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乙女ゲームの攻略者の母親になったけど物語の為潔く殺されます! 後編

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いつまでたっても
死ぬことはなかった
手を顔に添えられてるのは分かってるのに


「...いで」


とても小さな声でクロードは呟いた
心なしか顔に触れた手から振動が伝わってくるようだった
そっと目を開けると

最初に出会った時のように涙を瞳いっぱいに溜めたクロードがいた


「僕を嫌わないで...」


見た目が変わっても
あんなにひどいこと言われても
クロードは変わらずクロードだった
たった数ヶ月しか知らないけど
優しくて愛しいクロードだった


「クロード...」


クロードが怖い夢を見たから
一緒に寝てほしいとお願いしてきた時
頭を撫でながら子守唄を歌うと安心したように眠っていた
あの時のように
クロードの頭をそっと撫でる
黒いオーラの不思議な感触を感じながら子守唄を歌う

クロードは少し驚いた後安らかな顔をしてそっと抱きしめてきた
それをそっと抱きしめ返す

突き放すのはやっぱり無理でした



あれから
私の存在のことを話したが
知っていたようだった

「最初は僕を愛してくれるなら誰でも良かった。でも今なら言える。あなたで良かった。僕はあなたが良い」


クロードはあれから
私を母上と呼ぶことはなくなった
元の私の名前で呼んでくる
美少年に呼ばれるのはちょっと恥ずかしいけど
クロードが嬉しそうに笑うから
まぁいいかと思ってしまう


見ることのできないと思っていた
クロードのこれからを
私はどんな気持ちで見るのだろう
きっと寂しい気持ちもあれば
嬉しい成長も見れる気がする
それをクロードにいうと


「僕はどこにもいかないよ。ずっと一緒だ」

と優しい言葉をくれる


「天音と僕は結婚するんだ。そう約束しただろう?」


冗談でも嬉しいよ
クロードが大切な人の元に行っても
その思い出だけで私は笑って見送れるから


「離さないよ。一生ね」


冗談だよ...ね?



こうして乙女ゲームの攻略者の母親になった私は
物語の為に潔く死ぬはずが
何故か未だにクロードの隣にいる


クロードの言っていたことの本当の意味を知るのも
元の体もこっちの世界に来て本当の私になることも
物語の行方を知ることが出来ないことも


この時の私はそのどれも想像していなかった


-en..d?-
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