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第2章・この世界の片隅で

   第191夜・『嫌われリカの青春(6:paper weight篇)』

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   (前回からの続き)

 ・・・「なんで、あなたって人は、私の嫌な思い出を聞いて、嬉しそうに大笑いするのよ!!」

「俺は、なんちゅうか、そんな物語が大好きなんだよ」

「物語・・・?(私の辛い過去の話を作り話だとでも思っているのかしら)」

「・・・いや、そういう意味でなくて、流れある話・・・、物語と言っちゃいけないんだよな。・・・うん、そう、エピソードが大好きなんで」

「・・・エピソード・・・」

「う~、悪い意味じゃないんだよ。う~ん、例えば、俺は、酔った凄いデブに足にゲロを吐きかけられたことがあってさ。同じく被害に遭った男は、泣いて怒っていたんだけど、俺は大笑いしちゃったんだよ。よくもまあ、このクソデブ、俺にゲロ吐きやがってよぉ、って」

「うんうん^^(←自分だけが悲惨でないことに安心する)」

「それからさ、カンボジアでは地雷原を歩いたし、南相馬の被災現場にも行った。カンボジアにも福島にも悲劇はあって、哀しい目に遭っている人はいるけど、それとは別次元で、その状況を経験するということは、非常に大事で、俺には興味深いんだよ。だから、梨華さんが、自分の貴重な経験を苦笑いしつつ語れるのは、物語として突き放して過去を見てられるってことだから、ウヒャヒャ、俺は笑うのさ!」

「そんなものですか・・・」

   ◇

     

 ・・・梨華は、三人の先輩に引っ立てられて、体育館裏のトイレに連れて行かれた。

 もう、連れて行かれる理由などを問うことはせずに、これも運命と思い、おとなしく為すがままに連れて行かれるのだ。

     ・・・ああ、楽しいと思っていた高校生活も、また・・・、これかぁ・・・

 梨華、涙も出なくなっていた。

 薄暗いトイレに入ると、なんか、自分の人生では見慣れた光景、多くの先輩がひしめいていた。

 女の「嫉妬」の臭いがムンムンと立ち込めていた。

 15人はいただろう。

 この高校は商業高校だった。

 授業で習字の授業があった。

 習字には、半紙の上部を抑える長細い文鎮が必要だ。

 その文鎮が、本来の用途とは別に、梨華を待ち伏せていた先輩たちの手に握られ、それを複数が振り上げていた。

     ・・・これ、私、死ぬ・・・。

             ・・・(続く 2013/12/11)
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