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乙女ゲームの攻略者の母親になったけど物語の為潔く殺されます! 中編

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「っ!!なに!?」


朝けたたましい音で目が覚めた
これは危険を知らせるアラームだ


「母上っ!!!ご無事ですか!!?」


寝室に飛び込んで入ってきたのは寝間着姿のクロードだった
パジャマ着てると更に天使...
いやいや、今はそんな時ではない

そう、このイベントは
私の死亡イベントだ


国家反逆を目論む組織によって
この魔法院が襲われた
クロードはここで魔力を暴走させてしまうのだ
今日まで数ヶ月私にできることは全部やってきたつもり
例え死んでしまっても
最後に絶望に染まってしまっても
暖かい記憶は残るはず
主人公と家庭を持った時
未来の子に活かされるはずなのだ
だって主人公に
愛されていたと話していた時の表情は憎悪ではなかったから
きっと私の存在は無駄じゃない


扉を警戒し
私を守ろうとしてくれるクロード
ごめんなさい
私はこれからあなたがとても傷つく
言葉を言わないといけない
優しい貴方を突き刺す一言を...



「母上大丈夫です。僕がついています!僕が守りますから!」



出そうな涙を堪えようと
下唇を噛む私に
クロードはそう言って抱きしめてくれた
元の世界の私はまだ独身だし
子供なんて以ての外だけど
自分の子供っていいなぁ
と、いつかクロードのような良い子と
優しい旦那と素敵な家庭を...
...あれ?クロードのお父さんて


考え事を吹き飛ばすように
ドアが開けられた


「ここにいたのかクロード」


「父上...」


そこにいたのは
反国家組織の幹部
クロードの父親だったのだ
ちょ、待って!情報ついてけない!!


「久しいなエリーゼ。今までご苦労だった。もうお前に用はない。クロードこっちへ来るんだ」


「嫌です」


手を伸ばす父親に
クロードは冷たく言い放った



てか
妻になんて言い草!!
いや、今まで気にしてなかった私も私だけど!!
てかどういう状況なの!?


「よく分かっていないという顔をしているなエリーゼ。それもそうか。お前はクロードに利用されたのだからな」


「利用って...」


「黙れ!!」


私が聞くより先にクロードは
魔力の玉のようなものを父親にぶつけていたがすぐに弾かれ
逆に拘束されてしまった


「まぁ最後に話しておくのも悪くない。心して絶望するが良い」


そして旦那(?)は事のあらましを話し出した



実はここは魔法院ではなかった事
クロードは国内でも唯一無二の魔力を持っていた為
王家にしか入れない国家機密の場所で匿われてた事
貴重ではあるがクロードの黒髪は国では忌子と敬遠されるものである事
昔の私はクロードが生まれてからずっと忌み嫌っていた事
母親を恋しがるクロードのため
記憶を消された事
本当はただクロードを愛する為だけの人形のようになるはずだったが
イレギュラーが起こった事
多分このイレギュラーは私の存在だろう



だってクロードはゲームでは
とても愛されていたって
忌み嫌ってたって
人形のようになるはずだったって


「母上!耳を傾けてはいけません!」


拘束されながら必死に叫ぶクロードは泣いていた
どうか自分を嫌わないでと心が叫んでいるようだった



「失った記憶を元に戻してやろう」



「っ!!」


頭が割れるように痛い
それと同時に私の存在がある前の記憶が蘇ってきた

産んだ時
(なんて気持ち悪い!!これは悪魔の子よ!!)

母上と縋り付いてくるクロードに
(触らないで汚らわしい!!こんな子は私の子ではないわ!!)


記憶を消される前も
(何をするの!?やめて!悪魔!化け物!!)


消される寸前に見たクロードの顔は
とても嬉しそうな顔をしていた



「偽物とはいえ母親に愛されるという期待だったのだろう。それがどういうわけか意識を保ったままとは」


「やめろ...」


「お前はエリーゼではないな。違う魂のオーラを感じる。」


そういうことか
本来なら人形状態から記憶が戻ったエリーゼが
クロードを見て叫ぶのか化け物と
元からそう思ってたのだから
こんな良い子なのにとか
関係ないんだ...



「まぁいい。まるごと消し炭にしてくれる。」


「やめろーー!!」


クロードが叫んだと同時に眩しい閃光が発し次に目を開けた時には
崩壊気味の部屋と
黒いオーラを纏うクロードがいた
あの男はクロードから出る黒いオーラに食べられていた


「消えろ消えろ消えろ消えろ...」


壊れたように呟くクロードのそばで
その男は恍惚の表情を浮かべ
クロードの解放された魔力に酔いしれているようだった
刻一刻と命が削られているというのに


「何という魔力...あぁこの力があれば...」


人を喰らう影を操る黒き者
これが


「化け物...」


気付くとそう呟いていた


ハッとした私の方に
ゆっくりとクロードが顔を向けた
無意識に呟いてしまったセリフ
結局私がイレギュラーとはいえ
これを言うことは変わらなかったんだろう

黒い影に覆われ歪になったクロードの両手が私の顔に添えられる

このまま首を絞められるのか
命を取られるのか
どちらにせよ最後のこの瞬間
私は願う
どうかこの子に幸せが訪れますように
親がこんなでも
素敵な家庭が築けますように
そう願いながらそっと目を閉じた
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