲れた様子だったが西賀姉妹と姉さんはピンピンしてた。……愁も西賀姉妹を相手にすると恐ろしく疲れるらしい。いや、由香里が疲れるだけか?…まぁなんでもいいや
「愁お疲れ」
僕が声をかけると
「…ガチで疲れた」
と愁は苦笑してた。いったい何されてたんだか
「いや~でも二人に会うのは本当に五年ぶりかしら?全然会ってないから心配してたわよ~!」
と由佳里は陽気な口調で言った。
「…姉妹揃って元気だな」
僕はぼそっと呟く。
「久しぶりに会うんだから当たり前じゃん!」
由佳里はまだ興奮してる。やめて欲しい。
「…由佳里、興奮しすぎだ。」
愁が僕の気持ちを代弁してくれる。流石だ。
「私も興奮してるわよ~」
と彼方がのほほんとしながら言う。いや貴方達どんだけ僕の家に泊まるの楽しみなん?
「まぁ私の家でお泊まり会は久しぶりだからね~」
と姉さんが言う。久しぶりもクソも3年ぶりだよね…やばくて草
「俺はちょくちょく疾風の家に泊まってたがな」
そう。愁は週に一回くらい僕の家に泊まっていっていた。凄い頻度である。
「私も彼方も理奈の家に偶に泊まりに来てたわよ」
「…貴方達私の家に強行突破してくるでしょ…姉妹揃って」
「私はやってないよ?!」
初耳だった。由佳里と彼方が共同で姉さんの家(兼僕の家)に突撃してたなんて…
「彼方も偶に手伝ってたでしょ…まぁいっか」
ほんとに仲のいい三人である
「ほんとお前ら仲良いよな」
また愁が僕の思ったことをそっくりそのまま言う。愁はまさかサトリの子供なのだろうか?いや多分サトリだな。うん多分そうだ。…違うか。僕達の思考回路が似てるってことか…ほぼ一致してるし
「そういや何する?」
姉さんが何をするか募集してた。
「戦闘」
愁が淡々と言う。何言ってんのこの人
「まぁ僕も久々に愁と闘いてえなあ」
と思いつつも僕は腕を回す。殺るきマンマンだ
「家で暴れるのはやめなさい」
彼方が静止する。
「久しぶりに二人の闘い見たかったんだけどねぇ~」
姉さんが呑気に呟く
「私も見たかったわ~」
由佳里も同意したような感じだった。
「…室内壊れるからやめなさい」
彼方が静止をかけるため、僕達は戦闘態勢を解放する。
「…やりたかったがな」
愁がいかにも残念そうな口調で言う。待って顔ニヤけてるし声が恐ろしく陽気なんだけど
「……で何する?」
姉さんが聞いてくる。いや思いつかないよー……しばらく沈黙が流れる
「みんなで駄弁ってればいいじゃん!」
由佳里が助け船を出してくれる。……雑談は楽しいので普通に賛成である
「賛成。雑談楽しいじゃんか」
僕はその旨を述べる
「俺も賛成だな。やることないし駄弁ろうぜ」
愁も賛成らしい。僕も賛成だったので満場一致で雑談になった
結構な時間雑談して、気づいたら22時になっていた頃、由佳里が僕の中学時代の頃について聞いてきた。
「…中学時代?」
僕は愁と目を合わせる。愁も聞くのを躊躇っていた。
「私も気になるわ~」
「私も!疾風の中学時代の武勇伝聞きたいわ~」
姉さんと彼方が水をさしてくる。……嘘やろ…僕の黒歴史なんやが…まぁ姉さんと彼方と由佳里が「聞かせて!聞かせて!」と言わんばかりに興味津々な顔で僕を見つめてたので、僕が中学時代やらかした数々を教えることにする。
「えっと、まずクラスメイトへの顔面骨折、靭帯損傷、ヤクザへの脳震盪とくも膜下出血、先生へアキレス腱断裂、先輩への脳震盪…」
と僕がやらかしてきた数々を述べる。愁が隣で呆れていた。彼方と姉さんは興味津々な顔で聞いてたが、由佳里は苦笑し、「流石疾風ね」という感じだった。
「…まぁ、これが黒歴史兼武勇伝だね」
僕は話終わるとどっと疲れが出てきた。
「なんというか…疾風らしいわね」
由佳里が言う。やめて僕が傷つく。
「……同感だわ」
「…私も」
「…俺もだ」
「四人揃って僕のこと虐めないでやめて」
泣いていいだろうか。久々にこんな惨めな気持ちになった。
とまぁ、風呂が湧いたんで僕は愁と一緒に入ることにした。
「…お前、その傷どうしたんだ?」
愁が僕の肩をまじまじと見つめてくる。
「あぁ、前言わなかった?撃たれたんだよ」
僕はあっけらかんと言う
「あ~ヤクザとの抗争の時に撃たれたって聞いたな」
「あの時弾丸が掠ってね。若干跡が残ってるんだよ」
「流石疾風だ…でも気をつけろよ~」
愁も陽気で、別に気にしてないようだった。…胸を撃たれたことが無いのが幸いである。僕は昔のヤクザとの抗争を思い出す。中学生高校生で構成された暴走族に一人で殴り込みに行ったのだ。あれくらい余裕だったが……人数も四十人程度、僕の攻撃による死傷者三十五人程度。降伏五人程度。それくらいフルボッコにした。死者は少なくなかった。……銃使ったから当たり前か?え?僕の正体?それは二章でわかるよ。まぁそんなことより愁も傷があることの方が大切だけどね
「愁も切り傷あるやん」
僕は切り傷の跡がある事を指摘する。
「あ~これはすげぇ前に殺られたんだよ」
小学生時代だろうか。それすら僕も知らないため、何をしたからわからない。……ヤンキーへのカチコミか。と即行理解する。
「…二人揃って傷がある…か。…まぁお前もナイフには気をつけろよ」
「拳銃は怖くないしね」
…何故だろう。自分が哀れに思えてきた。…拳銃怖くないとか一般的には頭おかしいだろ…と思う。僕達はおかしい人種だからか。
まあまあそんな感じで愁と雑談をしながら風呂に入ってそのまま出て、寝ましたとさ。
~翌朝~
僕は早めに起床していた。何故かって?朝ごはん作るんだよ。今日は休みのため、みんながまだグースカ寝てる。
「今何時だろ…」
僕は時計を見る。七時三十分だった。
…昔の記憶から、最初に起きる人を想像する。まあ合っているだろう。そんな感じでみんなを待ちながら僕は朝食に魚を捌く。今は愛用の刀、五月雨丸を研いでいる。こいつは八年間共に過ごしてきたいわば相棒だ。研ぎ終わると、また僕は魚を捌きはじめた。
ちょうど五人分捌き終わると由佳里が降りてきた。
「おはよう疾風」
「おはよう由佳里。彼方と姉さんと愁は?」
「まだ寝てるわよ」
由佳里に彼方と姉さんと愁が寝てるか確認をとる
「じゃあ、朝ごはんだから起こしてきてくれる?」
「わかったわ。」
僕は由佳里に起こしてもらうことにした。上から「彼方~愁~理奈~ご飯よ~!」
上から由佳里の声が聞こえる。…あの三人が起きるかなと心配するが、普通に降りてきた。
「全員顔を洗う!!!」
僕は号令をかける。みんなが並んで洗面所に行く。う~ん草。なんかモルモットみたいである。みんなが顔を洗って帰ってきた。
「座ってね~。じゃあ食べていいよ~。」
そう言うと「頂きます!」とみんなが言い、食べ始める。ちなみに僕は先に食べていたため、用事のために外へ出た。
「…寒いなあ」
ドアを開けると、冷たい風が体を襲った。まだ、朝は寒いようだ。いうて四月だ。仕方ないのだろう。僕は五月雨丸をポケットに入れると、用事を済ませるために足を踏み出した。
「ただいまぁー…は?」
家のドアを開けるとくそ散らかったリビングが見えた。何が起きたしと思って中に入ると愁と姉さんが殴り合いをしてた。そして由佳里と彼方がそれを観戦するという地獄絵図であった。いやいや何が起きたんと思ったらすぐ察した。姉さんが愁と戦いたいと言ったのだろう。…楽しそうだから加わってやろう。そう思って僕は五月雨丸を引き抜いた。
「何やっとんじゃわれぇぇぇぇぇぇ!」
僕は大声で怒鳴り、五月雨丸をぶん投げるのだった。
「すみませんでした。」
「すまん」
壁に刺さった五月雨丸の前にて、姉さんと愁が土下座をしていた。何故かって?さっきの喧嘩でくそ散らかったからだ。今は彼方と由佳里があと片付けをしている。可哀想な西賀姉妹だ。
「…二度とやるんじゃないよ?やるとしてもいつもの僕の部屋でやること。いいね?」
僕はあくまで優しい口調で諭す。まぁ五月雨丸ぶん投げたから優しくは無いが。
「疾風の部屋でやってきましょ?」
「せやな」
と二人は僕の部屋へ向かったため僕は
「片付けが先に決まってるだろうが」
と言った。二人は恐怖に震えたように片付けを始めた。まったく、困った四人だ…僕はため息をつく。まあ前もあったからなあ。二回目だし反省するだろう。僕は翡翠の埋まった五月雨丸の柄を引き抜いた。今日は一層輝きが増していた。赤い液体が滴りかける。僕は洗面台に行き、五月雨丸を綺麗に洗う。銀色の光沢がまた現れた。そして僕は朝食の片付けに入る。皿を洗うときの水が冷たくて心地よかった。今日はいい一日だ。そう感じれる一日の始まりは、久々だった。
四人も片付けが終わり、僕は部屋に戻る。部屋にある自分の宝物を見る。心が癒された。鉄の塊だらけだが、共に歩んできた相棒達だ。……今日はどこへ遊びに行こう。僕はそれを聞きに下へ降りるのだった。
四話 水晶の想い
楽しかった日曜日が明け、月曜日がやって来る。月曜日が来ることは憂鬱である。…あぁ眠い。そんなことを思いながら僕はまだ僕の家で寝てる四人分の朝ごはんを作る。今何時だ…時計を確認すると7:30だった。そろそろ由佳里が降りてくる時刻である。
僕は今日の朝ごはんのお肉を捌く。昨日の残り物である。朝は時間が無いため、なるべく小さく斬り、食べやすくする。時間が短くなるからである。
トン、トンと階段から優しい音が響く。由佳里が降りてきたのだろう。だが足音は二つ聞こえた。…彼方も起きたのだろう。流石由佳里、起こしたのだろうか。
「おはよう」
僕が声をかけると
「おはよう」
「ぬっはろ~」
ぬっはろ~とはいったいなんだろう。彼方が変な挨拶と由佳里と共に降りてくる。
「朝ごはん作ってるから顔洗ってきな。僕は作り終えたら愁と姉さん叩き起してくるから」
「ありがとう」
「は~い」
朝の間抜けな感じで二人が洗面台へ向かう。二人が戻ってくる頃には既にご飯はできていた。僕は姉さんと愁を起こしに行く。…あの人たち起きれんのかな?
「姉さん、愁、時間だよ。今日は学校なの忘れてないよね?」
と僕は部屋のドアを開ける。案の定爆睡してた。
「起きろ」
たんたんと僕は告げ、手刀を叩き込む
「痛い!」
「いってえ!」
呻き声をあげて愁と姉さんが起きる。
「起きろ。学校だ。」
低く言う。
ヒエと声を上げて二人はそそくさと下へ降りる。
まぁそのまま五人で僕らは学校へ向かうのだった
キ-ンコンカ-ンコ-ン
「起立!礼!!」
級長が号令をかける。今代数の授業が終わった。…代数なんて簡単なのにな…
僕は席を立とうとする。
「…ねぇ」
隣から声がした。…誰だろうと振り返ると
「…結衣か」
結衣がこちらをノートを開きながら見つめてた。
「疾風君…ちょっと、ここ分からなかったんだけど、教えてくれる?」
結衣がノートに書かれた問題を指さす。……なんだ。ただの連立不等式を活用した文章題じゃないか
「…どれどれ。えっと、これはね…」
僕は問題の説明をしていく。若干レベルが高い問題だったため、僕も説明に手こずるが、結衣は「うんうん」と頷きながら真剣に話を聞いてくれた。…何故か何処かでみおぼえある、と感じた。
ヤクザに絡まれてた子か?もう忘れた。
そんな雑念を抱えながらあくまでも淡々と問題の説明をしていく。けっこう時間がかかった。五分くらいの説明を結衣はずっと真剣に聞いてくれていた。一途な子なのだろう。僕はそう感じた。
「ありがとう、疾風君」
そのまま結衣は立ってどこかへ行ってしまった。
「あ~」
若干疲れたため、肩を回す。ゴキゴキといい音が鳴った。
「さ~て」
愁の席へ行こう。雑談しよう。疲れた時は愁と話そう。そう決めた僕は、愁の席に向かうのだった
~新村結衣の独白~
「結衣~」
ソフィアが話しかけてくる
「ん~?」
「最近好きな人とかできたー?」
急にソフィアが聞いてくる。何故急にそんな質問するのだろうか
「なんか最近疾風君によく視線行くからさ。疾風君のこと気になってるのかなぁって」
ソフィアがそう指摘してくる。…そんなに視線を向けてるだろうか。
「…そんな事ないよ」
そんなこと言いながら私は動揺しているのをなんとか隠していた。そう。ソフィアの言うことは図星だったのだ。
私は疾風君の事が気になっている…というより恋をしているというのだろうか?
私には初めての経験であった。…運命というのは感じたことは無いが、奇跡だとは思っている。
これは疾風君にすら言ってないが、昔私は誘拐されたことがある。嘘では無い。本当だ。そして捜索願いが出された後、警察よりも何よりも先に誘拐されたアジトに来たのが疾風君だった。疾風君はあの時、こう言ってたなぁ…
「…誘拐犯っつうのは儲かるらしいねぇ…君はあの組織の幹部かい?」
私には最初狂った共犯にしか見えなかった。しかし、あの組織の幹部という言葉に一人が頷くと、次の瞬間その人が倒れた。
「…Dreamer幹部なら、死闘を繰り広げてでも勝つしかない。何人がかりでも、武器を使われようとも、関係無い。…お前ら幹部、僕に勝てるかな?」
そう言って疾風君は幹部に向かって刃物を向け、間合いを詰めた。幹部は焦った表情でナイフを振る。(あれ、ポン刀って言うらしいよ)火花が散る。そして幹部は拳銃を取り出し、撃鉄を起こした。疾風君は避けようとしたが、肩に掠ったらしく、肩から血が出た。
「…やめ…て」
私はあの時、確かに静止をかけた。しかし、その声が届くはずもなく、二人は戦闘を続ける。途中何度か疾風君が負傷していた。それくらい幹部は強いのだ。しかし、幹部が油断して見せた一瞬の隙に疾風君は右肩からするっとナイフを滑り込ませた。次の瞬間、幹部が呻き声をあげ、倒れた。私はその時、あぁ、私はやっと誘拐犯から開放されるのか…あの暴力から開放される…と思い気が抜けた。疾風君は肩から血を滴らせながら私を縛る縄を切ってくれた。
「警察がもうすぐ来る。動くんじゃないぞ」
疾風君はそう言って右肩を抑えてアジトを後にした。私からは疾風君の背中から一直線に血が出てることに気づいたが、あえて無視をした。そして10分程度経ち、警察がやって来た。そして私は無事家に帰れた。
これが私と疾風君との出会いだった。そして疾風君と出会うとその特徴が一致していた。……疾風君は、本当に私を助けた疾風君なのかは知らないが、とりあえずあの優しさに惚れているのは事実だった。
「…私は恋バナが苦手なのよ。」
私はそうやってソフィアとの話をそらすのであった。
~再び話は疾風に戻る~
「…で、なんだ彼方」
僕は何故か知らんが彼方に校舎裏に呼び出されていた。本当になんでだ。愁と姉さんがニヤニヤしながらこっちを見ていたから殴りかけたが、まぁとりあえず来た。で今は何の用事か聞いているのである
「貴方に用事なんて1つしかないでしょ。しかも内密にして欲しいんだから、察してちょうだい」
彼方が唇をとがらせながら言う。
「…どんな依頼?」
僕はメモ帳を出す。彼方が内密に頼むことなんて少ないだろう。
「……」
彼方は顔が真っ赤っかだ。なんだなんだ。いったい。なんか気まずいぞ?どうしたんだマジで…
「…どうしたの?」
僕はもう一度聞くが、彼方はそっぽを向いて
「…やっぱなんでもないわ。急に呼び出してごめんね」
と去っていった。僕は頭の中が?でいっぱいになった。
「…一体なんなんだ」
本当に混乱した僕であった
~西賀彼方の独白~
「まったく、気づきなさいよあのバカ!」
そう言いながら私はずんずん中庭を進む。あのバカ…人の気持ちに鈍感過ぎだ。何故あそこまで恋愛に鈍感なのだろうか。何故あいつはあそこまで鈍感なんだ!!!何故私が惚れてることに気づかない!!!しかも三年前から!!!おかしい!!!まぁこんな事言うのもあれだけどね。昔っからあいつが好きなのにねぇ…気づかないのがあいつの恋愛に疎い証拠ね。まぁ昔「大きくなったら疾風のお嫁さんになる!」とか言ったらしいけど…まぁ疾風の事だ。覚えてないだろう。……気まずかったから逃げてきたが、いつ、告白するか決めないとね…
私はそう思いながら歩くのだった。
~疾風に三度~
「マジで意味わからねぇ…」
僕は本を見ながら頭を抱える彼方からの呼び出しの後、愁が「お前恋愛小説読んでこい」と言い、言われるがままに読むのだが、ヒロインが主人公を好きになる理由がわからなかった。題名は…アオハル…らしい。聞いたことない。なんだこれ…主人公の取り柄が見つからないし、好きになる理由がわからない。これが恋愛小説なのか?僕は初めて読む恋愛小説に呆れた。僕はミステリー小説以外全くと言っていいほど興味が無い。ライトノベル系は、僕がやりたかった、昔憧れた内容のものが多々あったのでたまに読む。まぁ、要するに僕は恋愛小説なんて読まないんだよ。なんか「お前恋愛に疎すぎ」って愁に言われたんよ…そんなに恋愛に疎いかな?この僕の独白を見てる人に問いたい。なぁ、僕は恋愛に鈍感か?そんなに鈍感か?
