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   第9夜・『孟宗竹の逢引部屋』

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 近所のバーのマスター・熊さんがうちの店に来て、困ったような顔をして、「Sさんがこんなことを言っていたよう^^;」と話しはじめてくれた。

 Sさんは、うちの店の常連でもあるが、この界隈の問題児で、色んな仰天エピソードがあるのだが、それはおいおい語っていく。

 私 「なんて言ってたんですか?」

 熊さん 「団地さん(私)が、色んな女のお客さんと、店の2階で逢い引きしているって」

 私 「えーっ^^」と笑ってしまった。

 熊さん 「例えば、市役所の公務員さんとか、スナック○○のママさんとか、美容師さんとか、△△さんの彼女とかを連れ込んで、閉店と同時に、夜は女と2階に引きこもっている、と声高に言い回っているんだよ」

 私 「うへっ! 凄い妄想ですね。確かに、皆さん、うちのいいお客さんですけど・・・」

 熊さん 「Sさん、『私は、団地さんの店の2階に上がって確かめようと思っているのですよ!!』とも言ってました」

 私 「なんでですか・・・?^^;」

 熊さん 「Sさんが言うには、『その権利がある』とのことです」

 私 「権利って・・・^^;」

 熊さん 「その権利の根拠はわかりません。だから、私も言ったんですよ、団地さんが、自分の店の2階で何しようが関係ないでしょ! って。そしたら、『なんでですか?』と、さも心外とばかりに逆に聞かれてしまって。『団地さんの店を××屋のようにしてもいいんですかッ!』って」

  ・・・「××屋」とは、店主が、店に彼女を連れ込んで、ガラス張りの店の中で人目をはばからずイチャついていて、お客さんのいないときには、その店舗2階から喘ぎ声が聞こえてくるといった状況で、来店客を激減させている店だ。

 私 「はあ・・・^^;」

 熊さん 「で、私は、××屋さんは、2階を客室として開放してるけど、団地さんのとこは、2階は開放してないでしょ。Sさんが、そんな強気で、上に入っていける筋合いにないでしょ? と言ったんですよ」

 私 「そしたら、どうでしたか?」

 熊さん 「『そうでしょうか?』と不満そうでした^^; 『私は、お店の2階を、そんなハレンチな場所にするのは許せませんね』と・・・」

 私 「・・・あの人(Sさん)は、相変わらずですね、根も葉もない凄い妄想です。まあ、熊さんも知ってると思いますが、この店の2階は、人も住めますが、私は家を持っているので通いです。2階を客席として開放したいのですが、私は、お客さんへのサービスが行き届かなくなるので、2階を客席とはしませんし、出来ません。しかも、金がないので、2階にはエアコンもつけておらず、畳の部屋に、1階に置けない巨大な冷凍庫が、殺風景な中にポツンと置いてあるだけですよ(当時)・・・」

 熊さん 「・・・あの人にとっては、自分の妄想こそが正しいので、2階を見せないことには、妄想を語り続けますよ・・・!」

 私 「いや、熊さん、こう言ってください。『・・・昨日、団地さんのとこの2階に上がったんだけど、凄いね、完全防音にしてあって、部屋の中がラブホテルのような内装になっていて、巨大なダブルベッドが部屋の中央にデン! と置かれていて・・・。Sさんのお気に入りのあの子も、きっと、あの部屋に連れ込まれているのでしょうね』と・・・」

 熊さん 「おっ、それ面白いね^^ それでいきましょう!」
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