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連載
おまけ ※連載時に書いたもの
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連載していた時に書いたものです。
編集してないので書籍やレンタルと書き方が違います。
それでも良ければお楽しみください。 Noah
ー■ー□ー■ー□ー■ー
「アタメント!ルナから手紙が届いたぞ!」
鬱蒼と巨大な樹が生い茂る森の中で、獅子の獣人が三毛猫の獣人に手紙を差し出しながら話しかける。
アタメントはギバセシスから受け取った封筒から便箋を取り出し、中に綴られた綺麗な文字へと視線を落とした。
「ははッ」
「どうした?
ルナの奴、また珍しい薬草採って来いとか魔物狩って来いとか言ってきたか?」
ギバセシスはアタメント肩に顎を乗せるようにして後ろから手紙の内容を覗き込む。
「今度は銀嶺蛇の鱗だって」
「……次は何すんだよあいつ……。
ま、Sランク冒険者として顧客の依頼はしっかりこなさねぇとな」
ギバセシスとアタメントは周りに転がる魔物の屍の山を片付けると、ルナエルフィンからの注文の品を手に入れるべく、目的の地へと転移した。
◇ ◆
「領に帰るの久々だなぁ」
「だね」
綺麗に整備された道を、ロックバレルの紋章が刻まれた馬車が2人の若い騎士を乗せて走る。
1人は手を頭の後ろに組んで退屈そうに隣に話しかけ、もう1人は手に持った書物に目を向けながら相槌を打っていた。
「あ、お前知ってたか?
この国に領ってものを作ったのが祖母様だって」
「知ってるよ」
「は?なんで教えてくんねぇんだよ」
「なんでって…」
理不尽なことを言われて困った顔をしているのは狐の獣人。
そんな狐の獣人を裏切られたみたいな顔をして見ているのが豹の獣人だった。
「有名な話じゃないか。
お祖母様がこのヴィナシスと人間や亜人の国々とを繋げた王子だってことは」
「……それくらいは知ってるよ」
「その功績の褒美に望んだのが”領地”だったんだよ」
「ふぅん」
普通は爵位を与えられて貴族になったり、1つ上の爵位へと上げてもらったりするのだが、王子だとそれには当てはまらないのだろう。
「それまでは領地は1つもなかったんだよな?
今は結構いっぱいあんのに」
「そうだね。
王都や明けの街、宵の街の外壁の外は魔物で溢れていたから」
「でも祖母様は領地をもらったんだ」
「お祖母様には開拓をするだけの力があったからね」
「開拓かぁ」
そう呟いて、豹の獣人は自分の祖父母が治めるロックバレル公爵領を思い出した。
ヴィナシス王国全体が目覚ましい発展を遂げているが、それを促しているのはこの領だと分かるほど活気に満ち溢れた街並み。
祖母が発明した大規模な結界を張る魔道具は、街を包んで魔物の一切の侵入を阻んでいる。
それだけではなく、祖母は物を転移させることが出来る魔道具も作っていて、それと祖母の人脈を駆使したおかげでロックバレル公爵領は常に世界の流行の最先端にあった。
多くの店が並んでいるが、特に人気なのは祖母が直々に招いたというオカマジャガーの洋服店。
飲食店も様々な国から食材が取り寄せられるので進んでいて、祖母が好きなのは極東の国の米を使った料理だ。
挙式を上げた月の教会もあり、そこでは孤児を引き取っているのだが、それは子供を作ることが出来ない祖母の兄である獅子の獣人と従者のエルフの番のためだと聞いたことがある。
それらのほかに他領と決定的に違うことと言えば、狐の獣人の領民の数だろうか。
「でもその時、先代の国王陛下がお祖母様に50年でいいから休んでくれって頼みこんだんだって」
「祖母様、今でもずっと何かしてるもんな」
「何かしてると思ったら、突然お祖父様とどこか行っちゃうしね」
「祖父様も自分で作った私兵団より祖母様優先だしなぁ」
2人はそれに振り回される自分の父親やその兄弟達の姿を思い出す。
「自由だよね」
「自由と言えば王族だよ」
「第6王子だった叔父様が国王陛下の地位を継いでくれてよかったよね」
