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乙女ゲームの攻略者の〜 その② 本当の私になる 前編

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「新しい魔法?」


衝撃のヒロインとの出会いから早2年
特になんてことない日々を過ごしていたが遂に
クロードの学園入学の日がやってきた
魔法学園では寮生活のため長期休みくらいしか家に帰ってくることはない
この家を支えてくれているメイドは数人いるけど
それでもいつも一緒にいたクロードと離れ離れはすごく寂しい
そんな私にクロードは新しい魔法を編み出したので試させてほしいと言ってきた


「国の決まりとはいっても僕は天音と殆どの日を離れ離れなんて耐えられない...天音は異世界から魂だけやってきたって言ってたでしょ?だからふとした時に消えちゃうんじゃないかって..元の世界に帰っちゃうんじゃないかって不安なんだ」


そう言っていつも暖かく見つめてくるクロードの瞳が虚ろになる
それが一瞬でキラキラした瞳になった


「だから絆の魔法を編み出したんだ!」


聞けば互いに想い合えば想い合うほど魔法の効力が強くなり
魂が繋がるとかでそばに居なくても常に相手のことを感じられるらしい


「魂が繋がるっていつまで?」


もし相手が死んだらもう片方も死ぬとかだったら嫌だ
私の方が年上だし老いも早い
私が死んでもクロードには生きていてほしいのだ


「天音が不安に思っていることは分かるよ。大丈夫。魔力が強い方の寿命に合わせられるから。僕はもう...人間じゃないから...永く生きられるんだ。だからその時は天音にそばに居てほしい...ダメかな...?」


人間じゃないからと言った時に一瞬傷ついた顔をした
人に言われるのも自分で言うのもどれだけ辛いことか
私には分からないけどそんな時辛さを少しでも取り除けたらなとは思う
過去の経験から拒絶されることを恐れるクロード
私が持ってた不安よりクロードの方が不安なんだ
正直クロードのいない未来なんて考えたくなかった
だから最後の死ぬ瞬間まで2人一緒にいれるならそれもいいかもしれない


クロードに了承の言葉を返すと
花が咲いたように笑った
やっぱり天使...!!


「ありがとう天音!じゃあ、天音の身体を喚び出すね!」


ん?今なんて言った?


「この魔法には魂だけじゃなく身体も本人じゃないとダメなんだ。だから天音の世界から天音の身体を喚んで正真正銘の天音になってもらう」



「そんなことできるの?」


クロードの母親の中に入って2年と数ヶ月
慣れてきたとは思うけど
自分の身体が恋しくないわけはない
私はクロードの母親なのか、水月 天音なのか分からなくなって怖くなる時がある
いっそ天音と生きてきた記憶がなくなればとも思ったけど
それだと自分が自分で無くなりそうで怖い
そんな悶々とした日々を過ごしていたのだ


もし私が私と生きていけるならこんなに嬉しいことはない
でも...


「クロードのお母さんの身体はどうなるの?」


もし私のせいで消えてしまうんだとしたら
それは私が殺したようなものではないか
ただでさえ身体を乗っ取っているといっても過言じゃないのに...
と、そんな不安がよぎる


「天音...そんな悲しい顔をしないで?天音のせいじゃないよ。僕が天音の存在を望んだんだ。
形だけでも母上であれば、僕を愛してくれるなら母上が母上じゃなくなっても良かった。母上の記憶を消したあの瞬間僕は母上を殺したんだ。
母上の魂はもう無い。だから天音が天音自身になることで母上もやっと安らかに眠ることができるんだ」


クロードは本当に12歳なんだろうか
なんでこんな優しい言葉ばかりかけてくれるんだろう
自分を責めないで。辛いなら僕を責めていいから
そんな言葉が聞こえてくるようだ
無論クロードを責めるつもりは毛頭ないけど。
クロードに言われて少し気持ちが軽くなった
クロードのお母さんに身体を返す
そう思おう
そして、改めて母親としてじゃなく1人の人間としてクロードの側にいよう
そう心に決めた


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