まぁこの答えなんて無いのだろう。僕にすらわからないのだから。
まぁ女性不信の僕だ。当たり前か?
…待て、なぜ僕は女性不信なのに結衣に話しかけられてもなんもなかったんだ?なんかの知り合いか?僕は記憶の深淵を手繰る。本を読むことすら忘れて。
「……あの女の子か…」
僕は中学時代のDreamerの幹部との死闘を思い出す。Dreamerというのは…まぁ二章で明らかになるよ。で、その幹部との死闘を繰り広げて助けた女の子か、と今更思い出した。もしかして結衣が僕に惚れてることに僕が気づかないのが鈍感なのか?僕は混乱してきた。とりあえずよく分からないアオハルとかいう本を読み進めることにする。全く面白くもクソもなかったため、読むのに時間がかかった。トホホ。時間の無駄遣いだわ…明日愁に文句言ってやる。ぜってーぶん殴ってるわ。…でもなんかあいつ感想文書かせそう。それが怖いため僕は本を読み進める。
案の定明日本を愁の机に叩き返すとしっかり400文字原稿を渡されたため一撃ぶん殴った。
まぁ感想文くらい書いてやろう。僕は適当に感想文を書くことにした。
五話 水無月王牙
なんでこうなったんだ…?
僕は目の前に広がる世界に絶望する。
あれもこれも全部あの女のせいだ。
だから女は嫌なんだ。
だから人間が嫌いなんだ
ダカラ…
ハッと目が覚める。僕は自分の体から水分を感じた。
…どうやら汗をかいてるようだ。あんな悪夢を見たからであろう。時間は七時五十分。最悪だ。朝食が食べられない。
急いで着替えて下へ降りると案の定姉さんが居た。
「遅かったわね。疾風。」
…姉さんは自分でハムエッグを作って食べていた。しかも僕の分も作ってくれていたようだった。
「…なんかごめん。」
僕は罪悪感を感じ、謝るが、
「こういう時はお互い様よ!今日は疾風の支度も私がやってあげるからゆっくり食べてなさい」
姉さんは全く気にしてない様子で僕にウィンクする。…流石姉さん、器が広い。…あそこでも姉さんが姉御肌があるの人気なのはこういうことか?いや、的確な司令を出せるその勘の良さか…僕には理解できないが、一つだけ、わかることがある。姉さんはあんなでも根は優しいということだ。…誰でもわかるか。僕の支度をしてくれる姉さんの背中を見つめながら僕はさっさとご飯を食べるのであった。
「…目覚めが最悪な日は授業にも集中できねぇ…」
僕は学校で早速船を漕いでた。悪夢を見た日はいつもこうだ。もう先生の話は全て理解したため、そのまま寝ることにした。
と、寝て何分経っただろう。級長の「起立!」という叫び声が聞こえた。授業が終わったのだろう。僕は重い腰をあげる。
「礼!!!」
礼をする。これでもまだ僕は眠かった。なので、そこから愁の席へ行く気も無く、そのまま寝ることした。…悪夢を見るのは本当に辛い。あの悪夢から開放される日は絶対来ない。僕は確信した。
…あの悪夢の内容は話したくもない。話したら精神が壊れそうだ。そんだけ僕のトラウマでもある。…そんな雑念もあり、休み時間はそこまで寝れなかったため、次の授業で爆睡した。…その授業はユキさんだったため、事情を察してくれたのか全く気にしていなかった。僕は悪夢による睡眠不足の解消のためにせっせかせっせか船を漕ぐのだった。
「クソネミいって時に限って君は来るのね。」
僕は昼休み中庭でお昼寝しようと出たら、何故か旧友の睦月優斗が来ていた。
「優斗違う学校なのに何故ここに居るんだ…」
意味不明だと僕が呟くと、優斗は苦笑し、
「王牙さんから司令が届いてね。放課後すぐ来てくれだとよ。」
「……王牙さんから…だと?」
王牙さん。水無月王牙さん。僕たちのいわば上司。まぁ詳細は後で説明しようかな。
「うん。王牙さん。僕も瞳も司令かけられてないからさぁ…な~んかめんどくさいんだよね」
瞳とは西園寺瞳のことである。優斗の親友だ。
…瞳も司令がかかってるということは…
「…姉さんと愁にも司令が来たの?」
僕は顔をしかめながら優斗に聞く。優斗のやけに暗そうな顔で
「…実は、疾風だけの招集なんだ」
僕は仰天する。あの人に限って僕達をセットで呼ばないなんてことあるだろうか。まぁ、直々の招集なので学校は早退せざるを得ない。
「僕は今から早退手続きをしてくる。優斗はもう学校に戻ってて」
「あいよ」
優斗を見送った僕は早退手続きの為に控え室に行った。ユキさんに伝え、さっさと手続きをとる。ユキさんは察した様子で「いってらっしゃい」と笑顔で送り出してくれた。僕はLINEで姉さんと彼方と愁に「招集が来た。僕と優斗と瞳だけの招集だから僕は行く。」と送った。
そして僕は原付バイクを走らせる。…この愛用原付バイク、名前付けようかな…僕は雑念を抱えながらアジトに向かう。アジトまでバイクで約30分かかる。とてもめんどくさい。その30分の間で考え事をしたり、愛用バイクの名前を考えたりした。ちなみにバイクの名前は電(イナズマ)に決まった。なかなかにカッコイイだろう。まぁ姉さんの発明品の名前の方が凄いけどね()
さてさて、そんなことより王牙さんは僕に何用なのだろうか?
…何となく察してはいるがまぁ行かないとわからないだろう。僕は怪訝な顔をしながら電を走らせた。
ピンポーン
僕はアジトのインターホンを鳴らす。
『どなたですか?』
向こう側から怪訝な声が聞こえた。
「Number.2だ。」
僕はあくまで無機質な声で答える。
『Number.2様ですか。どうぞ』
ガチャリとドアの鍵が開く。僕はノブをひねり上げた。
「…Number.2だ。王牙さんは今どこにいる。」
中に入り、周りにいる人に聞く。
「王牙様なら、会長室に居ますよ。」
「ありがとう」
僕はまだ疑い深い顔をしながらいつもの会長室に向かうのだった…
「…すみません。Number.2…神無月疾風です」
僕は会長室のドアをノックする。
「…入ってきて」
奥から声が聞こえる。
「…わかりました。」
僕はドアのノブを捻りあげる。開いた奥には、王牙さんが暗い顔をして座って、頭を抱えていた。そうとう深刻な事態なのだろう。とても重たい溜息をついていた。沈黙が長い時間続いた
「…王牙さん」
沈黙に耐えられなかった僕は王牙さんを呼ぶ。こんな張り詰めた空気は嫌だった
「……あぁごめん疾風。」
王牙さんは慌てた様子で返事をする。未だに焦っているようだった。そんなにやばいのだろうか。重大臭い案件だろうか。僕は不安になる。そして現実に起こってることは僕の危惧していたものよりも遥かにやばいものだった。なんと王牙さんは
「……Dreamerが……動き始めた」
「……え?」
僕は心底驚いた。Dreamer。それは昔とてつもない大事件を起こした組織だった。今も事件を起こしてるが、最大だと死者80人、被害総額はなんと500億。自衛隊も出る事態になった。そんなやばい組織が動いてるのだ。王牙さんが焦っても仕方がない。しかし
「……何故僕だけに言うんですか?そんな大事なことなら、他の組員にも言うべきだと思いますが」
僕は今の今まで疑問だった、僕だけを呼び出した理由を聞いた。とても重大な事のはず。Dreamerなんてこっちの構成員を殺したりもするのに……
「…実はな……」
王牙さんが今回のDreamerの動きを説明する。僕は耳を疑った。Dreamerうんぬんかんぬんじゃなくてこれは酷すぎる。そんな内容だった。
「…これじゃあ姉さんも愁も手は出せませんね」
僕は落胆する。これは僕にしか出来ないと悟った。
「…わかりました。引き受けます。報酬は幾らですか」
いつもは報酬は聞かないが、今回ばかりは命を張るためたんまり貰わないといけない気がした。
「…50万でどうだ」
王牙さんはとんでもない金額を言う。思わず僕は目を見開いた
「そんな無茶な?!なんでそんなに……」
「…この依頼は疾風にしかできない。いつも俺はみんなに合計で50万は払う。だから一人のミッションだから50万払うんだ」
絶句した。そんなにキツいミッションなのか。僕は絶望した。……正直このミッションだといくら僕でも難易度は跳ね上がる。死者は低く見積っても50人は出るだろう。…一般人からも出るかもしれない
「…死者は何人以下ですか」
一般人からも出る予感がした僕は王牙さんに聞く。
「……高くても80人で頼む」
「はちじゅう?!」
80は僕が初めての数字だ。てか正直そろそろ捕まるかもしれん。
「……10人以下で済ませてきます」
僕はとにかくこの地獄を何とかしたいという一心で王牙さんに宣言した
「……頼んだよ。俺には完遂できないミッションなんだ」
王牙さんは暗い顔でそう呟いた
…最悪だ。ミッションの日が水曜日だなんて。
「…死ぬのはごめんだなぁ」
僕は心の底からの思いを呟いた。学校へ欠席連絡をして、覚悟を決め、愛用の原付バイク、電を走らせる。今ある装備の中で信じられるのは短刀五月雨丸、SMG(サブマシンガン)と愛銃、駿河と己の力量のみだった。相手はDreamer。簡単に勝てる相手では無い。死ぬ覚悟を決めながら電を走らせる。
「…僕は神無月疾風だ。いや、俺はNumber.2。これくらいはできる」
僕は神無月疾風という仮面を脱ぎ捨て、Number.2になることにした。……余談だが、Numberは一~七の階級がある。一~四は事務関係の仕事で、五になると軍事に加わる。そして軍事最強の12人が七階層。七階層の人達は''コードネームNumber.〇''を与えられる。数字は自分で選べる。僕は七階層のトップ、Number.2だ。まぁ余談をしている間に目的地に着いた。って事で戦闘開始まで残り僅かである。僕は肩を回し、
「行きますか」
と呟く。…少し歩くと、敵が見張っていた。…見張りは一人。僕はフシュ-と息を吐くと、身体を屈め、敵の現在の視界に入らないよう敵が真後ろを向いた瞬間、僕は音も無く地面を蹴った。距離は20メートルと言ったところなのですぐ距離は縮まる。敵が僕に気づいて拳銃を発砲する。それを僕は地面スレスレでよけ、そのまま見張りの手首に手刀を叩き込む。敵が拳銃を落としたところで腹に回し蹴りをし、敵を倒す。そのまま拘束した。
僕はドアを開けた。すると中には拳銃を構えたDreamerの人達がいた。
「……えーっと……」
拳銃を構えているのはざっと数えて八人。…少ないな、と感じながら作を練ろうとするが、敵が撃鉄を起こした。唐突な事態に、思わず避けたが左肩に命中する。
「ヴヴ…」
僕は呻き声をあげる。そのままムーンウォークで外に出て、扉を締める。その寸前にまた撃たれ、僕は腹に傷をおった。かすり傷だが、左肩は命中してるため致命傷に近かった。やはり無謀かと思うが、かてないわけではなかった。応急処置としていつも持ち歩いている包帯を巻いて、電を持ってきてをドアに向かって全速力で走らせる。電がうねりをあげる。直後僕が逃げたと思って追いかけようとしてドアを開いた人達が電の犠牲になった。その人たちはみんな拘束した。
「…これは死んでもおかしくないな」
いつ伏兵が来るかわからないので足で駿河を握りながら、進み始める
案の定一人が横から飛び出してきた。その時は五月雨丸でナイフを飛ばしたあと手刀で気絶させたが、やはり左肩を負傷してる限り、これ以上進むのは良くない。しかし、逃げたら奴らはおってくるはずだ。監視カメラくらいあるだろう。僕は監視カメラに気をつけながら慎重に出口に向かう。誰も居なかったため僕は安心した。しかし敵の方が一枚上手だった。僕がドアに手をかけた途端ドタドタ足音が聞こえた。
「今来るか?!」
僕は慌ててサブマシンガンを取り出し発砲する。しかしだれも倒れなかった。…罠か!僕が振り向くと、案の定外に大量の敵が居た。終わった…僕は確信した。僕は歩みを止める。敵はジリジリ近ずいてくる。僕はドアを閉めようと手を伸ばそうとするが、拳銃を向けられ、とっさに手を止める。僕は死を確信した。
「…Game overだな。」
僕はそう呟いた。死ぬしかないこの状況をどうしよう…。しかし、そんな事を考えてる間も敵はじりじり近づいてくる。…今の僕は両手は塞がっている。そう。「両手」は。
僕はつまさきをバレないように敵の拳銃に向ける。そして、次の瞬間轟音が轟いた。
「んなっ?!」
敵が驚く声が聞こえた。敵の視線は一気に倒れて呻き声をあげる人に向いた。なぜなら、「僕は両手が塞がっていて何も出来ないはず」だからだ。しかし僕は
「残念だな。足に拳銃を隠しているんだよ」
靴の中に拳銃を隠しておくのは僕の戦略である。僕は近くに倒れていた(さっき吹っ飛ばしたからこんなところにあるんだよなあ)電にある「ボタン」を押したあと、を発進させる。もう拳銃を撃たれることは無かった。…いや、撃てないのだろう。僕は後ろを見る。
「…成功だな。」
後ろには白い煙がたっていた。そう、電には、最悪逃げるために煙幕を吐く機能を搭載してるのだ。おかげで今回逃げることが出来た。しかし
「…痛え…」
こんな撃たれた左肩ではもうしばらく戦闘はできないだろう。しかもミッションも失敗してしまった。これは、僕が久しぶりに経験する、敗北だった。
★一章終★
六話 Number.2の過去
「…ということで、今回のミッションは失敗してしまいました…すみません。」
僕は左肩を抑えながら王牙さんに言う。まだ顔をしかめてしまう。
「…失敗なのは仕方ないんだ。一人でアジトに偵察した上でボス暗殺とか無理だよ。」
僕は目を見開く。許してもらえるのか…まぁ難易度が難易度だから、生存するだけで奇跡なのかもしれない。
「……わかりました。次は必ずや成功させます」
僕は頭を下げる。その時に思わず左肩の圧迫を外してしまった。案の定王牙さんが目を見開く。…王牙さんは暗い顔で
「…銃で撃たれたか?」
と聞いてきた。とても低い声だったため、僕は若干恐怖する。
「…はい。我ながら失敗しました。」
僕はそう答える。王牙さんは顔をしかめ、
「…それじゃ闘えない。完治までの休養を要請する。」
王牙さんは爆弾発言をした。僕は目を見開く。それなら、もう敵も準備が整ってしまう
「…学校を休んで、休養をとるんですか?」
僕は一応聞いた。王牙さんは暗い顔のままで
「…もちろんだ」
と消え入りそうな声で呟いた。
「そんな無茶な?!敵との戦闘はどうするんですか?!僕だって戦力なんですよ?!」
と僕は訴えるように叫ぶが、
「疾風の身体の方が大事だ!!!」
王牙さんは悲痛な声で叫ぶ。
僕は絶句した。
「…休め。命令だ」
王牙さんはそう言い残すとスタスタと部屋から出て行った。僕はその背中を見送ることしかできなかった
「…その傷だと全治三週間…といったところでしょうか」
僕は医者から言われた言葉を思い出す。なんとなくイライラしてきた。
「っち……」
僕はベッドの上で舌打ちをする。
何故三週間もこんな生活を……
僕はホントにイライラするったらありゃしない。しかし、
「……痛いよ……」
左肩の傷が痛むのは相変わらずだった。思わず顔をしかめてしまう。
「……いつ治るんだ……」
僕は考えるのをやめ、寝ることにした。今はとにかく何も考えたくなかった。無心になりたかった。だから、寝る。
寝る時には、夢を見る。
それがどんな悪夢であっても…………
夢というのは、時々過去を見せる。今日の夢はまさしく、自分の過去の話だった。……悪夢といえる過去の夢。
「さっさとやらんかい!!!」
父親の怒号が辺りを響き渡る。……この時僕は六歳。こんな時から僕は虐待を受けてたのかと絶望する。今絶望したって過去は塗り替えられないけどね。
「……はい」
僕はボロボロの服を着て、ボサボサの髪で……ととても酷かった。父親が稼ぐATMのため、僕は働くしか無かった。……そう、その時は。
僕は七歳にして学校にも行かず、トレーニングを続けた。身長が高いおかげで、トレーニングをしてもなんとか身長の伸びが止まるのは避けられた。
そして僕は小学校一強くなった。三年生になると、イラつくやつはみんな殴り飛ばすようになってしまったため、友達は少なかった。……今つるんでるやつらくらいだろう。
おっと、何故僕がここまでやったか説明しとこう。
僕には一歳年下の妹が居た。名前は神無月恵。とても愛嬌があり、僕にとても甘えてくる可愛いやつだった。恵が悲しい顔をしない為ならどんな事でもやった。虐めるやつは殴り飛ばす。
''お兄ちゃん!''
