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第三幕 神は天に居まし、人の世は神も無し
57.シーン3-23(彼)
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答えられずに黙って折れた布団叩きの柄を構え続けている私に向かって、彼は再度そこをどけと要求した。それでもだんまりを決め込む私に、彼の目が細くなる。
「なぜ邪魔をする? その男は生かしておくべきではない」
彼の口から出てくる意見に、私は落胆せざるを得ない。なぜこう面倒な話題を今ここで展開せねばならぬのだ。どこかの熱血刑事だって、なぜ現場に血が流れるのかと叫んでいたではあるまいか。もちろん現場だからである。いやいや、そう意味ではない。とにもかくにも、今この場で私が言いたいこととは、血を流さずに穏便に解決しようと思わないのか、ということだ。これは敵味方に限っている話ではない。
「なんで? もうすぐ捕まるよ?」
問いに問いで返してばかりの私に彼はしばし険しい顔で間を置いたが、しかし私の方からろくな答えは得られないと見限ったのか、自分の方から口を割った。
「……然るべき処置が取られる保証は無い」
「なぜそこまで殺すことにこだわるの? 何か、生きていられると都合の悪いことでもあるのかな?」
ここまですっかり収束している場においてなお異常なまでに手を下すことに固執されれば、魔力云々とはまた別の方向で彼の身を疑いたくもなってしまう。もし彼に何らかの不都合があった場合、それが日の光を当てられぬような道であれば、さすがの私も借金だなんだと絡むことができなくなる。
一瞬、彼の目つきが厳しさを増す。そのまましばらく私を睨み続けていたが、彼にも彼なりに思うところがあるというのは事実のようだ。
「すでにかなりの人間が殺されている」
なるほど、彼は魔力使いの少女をわき道から追っていった私たちとは違い、ここへ来るまでの間に大通りの惨状を目撃しているのだろう。彼は話を続けた。
「その男はマナの歪みを増幅させる」
私は軽くつまずいた。彼の思考は一般人のそれよりも少し斜めを往くらしい。
「……ごめん、なぜそこで突然マナの話になるのかが分からないんだけど」
「そいつが死ねば、マナの共振が片方途絶え、余った方が歪み、淀む。そして世界の調和を乱す。だが、生きているとそれより多くの命が消え、歪みも大きくなるだろう。世界の調和を乱す元凶を始末して何が悪い。だから俺はこいつを生かしておくべきではないと判断したまでだ」
「ああ! なるほどね……って、いやいや」
彼は非常に、いや全くもって実に律儀な答えをくれた。合点がいって思わず一人納得してしまったではないか。慌てて訂正してみたりと、淡々と語る彼に対して私ときたら忙しい。
「悪いけど、私は目の前で誰かが殺されるところをあまり見たくないんだよね。それに、泣いている女の子の目の前で無理やりとどめを刺すような悪趣味も持ち合わせていないかな」
例え自分と彼らに何の関係もなかろうと、強盗犯にしがみついて泣きじゃくる少女の声をずっと背に受け続ければ、良い気分にはなれないというものだ。
「そんなくだらない理由で邪魔をするな」
ただ一言、彼はさらりとそう言った。思わず殴りとばしてやろうかと思ったが、私はぐっと踏みとどまった。彼にとっては、まさしくその一言で方が付く問題だということだろう。
「その二人は共振者ではない。共にいる意味は無い」
落ち着き払った至極真面目で静かな彼の物言いに、背筋が冷えた。そう言えば、昨日もそのようなことがあった。いや、もっと思い返してみるなら、他にもあったのではないか。大聖堂で、彼が口を開いたと思いきや、出てきた言葉はそれだった。不気味なほど共振者に固執している彼の思想を恐ろしいと感じるのは、はたして私だけだろうか。
雑然とした路地の片隅に倒れる男の不幸に、彼とは何の魔力の繋がりもないはずの少女が悲しみの涙を流している。裕福な家の娘と労働者の少年が、例え周囲からは良く思われずとも笑って話し合っている。彼らが共に同じ時を過ごしているのは、決してマナが、天の理が取り決めた仲だからなのではない。この世界にも、マナの鎖などでは覆せない人の心の喜びや悲しみの繋がりが、きっとどこかに存在するのだ。