第1王子はエルフの番と共にマキュリア王国とロックバレル公爵領の孤児院を行ったり来たり。
第2王子はSランク冒険者として世界中をふらふら。
第3王子は騎士として番と共に明けの街を護り、第4王子は領地経営と魔道具開発に夢中。
しばらくして産まれた蛇の獣人の第5王子は暗部に入るし、獅子の獣人の第6王子は自分が国王になるしかないと思ったらしい。
「到着致しました」
話をしているとあっという間で、従者に声をかけられ馬車を降りる。
「早く『転移』出来るようになるといいね」
「すぐ使いこなしてみせるから待ってろ」
2人は経験を積みため、王立騎士団の第8師団へ所属していて領を離れている事が多いが、休みの日になれば必ず帰って来ており、勝手知ったるといった感じで屋敷の中へ足を進めた。
「皆様リビングにおります」
帰ることは知らせていたので使用人に出迎えられ、案内されるままにリビングへと足を運べば、近づくにつれて自分達の父親のものと思われる大きな声が聞こえてくる。
「また祖母様が何かしようとしてるみてぇだな」
「また父様が振り回されるね」
リビングの扉が開かれると、2人の予想した通りの光景が広がっていた。
「俺、ビル作りたいんだよね」
「いいんじゃないか?」
「素晴らしい案です!流石ルナ様!」
「ビルってなんですか母上っ!!!」
ソファで優雅に寛ぎながら、普通では思いつかないようなことを突然言う祖母。
今存在する獣人の中で唯一9尾に到達し、膨大な魔力を有しているために寿命が長く見た目が全く変わらない。
そんな祖母の肩をいつものように抱いている祖父も、番と交わったことで同じ時間の寿命を得ているため若々しい。
祖母を1番理解し、祖母を否定ることを知らずに賛同を示す。
そして祖母が何を言おうと全て肯定する盲目なエルフと、その全てに振り回される父親。
「「只今帰りました」」
祖母と同じ色で2又の尾を持つ豹の獣人と、祖父と同じ色で5本の尾を持つ狐の獣人は、目の前の幸福な日常に微笑みながら帰宅の挨拶をする。
「おかえり」
≪完≫
編集してないので書籍やレンタルと書き方が違います。
それでも良ければお楽しみください。 Noah
ー■ー□ー■ー□ー■ー
「アタメント!ルナから手紙が届いたぞ!」
鬱蒼と巨大な樹が生い茂る森の中で、獅子の獣人が三毛猫の獣人に手紙を差し出しながら話しかける。
アタメントはギバセシスから受け取った封筒から便箋を取り出し、中に綴られた綺麗な文字へと視線を落とした。
「ははッ」
「どうした?
ルナの奴、また珍しい薬草採って来いとか魔物狩って来いとか言ってきたか?」
ギバセシスはアタメント肩に顎を乗せるようにして後ろから手紙の内容を覗き込む。
「今度は銀嶺蛇の鱗だって」
「……次は何すんだよあいつ……。
ま、Sランク冒険者として顧客の依頼はしっかりこなさねぇとな」
ギバセシスとアタメントは周りに転がる魔物の屍の山を片付けると、ルナエルフィンからの注文の品を手に入れるべく、目的の地へと転移した。
◇ ◆
「領に帰るの久々だなぁ」
「だね」
綺麗に整備された道を、ロックバレルの紋章が刻まれた馬車が2人の若い騎士を乗せて走る。
1人は手を頭の後ろに組んで退屈そうに隣に話しかけ、もう1人は手に持った書物に目を向けながら相槌を打っていた。
「あ、お前知ってたか?
この国に領ってものを作ったのが祖母様だって」
「知ってるよ」
「は?なんで教えてくんねぇんだよ」
「なんでって…」
理不尽なことを言われて困った顔をしているのは狐の獣人。
そんな狐の獣人を裏切られたみたいな顔をして見ているのが豹の獣人だった。
「有名な話じゃないか。
お祖母様がこのヴィナシスと人間や亜人の国々とを繋げた王子だってことは」
「……それくらいは知ってるよ」
「その功績の褒美に望んだのが”領地”だったんだよ」
「ふぅん」
普通は爵位を与えられて貴族になったり、1つ上の爵位へと上げてもらったりするのだが、王子だとそれには当てはまらないのだろう。
「それまでは領地は1つもなかったんだよな?