''どうしたの?''
''助けてくれてありがとう!''
あたりまえだった。虐めは少なかったが。父親にも反抗し始めた。反抗する度に殴られ、恵は心配してくれたが、僕は大丈夫と言っていた。
「お兄ちゃん、今度どこかに行こうよ。」
「お兄ちゃん、」
そうやって恵のことだけに熱中できた。姉さんや仲良い親友などとも仲良く、恵と一緒によく遊んでいた。…とても幸せな日々だった。失いたくなかった。しかし、まぁそんな生活が続くわけもなく。悲劇としか言えない殺人事件が起きる。なんと道端でいじめっ子が恵を突き飛ばしたのだ。''車が通る寸前の交差点の車道に''。そして僕はその一部始終を見てしまった。恵が車に撥ねられる。僕は発狂しながら恵に近寄るが、もう息をしてなかった。この時僕は決心した。…こんな悪いことする人間が居るなら、
「…死んでしまえばいい」
僕はそう呟いた。とても暗かった。歩道でいじめっ子がギャーギャー笑う。クラクションが僕をどくように促す。そしてその二つは、
「…死んでしまえ…」
いじめっ子を殺す為の感情に火をつけた。
「…殺す」
この時僕はとんでもない顔をしてたと思う。僕は恵を地面に置く。近くの人が通報したのか、救急車のサイレンが聞こえた。だが僕は救急車なんか気にならなかった。
「…人殺しが!死ね!」
僕は未だに歩道で笑ういじめっ子共に発狂しながら走る。いじめっ子達はまだガハガハ笑っていた。とても余裕そうだったため、いじめっ子のリーダーであろうやつの鳩尾に本気の拳を叩き込んでやった。いじめっ子は胃液を吐きながら呻き、そのまま倒れた。
僕は怒り狂い、そのままいじめっ子を殴り続けた。…途中でいじめっ子を殴る手の感触が無くなる。後ろから僕は警察に手を捕まれた。
「…ボク、ちょっと交番来てくれる?」
といじめっ子と僕を連れていった。
こっからは覚えていない。僕はこの時既に生きる意味を失っていたのかもしれない。とにかく交番のことは思い出したくは無かった。さっさと帰ろう。僕はそうやって家に向かおうとする。すると
「…坊や」
後ろから声をかけられた。
僕は後ろを振り向く。そこには見知らぬ青年がいた。
「君、強いね。」
それが青年の最初に言った言葉だった。
「…僕の組織に来ない?」
急に僕は勧誘されたので断ろうとした。しかし、首は勝手に縦に振られていた。青年のにこにこした表情には断れなかった
これが王牙さんとの出会いだった。…ここも夢に出るとは…
そして、僕はここでこの夢が途切れた。
次の夢は、どの過去だ。
僕は暗い公園にいた。…父親と共に。
どうやらその時の僕は四年生だったらしい。ナイフを構えていた。そして父親に斬りかかっていた。でも父親はナイフを悠々と取り上げた。僕が絶望していると、それに構わずナイフを振り下ろした。しかし、僕は背中にナイフを隠していたらしい。僕は顔をニヤつかせながら背中に手を回しナイフを取り出した。次の瞬間驚いた父親のナイフを余裕で躱し、地を蹴って頸動脈を斬り伏せた。
一瞬だった。
これが僕が父親を殺した一部始終だった。
何故ここまでするかって?
姉さんとお母さんにも酷いDVをしていたからだ。僕だけにしてればいいものを…
僕が後片付けをして、その場から立ち去って行くのが僕の目に洗礼に焼きつかれた。
そしてまた僕は夢から覚める。
「…悪夢だらけだったな」
恵の死亡を見るのは完璧に悪夢である。ちなみに恵は未だに死にもせず生きてもいずベッドに意識不明のまま寝ている。
「…今日の夢?」
今日の夢ではない。これはいつも見る夢だ。
「…僕がどれだけ恵を大切に思っていたか…?」
愚問だな
「…アイツが居なきゃ、今の僕は居ないさ。僕は、恵の意志を継いでいる。」
僕は胸を張ってそう言える。恵の意志、それは
『お兄ちゃん、私以外の人を大切にして、救ってあげて』
…僕はこの言葉を聞いてから、恵を一層大切にした。それでも、恵は死んだ。だから、恵以外の人も大切にして、救う。それがNumberの仕事と僕のエゴだった。だから
「僕は優しい人でもない。誰かのために動いてるのではない。自分の為に動く、偽善者のエゴイストだ」
七話 Number.2の後輩
「もう完治しました。大丈夫です」
先程医者にそう言われ、退院手続きを取った。今は家に帰っている。…三週間学校を休むため、お義父さんに「拳銃の流れ弾に当たった」と言ったらお義父さんが「病気で体を壊したらしい」とユキさん以外の先生に説明してくれた。優しいお義父さんだ。さらにユキさんも、病気とみんなに伝えてくれたらしい。やれやれ、拳銃の弾に当たるなんて恥ずかしい。Numberとしてはずかしいわ…
ちなみにお見舞いに来る人も居たが、姉さんと愁と西賀姉妹と身内以外面会しなかった。もちろん傷がバレると思ったからだ。…今思ったが、僕は誰に語りかけてるのだろう。
「…僕の日記を見てる人が居るのかな?」
まぁそれは置いといて。僕は思い足取りで家に帰る。
「ただいま~」
僕がそう言うと、あっけらかんと姉さんが
「あ、おかえり」
と返してきた。…元気そうでなによりだ。まぁ僕も肩撃たれただけだし心配されることも少ないだろう。あと、姉さんは僕が絶対戻ってくると信じていたんだろう。我ながら幸せである
「まぁ今回は失敗しちまったよ」
僕は頭をカリカリかく。マジで左肩ぶち抜かれたのはヤバすぎる。アホにも程があるわ。てか胸じゃなかっただけマシか?まぁ生きてるから関係ないか
「…次変なミスおかしたらぶん殴るわよ」
姉さんはドスの効いた声で言ってきた。やだこのこ怖い
「左肩くらい何ともないんですがそれは」
「仕事できなくなるでしょ?」
姉さんは優しい声音で、笑って言う。…目が笑ってねぇ(((())))
「…それに皆が心配するし」
ん?何故か聞こえなかった。ボソボソと呟いているようだ。
「…まぁ…すんまへん」
僕は頭を下げる
「次から気をつけるように!!!」
もう姉さんは笑顔になっていた。しっかり目も笑っている。いつもの姉さんの姿に僕はホッとする。その日は姉さんにご馳走を作ってもらい、ゆっくり休んだ。え?勉強?それはねぇ、もう僕は高一レベルの勉強してるから大丈夫。王牙さんが一応として教えてくれたのだ。ほんと、感謝してもしきれないわな。あの人は優しすぎるんだよな…まぁそれが僕が王牙さんを好きな理由だが。…ホモじゃないからね?
てかいつも思うんだけど僕は誰に語りかけてるんでしょうかね。僕の日記を見てる人でもいるのかな?
まぁそれは置いといて。今日は彼方と愁と由香里とユキさんも来て退院祝い(?)をしてくれた。まあ楽しい夜だった。幸い今日は日曜日なので明日は学校に行けそうだ。…お義母さんとお義父さんにも報告しなければ…ということで朝一に校長室に行くことにした。
「…まぁ、ということで僕は完治したよ。」
僕は今校長室にてお義母さんとお義父さんに会っている。で、完治した報告と次いでにNumberとDreamerのことを話に来た。
「疾風~!無事でよかったわ~」
お義母さんー霞雨葵(かすみさめあおい)ーが僕の背中をバンバン叩く
「…せめてもっと音小さくしてよ…ユキさん以外にバレるでしょ()」
僕とお義母さんとお義父さんの関係はユキさんと西賀姉妹、姉さん、愁しか居ない。ってことであまり学校内でスキンシップをとられるとバレてしまう。
「…まあ葵、落ち着きなよ。疾風の完治祝いはまた楓も合わせて皆でやればいいさ」
お義父さんがそうお義母さんをなじる。
…ほんとお義母さんは若いなぁと思う。なんでこんな元気なんだ?若干呆れながらそう思う
「まぁ怪我には気をつけてよ。死ぬとは思ってないし。胸を貫かれるとかいうアホらしい怪我はしないように。」
お義父さんが僕を叱る。あぁ…こんなめんどい事になんなら二度と怪我しねぇと心中で苦情を述べるのであった……
まぁ教室に入ると大丈夫?大丈夫?とか尋問されたり色々されてクソだるかったのは言うまでもないだろう……
「疲れた…」
学校が終わり、僕は独りごちりながらバイクを走らせる。え?何故バイクかって?Numberのアジトに行ってんだよだよ馬鹿野郎
「あんたが怪我するからでしょ…」
隣で姉さんもバイクを走らせる。ちなみに愁も居る。
「左肩損傷で三週間はアホだろ」
愁が真顔で言う。左肩損傷じゃなくて左肩ぶち抜かれただけだからなぁ…そこまで…ってか三週間も休まなくていいのにぃ…って感じに心の中で苦情を述べながら僕達はNumberのアジトに向かうのであった。
「ご苦労だったな、Number.2、Number.0(霞雨真理奈のことね)、Number.8(愁ね。)」
Numberのアジトに着いた僕は、出迎えをされる。…いやちょっと待て
「すみません、王牙さんはどこですか?」
僕は怪訝な顔をして目の前の女の人に聞く。
「…その前に私がいることに驚けよ…Number.2」
目の前の女性はそう呟く。
「えぇ、そうですね。舞さん。…いえ」
僕は目の前の女性ー葉月舞ーさんを見つめながら
「Number.81さん」
と呼ぶ。愁と姉さんはけっこう目を見開いて驚いてるようだ。まぁ、Number.81、葉月舞さんがここに居るのは中々ないからだ。
「…舞さん、王牙さんはどこですか?私と愁と疾風が呼び出されたんですけど…」
姉さんが舞さんに尋ねる。
「普通にいつもの部屋に居るだろ」
舞さんはいかにもめんどくさそうな顔で呟く。まぁ、ですよね
「僕ならここにいるよ」
後ろから声がしたため振り返ると、そこには王牙さんが居た。
「…どこにいたんですか」
僕は一応王牙さんに聞く。
「いや、なんでお前ここにいるんだよ」
舞さんは怪訝そうに言う
「ごめんごめん。新人と色々あってね」
王牙さんは頭をカリカリかく。
「…俺が言うのもなんですが、遅れそうなら事前に連絡ください…」
愁は明らかに不機嫌そうに、呟いた。と、待て。一つだけ触れてないことがある。
「…新人って…まさか」
僕は震える声でそう尋ねる。姉さんと愁と舞さんはキョトンとしていたが、王牙さんはため息をついて、
「…察しよ過ぎない?」
と呟いていた。簡単の声か呆れた声かよくわからない。
「…まぁ要するに、君たちの後輩さ。」
僕ははぁとため息をついただけだが、姉さん達は驚いていた。
「後輩?!六階層ってことですか?」
「五階層か?」
「…後輩って…そんな急に…」
まぁ三人はそれぞれの回答をしていた。
「…後輩が入ってきたんだよォ…階層は一応六だね……とても強い子だったよ。」
いかにも嬉しそうな表情だった。それほど強かったんだろう。僕は七階層に来れるだろうかと期待する。
「……王牙さん、その新人に会わせて下さい」
僕は王牙さんに言う。その新人とやらのレベルを確かめたかった。
「僕に匹敵するか見てみたい……」
僕は腕の裾をまくる。やる気満々だ。
「……あんたがやると気絶するでしょ…てか新人が怖がるからやめなさい」
姉さんが止めてくる。舞さんも愁も同調していた。
「疾風……やりたいならいいけど、程々にね」
王牙さんは許可をくれた。姉さんたちは心配してたが、僕を誰だと思っているのか……
「じゃあ先輩達にご挨拶してね。入ってきて。」
王牙さんはその新人に向かって
「天ノ川深雪君」
と呼んだ。……その新人ーいや、天ノ川深雪とはどんな人なのだろう
ドアが遠慮するように開かれる。ゆっくりと。そしてドアが全開になり、人影、天ノ川深雪の姿が見える。その容姿は、朗らかな童顔と、上品なワンピース、白い靴という、見たものを引きつける美しさを持ってるようだった。端的に言おう。
ロリコン歓喜である。
「……幼そうですみません」
天ノ川は怒った口調でそう言う。
「僕はそんなこと思ってないぞ。さっさと準備してくれ」
僕はぶっきらぼうに言う。これがいつもの新人が入ってきた時の対応だ。姉さん達も黙って見ている。……まぁこれは演技だが
「……準備とは?」
天ノ川はそう聞いてきた。
「決まってんだろ。僕と闘うんだよ」
僕はそう突き放すように言い、腰を下ろす。天ノ川はため息をつき、
「……それだけですか」
と呟き、腰を落とした。
「……行くぞ」
僕は地を蹴った。間合いを詰める。天ノ川との間合い約5m。約1mになったとき、天ノ川は足を思いっきり払った。僕はその足を避けるが、不覚にも態勢を崩してしまう。天ノ川は右足でかかと落としをきめようとしてきたので、僕は足を上に払う。しかしそのかかとは落とされず、右足を横に振った。僕はその足に衝突する。また態勢が崩れる。僕は地面に倒れた。天ノ川は近づいて、またかかとを上げた。そして振り下ろされた瞬間、僕は足を曲げ、思い切り地を蹴る。そのままバク転をする。そして足が地に着いた瞬間、僕はまた地を蹴り、頭から天ノ川に突っ込む。天ノ川は呆気にとられ、そのまま頭が鳩尾に入る。
「ガハ…」
そのまま天ノ川は倒れた。やべえ気絶してる。やりすぎた……やべえ
「……疾風、やりすぎ」
まぁこの後姉さんに散々怒られたのは言うまでもない
「昨日はすまなかったね」
僕は第七階層の部屋で後輩となった天ノ川に謝る
「いえいえ…私が弱いのが悪いですし……」
まぁやりすぎたからなぁ……弱い強い関係無いわ……
「君の技量は素晴らしい。これからよろしく頼むよ。後輩くん」
僕はわざと色っぽくウィンクしたのだった
「……よろしくお願いします」
天ノ川はにこやかな笑顔でそう答えた。ふと窓を見ると、空には雲がなかった
八話 沈黙
「今日は素晴らしい日だ…」
僕は窓の外を眺めながら呟く。
窓の外では、青い風景が広がっていて、心地いい風が、空いた窓から入ってくる。
「…澄んだ空気、心地いい風、雲ひとつない空…う~ん、今日はいい一日になりそうだ。」
僕はのびをしながら呟く。
今日は日曜日だから学校は無い。…Numberの仕事は変わらずあるがね!!