「君、それ以外に判断基準がないの?」
「他に何がある」
そうきっぱりと真顔で言い切られてしまうと、私としても何というか非常に困る。判断基準と判断材料がまるで具のない味噌汁のように随分とまあさっぱりしているではないか。そこまでくると純粋に味噌汁として清々しいっちゃ清々しいが、出汁も無ければ味気も無いので私は一応具が欲しい。
「たとえ共振者じゃなくても、大事な人は沢山いる。家族とか友人とか、親しい人がいなくなれば君もきっとつらいんじゃない?」
「お前に俺の何がわかる。それに、家族などとうに死んだ」
なぜいきなりそんな答えになるのだろうか。私はひとまず何故こんな話題になったのかという小さな疑問と、具のない味噌汁の図を頭の隅に押しやった。
いつもいつも答えるごとに、お前には関係ないだとか教える必要はないだとか何とか、そんなことしか言わないやつはどこの誰だと思っているのだ。しかしまあその、なんだ、やはりというか、一応彼にも人には理解しがたい悩みがあるようだ。ここまであからさまに他と足並みがずれているのだから、当然と言えば当然かもしれない。
「そうだね、ごめん。君のことはよくわからない。けど、それでも他の人にはそういう大事な人がいるかもしれない。それに、そうじゃなくても目の前で人が死んだらやっぱり嫌だし悲しいでしょう」
「いるかどうかもわからない人間など……全体を考慮した際、それは優先すべきではない。悲しい? 一時の感情で物事をはかるな。そのようなくだらないものに振り回されて不安定になるからこそ、その男やその子供や、聖都とこの街に留まるあの歪みの原因のようになるのだろう。そんなものは己を正しく保つことにおいて必要はない」
私は内心ため息をついた。君は孤独な人だ。
一時の不安定な感情から、周囲の調和を乱してしまう。心を捨て、人の心を慮らず、良かれと思いやったことが、結果、周囲の調和を乱してしまう。彼が言う客観的な見方をした時、その表層に生じる事象にどれほどの差があると言えよう。だというのなら、喜びや悲しみの心を謳い、自分が確かにここにいると叫ぶことが悪しきことだと、私には思えない。
細やかな感情表現は、人類が厳しい世界において社会を作って生き抜くために、長い長い時間の中でようやく勝ち得た特殊で貴重な能力だ。そんなに身をこそぎ落として、あとどれほどのものが人に残されているだろう。それとも彼は必要分すら積み込めぬほど、何かの荷物で過積載だというのだろうか。それはそれで難儀なものだ。
「とにかく、くじやトロッコばかりを展開するのもほどほどにしておかないと、君もいつか恨みを持たれて刺されちゃうかもしれないよ」
刺されちゃうかもしれないよ、なんてうっかり物騒なことを言ってしまったからなのか、彼は再び目を細めると、訝しみながら私の挙動を逐一観察するように睨みつけた。
「お前こそ、その男が死んで何か困ることでもあるのか?」
はじめに私がしたものと似た疑いの問いをされて、私は少しむっとした。私のどこに疑う余地があろうものか。あからさまに怪しい君ならともかく、そんなもの私の身辺を考えればすぐにわかるものではないかと思ったところで、私は思い至った事実に不覚にも笑ってしまった。
彼にしてみれば、私は半ば騙す形で借金をふっかけてきた最悪の人物である。彼にとっては、なるほど確かにその辺の小賢しい賊と似たようなものかもしれない。そりゃあ、疑いたくもなるものだ。
「何がおかしい」
ふっと口元を緩めてしまったところを見抜かれ、彼の険しい表情がより微かに険しさを増す。笑うところではないと分かっていても、ついついおかしな発見をしてしまったものだから、致し方ない。
「いや、面白いこと言うなあと思っただけだよ」
「何が面白い」
彼は変わらず険しい顔で、冷たい眼差しとともに短刀を私へ向けて構えている。
「一言だけ言わせてもらうなら」
流石に身の潔白を疑われたままでは癪だ。私は、未だ私を警戒し続けている彼へ向けていた布団叩きの切っ先を、静かに下げた。
「私は、君なんかよりは余程身元の知れた平凡な小娘だよ」
そう言ってみたところで、彼が手に持つ刃が向かっている先は変わらない。