今は結構いっぱいあんのに」
「そうだね。
王都や明けの街、宵の街の外壁の外は魔物で溢れていたから」
「でも祖母様は領地をもらったんだ」
「お祖母様には開拓をするだけの力があったからね」
「開拓かぁ」
そう呟いて、豹の獣人は自分の祖父母が治めるロックバレル公爵領を思い出した。
ヴィナシス王国全体が目覚ましい発展を遂げているが、それを促しているのはこの領だと分かるほど活気に満ち溢れた街並み。
祖母が発明した大規模な結界を張る魔道具は、街を包んで魔物の一切の侵入を阻んでいる。
それだけではなく、祖母は物を転移させることが出来る魔道具も作っていて、それと祖母の人脈を駆使したおかげでロックバレル公爵領は常に世界の流行の最先端にあった。
多くの店が並んでいるが、特に人気なのは祖母が直々に招いたというオカマジャガーの洋服店。
飲食店も様々な国から食材が取り寄せられるので進んでいて、祖母が好きなのは極東の国の米を使った料理だ。
挙式を上げた月の教会もあり、そこでは孤児を引き取っているのだが、それは子供を作ることが出来ない祖母の兄である獅子の獣人と従者のエルフの番のためだと聞いたことがある。
それらのほかに他領と決定的に違うことと言えば、狐の獣人の領民の数だろうか。
「でもその時、先代の国王陛下がお祖母様に50年でいいから休んでくれって頼みこんだんだって」
「祖母様、今でもずっと何かしてるもんな」
「何かしてると思ったら、突然お祖父様とどこか行っちゃうしね」
「祖父様も自分で作った私兵団より祖母様優先だしなぁ」
2人はそれに振り回される自分の父親やその兄弟達の姿を思い出す。
「自由だよね」
「自由と言えば王族だよ」
「第6王子だった叔父様が国王陛下の地位を継いでくれてよかったよね」
第1王子はエルフの番と共にマキュリア王国とロックバレル公爵領の孤児院を行ったり来たり。
第2王子はSランク冒険者として世界中をふらふら。
第3王子は騎士として番と共に明けの街を護り、第4王子は領地経営と魔道具開発に夢中。
しばらくして産まれた蛇の獣人の第5王子は暗部に入るし、獅子の獣人の第6王子は自分が国王になるしかないと思ったらしい。
「到着致しました」
話をしているとあっという間で、従者に声をかけられ馬車を降りる。
「早く『転移』出来るようになるといいね」
「すぐ使いこなしてみせるから待ってろ」
2人は経験を積みため、王立騎士団の第8師団へ所属していて領を離れている事が多いが、休みの日になれば必ず帰って来ており、勝手知ったるといった感じで屋敷の中へ足を進めた。
「皆様リビングにおります」
帰ることは知らせていたので使用人に出迎えられ、案内されるままにリビングへと足を運べば、近づくにつれて自分達の父親のものと思われる大きな声が聞こえてくる。
「また祖母様が何かしようとしてるみてぇだな」
「また父様が振り回されるね」
リビングの扉が開かれると、2人の予想した通りの光景が広がっていた。
「俺、ビル作りたいんだよね」
「いいんじゃないか?」
「素晴らしい案です!流石ルナ様!」
「ビルってなんですか母上っ!!!」
ソファで優雅に寛ぎながら、普通では思いつかないようなことを突然言う祖母。
今存在する獣人の中で唯一9尾に到達し、膨大な魔力を有しているために寿命が長く見た目が全く変わらない。
そんな祖母の肩をいつものように抱いている祖父も、番と交わったことで同じ時間の寿命を得ているため若々しい。
祖母を1番理解し、祖母を否定ることを知らずに賛同を示す。
そして祖母が何を言おうと全て肯定する盲目なエルフと、その全てに振り回される父親。
「「只今帰りました」」
祖母と同じ色で2又の尾を持つ豹の獣人と、祖父と同じ色で5本の尾を持つ狐の獣人は、目の前の幸福な日常に微笑みながら帰宅の挨拶をする。
「おかえり」
≪完≫
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