まぁNumberの仕事はそこまで負担じゃないし勉強も負担にすらならないので、今日はゆっくり過ごせそうである。
「まぁこんな日に限ってなんか事件とか起きそうだなあ」
死亡フラグだろうか?まぁフラグ回収とかヤバい話にならなければええんやがなぁ
まぁ大丈夫だろう。日曜日に事件起こす暇人なんて居ないだろ
「う~ん」
僕は思いっきり伸びる。やはり窓から心地いい風が入るのは良い。
「…ああ、仕事は無い…けっこう暇やな」
僕は暇なので、彼方とか愁の家に行こうかなと検討する。まぁあいつらどうせ暇だしいいか。
「…そういや今日何日だ?」
僕はカレンダーを見る。今日は六月七日。僕が転校してからちょうど二ヶ月経った。(学校名言ってなかったな…転校する前が県立平塚中等教育学校で、転校してからは横浜サイエンスフロンティア高校だ)ちなみに主は全然違うところの学校だぞ
「…ふぁー…眠い~」
昨日は夜に事件が起きたため徹夜で仕事を終わらせた。だから恐ろしく眠いのだ。ましてや今日全然寝てないんだよなあ……最近仕事のあとは眠れないので、今日は、というより今日も眠れてない。
「…そういや、五月雨丸を研がないと…」
昨日の戦闘でけっこう五月雨丸を使ったので、刃が若干刃こぼれしていた。ちなみに死人は居なかったため、血や脂は着いていない。多少負傷者は出たが全員駿河に撃たれたからだ。(可哀想に。)Numberにも負傷者が出たためちょっとヤバかったけどね。…ヤクザとの闘いだったが、まぁ組長は逮捕されたし、結果オーライである。僕は戸棚から包丁研ぎを出し、五月雨丸を研ぎ始めた。その間は基本的に無心で取り組んでいた。そうじゃなきゃ五月雨丸がまた刃こぼれするからね。ちなみに姉さんはその間も寝ていて、研ぎ終わり起こすときに恐ろしく苦労した。あぁ、この人マジで休日寝すぎでしょ…まあなんやかんやあって、僕たちはご飯を食べて愁の家に向かうことにした
「……で、何処へ行くの?」
僕は愁と彼方の家に向かい、二人を連れて歩いている(由香里は…居なかったんだわ…)で、行くあてもなかったため、今こうやって彼方が僕に聞いてきているのだ。
「…あはは…どうしよ」
僕は笑いながら行く場所を考える。
「…あそこでいいだろ」
愁がそう言う。僕は首を傾げた。姉さんも彼方も頭にクエスチョンマークを浮かべている。
「あそこって?」
僕は愁に聞いた。そしたら愁は
「小鳥遊組(たかなしぐみ)」
と答えやがった。
「…あそこ行くの?」
姉さんは怠そうに呟く。
「小鳥遊組?行こうよ!!」
彼方は大はしゃぎである。全く、困った人だ。
「…まぁ久しぶりに行こっか」
僕は頭を掻きながらそう言ったのであった
~小林圭の独白~
俺は小林圭。小鳥遊組の組長である。小鳥遊組というのは、普通の暴力団である。俺達はヤクには手を出さないし、抗争はしても死者は出さない。それがうちらのモットーだ。更にNumberの主要メンバー、Number.2の古い友人であるため、Numberとも仲がよかった。何回手伝って貰ったか覚えてないくらい共に闘った程俺達はNumberと仲がいい。でも、Numberには入らない。今の仲間達とヤクザのシノギをやるのが楽しかったのだ。Numberはどんだけ強くても事務仕事はやる。俺達はNumberに入って義務の仕事をやるより、自由に働きたいのだ。更に俺は人の下につくのは嫌いだ。だから俺はNumberの管轄には絶対入らなかった。
まぁそんな平和な小鳥遊組でも、遂に若い奴がヘタこいてしまった。なんと強盗をやっちまったのだ。そのせいで俺達は捜査されている。俺は何もしてない。何も知らない。俺は即その若い奴に指を詰めろと言い放った。しかし、手下の一人が止めたため、組を追い出すだけにした。そしたらなんと、俺の他の手下がやった、と思いっきりサツにホラ吹きやがった。ったく、あいつ次会ったら絶対指詰めてやる……ってまあそんなこんなで今思っくそ家宅捜索&職質を受けている。ああめんどい。俺は一度も歌った(自白するということ)事がなく、それが俺のモットーであった。俺に非が無いなら、事実を言ってあとは沈黙を守る。
「黙ってんじゃねぇよ!!!」
警官が怒鳴るが、そんなのお構いなく、俺は沈黙を続けた。俺は黙る。小鳥遊組は俺が守るんだ。てか何故俺は小鳥遊組のアジトで職質受けてるんだよ……ったく
俺は沈黙を破ることにした
俺は大きくため息をつき、
「貴様達があんなクソ野郎の言葉信じてんのが悪いんだよ」
俺は舌打ちする。まずまず戦闘で負けるはずないから大丈夫だろう。俺は産まれてこのかた戦闘しまくったが基本的には負けない。大丈夫だろう。
「…てめぇ立場わかってんのか!」
警官が台パンする。
立場?冤罪を押し付けられてる俺の方が上だわ。
そうやって泥の職質を延々続けていると、
「……圭、お前何したん?」
前から聞き覚えのある声がした。前に共に戦った戦友の声が
「……お前、なんでこんな時に来た?」
俺はそいつを見ないようにしながらそう聞く。
「暇つぶし。」
そいつは何気なくそう言いやがったのだった。
「なんで職質受けてんの?」
僕は圭にそう聞いた。
「…濡れ衣だよ」
僕は圭の回答にとてもビビった。
「……彼方達を外に置いといてよかったわ」
僕は頭を掻きながらそう言う。
「…ったくどこの馬の骨ともわからんやつが…俺の遊びを邪魔しおって…」
僕は思わず口調を変えてしまう。
「だっ、誰だ!」
警官は僕に銃を向けてきた。
「…俺に銃は無効さ。な~に。俺はNumberのやつだよ。小鳥遊組のこいつと仲良いんでな。遊びに来たんだ。で来たらこのザマ。ったく、お前らヤクザを信用しろよ……」
僕は呆れてため息が出る。
「…で、そのヘタこいたやつは誰?圭」
僕はNumberと聞いて硬直している警官を尻目に圭に聞いた。
「…和田恵一。そいつが俺に濡れ衣かけたやつだ。」
「了解した。このザマ、僕がどうにかしてみせるばい。」
「…頼んだぞ」
「僕を誰だと思ってんだ?……世紀のNumber.2様やぞ」
僕は口角を上げ、その和田恵一とやらをしばき倒す計画を考えながら彼方達の元へ行くのだった
「……ったく、圭ってやつはこんな時に迷惑かけやがって……」
僕は地団駄を踏む。
「…圭に何が起きたのよ」
彼方が不思議そうに聞いてくる。まぁ僕がキレてるし仕方ない…か
「実はな」
僕はさっき圭に説明されたことをそっくりそのまま話した。
「…は?」
愁は口をぽかんとさせ、姉さんは無言で口をつぐみ、彼方は下を向いて俯いていた。…あ~あ、その和田ってやつめんどうごと作ったなあ……
「ってことでそいつ特定してシバく。」
と僕は宣言する。三人は顔を見合せたあと、こくこくと頷いた。
「まぁ今から特定するからお出かけ中止かなあ…てか行く場所無いし特定次いでに雑談するか」
僕はそう提案した。彼方は「雑談するんならいいわよ」といい、愁は「特定してやらあ……」と言い、姉さんは「シバキ倒してやる……」と言っていた。あれ待ってまともな返事したの彼方だけ???その他の二匹唸り声立てて殺意剥き出しにしてシバキ倒そうって呟いてるんですがそれは…まぁいい意気込みか。…一体そうなのかなあ?まぁ、なんでもいいや。てか正直僕もキレてるからなあ……なんてったって圭が迷惑蒙ってるし…てか小鳥遊組崩壊の危機だわこりゃ……
「まぁ圭が沈黙を保ってくれるなら…これで特定はできるか……」
まぁ結局時間は圭に任せられる。圭が沈黙を保たないなら時間ないしなあ……
ちなみにこの後和田恵一の件を解決した(話し飛んでるけど、ここ別に面白くないしいいよね)僕らは普通に帰宅していた。え?和田恵一はどうしたって?察にぶち込んだわ。これで圭の罪は晴れるだろう。
さあさあこれにて小鳥遊組崩壊の危機は脱却と。さあ久しぶりにほのぼのLIFEが送れそうだぜ
九話 Summer vacation~First Helf~
「起立!礼!」
僕は一学期最後の礼をする。これで一学期終了。夏休みだ。え?成績?
三段階の中でオール3だ当たり前だろ
てか姉さん酷かったな……オール1て……まぁ仕方ないのか?あのアホ姉は……まぁ過ぎたことは知らん。それが僕のモットーだ。え?恵?お前マジでぶっ飛ばすぞ?
「やっと夏休みや~」
僕は思い切り伸びをする。今日は快晴。只今の時刻10:45。高校一年生が帰る時刻は11:00のためあと十五分は暇なのだ。ってことで僕は愁の席へ向かう。
「愁~!」
僕は愁の背中を叩く。しかし愁は反応しなかった。机に突っ伏してる。耳を澄ますといびきが聞こえる。この人まさかだけど寝てんの?嘘やん……僕暇なん?十五分?マジで?彼方他の友達と話してるのに?姉さんはいつも通り寝てんのに?僕Alone(孤独)なの?(唐突な英語)
まぁそんなこんなで僕は結局愁の、席で寝たんでこの話終わり!
「海行きましょ海!」
家に帰った僕は、姉さんにそう言われた。いや急に海って言われても…マジで言ってんのこの人?
「いや別に良いけどどこ行くん?」
「いつものロングビーチよ」
なるほどね。昔よく行ったあそこの海か。まぁ良いでしょ。てか何人で行くんだよ
「彼方と愁は?」
「一緒に行くに決まってるじゃない」
はい。断言されました。マジで海行くなら有給取らなきゃいけない件について…一週間でいいか。一年に一ヶ月未満だし。あれ、そういや左肩の傷で3週間使っちゃってるやん…あ~二日で有給取るか…あと水着の新調もしなきゃダメやん?交通手段考えなきゃじゃん?で愁と彼方と予定合わせるじゃん?どんくらいかかるんだよ()
「…僕有給どうすんの」
僕はため息をつく。
「はぁ?左肩の傷の件は有給じゃないに決まってるじゃない」
ちょっとまて。
「え、あれ有給じゃないの?」
僕は驚愕する。てか有給じゃないとか初耳なんですけど?!いや…王牙さんは有給取るって言って…ああ、そういえばあの人病人とか怪我人に対して有給としてカウントしなかったなあ。優しすぎるだろ……マジで。王牙さん、敵に情けはかけないで欲しいけどなあ…僕は心中で呟いた。いやマジで……あの人優しすぎるのが玉に傷……なんてね。
「…もちろん行くよ。いもけんぴの所なら楽しめるだろうし」
「やったー!ちなみに日程は…」
姉さんは意気揚々としながら僕に予定を告げる。最初から無理やり行かせるつもりだったのかよ……ったくこの姉は……!変なところは用意周到だな!!!クソが!!!……まぁ優しいし役にもたつし頼りになるし…姉さんは素晴らしいと思う。僕はどーせエゴイストだし姉さんには勝てないよ。純粋に人を助けたいという姉さんには。僕は自分のために人を助けるからかぁ
あっ、口が過ぎたな
ともかく僕は、というか僕達は2週間後と決まっているビーチへのバカンスを楽しみにするのだった。
「久しぶりだな……この海」
ここの海のビーチは温泉街で、近くに愁の実家がある。で今は僕、姉さん、由香里、彼方、愁でビーチに来ている。この海は昔みんなでいもけんぴを食べた所なので隠語で僕達は「いもけんぴ」と呼んでいる。で今僕は水着に着替え、ビーチに三畳のレジャーシートをひいて寝ていた。着替え終わったのは僕だけなので、僕は日焼け止めを塗り、残りの四人を待っていた。ちなみに日陰に居る。それでも暑いし、潮の匂いがする。やはりいもけんぴは素晴らしい場所だ。昔来た時も感動したもんだ。こんな素晴らしい所が愁の実家の近くにあるのか、と目を輝かせていた。
「昔の思い出も良いもんだなあ」
僕が回想をしていると
「お待たせ~」
と彼方が来た。
「よっ。遅かったね」
「…遅くて悪かったわね」
彼方は顔を赤くしていた。やはり彼方をいじるのは楽しい。(まってなんか僕ドSになってない?)
「あはは。まぁ残りの三人はどうせアイスでも買ってるんでしょ」
「えぇ、そうね…あの人たち暑い暑いってヒーヒーしてたからねw」
「早いなあwここに海の家があってよかったねえw」
「あの人たち暑がりだからねえ。」
「流石だなあw」
「やっぱ理奈はチョコで愁がバニラでお姉ちゃんがストローベリーなのかしら…w」
「小学校の時と一緒じゃん」
「やめて…思い出させないで…」
「あははw」
「てかやっぱ潮の匂いが良いわねぇ~」
「そりゃ良いさ!僕の最高のお気に入りだよ」
「海なんて久々だわ~」
とまぁ、僕は彼方と雑談をしながらアイスを買いに行った残りの三人を待っていたのだった。ちなみにあまりに遅かったので僕達も飲み物を買いに行きましたとさ。
「お待たせ~」
「待たせたな」
「遅れてごめ~ん!」
で僕達が話していたらいつしか三人が来ていた。何故かアイスが握られていなかった。この人たちまさかもう食ったのか?
「……もう食べたの?」
彼方がにこにこした顔で問う。
「え、そうだけど……あれ、地雷?」
「…すみませんでした」
「何分待たせとんじゃわれえ!」
彼方がキレながら愁の肩を掴んでブンブン振り回していた。いや怖ぇよ彼方さん。僕は持ってきたスイカをムシャムシャ食べてた。あ~美味しいんじゃ~
まぁ彼方が暴れてるのを片目に僕はスイカを食べていたわけだが食べ終わったんで持ってきたバレーボールをオーバーで投げる。そしたら何故か今土下座している愁にぶち当たった(ちなみにわざとである)で球を拾ってサーブで姉さんにボールをぶち当てる
「少しは反省しなさい。」
僕は温かい目でそう言った
「「「はい」」」
三人はハモってそう言うのだった
「冷たぁい!」
「冷たっ」
「冷てぇ……」
姉さんと愁と由香里は海に足をつけて冷たいと言っていた。迷惑極まりないわぁ…てか真夏の海ってそんなに冷たいか???ったく、この人達は……
「早く来なよ~」
彼方が声をかける。
そんなこんなやってるとヒーヒー言いながら三人がやってきた。
「一キロ泳いでくれば~?」
僕は鬼のようなことを言った。彼方はクスクスと笑っており、三人は震え上がっている。なんでそんな僕を鬼みたいな目で見るの???まぁこの後普通に海で楽しんだけどね。(別にエロ同人誌みたいな展開なんてないぞ?お前ら期待してたやつ絶対居るだろ???)
海で遊ぶのは楽しいなぁ……と思える一日だった!
海に遊びに行った日から2日後、僕達はショッピングに行くことにしていた。正直何買いに行くんだ?と思ったが、なんか服買いに行きたいらしい(僕欲しい服ないんですが?!)まぁ服以外にも色々買いに行くらしい(色々ってなんだよ…)あとランチも行くらしい(多分僕の奢り)なんか色々酷いなあ……何となく僕はめんどくさいと思っていた。てか海行ってから二日後だぞ?!なんでそんなしか経ってないのに大型ショッピングモールに来てんだよ?!少し休ませて?!(まぁ有給一週間しかないからなあ…はぁ……また有給取るか…)ちなみに今はなんかみんな各々好きな服を選んでんので、僕はベンチで待っていた。でもこの服屋には服以外にもネクタイ等もあるらしい。…ネクタイが最近ボロボロになってきたと感じている僕はネクタイを二着買うためにネクタイを選ぶことにした。そうしてネクタイコーナーに来て、ネクタイを選び始めた。けっこうな種類があるため、時間がかかりそうだ…はぁ…で、僕好みのネクタイを探してると、
「お前もネクタイ買いたかったんだな」
後ろから急に背中を叩かれた。この声といい背中を叩く強さといい、この人物は
「…なんだよ、愁」
愁だろうと考えた。
「俺もちょうどネクタイを選びに来たんだが、そこに疾風が居たもんでな」
「背中を叩くな。」
僕は感動の再開のようなテンションの愁と裏腹に恐ろしく低かった(眠いのだ)眠いったら眠いんだよごら
「てか愁もネクタイ選びに来たんだな」
「…ボロボロになったからな」
どうやら愁もくそボロになったらしい。まぁ戦闘ばっかしてたからなぁ…仕方ないか。
「おっこれ良いじゃん!」
僕は赤と青のチェックのネクタイを見つけた。値段は…いや高っ。24,000だってさ。あはは笑えねえ。まぁ24,000なんて払えるか…ったくネクタイで二万も消費するなんて…まぁ耐久性も高そうだし、品質も良さそうだし、よしとしよう。
「たけぇ!」
隣で愁が絶叫する。どれどれ、と値段を覗いてみたらなんと40,000円。いや高すぎて草
「草」
「草生やすなよ……」
「僕24,000のやつ買うわ」
「俺もそれにしよ…はぁ…」
ブランド物とは、とてもめんどくさいものである。 僕は心中でだからブランドは嫌いなんだと思う。てか今思い出したけど、僕ネクタイ以外にパジャマも無かったんだわ…今夏やし、薄いパジャマ探そ…
「僕パジャマコーナー行くけど愁来る?」
僕は愁を一緒にパジャマコーナーに行こうと誘うが、
「俺は他のコーナー行きたいから、すまんが行けない」
と返ってきた。
「了解した。じゃあまたあとで」
「またな~」
僕は愁と一旦別れ、パジャマコーナーに向かうのだった
(…ここは高い物しかないのか?)