どうにもこうにも彼には私が信用ままならないらしい。無理もないといえば無理もない。しかしながら、今この場においてのみ述べるならば、私が彼の下手に出る必要性は何一つとして存在しない。そうとも、心ゆくまで私を疑い、思う存分私の粗を探せば良い。君には何も見つからない。
「なぜ邪魔をする? その男は生かしておくべきではない」
彼の口から出てくる意見に、私は落胆せざるを得ない。なぜこう面倒な話題を今ここで展開せねばならぬのだ。どこかの熱血刑事だって、なぜ現場に血が流れるのかと叫んでいたではあるまいか。もちろん現場だからである。いやいや、そう意味ではない。とにもかくにも、今この場で私が言いたいこととは、血を流さずに穏便に解決しようと思わないのか、ということだ。これは敵味方に限っている話ではない。
「なんで? もうすぐ捕まるよ?」
問いに問いで返してばかりの私に彼はしばし険しい顔で間を置いたが、しかし私の方からろくな答えは得られないと見限ったのか、自分の方から口を割った。
「……然るべき処置が取られる保証は無い」
「なぜそこまで殺すことにこだわるの? 何か、生きていられると都合の悪いことでもあるのかな?」
ここまですっかり収束している場においてなお異常なまでに手を下すことに固執されれば、魔力云々とはまた別の方向で彼の身を疑いたくもなってしまう。もし彼に何らかの不都合があった場合、それが日の光を当てられぬような道であれば、さすがの私も借金だなんだと絡むことができなくなる。
一瞬、彼の目つきが厳しさを増す。そのまましばらく私を睨み続けていたが、彼にも彼なりに思うところがあるというのは事実のようだ。
「すでにかなりの人間が殺されている」
なるほど、彼は魔力使いの少女をわき道から追っていった私たちとは違い、ここへ来るまでの間に大通りの惨状を目撃しているのだろう。彼は話を続けた。
「その男はマナの歪みを増幅させる」
私は軽くつまずいた。彼の思考は一般人のそれよりも少し斜めを往くらしい。
「……ごめん、なぜそこで突然マナの話になるのかが分からないんだけど」
「そいつが死ねば、マナの共振が片方途絶え、余った方が歪み、淀む。そして世界の調和を乱す。だが、生きているとそれより多くの命が消え、歪みも大きくなるだろう。世界の調和を乱す元凶を始末して何が悪い。だから俺はこいつを生かしておくべきではないと判断したまでだ」
「ああ! なるほどね……って、いやいや」
彼は非常に、いや全くもって実に律儀な答えをくれた。合点がいって思わず一人納得してしまったではないか。慌てて訂正してみたりと、淡々と語る彼に対して私ときたら忙しい。
「悪いけど、私は目の前で誰かが殺されるところをあまり見たくないんだよね。それに、泣いている女の子の目の前で無理やりとどめを刺すような悪趣味も持ち合わせていないかな」
例え自分と彼らに何の関係もなかろうと、強盗犯にしがみついて泣きじゃくる少女の声をずっと背に受け続ければ、良い気分にはなれないというものだ。
「そんなくだらない理由で邪魔をするな」
ただ一言、彼はさらりとそう言った。思わず殴りとばしてやろうかと思ったが、私はぐっと踏みとどまった。彼にとっては、まさしくその一言で方が付く問題だということだろう。
「その二人は共振者ではない。共にいる意味は無い」
落ち着き払った至極真面目で静かな彼の物言いに、背筋が冷えた。そう言えば、昨日もそのようなことがあった。いや、もっと思い返してみるなら、他にもあったのではないか。大聖堂で、彼が口を開いたと思いきや、出てきた言葉はそれだった。不気味なほど共振者に固執している彼の思想を恐ろしいと感じるのは、はたして私だけだろうか。
雑然とした路地の片隅に倒れる男の不幸に、彼とは何の魔力の繋がりもないはずの少女が悲しみの涙を流している。裕福な家の娘と労働者の少年が、例え周囲からは良く思われずとも笑って話し合っている。彼らが共に同じ時を過ごしているのは、決してマナが、天の理が取り決めた仲だからなのではない。この世界にも、マナの鎖などでは覆せない人の心の喜びや悲しみの繋がりが、きっとどこかに存在するのだ。
「君、それ以外に判断基準がないの?」
「他に何がある」
そうきっぱりと真顔で言い切られてしまうと、私としても何というか非常に困る。判断基準と判断材料がまるで具のない味噌汁のように随分とまあさっぱりしているではないか。そこまでくると純粋に味噌汁として清々しいっちゃ清々しいが、出汁も無ければ味気も無いので私は一応具が欲しい。