僕は心中で苦情を述べる。いやパジャマ一着8,000円って何事?高いとかいう話じゃない件。あ~辛い
「何故僕の好きな白の無地が無いんだ???」
ここはブランド物なのに白の無地は無いのか?頭狂ってるだろ。と思いながら探していると、赤の無地があった。
「無地あるじゃん」
白の無地があるのを期待するが、悲しいことに期待は裏切られ、無地は青と赤敷かなかった。いや怨むわ。しかも上下合わせて12,000…違う店で買えばよかったわ。そういや言うの忘れてたけど、彼方と姉さんと由香里は違う安い店に行ったらしい。ああ服屋なんて使わないから高い安いとかわからねぇよ…女は服屋にちょくちょく来るらしいから安いところがわかるらしい。凄いよな。僕はそこまで服屋来ねぇんだよぉぉおおおなんで女は服屋に良く来るんだよおおおおかしいだろおおおおおお
とまぁ心中で発狂するが、どうせ白の無地なんて無いと吹っ切れたので僕は諦めて青の無地を買うことにした。いやダサい…と途中で赤の無地にしたけど!まぁ買いたいもんも買ったしさっさと愁と合流して、彼方と由香里と姉さんの居る所へ行かなきゃ…と思い、愁に僕は電話をした。
「おお、疾風、今どこだ?」
電話に出てきた愁は開口一番そう聞いてきた。
「レジで金払って、今店の前」
「さっきネクタイ買った店だよな?」
「うん」
「了解。俺も近くにいるから、すぐレジ済ませて行く。」
「わかった。」
愁もまだ同じ店に居たらしい。で、レジ済ませてこっち来るらしい。で僕は待っていた
「お待たせ」
愁がきた。
「おかえり。今から彼方達と連絡とる」
「了解」
僕は愁と事務的な会話をした後、彼方に電話をした。
「彼方、今どこだ」
「お姉ちゃんと理奈と一緒に最初の店にいる」
「了解。僕は愁と一緒に今から向かう」
「わかったわ」
僕は彼方との連絡を終え、愁に彼方達の場所を告げ、さっさと行くことにした。
「にしてもお前も彼方好きだよな~」
急に愁がそう話しかけてきた。
「お前しばかれたいの?」
僕は思いっきり睨んでやった
「そう怒んなって…でも少なくとも彼方は疾風のこと好きだろ」
「友達としてだろ?」
「さあな」
愁は終始ニヤニヤしていたので、
「覚悟!」
僕は水月に膝蹴りを叩き込んでやるのだった。
「「すみませんでした」」
僕と愁は彼方達に頭を下げていた。あの後愁が気絶したため、僕は65キロある愁の体をおぶって彼方達のところへ向かったため、恐ろしく遅れてしまったのだ。そしてたいそう怒られたので今頭を下げている──────────という事だ。誰だよ膝蹴り叩き込んだやつ…
「いやマジでなんで気絶してたん…」
由香里が呆れた口調で聞いてくる。正直くだらな過ぎたし、彼方の前で話すのも恥ずかしかったので二人で一緒に「ぶつかったんだよ」と嘘をついた。我ながら酷いなと思った。(実際愁に睨まれたしな)ああいとをかし
「まぁ気にしてないしいいわよ。これから気をつけてね」
彼方が優しい声音で言う。(若干呆れた顔してたけど黙っておこ!)てか目が笑ってない気が…いやそれは姉さんだわ
「てか貴方達何円使った?」
彼方は急にそう聞いてきた。
「ちなみに私は五千円よ」
姉さんはパンパンの袋を出してきた。…え待ってこれで五千円?!差が酷い……
「36,000円」 「40,000円」
僕達はハモって言う。すると
「「「貴方達どんな店行ったらその量で合計76,000円かかるのよ!!!」」」
と三人に怒鳴られ、服選びのいろはを教えられた。いやめんどくさすぎて草も生えなかった。トホホ、今日はとことん不幸だ、と自分のアホさと彼方達から溢れ出るオーラに震え上がりながら僕はそう心中で悲しく言ったのだった。ちなみにこの後、服屋のいろはを叩き込まれた上、さらに僕はネクタイとパジャマ、愁はネクタイと私服しか買ってないのがバレ、罰として更なる女子達の買い物に付き合わされ、帰る時には空はオレンジ色に色付いていた。で家に帰ると、三日月が空を覗いていた。もう遅い時間だから、ということでみんな僕の家に泊まることになった。僕は綺麗だなあと考えながらフラフラになった足を動かし、家のドアを開けた。そして疲れた体のまま夕飯を作り、気づけば時計は神も認めた四十五度を作り上げていた。飯が食い終わった時には時すでに八時半でしたとさ。こっからは僕はぶっ倒れて皆が風呂入ったあとに入ったという始末。もはや皆元気すぎて僕はさっさと寝たが、なんか皆は深夜二時くらいまで騒いでたらしい。いや頭おかしいだろ僕十時に寝たぞ。そういやあの人たち夜行性だったわ…と、僕は朝起きて朝食を作りながら由香里に昨日の話を聞いたのだった。
十話 Summer Vacation~Letter Helf~
夏休みも後半に差し掛かった。正直お泊まり会ばっかしてた記憶。てかずっとお泊まり会してたけど、なんかお母さんとお義母さんとお義父さんとユキさんが来るらしい。いやマジで?と思いながらその三人が来る日には彼方達とのお泊まり会も入れ、僕は歓迎の準備をした。てか酒買わなきゃあかんやん。これは王牙さんからもらうか…五万で買えるかな?そういや家計が最近若干苦しいんだが……いや多分ほとんどは昨日の買い物のせい。あとお泊まり会しまくったから食材費がヤバかったのだろう。僕はヒーヒー言いながら姉さんとお母さん達が来る日に備えて準備を進めていたのだった。ちなみに部屋は若干足りなかったので僕と姉さんと愁は同じ部屋で寝ることになった。いや狭すぎてわろうわ。ちなみに今までは愁と僕が同じ部屋なだけでみんなそれぞれの部屋で寝ていた。なんかくそ広くねえかこの家。まぁいうて部屋は七つしかない。まぁここには姉さんの研究部屋もあるから、そこで寝てもいいんだよなあ……マジで僕はヒーヒー言うのだった
~霞雨楓の独白~
久しぶりに疾風の家に行けることが決まった時、私は発狂するほど喜んだと思う。まあいうて四ヶ月ぶりだが、それでもとても嬉しかった。いや正直葵と聖菜とユキと愁君達と疾風の家に泊まれるのはマジで幸福だと思う。優しいいい息子になったなあとしみじみ感じた。さぁ疾風の家に行く時のために服選びとお酒を選ばなきゃ…てか私今何歳だっけ??……37歳だわ。まだ四十路手前かぁ…まぁそろそろ体力落ちてくるだろうし今のうちに楽しんでおこう。私はそう思った。さぁさぁお酒はどこかな~
~霞雨聖菜の独白~
「…僕達疾風の家に泊まって何すんの?まぁ疾風の家に泊まるのはクソ久しぶりだけど」
僕は葵にそう問うていた。いやもう疾風の家に行くのが久しぶりすぎて泣きそうなんだが葵がおおはしゃぎしてるのでなんか気持ちを葵に持ってかれた気がして…まぁ嬉しいのは変わらないが!いや当たり前だろ楽しみじゃなかったらこんなこと葵に聞かねーっつーの
「何する…って疾風達と雑談するんじゃないの?」
葵は首を捻りながら言ってきた。まぁ普通の答えだわな。
「まぁそうだよな…」
「そんなことより疾風の家行けるんだからもっと喜びましょうよ!」
マジで葵はなんでこんなはしゃいでるんだ?まぁ楽しみなのは僕も同じだけど、流石に元気すぎて……
「葵も元気だよなあ」
「私は永遠の三十歳だもん!」
僕がため息をついても葵は元気良くそう返してきた。いや葵お前もう三十五でしょ…と心の中でツッコミを入れる。まぁ口に出すと命が危ういので心の中だけに留めている。葵マジで怖すぎるんだよなあ…
「ともかく、疾風の家に泊まりに行く日は近いんだから、準備進めるよ」
僕は葵に呼びかけたが、葵は
「酒と洋服以外終わってるわよ」
と言ってきた。…この人元気なだけじゃなく仕事も家事も両方こなすから凄いよな…と僕はいい嫁を持ったと思ったのだった
~神無月疾風視点~
「神は僕を殺す気か?」
僕は苦情を述べる。お泊まり会は今日だ。で昼ご飯からここに滞在するみたいなので今速攻で昼飯を作っている。正直クソ疲れている。
「私も手伝おうか?」
意地でも一人でやる僕に姉さんが呆れた口調でそう聞いてくる。いや姉さんは休んでろっつっただろ…と僕は心中で言い、建前として
「大丈夫だよ」
と投げかけた。いや姉さんさっき食材の仕入れでやばいほど疲れてるのになんでこんな元気なん?僕同じ年齢なのに疲れやすいなあと思ったがすぐに原因がわかった。多分前行った海とか色々の準備で体を酷使していたからだろう。僕の心身はけっこうボロボロだった。まぁ僕、姉さん、お母さん、お義母さん、お義父さん、愁、彼方、由香里、ユキさん、総じて八人分の昼飯を作ってるから疲れるのは当たり前…か。八人ってそこまで苦労しないと思ってたが、前作っていた五人分の倍近くあるのでクソ辛かった。ちなみに昼飯は麻婆豆腐にした(みんなで訳あって取る中華料理の方式にした方が正直クソ楽だった)で、麻婆豆腐八人分なのでけっこうやばい量だった。まぁ麻婆豆腐以外にも豚肉の生姜焼きとか一応副菜は作っている。サラダも作ってるのでまあ負担と時間はヤバかった。
「神は僕を殺す気か?……」
僕はそう神を恨みながら呟いたのだった
「ただいま~」
「ここあなたの家じゃない件」
お母さんが普通に自分の家発言しながら家に上がってきたため僕はツッコミを入れる。この人何ちゃっかり……お義母さんとお義父さんは姉さんと話していた。姉さんは心底楽しそうだ。ちなみに愁と彼方と由香里はまだ来ていない。あの人たち何してるんだ???今もう十二時……いやはよ来いよ
「久しぶりね~疾風」
お義母さんが近づいてくる。
「久しぶり。」
お義父さんも近づいてくる。ちなみにお母さんは今姉さんの所へ向かった。
「久しぶり二人とも……って前左肩損傷したときの報告以来だからけっこう最近にあったよね?」
「「あはは!確かにそうだね」」
僕がツッコミを入れるとしっかり肯定してきた。いやこの人達認めたよ。久しぶりじゃないって認めたよ。 僕が怪我した時の話認めたよ。
「……怪我の時…まぁ嫌だったなあ」
はぁ、と僕がため息をついていると、ピンポ-ンと聞きなれた音がした。
「はいはい今行きますよ~」
僕は玄関に向かい、ドアを開ける。
「「「来たよ~」」」
予想通り愁と彼方と由香里だった。ほんと、この人達元気だなあ。
「上がって~」
「「「お邪魔しマース」」」
三人が家にあがり、手を洗ってそのままご飯を食べた。
「そういや疾風、高校では彼女できた?」
急にお母さんが聞いてきた。僕は思わず吹き出してしまった
「できるわけないじゃん」
僕が笑いながら言うと、
「「「「「「「貴方イケメンだから一人は居るもんだと」」」」」」」
と、その場に居た七人が同意した。この人達死にたいのか?僕は思っくそ不機嫌な顔を奴等に向けた。てか実際不機嫌な件。ぶち〇したいわ
「…彼女ねぇ…いつかできたらいいな?」
僕は半ギレしながらそう言った
「冗談だってw」
お母さんが言い訳をする。…冗談でも許せる冗談と許せない冗談があるんだよ。と心の中でキレながら僕は顔ではハハハ、と笑っていた。(多分目は笑ってなかった。)我ながら怖いな。と思考を巡らせていると
「そういや高校での武勇伝聞かせてよ!」
とお母さんが言ってきた。お義母さんもお義父さんもユキさんもうんうんと頷いていた。武勇伝って……あれ待ってデジャブ半端ないんだけど(三話:翡翠の刃参照)ねぇなんでこの人達愁と同じような質問してくるの?てかお義母さんとお義父さん、ユキさんに関しては
「中学の時のも聞かせて」
と言わんばかりだった
「……中学まずクラスメイトへの顔面骨折、靭帯損傷、ヤクザへの脳震盪とくも膜下出血、先生へアキレス腱断裂、先輩への脳震盪等等…高校の時はヤクザの組の破壊、虐めっ子の退学、小鳥遊組の一人を刑務所にぶち込み……」
とまぁやばいほどの黒歴史を語った。正直アホらしい。まあ皆さん「いかにも疾風らしい」という顔をしていた。
「……貴方達は私の黒歴史を聞いて何が楽しいんだァァ!!!」
僕の怒りは頂点に達し、大声で雄叫びを上げるのだった。
ちなみにこの後夕食を取ったり、恋バナをしたりと色々あったが、主の疲労と日記の付けずらさから省略するとしよう。夏休みの思い出はこれで終わりだった。
まぁ色々濃い夏ではあった。(まあ秋の方が濃い生活だったけど)久しぶりにお母さん達に会えたからもうよしとしよう。僕的には満足できる夏だった
二章 終
十一話 Love Letter
僕的には最悪の目覚めだった
今日は九月一日。そう、二学期最初の日だ。めんどくさすぎる。まったく、二学期に入ったらどうなるのやら
僕は起きて早々ため息をつく。何だか久しぶりに姉さんの朝食を朝早く起きて作る気がする(夏休みは朝食はなるべく各々で作るようにしていた)現在六時半。変な時間に起きてしまった。とりあえず弁当を作ろうと決めた。(朝食は十五分程度でできる)昼飯には肉を焼こうと考えた。……なんか、弁当のことをこんな考えたのは久しぶりである。新学期だから仕方ないか、と僕は片付ける。正直めんどくさいかもしれない…いや、前の地獄の連続お泊まり会よりはマシか…まぁそんなこと考えながら僕は弁当の肉を焼き、それを詰めるのだった。
「これで、始業式を終わります」
四分にわたる校長(お義父さん)の話を終え、諸連絡を伝えられた始業式は、今終わった。いや~校長(お義父さん)の話は要約されてて短いし言いたいこと伝わるから良いな~。そして、話もおもしろいので、よく生徒間から笑いが起きる。やはりお義父さんは素晴らしき校長だ… そのカリスマ性には惚れ惚れする。しかも人事も完璧って…マジで凄い人だよな…過去に何があったらこんな人間になれるのやら。僕でさえこんなクズ人間になったから、相当いい教育をされてきたのだろう。僕もいつか子供ができたら…そんな教育がしたいなあ。まぁ自分が妻ができるような人間では無いとは自覚してるけどね。あれ、おかしいな目から汗が…
とまぁそんなクソくだらないことを考えていると、
「高校一年生、教室に戻りなさい」
と、生徒会長からの指令がかけられた。全く朝会をしたアリーナから教室までどんだけ苦労すると思ってんのこの人達。なんて心の中で苦情を呟く。
下駄箱なう(なんとなくJK語使ってみた)僕はアリーナから上履きに履き替えるために下駄箱に居た。。僕は疲れたためため息をつき、下駄箱を開ける。
「……は?」
下駄箱開けたらなんかあるんですけど。紙入ってるんですけど。しかも二通。誰だよ空き巣でもきたん?てか展開早くない?朝会抜け出したやっおんの?え?いや怖すぎて震えるんだけど。周りからどんどん生徒が減っていく。予令が鳴る。本令が鳴る。それでも僕は硬直していた。中身を開きたくない。なんかハートで彩られてるし。怖すぎて草も生えんわ。
「…開けてみるか」
僕は恐る恐る開けてみることにした。一通は『昼休み、話があるので屋上へ来てください』と書いてあり、もう一通目は、『放課後、話があるので屋上に来てください』と書いてあった。あ~ラブレターですか?二つともラブレターですか??僕モテないのだけど?てかなんか三章に入って急に展開早くね?(メタいメタい)マジ三章すぐ終わるんじゃねぇの???僕的には最早疲れたんだが。てか一番今日が疲れてるわ。なんでラブレターなんてあるんだよおかしいだろ。とまぁどうせ暇だし昼休みまで屋上で寝るか(ユキさんの授業あるけど…まいっか)今日位いいよね?一応成績全部3(最高は3です)だから別に授業なんて…まぁ雑念があると寝れない。これから三時間寝るのだから、無心になって寝よう。そうしよう。そして午後の授業は参加しよう。僕は一日のプランを決め、上履きに履き替えてとっとこ屋上へ歩き出した。屋上に着いた僕は、さっさと眠りにつくことにした。ああ、今日も朝日が綺麗だ…
「な~に寝てんのよ」
誰かに額をツン、とつつかれ、僕は目が覚める。すると聞きなれた声が上から聞こえた。なんでこの人ここに居るのかな……周りを見渡すと、お昼を食べているカップルが発生していた(イチャイチャ目障りだから殺したい)まぁもう昼休み、ということなのだろう。今日は良く寝たなあ…いやそんなことよりも
「まさかあの手紙の書き主姉さん?」
僕は姉さんに確認をとった。そしたら姉さんは頷いて、無言の肯定を表していた。僕は頭を抱える。なぜ姉さんがあんなまどろっこしいことするんだ……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙コイツコロシテヤル
「まぁNumber関連だから誰にもバレたくなかったのよ」
姉さんは珍しく僕に真面目な事を言った。いや、どんだけ重大な任務だっていうんだよ…
「…次の任務のこと?」
僕はため息をつきながら姉さんに聞いた。すると姉さんは僕の予想とは裏腹に、
「いや、圭のことについてよ。」
と、小鳥遊組総長の、小林圭(八話参照)のことについて話があるらしい。え待って圭になんかあったの?
「…圭が遂にNumberに入るとでも言うのか?」
僕はマジで頭が痛くなってきた。なんでですかねぇ…
「いや、圭の話っていうのは冗談」
こいつ殺そうかな。
「新しい任務なのね。結局」
僕は盛大なため息をついた。姉さんも肯定している様子だった。いやどうせ三章ではその任務しないんだし(メタいメタい)まぁ四章なのかそれとも裏でやるのか…とそんなこと思っていたが心配は無かった。なぜなら
「次の任務は…紅葉の時期よ」
そう、次の任務は何ヶ月か先なのである。しかも、
「……Dreamerとの、最終決戦と見たわ。」
僕は跳ね上がった。え?Dreamerとの最終決戦だと……?!僕は目を剥いた。そして硬直してる僕に姉さんは紙を突き出してきた。
「……何これ?」
またラブレターですか?まぁそんなはず無く、次の任務の話らしい。そしてその紙を開くと……
「……なに…これ……」
その紙に書いてあったことは、
''Dreamer is dying. K.A. February Tuto fall and Number''
と書いてあった。何これ……てか、
「…2月、つと、秋と、Number……どういうことだよ」
僕は頭を抱える。しかし、何故かこの紙の真相が少し見えた。姉さんはまた無言で紙を突き出してきた。
''Base Tokyo 五角形 近く building''
これはすぐ意味がわかった。多分拠点の住所だろう。そして姉さんはため息をつき、また紙を渡してきた。
''―・・・/・――・・・/ ―・―・・/―・・―― /・・――/・・――・・ /――――/―――・/――・―・― /・―・―・/――・―・・・/・――・''
なんだこれは……頭がおかしくなりそうだ…しかしモールス信号ってことだけは解った。まぁ、放課後まで考えてようかな…てか途中の意味わからん単語なり…くだらんミステリーも甚だしい。小説みたいな事するなよったく…あほらし
「ありがとう姉さん。とりあえず考えておくよ」
姉さんはため息をつき、
「まぁ、任せたわよ。」
と、ご飯を食べに教室に戻っていった。僕も立ち上がり、屋上を出た。何故かって?察しが悪いなあ。
「すみません、ユキさん。仕事の関係で今日は午後も授業に参加しません。」
僕は職員室にてユキさんに頭を下げていた。ちなみに事情は説明している。あんな紙見せられたらなあ…ユキさんも困惑していた。
「…なんか最近仕事多くない?」
ユキさんはそう聞いてきた。いや正直Dreamerとの最終決戦だから仕方ないんですが。Dreamerだぜ?もう倒すために学校休んでもいいくらいだ。
「…Dreamerとの闘いも大詰めなので」
僕は頭をポリポリ掻きながらそう答える。いやさ?Dreamerとの闘いは、第五階層の人達が頑張ってくれてるのよ。食い止めてくれてるのよ。凄いよねあの数に対抗するの(僕も偶に参戦していた)まぁこんな余談はいいんだよ。
「そう…くれぐれも身体には気をつけてね。もう行っていいわよ」
ユキさんは、そう言った。僕はお辞儀をし、その場を離れようとした。すると肩に手をかけられた。僕が後ろを向こうとする瞬間、後ろから
「死なないでね」
と、声が聞こえた。…ああ、死なないさ。たとえ
『僕が消えようとも』
「…本当にどういう事だよ…」
僕は頭を掻く。いや、モールス信号を調べながらでも意味がわからん。何がどうなってるんだ。一応モールス信号の方は解いたが、意味がわからない。…正直仮説は思いついてるのだが、確証は無いのだ。仕方ないんですよ。
「それに…一枚目のDreamer is dyingの価値が、ある必要性が感じられない…」
僕はますます混乱してきた。正直解ける気がしない。これは骨が折れそうだ。二枚目に関しては、解けた。
「…東京の五角形なんていったら、アレしかないよな…そして、その近くのビル…か」
僕はメモ帳にペンを走らせる。腕も痺れてきた。目の端では、空がオレンジ色に色づく様子が見えた。それでもまだわからない。いや、解りたくないのだろう。真実というのは、知らなくていいことだろうか…僕は頭が狂いそうだ。何故こんな事になったのだ…二枚目は段々検討がついてきた。
「…2月…という事は、如月か…」
如月という苗字を思いつき、僕はギョッと目を剥いた。実は如月というのはお義母さんの旧名だ。何故如月か、というのはすぐ解った。…わかりたくない事実ではあったが。わかったものは仕方ないのだ。僕は三枚目を解き始める。そんな時には、六時限目の終わりのチャイムが鳴った。放課後になった…ということは
「あのラブレターの持ち主が来る時間…か」
僕は正直そんなことには目もあててないわ。仕事の方が大事だ。きっぱり断ってやる。なんか可哀想だなそれはそれで()てか、誰が来るんだろうか。結構気になってたりする。かわい子ちゃんかな?(あれ、キャラ崩壊してね?)クールな女の子だろうか。それともホモだろうか。正直だれでもいいんだけど。僕は顔より中身を優先するんだよ(それでも可愛いというだけで優遇される姉さんって…)そういや余談だけど、この学校には僕と愁の他に入った男子の人数は、この学校は中高合わせて三十六クラス、各クラス二人だから、なんと七十二人も入ってきたことになる。凄い数だ。まぁカップル成立も起きているわけで…カッコイイ男はモテるんだよなあ…ああ世界は無情
こんなこと言いながら僕は恋愛にあまり興味無いんだよね。あれ?僕何言ってるんだろ。てかなんだろう。目から汗が…(本日二回目)まぁそんな茶番をやってるうちにドアが開いた。中からはイケメン男が出てきた。いや怖すぎて草。え?ホモ?と思ったが後ろから頬を赤らめた女子がやってきた。制服の襟章のマークと色は…男が中の緑…中二か。で女が赤…中一?部活の先輩後輩の関係か?(うちの学校は赤が中一と高一、緑が中二と高二、青が中三と高三である。)またカップルかよ。と思ったが、今まさに告白するという場面であるらしい。何か女が男に告げている。僕の地獄耳によると、「好きです、付き合ってください!」と言っているそうだ。うわぁベターすぎて笑う。他に言葉無いのかよ。と思った今度は男が女に何か言っている。え~なになに「俺も好きだ。」と言っているらしい。なんだこのムカつくイケボ野郎は。てか僕が盗み聞きしてるの気づいてないの?この人達。アホ過ぎない?そして今二人の体格に注目すると、足が細く、背が高かった。…バレーボールか、バスケだろう。バスケ部にあんな奴いたか?まぁ僕は帰宅部だからそんなの知らないけど。僕も部活そろそろ入るか…適当にバレーボールで良いかな。中学の時やってたし。まぁ幽霊確定だけどなあ…あれおかしいな目から汗が(本日三回目)まぁ今耳を傾けてみると、「行くぞ、○○」と言っていた。(名前までは聞き取れないわ!!!)二人は手を繋いでいる。いやラブラブだなあ。そして途中一回キスをして、屋上から去っていった。正直僕はアホらしくなり、見なきゃ良かったと思う。後輩のあんなもん見せられたら精神壊れるわ。はぁ、しかも誰も来ねぇし…もう帰ろう。そう思い立った。すると次の瞬間、
「帰ろうとはいい度胸じゃない。」
と後ろから声が聞こえた。聞き慣れた、幼なじみの声が。僕はギョッと目を剥いて後ろを振り返る
「人の盗み聞きしてすぐ帰るなんて、私失望しちゃうわよ」
と目の前の女はつきながら、ニヤついた顔で言った。
「…ラブレターじゃなく、まさかお前からの手紙なんてな。」
僕はため息をつきながら目の前に居る彼方に向かって言った。
「…で、何の用でしょう」
僕は彼方に聞いてみた。すると、彼方は驚くべき発言をした。
「…その手紙は、ラブレターよ。」
彼方はそう言った。僕は驚く。なんだ、相手が違うのか?そう思い耳を傾けると、彼方は頬を赤らめながら、
「それは正真正銘、私からあんたへのラブレターよ」
と、僕に人差し指を指しながらそう言った
十二話 幕間~Dreamerができるまでの物語~
「なんなんだよ!!!」
俺は足踏みをする。イライラする…クソっ、クソクソクソクソ…なんで俺が左遷なんだよ…イライラする!!!俺は道の人目も気にせず近くのビルを殴る。…NumberからBlack Numberへの左遷が決まったのは四時間前。俺はNumberで密告によって左遷された。…無実の罪なのだ…俺は絶望した。二度とNumberには戻れない。Black Numberの男達は麻薬でもなんでもやる。Numberの管轄下では無いのだ。要するに
「用無しのクソ野郎が行くところ」
なのだ。イライラする。しかし、絶望に染まりまくる訳にはいかない。復讐だ。…復讐。Numberへの復讐。なんでもいい。時間がかかってもいい。Numberをぶっ壊す!!!そのためには内通者が必要だ。さらにBOSSの信任も得なければならない
「…めんどくせえ」
俺はBlack Numberのアジトへと足を運ぶのであった
「…てめぇが新入りか」
目の前のBOSSはそう聞いてくる。俺は首肯する。
「俺は如月真太(キサラギシンタ)、Black NumberのBOSSだ。」
目の前のBOSS、如月真太はそう言う。
「…俺は葉月翔真です」
俺は名前をBOSSに告げる。
「…葉月翔真…か…う~んいい名前だ」
BOSSはうんうんと首を上下に動かしながらワインを飲む。なんて陽気な人だ…
「君は、目標はあるかね?」
BOSSはそう聞いてきた。俺は
「Numberをぶっ壊す事です」
と、答えた。BOSSはふ~んと頷き、そしてニヤニヤしながら、
「それはBlack Number全体の目標だ。素晴らしい」
と答えた。俺は興奮して、
「ありがとうございます!」
と答えた。全身が熱くなる。仲間が居ること、それがどれ程嬉しいか、みんなわ
かるか?俺にはわかる。自分と同じ目標を掲げている組織に入れるということ。それは、生きる意味でもあった
「これからよろしく頼む」
BOSSが挨拶したので、俺は息を思いっきり吸い込んで、
「はい!!」
と答えた。
俺はBlack Numberに入ってから精一杯努力した。理不尽な先輩が居ても、辛い仕事でも頑張った。全てはBOSSの信任を得るため。Numberを潰すため。自分の目標に突っ走るため。 そうしていくうちに、BOSSの信任を得て、五年目、遂に幹部になった。
「ありがとうございます!」
俺はBOSSに頭を下げていた。
「いやいや、お前は素晴らしい人材だ。」
俺はBOSSに褒められ、俺はとても嬉しかった。全身が暑くなる気分だ。熱でもあるのかな
「…ありがとうございます。」
俺は言葉では反応しきれず、ありがとうございますと繰り返した。
「そこでだ。お前に1つ頼みたい」
BOSSは急にそう言ってきた。なんだ、頼みって
「…頼みとはなんでございましょう?」
俺が聞くと、BOSSは、
「お前に、この組織を独立させて貰いたい。」
BOSSは急にそう言った。…何故だろう。俺は全身に悪寒が走った。何故そんな事を、入って五年の俺に…
「…俺はそろそろ引退する」
BOSSはそう言った。何を言ってるのだ?この人は?何もわからなかった。いや、解りたく、なかったのだろう。俺は。でも、わからなくちゃいけない。
「…なんで、」
俺は目に涙を溜め込みながら、
「…なんで、Black Numberから離れるんですか?」
と聞いた。自分でわかるほど鼻声だった。
「…俺は死ぬんだ」
今、なんて言った。BOSSはなんて言った。俺は、今度こそ、ホントにわかりたくなかった。
「…なんで、どうして」
俺は耐えきれず涙を流した
「癌なんだよ。昔から。だから指示しか出さず、俺は何もしてこなかったのだ。」
背筋がこおる。背中に汗がツ----ッと走る。クソ…俺は嗚咽を漏らした。BOSSの前で、こんな醜態を晒したくなかったが、この時の俺は我を失っていた。
「だから組織をお前に託す」
BOSSは、俺に
「一番信頼できた、お前にな」
と言った。BOSSは、今まで本当に信頼できる仲間は居なかったと話してくれた。だから、俺を見つけて、息子を得たような気分だったらしい。俺は嬉しくてまた涙が出た。
「俺には息子ー如月敦斗ーがいる。俺が死んだら、ここに来るから、良くしてやってくれ」
BOSSは、それを言って、去っていった。俺は、目を潤ませながら、聞こえないであろう言葉を、大声で叫んだ
「絶対、貴方の夢ーいや、俺達の夢を叶えます!!!」
あれから一年経った。俺はBOSSになり、新たな仲間、如月敦斗を迎えてNumberに対して反乱を起こした。ちなみにこの時Number.2等は居なかったため、余裕でこちらの要求が呑まれた。この組織の代理はなく、もう即解雇となるらしい。それがいい、水無月王牙。お前には、その程度の方がいい。…でも、まだ夢は叶えられていない。
「…まだ、Numberは潰れてないのだ」
俺は、そう呟いた。そして、後ろにいる仲間達に向かって、
「…俺たちは、夢を見るもの。俺達はBlack Numberでは無い。俺たちは、新しく、Dreamerとなろうじゃないか!」
俺は堂々と宣言した。後ろからおぉー!と歓声があがる。
そうして、Dreamerという組織ができた。秘密結社のため、基本的にNumberと警察以外、俺達を知らない。でも、Dreamerは嘘の勧誘をしたりするので、構成員は一気に増えた。
「さて、復讐といこうじゃないか」
俺は、葉月翔真ーいや、もうそろそろ息子に座を譲るから、これからのBOSSは葉月優斗ーかな?とりあえず、あいつには俺の意志を継いでもらいたい。俺は、大声で、
「今度こそ、Numberをぶっ壊す!!!」
俺はそう叫んだ
十三話 Confession
「今…なんて?…ああ、冗談か」
僕は乾いた笑いを浮かべる。何故か上手く笑えなかった。彼方が僕に告白?へっ、そんな筈ない。どうせ罰ゲームかなんかだろう。僕よりも良い男なんてこの学校にクソほどいる。しかも僕は殺人者だ。なんで、そんなクソ野郎と…
僕が思案していると、彼方は純粋な笑みで、
「貴方何言ってんの?冗談なわけないじゃない」
と言ってきた。少し怒っている様子だ。てか怒ってる。絶対キレてる。
「…なんで、僕に?こんな、殺人者の、僕に。もっと良い男が居る中で、僕に」
僕は純粋な質問を彼方にぶつけた。彼方は怒るかもしれない。でも、僕は、何故僕に彼方が告白するのかが全くわからなかった。いや、解りたくないのか?自分の気持ちが理解できない。そもそもの話、僕は彼方に何を聞きたいんだ?理由か?何故だろう。僕は全くわからなかった。また思案してると、
「…貴方ねぇ」
と顔を膨らませた彼方が、
「…なんで人が好きになってやったのに、理由なんて聞くの?」
と言ってきた。僕は絶句した。マジの目だ。マジで言ってる、この人。
「…理由…ねぇ…僕は、他の男が居るだろってことをー」
「貴方以上に良い男なんて、私の中で居るもんですか!!!」
僕が地雷を踏んだのか、彼方はマジギレしてきた。僕はその圧力に足を引いてしまう。怖い、怖い。彼方にこんな威圧があるだろうか。
彼方は足を一歩進める。同時に僕は足を一歩引く。とにかく彼方が怖かった。…僕以上に良い男が居ないって…本気で言ってるのか?