「たとえ共振者じゃなくても、大事な人は沢山いる。家族とか友人とか、親しい人がいなくなれば君もきっとつらいんじゃない?」
「お前に俺の何がわかる。それに、家族などとうに死んだ」
なぜいきなりそんな答えになるのだろうか。私はひとまず何故こんな話題になったのかという小さな疑問と、具のない味噌汁の図を頭の隅に押しやった。
いつもいつも答えるごとに、お前には関係ないだとか教える必要はないだとか何とか、そんなことしか言わないやつはどこの誰だと思っているのだ。しかしまあその、なんだ、やはりというか、一応彼にも人には理解しがたい悩みがあるようだ。ここまであからさまに他と足並みがずれているのだから、当然と言えば当然かもしれない。
「そうだね、ごめん。君のことはよくわからない。けど、それでも他の人にはそういう大事な人がいるかもしれない。それに、そうじゃなくても目の前で人が死んだらやっぱり嫌だし悲しいでしょう」
「いるかどうかもわからない人間など……全体を考慮した際、それは優先すべきではない。悲しい? 一時の感情で物事をはかるな。そのようなくだらないものに振り回されて不安定になるからこそ、その男やその子供や、聖都とこの街に留まるあの歪みの原因のようになるのだろう。そんなものは己を正しく保つことにおいて必要はない」
私は内心ため息をついた。君は孤独な人だ。
一時の不安定な感情から、周囲の調和を乱してしまう。心を捨て、人の心を慮らず、良かれと思いやったことが、結果、周囲の調和を乱してしまう。彼が言う客観的な見方をした時、その表層に生じる事象にどれほどの差があると言えよう。だというのなら、喜びや悲しみの心を謳い、自分が確かにここにいると叫ぶことが悪しきことだと、私には思えない。
細やかな感情表現は、人類が厳しい世界において社会を作って生き抜くために、長い長い時間の中でようやく勝ち得た特殊で貴重な能力だ。そんなに身をこそぎ落として、あとどれほどのものが人に残されているだろう。それとも彼は必要分すら積み込めぬほど、何かの荷物で過積載だというのだろうか。それはそれで難儀なものだ。
「とにかく、くじやトロッコばかりを展開するのもほどほどにしておかないと、君もいつか恨みを持たれて刺されちゃうかもしれないよ」
刺されちゃうかもしれないよ、なんてうっかり物騒なことを言ってしまったからなのか、彼は再び目を細めると、訝しみながら私の挙動を逐一観察するように睨みつけた。
「お前こそ、その男が死んで何か困ることでもあるのか?」
はじめに私がしたものと似た疑いの問いをされて、私は少しむっとした。私のどこに疑う余地があろうものか。あからさまに怪しい君ならともかく、そんなもの私の身辺を考えればすぐにわかるものではないかと思ったところで、私は思い至った事実に不覚にも笑ってしまった。
彼にしてみれば、私は半ば騙す形で借金をふっかけてきた最悪の人物である。彼にとっては、なるほど確かにその辺の小賢しい賊と似たようなものかもしれない。そりゃあ、疑いたくもなるものだ。
「何がおかしい」
ふっと口元を緩めてしまったところを見抜かれ、彼の険しい表情がより微かに険しさを増す。笑うところではないと分かっていても、ついついおかしな発見をしてしまったものだから、致し方ない。
「いや、面白いこと言うなあと思っただけだよ」
「何が面白い」
彼は変わらず険しい顔で、冷たい眼差しとともに短刀を私へ向けて構えている。
「一言だけ言わせてもらうなら」
流石に身の潔白を疑われたままでは癪だ。私は、未だ私を警戒し続けている彼へ向けていた布団叩きの切っ先を、静かに下げた。
「私は、君なんかよりは余程身元の知れた平凡な小娘だよ」
そう言ってみたところで、彼が手に持つ刃が向かっている先は変わらない。
どうにもこうにも彼には私が信用ままならないらしい。無理もないといえば無理もない。しかしながら、今この場においてのみ述べるならば、私が彼の下手に出る必要性は何一つとして存在しない。そうとも、心ゆくまで私を疑い、思う存分私の粗を探せば良い。君には何も見つからない。
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