とりあえず罰ゲームではないことを知り、僕は彼方の気持ちを聞きたくなってきた。しかし、彼方は聞かずとも言ってきた。その理由を。
「貴方は!」
彼方は一拍置き、
「貴方は!何度私を救ってきたと思ってんのよ!私が貴方にどう思ってると思ったのよ!!!」
と、涙声で、嗚咽を漏らしながら叫んだ。
――――――――――――――――――
~西賀彼方の独白~
なんなのよ、疾風。こいつは。なんで私の気持ちを理解できないのよ。てかラブコメじゃないのよ。舐めてんのかしらこいつ。マジで泣けるわ。嗚咽が漏れる。正直、恥じらいなんて無かった。自分の気持ちを伝えられたら、それで良い。私は、そう思っている。だから、今から、
「今から、貴方に、教えてやるわよ。私の気持ちを」
教えてやるわよ。疾風に。私の''本当の気持ち''を。私の発言に対し、疾風は、
「…聞かせて頂こうかな」
と、震えながら呟いた。
――――――――――――――――――
~西賀彼方の回想~
私は、疾風に何度も救われた。それは小学生の頃からだ。あいつは、いつも私のそばに居た。
「彼方に傷つけんなよ」
そう言って、私を傷つける人を倒した。私は、疾風に対して、この頃から恋心を抱いていたのかもしれない。しかし、疾風への恋心に気づいたのは、小学六年生だった。
「なあ彼方」
小学六年生に進級した時、疾風はそう言った。
「なぁに?」
私がそう答えると、疾風は、
「…春って、良いよな」
疾風は自分のクラス表を思いっきり握りしめながらそう言った。
「…ええ、良いわね」
暖かく、桜舞い散るこの春が、誰が嫌いなのだろう。少なくとも、私は好きだ。この日差しが心地いい
「なあ彼方」
疾風は、聞いてきた
「お前、僕に助けられるの、嬉しいか?」
疾風は、ガチトーンでそう聞いてきた。…疾風は、この時から自分がエゴイストと考えていて、救っても相手が傷ついてる可能性を考えていたのだろう。私は、
「もちろん。貴方が助けてくれるから、私は気持ちよく生きられるのよ」
と答えた。すると疾風は、
「…なら、僕は、お前を助け続けてあげるよ。どこに居ても、いつでも。」
疾風は、そう言ってくれた。
「…貴方がそういうことをするとは思えないけどね」
私は微笑みながら疾風の額に人差し指を突きつけた。
「…なんだよ、人が折角いいこと言ってあげたのに」
疾風はそっぽを向いた。でも顔は赤かった。嬉しかったのだろう。同時に私も嬉しかった。全身が熱かった。その時に私は疾風に抱いている恋心に気づいた。ああ、私はこいつが好きだったんだな、と。理由なんてそれだけでいい。好きだから、好き。それだけ。そして、私は一つの夢を持った
(いつか、あの、桜が咲く、あの大空の下で、こいつに付き合え、と言いたいわ)
という、夢。私は、そこから、疾風に対する恋心を進めていった
でも、中学が別々と聞いた時、私は酷いショックを受けて、食事が喉を通らなかった。それほど悲しかった。寂しかった。疾風にとっては寂しいな、位なのだろうけど、私にとっては夢だ。夢が離れるんだ。悲しいのだ。そして私は学校の近くに引っ越した。そこから疾風に再開するまで私は楽しいながらも、不満を持っていた。神無月疾風の不在という、不満を。私は高校で再開して、家に帰ったら跳んで喜んだ。夢との再会。どこでもい。昔桜舞い散った、ーいや、今の時期だと、紅葉が舞い散るあの大空の下で、絶対告白する。付き合えと言う。その為の下準備だ。これから私は疾風に言う。
「紅葉公園に行くよ」
と。
――――――――――――――――――
~再び視点は疾風に戻る~
「…彼方…」
彼方は目を瞑っていた。過去の回想でもしてるのだろう。僕はそういう人間を幾度なく見てきた。そして何秒、何分が経った時、決心したのか彼方は、僕に、
「紅葉公園に行きましょう」
と言った。僕は、彼方の気持ちを聞くためなら、公園に行っても良かった。いや、その公園で聞きたかったのだろう。彼方の「本当の気持ち」を。彼方は、黙って着いてこい、というメッセージの表れなのか、くるりと身を翻し、屋上から出た。僕は彼方の背中を追う。何処までも。いつまでも。しかし、いつになっても、夕日は落ちなかった。今は九月。当たり前か。今は六時だ。そして、彼方は歩みを止めた。僕も歩みを止める。周りは、紅葉がちっていた。さらに、夕陽も差し込んでいた。僕は、その綺麗な景色に見入っていた。こんな綺麗な景色、''桜ヶ丘公園''以来だ。
「……私ね、思ったの」
彼方は急に話はじめた。
「私、いつか、貴方に、言いたかった。綺麗な景色で、晴れた時、こういう公園で。」
いつしか、雲が近づいてきた。夕陽が遮られる。夕立だろう。ザーザー一気に降り出した。全身濡れても、彼方はそんなこと気にせず話を続けた。
「私は、貴方への想いを抱いた。好き、という。それだけ。憧れである存在。」
彼方は、涙声になる。雨のせいで見えないが、彼方は泣いているのだろう。懐かしき昔、暗いけど、明るい過去を。僕たちと共に歩んだ過去を。
「…私は、この公園で告げるわ。貴方に。」
彼方は接近してくる。僕は、退かない。覚悟はできた。彼方が何が言いたいかわかった。全て理解した。
彼方は、僕の腰に手を回し、背伸びをしながら、
「神無月疾風━━私と、付き合ってくれませんか?」
その、一言を彼方は言い、彼方は僕の唇に唇を重ねてきた。
十四話 Love enemy
あぁ、昨日は黒歴史確定だ。
彼方の告白から一日が経ち、僕は頭がショートしかけている。マジで黒歴史だわ…姉さんにすらまだ話してない。僕は時計を見る。うわあボーっとしてたら既に七時半だよ…コンビニ行って買ってもらうか…やっちまったわ
しかも考え事はまだある。
「…あの紙よ…あの一枚目と、三枚目の…意味…」
一枚目は、何か人名が書いてある予感がする。如月なんちゃらだろう。問題は三枚目だ。三枚目のモールス信号は、
「○○○○○○が真実」と書いてあった。そこには人名が当てはまったのだが…多分、
「…彼処(あそこ)のDreamerアジトに行くしか…ないか」
僕は決心した。九月二十四日、アジトに突撃する。決死の思いだ。
「疾風~?」
後ろから急に声がした。聞き慣れた声
「……姉さん?」
僕は振り返る。やはり姉さんだった。
「な~にボーッとしてるのよ。弁当くらい買ってやるっつーの」
事情を察してくれたのか、姉さんは優しくそう言ってくれた。やっぱこの人には話した方がええんかな
「疾風君?」
姉さんはニコニコしながら、
「なにか私に隠し事してるでしょ」
の言ってきた。心臓が飛び跳ねる気分だ。いやバレたよ。そんな露骨だった?
「ちょっと……ね」
僕はお茶を濁すことにした。(詮索されたら終わりだけど)
「そう…まぁ元気出しなさいよ」
バンバンと、姉さんは背中を叩いてきた。笑いながら叩いてくるのはホント恐怖。怖いよぉ…
「…元気でしょ」
僕はめんどくさくなったので、
「ほら、コンビニ行くんだから、さっさと準備していくよ」
と、姉さんに告げた。姉さんは首肯して、自分の部屋に学校の支度をしに行った
「……いい姉さんだよな」
僕は、足音が消えたあと、本音を呟いた
ーーーーーーーーーーーーーーーー
~霞雨真理奈の独白~
「疾風ったら、なにをかくしてるのかしら」
私はそう呟いた。あいつ、明らかに様子がおかしい…多分、あの紙の影響もあるのだろうけど、確実に他に理由がある。女に告白されたのかしら?そういや前下駄箱に紙入れた時になんかあったわね…あれラブレターだったのかしら?疾風が混乱してるじゃない。絶対ぶち○してやるわあ…まあ、ラブレターなら、詮索するべきではないだろう。まず私はあいつに気は無いし、男は興味無いから…なんかトラウマだなあ。まあ話しておこう。
――――――――――――――――――
~霞雨真理奈の回想~
話をしよう。あれは四年前だったか……五年前だったか……まあそんな事はどうでもいい。
私は、疾風とは違う目に遭っていた。
あれは私のむねが膨らみ始めた時(というよりだいたいBカップくらいになった時かしら……まぁどうでもいいわね★胸なんてあれば同じなのよ。え?貧乳ロリはこそ至高だって?死にたいのかしら?)だったかしら。(キャラ崩壊してる雰囲気が否めない)
なんかね、あのクソ父親がなんかねぇ…胸触らせろとか言ってきたり腰に手を回してきたり…いろいろなとこに手を突っ込んできたり風呂凸してきたり(自主規制
まぁこんな感じだったのよ。
「お前そろそろ俺に○させろよ」
って言われたのよ。いや自分の子供と○るとか頭いかれてんのかしら。
で、
「あんた何言ってんの?散々私の○器触ってきたのに、今更…嫌に決まってんでしょ、訴えるわよ。近親相姦とかイカれてんの?犯罪よ?」
こうやって怒りが限界突破したか、断ったらどうなったと思う?
「拒否すんなよ。ガキが」
って殴ってきやがったのよ?清々しい程のクズよね。死ねばいいのに♪まぁ今は野垂れ死んでんか。まぁ今では思い出だわな。死ねばいいのに♪(本日二回目)
な~んか短いわね。まあ思い出したくないのよ……察してくれないかしら……
全く、ただでさえ思い出したくないのにまだ思い出しちゃうわ……本能って怖いわね。もうなんも考えたくないわ…
――――――――――――――――
~霞雨真理奈の独白~
まあ過去なんて思い出すもんじゃないわ。そんな事より、疾風の気持ちくらい休ませてあげないとだわ…正直、はやては今まともにNumberで働けるとは思えない。戦場になるなんて無理だ。最悪捕まって殺される。私があいつの代わりになってやろう。私はそう決心した。仕方ない。疾風があんな状態なら。弟は姉に守られるもの。私は、
「絶対、疾風を守り抜いてやるわ。それが、良い姉さんってやつだもの。」
――――――――――――――――――
~視点は再び神無月疾風に戻る~
「ふんふんふふ~ん」
僕は気を紛らわす為に鼻歌を歌いながら、教室の席へと向かった。彼方も姉さんも一緒だ(今はそれぞれ席に向かったけど)さ~て机の中に色々ブツをいれようか。そうして、教科書を取り出し
「うがぁぁぁぁぁ」
僕は机の中を除くと、発狂した。
「どうしたの?」
未だに隣の結衣が心配そうに聞いてくる
「机に…手紙が……怖いよぉ……」
僕は自分を抱き締めながら震える。今日の気温何度?(そんなに寒くないだろ)
「大丈夫?怖いわね……」
結衣は同調してくれた。心の奥底から心配してるようでは無い気がするが、まあ脳みその一番端に追い込んでやる!
「ちょっとあいつらのとこ行くわ……」
僕は結衣に暗い声と暗い顔でそう言った。
『手紙を持ちながら』
何故か結衣からの視線を感じた
「なんやこれ」
「僕の机の中に入ってたんだよ」
「「怖いわね」」
「いや怖……」
「愁読んでよ」
「はいよ」
僕は愁の所に来て、手紙を渡して、読んでもらっている(中身怖くて見たくないんだよ!!!)
姉さんも彼方も居る。ヤバい雰囲気なんだが。てか彼方と気まず過ぎて笑う……(笑えねえわ)
「何何…なんだよ、ラブレターか?」
ラブレターという言葉に、彼方と僕が凍りついた
「「「……ラブ、レター?」」」
僕と彼方と姉さんがハモってきく。いや、またラブレター?…勘弁してくれ。
またラブレター?二通目じゃねえか。
「なんか六時に屋上に来てください、話がありますだってさ。ラブレター確定じゃん」
「うわあ……」
僕は絶句した。何僕モテたの?僕女苦手なんだけど((()))そんなことよりなんか彼方がめっちゃ暗い顔なんですが。
「彼方、どうかした?」
心配だったのか、姉さんが彼方に聞いた。
「…なんでもないわ」
彼方は低いトーンそう突き放し、くるりとUターンしてから廊下に出た。
「大丈夫なのか……」
僕は一瞬背中を見せてるはずの彼方の顔が見えた。彼方は……
――――――――――――――――――
~西賀彼方の独白~
ラブレターですって?私が書いた次の日に?確実におかしいと思う。私は今、醜く歪んだ顔をしてるだろう。行き場の無い気持ちに追いやられた。私の恋は成就するのか?いや、無理かもしれない。
「……だって、相手は、あいつに今一番近い人間だものねえ…」
あいつは、学校では一番疾風と関わっている。しかも前一緒に話した時、疾風の話が出たのだ。おかしくない。多分私の仮説は合っている。まったく、主さんは、こんな事だけに私の枠を取って、大丈夫なのかしら。暇なのかしら。アホらしいなあ。まぁどうでもいいけど。私は、その手紙の書き主に、自分にしか聞こえない声で呟いた
「あんたは私の恋敵よ。絶対勝たせてもらうわよ?」
私は、拳を握りしめ、そう決意し、教室では無く、屋上へ向かった。何故か気分は清々しかった
――――――――――――――――――
~神無月疾風視点~
「なんで僕が…」
僕は明日のジョーの最終話の如く柵によっかかっていた。何処のかって?屋上に決まってんだろ。なんか視線感じるう((()))なんか怖い…てか今何時だよ。……五時半…あと三十分あんの?!よし寝よう。すぐ寝よう。僕はラブレターの事なんて忘れてグースカ寝るのであった
「ふぁぁ……」
起床。ただいま五時五十五分
「ギリギリで草」
六時前に起きれたことにホッとする。遅刻厳禁(これ当たり前!)
てか別にどうせたいしたことないし……なんかまた告白とかされるのはめんどくさいけど…こういう時って別になんもないんだよなw(中学の時何回そういうことがあったことか……)よし。寝よう。あと五分寝よう。おやすみ。
「あのぅ……」
寝ようと思って目を閉じた瞬間、優しい声音でそう言われた。なんだ?呼び主か?でも何故か聞き慣れている声だった。僕は推理する。多分困惑してるだろう女の子の前で。そして、僕は女の子の正体を理解した。
「結衣か。」
僕がボソッと呟くと、結衣は、
「う、うん」
と反応した。結衣確定だろう。僕は目を開ける。やはり結衣だった。
「まぁ予想はしてたけどね……」
僕はため息をつく。結衣は緊張している様子だ。今震えている。若干あれが……(罪悪感あるよね)
「あ、あの、疾風君……」
結衣は急に話しかけてきた。やべえめっちゃ緊張してる顔だ(((())))ガチガチじゃん。まあ良いか。お話とやらを聞くとしよう。
「どうした?」
僕は聞いた。柔らかい笑顔で。すると結衣は、
「……好きです、付き合ってください」
と言ってきた。僕はそれを予想していたので、もちろん答えも考えてある。
「考えておくよ」
そう、保留だ。二人に告白されたからこれが一番最適である。
「ほら、遅いし帰った帰った」
僕はまだ緊張がほぐれてない結衣の背中を押した。
「……答え、期待してるよ」
結衣は、赤く染まった頬を撫で、そう言った。そして、屋上から消えていった。
これで終わりなわけない。僕が先に結衣を帰したのはしっかり理由がある。僕は顔を強ばらせる。さあ、『視線』の主に会いに行こうじゃないか。
「さっきから見てるのはわかってんだよ、彼方」
僕は視線の主、彼方の名前を呼ぶ。するとすぐに笑い声と共に、
「流石疾風ね!私の事わかるなんて」
彼方は未だに高笑いしている様子だった。いや怖いって。まぁこれが彼方か……
「さっきからジロジロ見てたんだから当たり前だろ。まったく、人の行動監視しやがって……まだ恋人じゃないだろ?」
僕が呆れながら言うと、彼方はまた笑い声を上げながら、
「恋人じゃないって……w貴方面白い人ね、やっぱ」
彼方は意味不明な言葉を放った。彼方は今日一番の笑顔だった。多分、結衣の答えを保留にしてることに納得してるんだろう。てか喜んでるだろ。あはは、怖い子。
「遅い時間なんだからさっさと撤収するぞ」
僕はそう言うと、
「そうね、遅いから撤収しましょうか」
と彼方が言い、彼方は屋上のドアへ走っていった。
「…情緒不安定だな」
僕は少しにっこりした顔で、彼方の背中を追いかけながら屋上のドアまで全力疾走するのだった
――――――――――――――――――
~新村結衣の独白~
「…なんて言うか、あの人らしいわ。」
私はため息を零した。どうせ彼方さんが私たちの会話を見ていたのだろう。まぁあの人らしいわ。やりかねないわよね。私は前彼方さんに言われた言葉を脳内で復唱する。
「この恋、悪いけど勝たせてもらうわ」
ふふ……勝つのは私ですよ?彼方さん。
保留ってことはやはり彼方さんに告白の早さは負けたけど、私が負ける事は無いように振舞ってきた。あの人も私を思い出しただろう。…あの昔助けた少女だと。
「まぁ、黙っててもいいかもしれないわね」
私は、清々しい気分で、家路を辿るのだった。
十五話 疾風の選択
「恋愛ってめんどくさいのな」
僕は、台所にて愚痴っていた。黙々と料理を作るのもめんどくさい。なんか呟きながらの方がやりやすいってものだ。……てか今日土曜日だから別に学校無いけどね。姉さんのメシは僕が作るのよ。
「なんで二人から告白受けるかなあ……ったく……」
僕は目玉焼きを焼きながらそう呟く。気分は晴れていたが、やっぱりめんどくさいものはめんどくさいのだ。(この気持ちわかる?)だから若干暗い顔をしていると思う。僕は恋愛経験ゼロなのよ。死ねばいいと思う。僕を殺す気か?!
「彼方と結衣とか……どう選べばいいものか…」
僕が愚痴っていると、急に後ろに気配を感じた。背中に汗がツ---ッと流れる。まさか聞かれてた?あ、終わった
「…ねえ、さん……?」
僕は震えながら振り向いた。やはり姉さんが立っていた。怖い。姉さんの笑顔が怖い。何考えてるのこの人。僕は足を一歩引く……と、フライパンにぶち当たった。『柄じゃないところの』
「アヂィィィィィィ」
僕が死にそうな顔をしながら発狂する。くるくる踊るぜえええ!!!すると姉さんは高笑いした。最近見た中で1番大きい笑いである。いやこわ。
「疾風も恋に悩むのねぇww」
こいつ舐めてんのか?ぶち〇すぞ。なんか身体が熱くなってきたわ。恥ずかしさと怒りでもう何が何だか…てかやばいそんなことより尋問される気しかしないや。外が曇ってきた。ああ神様、どうか私の気持ちを晴らしてください……
「どんな感じなの?今」
姉さんはそう聞いてきた。姉さんは興味津々で、好物に飛びつく子供のように喜んでいた。怖。まぁ姉さんには愚痴ってもいいかな…姉さんだし。さあ、僕の話をしよう。
「はあ……まぁいいよ話すよ……」
僕は彼方の告白の話と、結衣の告白の話を一気にした。ちなみにファーストキスのことは全く話す気は無い。流石に二人の秘密だ。
話し始めてからなんと十五分経過して、やっと全貌を話せた。いや疲れたし恥ずかしいし泣きたいわ。こっちにはデメリットしてないんだねえ!腹が立つねえ^^。ところで姉さん寝てないか?目を瞑ってるんだけど。シンキングタイムか?怖いなあ
「姉さん?」
僕は不安になったため、姉さんに話しかけたところ、姉さんはハット目を覚ませ、こう言いやがった
「ごめん聞いてなかった」
「死ね」
ぶちギレた僕は姉さんの腹に一撃ぶち込んだのだった。(ちなみに一時間は目覚めなかった)
「だからこういうことだっつーの」
僕は目を覚ました姉さんに先程と全く同じことを言った。(朝飯の用意をしながら……今九時なんだけど)
「へぇ~」
姉さんは興味津々な顔を保っていた。怖い。僕は凍りついていた。先程よりは緊張はほぐれていたが。(僕ってこんな人間だっけ?)少し経つと、姉さんは僕に
「疾風も変わったわね」
と言ってきた。正直僕も変わったと自覚している。何故変わったのか?決まっている。彼方との再開だ。あの時に変わったんだろう。愁と共に一変した生活に、僕も変わっていったのだろう。
「疾風~?手が止まってるわよ」
姉さんに指摘されるまで、僕は手を止めて考えてることに気がつかなかった
「ごめんごめん、すぐ用意する」
僕は慌てて準備を進めた。
朝飯を食べ終わり、読書をしている時だった。(現在10:30)
「ぴんぽーん」
急にチャイムが鳴った。なんだ?愁達か?
「ハイハイ今出ますよ~」
僕は読書を進める手を止め、玄関に向かおうとしたが、姉さんが、
「サノ〇ァウィッチ」
と某エロゲの誤作動をそっくりそのままやってきたのでぶん殴ってから玄関に向かった。
「おっすおっす~来てるよ~」
ドアを開けると、やはり愁が居た。他に優斗、瞳(初登場かな?)と彼方が居た。
「由香里は?」
僕が聞くと、
「お姉ちゃんなら私情で今日居ないわよ」
と彼方が答えてくれた。なんだ~……居ないのか。残念だわさ
まぁいいかぁ……てか彼方が普段の調子なのが意外である。なんかもっとあわあわしてるかと思った。まあどうでもいいか★
「まぁ四人とも上がりなよ」
僕は彼方達に家に上がるよう促した。
「初めてだわ~疾風の家」
「うん、僕もだわ」
優斗と瞳は僕の家に上がるのは初めてだだからはしゃいでいる。全くガキが……申し訳ございませんでした西園寺瞳様
「ったく、No.14という自覚を持てや、優斗。瞳もNo.52なんだから……」
僕はあいつらに聞こえないように嘆息する。あいつらは今洗面所にて手を洗っている。だから聞こえないだろう。僕は玄関からリビングに向かうのだった
「まさかお前達飯食うとか泊まるとかいうだけの理由でここ来たの?」
僕は先程作った昼飯(肉じゃが)をバクバク食う(姉さん含めた)五人に言った。この人たち食欲凄くない?僕こんな食べる自信ないよ。てか食費がやばいからやめて欲しい。まぁ仕方ないよな。僕は諦めたようにため息をつく。そんなことすら気にせずに(彼方除いた)四人はバクバク食う。どんどん肉じゃがが減っていく。これがNumberで鍛え抜かれた第七階層の男女の食欲か。凄いや。僕そんなに食欲ないんだよなぁ……ちなみに僕はさっき自分で作った肉じゃが以外に冷凍の小籠包を適当に食っていた。(一人で)一人飯は美味いか?皆は。僕は凄く美味しいと思う。清々しいね。
「いや、普通に暇だから来たのよ」
僕がクソみたいなことを考えていると、彼方が答えた。この人たち暇過ぎない?てかまだ食べるの?僕はため息をつく。まったく、やれやれだぜ
「朝飯食べてないのよ、私たち」
「俺も」
なんとあいつら(姉さんを除く三人)朝飯食べてないらしい。信じられん。飯くらい食えよったく…アホらしいなあ。迷惑極まりない
「朝飯は食べなさい。Numberの決まりでしょ?」
僕は(姉さんを除く)三人にそう諭した。
すると瞳と優斗は
「「どうやって僕たちの家から飯食って二時間でここに来るの?」」
と言った。そう、瞳と優斗の家は僕達の家からクソ遠いのだ。それを僕は忘れていた。
「すみませんでした」
僕は土下座謝罪した。彼方と姉さんと愁がクスクス笑っている。殺していいかな
「まったく、疾風はしょうがねえなあ」
愁がおどけた口調で言う。
「そうだよ。疾風は仕方ないねえ」
「そうねぇ」
優斗と瞳もおどけた口調で言う。殺したろかカス
「すみませんね゙ぇ゙」
僕は半ギレしながらニコニコして言った。結構怖い顔だったでしょうねえ()
まあこの後もどんちゃん騒ぎしまくって、気づいたら空は暗くなっていた。
「随分と長い時間僕の家に居たんだね、君たち」
「そうね。だいたい八時間くらい貴方達居たわよ?」
僕と姉さんは呆れた口調でそういう。現在六時。いい時間である。優斗と瞳は飛ばしても二時間近くかかるんだから早く帰ればよかったものを……
「楽しかったのよ。仕方なく無言わよね~優斗」
瞳はおどけた口調で、楽しそうにそう言った。瞳は、心の底から楽しそうな表情だった。
「まあ、お前達めっちゃ楽しそうにしてたからな」
愁が呆れたようにそう言った。でも、愁の顔も「あ~楽しかった」という顔をしていた。知らんけど。
「うん。すげえ楽しかった。また来るぜ、疾風」
優斗も瞳と同じように、心の底から楽しそうに言った。まったく、
「やれやれだぜ」
僕は某オラオラ言ってる人の口調に真似てそう言った。瞳と優斗は、「また来るね~!」と言ってバイクに乗って去っていった。僕と姉さんと愁と彼方は手を振って二人を見送った。
「さて、俺は帰るわ」
愁はニコニコしながら僕の家を去っていった。さて。残るは彼方だけだが、
「……」
彼方は帰る気配がない。
「彼方もそろそろ帰ったらどう?」
姉さんは若干怪訝そうな表情で彼方に言った。すると彼方は、
「疾風、ちょっと来てくれないかしら?」
と、僕に指をさしながらそう言った。真剣なマジ顔だった。やれやれだぜ、まったく……彼方は既に家から離れていた
「そんな訳だ。姉さん、先に家でゆっくりしてておいて」
僕は彼方の背中を追いかけるようにして家をはなれたのだった
――――――――――――――――――
~霞雨真理奈の独白~
「疾風もいいお年頃ねえ~」
私は疾風の背中を目で追いながらそう呟いた。疾風も思春期なんだろう。可愛い弟だ。一生守ってやりたいわ~
「彼方と結衣、貴方なら、どちらを選ぶかしら?」
私は、長い髪を靡かせながらクルリと回転し、とびきりの笑顔で、
「貴方なら、彼方を選ぶんじゃないかしら?」
そう、疾風と彼方に聞こえないように予言した。私を誰だと思ってんのよ。神無月疾風と一番長く一緒に居た相手よ?疾風のことなら何だってわかるわよ。疾風の好きな人とか、そういうのまで。疾風も私のことならなんでもわかる。これが、双子。双子でしかなし得られないもの。これが、絆。愛。兄弟愛とは、相手のことを真っ先に考え、自分は遠慮することでは無い。相手のことを考えるのは事実、兄弟愛ではあるが、本当の兄弟愛は、
「心から守ってやりたい、好きだと言える、人間として一番好きだと言える。夫婦とか、そういうのは関係なく、自分達でお互いに好きだと言えること。それが、」
兄弟愛ってやつよ。
「我ながらいいこと言ったわね~」
一日一善という訳にはいかないが、今日はいいこと言っただろう。清々しい気分だった。
「今日は疾風のためにご馳走でも作ってあげようかな~♪」
私は、自覚するほどのいつもと違う上機嫌で、玄関のドアを開け放つのだった
――――――――――――――――――
~神無月疾風の選択~
「この紅葉公園で何が言いたいんだい?彼方」
僕は紅葉公園で止まった彼方にそう言う。彼方は、僕を真摯な目で見つめてくる。真顔だった。僕も真顔だ。相手の気持ちに敬意を持って接する。それは、人間としての、性だ
「決まってんでしょ。貴方の返事を聞きたいのよ」
彼方はずんずん近づいて、僕の額に人差し指を立てた。怖い、怖いよ彼方さん
「まったく……結衣と彼方に告白されてから2人に告白されたって事でめんどくさいんだよ、返事も」
返事する側にもなって欲しいわ。まあこっちも返事される側になるべきだろうが。まあどうでもいいんだよそんなこと
「はあ、返事か。まぁ決めたことだし、今言ってあげるよ」
僕は覚悟を決めた。
「返事だけど、僕は…………」
時は月曜日。今登校している。(愁と姉さんと彼方と)
「めんどくせえなあ……」
愁がボヤく。同意だ。とてつもなくめんどくさい。なんでこうなるんだよお……正直今は秋だからもう寒くなってきたし、やっぱ登校するのがきつくなってきた。現在気温は12℃(あの頼りにならんニュースキャスターによると)。寒いよね。僕はどちらかと言うと寒がりなので手袋をしている。
「確かにねぇ……金曜日はブラックフライデーがあるけど月曜日は毎週ノーハッピーマンデーよ……」
姉さんがため息をつきながらそう言う。
「そんなになの?姉さんは。」
僕は呆れながら姉さんにそうきいた。すると姉さんは、
「当たり前でしょ……学校なんてめんどくさい……」
と、ため息なんてレベルでは無く、その場に倒れそうな苦しそうな顔をしながら言った。そんなにか?最早拒絶反応出てるじゃん
「私は理奈程ではないけど月曜日は嫌いねえ…やっぱ学校は辛いわあ……」
彼方も姉さんに同意していた。
「僕的には学校なんてクソほどどうでもいいんだけどねえ」
僕は学校はどうでもいいんのでそう答えた。てか普通に関係ないんだよなあ
「どうでもいいからめんどくさいんだよお……ああ……」
愁はその場にがっくり膝をつきそうな勢いで項垂れた。ほんとにNumberか?この人達は……
「貴方達ほんとにNumberなの?」
彼方が僕が思ったことをそっくりそのまま言ってくれた。ああ、ありがてえ……まさか僕コミュ障?
「「Numberだわ!」」
とNumber.0(笑)とNumber.8(笑)が大声で答えた。まったく、これだからこの2人は……一緒にいて楽しいんだけどね
「やれやれだぜ」
僕はそう言い残してスタスタ歩いた。
「ちょ、待ってよ!」
「俺たちを置いてくな!」
「私まで置いてかないでよ~!」
後ろから三人の咆哮が聞こえたが、僕は無視してスタスタ歩くのだった。
「まったく、結衣は偉いよね」
僕は席に着いた瞬間、結衣にそう愚痴った。
「えっえっ?ど、どうしたの急に……」
結衣はおもっくそ慌ててた。
「家のさんばかは学校ヤダヤダ言ってんのにお前は文句言わないやん」
僕は本心を結衣に語った。(別に告白の件は関係ないです。ここ重要。)
「……グラッツェ」
結衣は僕に聞こえない声でボソボソ呟いている。顔を赤らめているが、どうしたのだろう?
「顔赤いけど大丈夫?」
僕が結衣に聞くと、結衣は、
「……知らない」
とぶっきらぼうに答えた。
そっから何分か、無言の時間が流れた。あれ、僕、結衣に用事あったよね?なんだっけ。僕は思考をめぐらせ、結衣に言いたいことを思い出した。
「そういえば、結衣」
僕は沈黙を破り、結衣に言った。
「今日放課後時間ある?ちょっとお話あるのよにぇー」
僕は結衣にそう聞いた。すると結衣は、ビックリした様子で、
「あ、空いてるけど……お話って何?」
結衣は聞いていたが、僕はニッコリした顔で、
「紅葉公園に来てくれたらわかるよ。」
そう言って僕はトイレのために立ち上がるのだった
「まあお話があるわけですよ」
結衣に面と向かって僕は言う。
「と言っても結衣には反応して貰いたく無いんだけどね」
僕は結衣に前置きして、自分の話をしようとする。結衣は黙っていた。よし、話す時だ。
「話をしよう。
これは君だけの話だ。
君は僕に告白をした。その返事を今返そう」
僕は、覚悟を決めて、彼方に告げた時のように、息を吸い込んで、こう、結衣に告げた
「謹んで、お断りさせていただきます」
結衣への返事は、「No」だった
皆は察してるだろう。僕は彼方に「Yes」と返したのだ。理由?一つだけだ。誰も傷つかず、いい関係を保てると思ったのは、
「結衣と友達で居て、彼方を選択すること……かもしれないな。」
結衣は傷つくかもしれない。しかし、だから僕はあいつと友達で居るのだ。
「これからも、友達として、宜しく出来ないかな?」
僕は、唇を噛む結衣に手を差し出す。数分時間が経ち、結衣は、
「……うん」
と、僕の手を思いっきり握りしめてきた。
三章 終
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